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437.転売屋は本人を送り込む
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強制徴収。
その名の通り無理やり奪い取るという手紙だ。
『強制徴収命令。貴族のみが発行できる特別な命令証書。これを提示された場合、ギルド協会の仲介がなければ断ることはできない。本物。最近の平均取引価格は銀貨10枚、最安値銀貨1枚、最高値銀貨57枚。最終取引日は29日前と記録されています。』
鑑定スキルからみてもこれが本物であることは確認できる。
っていうか、取引履歴があるのはどうなんだ?
こういうのって売り買いしていい物なのか?
謎すぎる。
「う~む。」
「どうするの?」
「どうするも何も不服申し立てするしかないだろう。これが偽物ならともかく本物である以上、放置すれば強制的に連れていかれるわけだしな。」
「これだから貴族は嫌いなのよ、権力をかざせば何でも手に入るって思ってるんだから。」
「特権階級だからなぁ、その辺は致し方ない。」
「シロウは悔しくないの?」
「悔しい悔しくないの話じゃないだろ、これは。俺は平民で向こうは貴族だ。もちろんみすみす奪われるつもりはないが、俺が平民である以上今後も起こり得ることだ。むしろ今までよく持ち込まれなかったよな。」
俺みたいに高価なものを扱っている以上、それ目当てに命令書を持ち込まれてもおかしくなかったはずだ。
それが今の今までなかったのは、倫理的な問題なのかそれとも制度的な方なのか。
ともかくギルド協会に行くしかないだろう。
「とりあえずギルド協会に行ってくる、ミラは・・・屋敷か。店は閉めといてくれ。」
「一緒に行く?」
「大丈夫だって、そのまま屋敷に行くから帰るのは遅くなる。飯は勝手に食ってくれ。」
「は~い。」
ひとまずギルド協会へ行ってみたが生憎と羊男は不在だった。
仕方ないので事情を説明して仲介に入る手続きだけ取ってもらう。
そしてその足で屋敷へと向かった。
「ミラ、イザベラいるか?」
「シロウ様どうされたんですか?」
「急ぎ話を聞きたい、俺の部屋に来てくれ。」
「かしこまりましたすぐに参ります。イザベラさん行きますよ。」
「はい。」
屋敷に入るとちょうどエントランスで二人が掃除をしていた。
使用人が少ないので中々屋敷全部を掃除できない。
なので研修もかねて頑張っていたようだ。
一足先に自分の部屋に向かいウィフさんが使っていた机にふんぞり返っていると、すぐに二人が入ってきた。
「お待たせいたしました。」
「悪いな、研修中に。」
「いえ。ですがどうされたんですか?」
「まずはコレを見てくれ。」
二人の前に先程の手紙を滑らせる。
一度やってみたかったんだよな。
それをミラがスムーズにキャッチして二人で中を確認した。
「強制徴収命令?」
「だ、そうだ。もちろん徴収されるのはイザベラお前なわけだが・・・。その紋章の家に心当たりはあるか?」
「・・・あります。」
「どういう家だ?」
「前々から我が家に取り入ろうとした王都の貴族です。太陽のティアラ欲しさに声をかけてきていたようですが、かなり黒い事をやっているようでお父様が相手にしませんでした。まさか、こんな手段をとるなんて。」
「とりあえずギルド協会に仲介を頼んでいるが、正直この命令にどのぐらいの効力があるか見当もつかない。どういったものなんだ?」
「コレを出せばどんなものでも手に入る魔法の紙、でしょうか。もちろん手当たり次第に乱発されないよう王都で命令を管理されていますが、あの家のことです、無理やり通したんでしょう。相変わらずやり方が汚い。」
イザベラの言い方から察するにあまりよろしくない貴族のようだ。
名はドンダーク家。
名前から悪そうな感じだよなぁ。
名は体をあらわすってか?
「つまりはティアラ欲しさにお前を買いたいわけか。」
「他人が使った所で意味がないのはお父様が何度も説明したはずです。確か一人息子の嫁にしたいと言って来た事もありましたが・・・。あんな家に嫁ぐなら死んだほうがマシです。」
「お前、自殺願望ありすぎだろ。」
「イザベラさん、何度も言いましたように今の命はシロウ様のものです。勝手に死ぬことは許されません。」
「わかってます。」
「もちろん、気持ちはわかります。私もシロウ様以外の男に使われるなら死んだほうがマシです。シロウ様が亡くなったのなら私もすぐに後を追います。」
「相変わらず愛が重い。」
「おいやですか?」
「そうは言ってない。っていうか今はそういう話じゃない。」
話がそれている。
今はこの命令書をどうするかって言う事で二人を呼んだんだ。
とりあえず出所はわかった。
そしてかなりやばいものだということもわかった。
「ともかくだ、向こうが実力行使に来た以上俺達は俺達で自衛する必要がある。ギルド協会は味方してくれるだろうが、向こうは向こうでやばい手段をとってくるかもしれない。個人的には穏便に済ませたいんだが、何か策はないか?」
「策と言うわれましても・・・。」
「だよなぁ。」
俺達は平民であって貴族じゃない。
こんなでたらめな命令書に対する対策なんて知ってるわけがない。
唯一のプラス材料は俺とギルド協会の仲が良好なことぐらいだ。
レイブさんにも一応知らせておいたほうがいいかもしれない。
あの人なら何か知っているだろう。
「策でしたらございます。」
「なに?」
「向こうが無理やり連れて行く気なら直接話をつければいいだけの事。それも個別ではなく大多数が見ている前であれば悪さできないはず。私が欲しいのなら正々堂々やればいいのに、意地汚いハイエナめ。」
「イザベラ。」
「え?あ!すみません。」
「恨みでもあるのか?」
突然人が変わったかのような目をするものだから心配になってしまった。
前々からそんな反応を見せているが、明らかに殺意というか敵意のある目をしている。
「ないといえば、嘘になります。」
「ふむ。ちなみにどんな?」
「我が家が商人に誑かされ没落したのはご存知だと思いますけど、その裏で動いていた貴族の一つがドンダークです。」
「証拠はあるのか?」
「直接的なものはありませんが、裏でつながっているのは有名な話です。私が欲しくて商人を手引きしたに違いありません。ほんと、最低。」
直接的な証拠がないのであればその線で責めるのは無理だろう。
向こうはかなり汚いやり方が得意のようだし、証拠なんてとうの昔に処分しているはずだ。
「大多数の前でというのはどういうことだ?」
「社交界に私を連れて行ってください、その場でシロウ様の奴隷である事を宣言致します。」
「それだけか?」
「そして太陽のティアラの正式な所有者になって頂きます。もちろん譲渡は出来ませんが、ティアラの所有者である私の所有者なのですから、間接的には間違いではないでしょう。所有者がシロウ様だと知らしめれば私を買った所で意味がないことはわかるはずです。」
「確かに間接的にはシロウ様の持ち物だと言えますね。」
「ならティアラを徴収すると言われたらどうする?」
「いくら何でも短期間で二度も用意することは・・・。」
「出来ないとは言えないよな。」
限りなく黒に近い白、そんなことも平気でやりそうな相手だ。
イザベラが一緒に来るのはいいとして後一手が欲しい。
ギルド協会が絶対でない以上、絶対といえる何かが必要なんだが・・・。
「正直気が乗らないんだが、頼れるものは頼るしかないか。」
「王家に援助を求めますか?」
「直接的な関与をお願いするのはよろしくないだろう。資金提供の件もあるし出来るだけ向こうには勘づかれたくない。」
「では。」
「だからその場にいてもらうだけにしようと思う。王家も見ている中で俺が所有者だと宣言し、王家もそれに同調すれば表立って悪さは出来ないはずだ。加えて太陽のティアラの逸話についても発表する。聞けばあまり広まっていないそうじゃないか、今後の事も考えて公表した方がいいんじゃないか?」
「お父様がいたら許さなかったと思いますが・・・。でも、今は私しかいません。家も没落し守るべきはこのティアラのみ。そしてその間接的な所有者であるシロウ様がそれを望むのであれば、私がそれを拒む理由もないですね。」
「よし、決まりだ。」
とりあえずこの線で動いてみよう。
王家への連絡はアニエスさんを通じて行い、ふさわしい人物を派遣してもらえばいい。
流石に王都まで行くのは難しいが、良い感じの場所を用意できればいいんだがなぁ。
「確か新しい化粧品を発表する準備をカーラ様がされておられるとか、そこで発表するのはいかがですか?」
「なるほど、化粧品の先行お披露目と称して貴族を呼び寄せるのか。そこに王族が混じっていても問題はないな。」
「社交界というのはよくわかりませんが、そういった場で問題はありませんか?」
「むしろ好都合です。呼び寄せる貴族を限定すれば向こうも好き勝手出来ないと思います。ふふ、ドンダークの悔しそうな顔がいまにも目に浮かぶようだわ。」
「・・・イザベラ、お前結構性格悪いな。」
初めて顔合わせした時の豹変ぶりもなかなかだったが、かなり二面性のある女だ。
別にそれがダメとは言わないが、やはり好みではない。
「だって太陽のティアラを守るためには手段を選んでいられませんもの。最初は確かに取り乱しましたが、今はもう大丈夫です。」
「逃げ出したしな。」
「もう逃げません、本当です。」
「まぁいいさ。これは俺とお前を守るための戦いだ、頼りにしてるぞ。」
「太陽のティアラさえあれば何があっても恐れる必要はありません。アレは、そういうものです。」
装用者に太陽のような威厳と加護を授けるんだったっけか?
王族こそ持つべきものだと思うが、譲渡するのに条件がある以上なかなか上手く行かないんだろう。
今後ウィフさんと子を成すことがあったとしても、その子が引き継げるかどうかはわからないらしいしなぁ。
ぶっちゃけ、俺の金にならないのになんでここまでしなければならないのか・・・
社会勉強にしては話が大きすぎる。
「とりあえず準備をするか。俺はマリーさんに事情を説明して王家とカーラに連絡を取ってもらう。イザベラはその時の為に色々と考えておいてくれ。」
「お任せください。」
戦う場所は準備してやる。
後は自分で何とかしろ。
ってことで、お貴族様相手に喧嘩する事が決まった。
例え相手が貴族でも、売られた喧嘩は買ってやる。
商売的にここで舐められるわけにはいかないんだよな。
一週間後。
急遽化粧品の発表会が決まり、各方面から続々と隣町へと人が集まり始めた。
さぁ舞台は整った。
戦争の始まりだ。
その名の通り無理やり奪い取るという手紙だ。
『強制徴収命令。貴族のみが発行できる特別な命令証書。これを提示された場合、ギルド協会の仲介がなければ断ることはできない。本物。最近の平均取引価格は銀貨10枚、最安値銀貨1枚、最高値銀貨57枚。最終取引日は29日前と記録されています。』
鑑定スキルからみてもこれが本物であることは確認できる。
っていうか、取引履歴があるのはどうなんだ?
こういうのって売り買いしていい物なのか?
謎すぎる。
「う~む。」
「どうするの?」
「どうするも何も不服申し立てするしかないだろう。これが偽物ならともかく本物である以上、放置すれば強制的に連れていかれるわけだしな。」
「これだから貴族は嫌いなのよ、権力をかざせば何でも手に入るって思ってるんだから。」
「特権階級だからなぁ、その辺は致し方ない。」
「シロウは悔しくないの?」
「悔しい悔しくないの話じゃないだろ、これは。俺は平民で向こうは貴族だ。もちろんみすみす奪われるつもりはないが、俺が平民である以上今後も起こり得ることだ。むしろ今までよく持ち込まれなかったよな。」
俺みたいに高価なものを扱っている以上、それ目当てに命令書を持ち込まれてもおかしくなかったはずだ。
それが今の今までなかったのは、倫理的な問題なのかそれとも制度的な方なのか。
ともかくギルド協会に行くしかないだろう。
「とりあえずギルド協会に行ってくる、ミラは・・・屋敷か。店は閉めといてくれ。」
「一緒に行く?」
「大丈夫だって、そのまま屋敷に行くから帰るのは遅くなる。飯は勝手に食ってくれ。」
「は~い。」
ひとまずギルド協会へ行ってみたが生憎と羊男は不在だった。
仕方ないので事情を説明して仲介に入る手続きだけ取ってもらう。
そしてその足で屋敷へと向かった。
「ミラ、イザベラいるか?」
「シロウ様どうされたんですか?」
「急ぎ話を聞きたい、俺の部屋に来てくれ。」
「かしこまりましたすぐに参ります。イザベラさん行きますよ。」
「はい。」
屋敷に入るとちょうどエントランスで二人が掃除をしていた。
使用人が少ないので中々屋敷全部を掃除できない。
なので研修もかねて頑張っていたようだ。
一足先に自分の部屋に向かいウィフさんが使っていた机にふんぞり返っていると、すぐに二人が入ってきた。
「お待たせいたしました。」
「悪いな、研修中に。」
「いえ。ですがどうされたんですか?」
「まずはコレを見てくれ。」
二人の前に先程の手紙を滑らせる。
一度やってみたかったんだよな。
それをミラがスムーズにキャッチして二人で中を確認した。
「強制徴収命令?」
「だ、そうだ。もちろん徴収されるのはイザベラお前なわけだが・・・。その紋章の家に心当たりはあるか?」
「・・・あります。」
「どういう家だ?」
「前々から我が家に取り入ろうとした王都の貴族です。太陽のティアラ欲しさに声をかけてきていたようですが、かなり黒い事をやっているようでお父様が相手にしませんでした。まさか、こんな手段をとるなんて。」
「とりあえずギルド協会に仲介を頼んでいるが、正直この命令にどのぐらいの効力があるか見当もつかない。どういったものなんだ?」
「コレを出せばどんなものでも手に入る魔法の紙、でしょうか。もちろん手当たり次第に乱発されないよう王都で命令を管理されていますが、あの家のことです、無理やり通したんでしょう。相変わらずやり方が汚い。」
イザベラの言い方から察するにあまりよろしくない貴族のようだ。
名はドンダーク家。
名前から悪そうな感じだよなぁ。
名は体をあらわすってか?
「つまりはティアラ欲しさにお前を買いたいわけか。」
「他人が使った所で意味がないのはお父様が何度も説明したはずです。確か一人息子の嫁にしたいと言って来た事もありましたが・・・。あんな家に嫁ぐなら死んだほうがマシです。」
「お前、自殺願望ありすぎだろ。」
「イザベラさん、何度も言いましたように今の命はシロウ様のものです。勝手に死ぬことは許されません。」
「わかってます。」
「もちろん、気持ちはわかります。私もシロウ様以外の男に使われるなら死んだほうがマシです。シロウ様が亡くなったのなら私もすぐに後を追います。」
「相変わらず愛が重い。」
「おいやですか?」
「そうは言ってない。っていうか今はそういう話じゃない。」
話がそれている。
今はこの命令書をどうするかって言う事で二人を呼んだんだ。
とりあえず出所はわかった。
そしてかなりやばいものだということもわかった。
「ともかくだ、向こうが実力行使に来た以上俺達は俺達で自衛する必要がある。ギルド協会は味方してくれるだろうが、向こうは向こうでやばい手段をとってくるかもしれない。個人的には穏便に済ませたいんだが、何か策はないか?」
「策と言うわれましても・・・。」
「だよなぁ。」
俺達は平民であって貴族じゃない。
こんなでたらめな命令書に対する対策なんて知ってるわけがない。
唯一のプラス材料は俺とギルド協会の仲が良好なことぐらいだ。
レイブさんにも一応知らせておいたほうがいいかもしれない。
あの人なら何か知っているだろう。
「策でしたらございます。」
「なに?」
「向こうが無理やり連れて行く気なら直接話をつければいいだけの事。それも個別ではなく大多数が見ている前であれば悪さできないはず。私が欲しいのなら正々堂々やればいいのに、意地汚いハイエナめ。」
「イザベラ。」
「え?あ!すみません。」
「恨みでもあるのか?」
突然人が変わったかのような目をするものだから心配になってしまった。
前々からそんな反応を見せているが、明らかに殺意というか敵意のある目をしている。
「ないといえば、嘘になります。」
「ふむ。ちなみにどんな?」
「我が家が商人に誑かされ没落したのはご存知だと思いますけど、その裏で動いていた貴族の一つがドンダークです。」
「証拠はあるのか?」
「直接的なものはありませんが、裏でつながっているのは有名な話です。私が欲しくて商人を手引きしたに違いありません。ほんと、最低。」
直接的な証拠がないのであればその線で責めるのは無理だろう。
向こうはかなり汚いやり方が得意のようだし、証拠なんてとうの昔に処分しているはずだ。
「大多数の前でというのはどういうことだ?」
「社交界に私を連れて行ってください、その場でシロウ様の奴隷である事を宣言致します。」
「それだけか?」
「そして太陽のティアラの正式な所有者になって頂きます。もちろん譲渡は出来ませんが、ティアラの所有者である私の所有者なのですから、間接的には間違いではないでしょう。所有者がシロウ様だと知らしめれば私を買った所で意味がないことはわかるはずです。」
「確かに間接的にはシロウ様の持ち物だと言えますね。」
「ならティアラを徴収すると言われたらどうする?」
「いくら何でも短期間で二度も用意することは・・・。」
「出来ないとは言えないよな。」
限りなく黒に近い白、そんなことも平気でやりそうな相手だ。
イザベラが一緒に来るのはいいとして後一手が欲しい。
ギルド協会が絶対でない以上、絶対といえる何かが必要なんだが・・・。
「正直気が乗らないんだが、頼れるものは頼るしかないか。」
「王家に援助を求めますか?」
「直接的な関与をお願いするのはよろしくないだろう。資金提供の件もあるし出来るだけ向こうには勘づかれたくない。」
「では。」
「だからその場にいてもらうだけにしようと思う。王家も見ている中で俺が所有者だと宣言し、王家もそれに同調すれば表立って悪さは出来ないはずだ。加えて太陽のティアラの逸話についても発表する。聞けばあまり広まっていないそうじゃないか、今後の事も考えて公表した方がいいんじゃないか?」
「お父様がいたら許さなかったと思いますが・・・。でも、今は私しかいません。家も没落し守るべきはこのティアラのみ。そしてその間接的な所有者であるシロウ様がそれを望むのであれば、私がそれを拒む理由もないですね。」
「よし、決まりだ。」
とりあえずこの線で動いてみよう。
王家への連絡はアニエスさんを通じて行い、ふさわしい人物を派遣してもらえばいい。
流石に王都まで行くのは難しいが、良い感じの場所を用意できればいいんだがなぁ。
「確か新しい化粧品を発表する準備をカーラ様がされておられるとか、そこで発表するのはいかがですか?」
「なるほど、化粧品の先行お披露目と称して貴族を呼び寄せるのか。そこに王族が混じっていても問題はないな。」
「社交界というのはよくわかりませんが、そういった場で問題はありませんか?」
「むしろ好都合です。呼び寄せる貴族を限定すれば向こうも好き勝手出来ないと思います。ふふ、ドンダークの悔しそうな顔がいまにも目に浮かぶようだわ。」
「・・・イザベラ、お前結構性格悪いな。」
初めて顔合わせした時の豹変ぶりもなかなかだったが、かなり二面性のある女だ。
別にそれがダメとは言わないが、やはり好みではない。
「だって太陽のティアラを守るためには手段を選んでいられませんもの。最初は確かに取り乱しましたが、今はもう大丈夫です。」
「逃げ出したしな。」
「もう逃げません、本当です。」
「まぁいいさ。これは俺とお前を守るための戦いだ、頼りにしてるぞ。」
「太陽のティアラさえあれば何があっても恐れる必要はありません。アレは、そういうものです。」
装用者に太陽のような威厳と加護を授けるんだったっけか?
王族こそ持つべきものだと思うが、譲渡するのに条件がある以上なかなか上手く行かないんだろう。
今後ウィフさんと子を成すことがあったとしても、その子が引き継げるかどうかはわからないらしいしなぁ。
ぶっちゃけ、俺の金にならないのになんでここまでしなければならないのか・・・
社会勉強にしては話が大きすぎる。
「とりあえず準備をするか。俺はマリーさんに事情を説明して王家とカーラに連絡を取ってもらう。イザベラはその時の為に色々と考えておいてくれ。」
「お任せください。」
戦う場所は準備してやる。
後は自分で何とかしろ。
ってことで、お貴族様相手に喧嘩する事が決まった。
例え相手が貴族でも、売られた喧嘩は買ってやる。
商売的にここで舐められるわけにはいかないんだよな。
一週間後。
急遽化粧品の発表会が決まり、各方面から続々と隣町へと人が集まり始めた。
さぁ舞台は整った。
戦争の始まりだ。
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