432 / 1,027
429.転売屋は再会と別れを見守る
しおりを挟む
いつものようにルフと一緒に街の近くを巡回と称して散歩して回る。
今まではルフしかいなかったのだが、子犬も大きくなってきたので運動もかねて一緒にでかけるようになった。
最初こそ行儀よくついてくるものの、まだまだ子犬なので勝手に走り出したり寄り道しては慌てて戻ってくるのを繰り返している。
一匹はともかく二匹いるとやっぱり大変だ。
幸い二匹ともルフがしっかり躾をしてくれているので、人間に危害を加えるようなことはしていない。
時々子供達とじゃれている際に危ないかなと思う事はあるけれど今のところは問題ないだろう。
だが、見た目は子犬でも中身は魔獣。
もし人間に危害を加えるようなことがあれば今のように服従の首輪なしで過ごすことは出来なくなる。
今の関係を維持するためにもいずれしっかりと躾をする日が来るだろうなぁ。
それまでは今のまま無邪気にはしゃいでくれてかまわない。
「ん?」
先を行く子供達が急に立ち止まり、はるか前方をじっと見つめている。
何度も耳を動かして何かを感じ取っている様子だ。
心なしかルフも落ち着かない感じがする。
「どうした、何か来るのか?」
ブンブン。
いつもよりも強く尻尾が振られる。
しばらく様子を見ていると、草原のはるか向こうに土煙が見えた。
何かが近づいてくる。
街道をまっすぐに来るので馬車の集団だろう。
地面に手を置くとかすかだが振動を感じる。
こういう変化がわかるようになった時点で、俺も随分とこの世界になじんだものだ。
そういえば前にも同じようなことがあった気がする。
確かあの時は・・・。
そんな疑問が確信に代わったのは、豆粒だった馬車が大きくなってきた頃だ。
巨大な馬車のてっぺんに見覚えのある旗がゆれている。
なるほど、通りでルフが落ち着かないわけだ。
子供達はそんなルフの周りをくるくると回っている。
街道まで近づくと、先頭の馬車がゆっくりと速度を落としそして止まった。
「シロウじゃないか!」
「やっぱりアンタだったか。」
先頭の馬車に乗っていたのは、前に街にやってきたサーカス団の団長シャウトさんだ。
馬車を飛び降りた彼はまっすぐにこちらへ向かってくる。
硬い握手を交わし、そしてハグをする。
この世界でよく行われる再会の挨拶だ。
「元気そうだな。」
「おかげさんで、どうだ興行はうまくいってるか?」
「あの後は雨にも当たらずいい感じで回れたと思う。」
「そいつは何よりだ、また街に滞在するのか?」
「いや、今回は通り過ぎるだけだ。」
「そうか、残念だな。」
「の、予定だったんだが・・・。」
ふとシャウトさんの視線が下に降りる。
その先にいたのはルフと二匹の子供たちだ。
「ホワイトの子供か?」
「それしかないだろ?」
「だよな。」
「親子対面といきたいところだが、それは母親に聞いてくれ。ルフ、会わせても構わないか?」
何でそんな事を聞くの?といわんばかりに首をかしげるルフ。
聞くまでもなかったようだ。
「そうと決まれば予定変更だ、皆!今日はここで一泊するぞ、ホワイトの子供だ!」
後ろの馬車から歓声が上がる。
彼らの滞在は街の皆も喜ぶだろう。
俺だって知人に会えるのは純粋に嬉しい。
馬車に乗せて貰いひとまず街へ、ギルド協会に話を通すと二つ返事で許可が下りた。
ま、それもそうだろう。
彼ら来ることで色々と売れるだろうし、活気が出れば消費も増える。
興行までは行かないが、お礼もかねて簡単なショーを開演してくれることになった。
「なんだか凄いことになってるわね。」
「そりゃ、皆この前の興行を覚えてるんだろう。シャウト達の技がまた見れるとなれば興奮もするさ。」
「違うわよ、ルフの方よ。」
「あぁそっちか。」
「まさか本人?も子供に会えるとは思ってなかったんでしょうね、キョトンとした顔をしていたそうよ。」
「感動の親子対面だろうからそっとしといてやれよ?」
「わかってるわよ。」
ちょっと膨れた顔をするエリザだが、すぐにまた元に戻る。
最初こそ戸惑っていた子供達だが、やはり親だとわかるんだろうかすぐにホワイトにじゃれてついていた。
ホワイト自身も不思議そうな顔をしていたが、やはり自分と同じ毛色の子を見ると嫌でも自覚が出てくるんだろう。
今では団員も見たことないぐらいに尻尾を振って喜びを爆発させている。
「さて、俺はちょっと出てくる。」
「ちょっとって、どこ行くのよ。」
「ちょっとな。」
畑の横に設営されつつある簡易の舞台から離れ、一人で街の中へ。
向かったのはマスターの店だ。
「いらっしゃい、ってお前かよ。」
「一応客なんだが?」
「お前は主賓だろ、行かなくていいのか?」
「時間になったらちゃんと行くさ。」
「待ち合わせか?」
「そんなところだ。」
マスターは何も言わずに琥珀色の液体の入ったショットグラスをカウンターの上に置いた。
うむ、美味い。
でもこれ、ここでかなり高い部類に入る酒だよな?
何も言わずにそれを出すとか、相変わらずやることがえぐい。
でも飲むけどな。
しばらくすると店に誰かが入ってくる音がした。
敢えてそちらを見ずにいると、その人物が横に座る。
「いいのか、団長が抜け出して。」
「準備は仲間がやってくれる、それに今日は本業じゃなくちょっとしたサービスだ、危険なことはしないから大丈夫だよ。」
「それならいいけど。」
何も言わなくてもシャウトさんの前に同じ酒が置かれる。
仕事が終わるとマスターは無言でグラスを拭きはじめた。
「で、話ってのはあれか?子供の事か?」
「あぁ。無理を言うのはわかっている、だが今を逃すともう出会えない気がするんだ。俺の勘がそう言ってる。」
「その勘は良く当たるのか?」
「俺達がこうやって今日も無事に仕事ができるのが何よりの証拠だろ?」
「そこは経験と交渉、それと仲間のおかげとかいうところだと思うがね。」
「どこで当たるかなんて運と勘が七割だ、外れたらそこで終わりさ。」
どこに行けば興業が当たるかなんて誰にもわからない。
シャウトさんの勘があったからこそ今までやってこれたってのもあながち間違いではないんだろう。
「正直に言って俺はどっちでもいい。決めるのはルフだ。」
「いいのか?」
「うちの小さな畑に番犬が三頭ってのはちょっと多すぎる。求められる場所で暮らすのもまた一つの選択肢だろう。ただし、それをルフが許せばの話だ。あの子達はルフが腹を痛めて産んだ子だ。決定権は彼女にある。」
「そうか・・・わかった。」
「俺が言えるのは連れていくからには幸せにしてくれってことだ。二代目だからと酷使するようじゃ・・・いや、そんな事をするような人じゃないな。」
この人は仲間を大切にする。
それは他の魔獣を見てもわかる。
あの獰猛な魔獣や魔物が、シャウトさんにはなついている。
これは餌をくれるからとかじゃない、純粋な信頼関係があってこそだ。
「随分と買ってくれるんだな。」
「そりゃ、スポンサーが支援先を信頼しないでどうするよ。」
「有難いことだ。そんじゃま、スポンサー様にしっかりと楽しんでもらうとするか!」
一息でグラスの酒を飲みほし、シャウトさんが勢い良く立ち上がる。
「開演は夕方だ、短い時間だが楽しんでくれ。」
「了解。」
「マスター御馳走様、良い酒だった。」
「また来てくれ。」
シャウトさんが店を出ていっても俺は手元の酒を見続けていた。
これでいいんだろうか。
そんな思いが頭の中でぐるぐると回っている。
「なんだ、偉そうなこと言っといて後悔してるのか?」
「そんなんじゃないって。」
「お前が言うように決めるのは母親だ。種をまいた父親の事なんて放っておけ。」
「種をまいたって・・・。でもまぁ、そうだよな。」
「子供はいずれ巣立つもんだ、見送るのも親の仕事ってよく言うだろ。」
「マスターは見送ったのか?」
「生憎子供はいないんでその機会には恵まれなかったな。」
「ほんとかよ。」
マスターが昔結婚していたのは知っている。
だがその元嫁との間に子供が出来ていたかは知らない。
仮にいたとしてもマスターなら何も言わずに見送りそうだ。
俺?
そもそも子供がいないんで何とも言えん。
「ほら、さっさと行けよスポンサー様。終わったらお前の奢りで大騒ぎするんだろ?酒は用意しといてやるから食い物は自前で何とかしろ。」
「いや、なんで奢りなんだよ。」
「最後の夜ぐらい良い思いさせてやれよな。」
最後の夜・・・か。
ルフがどうするかはなんとなく分かっている。
なら、いつ思い出しても笑顔になるぐらいに楽しい時間にしてやるべきだろう。
「じゃ、行くわ。」
「おぅ、俺も行くから場所取り宜しく。」
「へいへい。」
その日の夜。
短いながらも最高のショーを終えた一座の為に街を上げての盛大な宴が催された。
街中の人間が団員たちと共に、笑い、騒ぎ、夜遅くまで楽しそうな声が夜空に響きわたる。
そんな中、ルフと子供達は少し離れた場所で静かな夜を迎えていた。
ぴったりとくっつき今という時を名残惜しむように。
朝を迎え、いつものように朝食を済ませた俺達は静かにその時を見つめていた。
大勢の街の人に見送られながらサーカス一座の馬車はゆっくりと動きだす。
だがそこに白い子犬の姿は無い。
いるのは母親と同じ毛色をした子犬のみ。
ドンドンと小さくなっていく馬車の荷台を見つめていると、ルフが一度だけ大きく吠えた。
悲しくも誇らしい、そんな思いの詰まった声は秋の空にどこまでも響き続けるのだった。
今まではルフしかいなかったのだが、子犬も大きくなってきたので運動もかねて一緒にでかけるようになった。
最初こそ行儀よくついてくるものの、まだまだ子犬なので勝手に走り出したり寄り道しては慌てて戻ってくるのを繰り返している。
一匹はともかく二匹いるとやっぱり大変だ。
幸い二匹ともルフがしっかり躾をしてくれているので、人間に危害を加えるようなことはしていない。
時々子供達とじゃれている際に危ないかなと思う事はあるけれど今のところは問題ないだろう。
だが、見た目は子犬でも中身は魔獣。
もし人間に危害を加えるようなことがあれば今のように服従の首輪なしで過ごすことは出来なくなる。
今の関係を維持するためにもいずれしっかりと躾をする日が来るだろうなぁ。
それまでは今のまま無邪気にはしゃいでくれてかまわない。
「ん?」
先を行く子供達が急に立ち止まり、はるか前方をじっと見つめている。
何度も耳を動かして何かを感じ取っている様子だ。
心なしかルフも落ち着かない感じがする。
「どうした、何か来るのか?」
ブンブン。
いつもよりも強く尻尾が振られる。
しばらく様子を見ていると、草原のはるか向こうに土煙が見えた。
何かが近づいてくる。
街道をまっすぐに来るので馬車の集団だろう。
地面に手を置くとかすかだが振動を感じる。
こういう変化がわかるようになった時点で、俺も随分とこの世界になじんだものだ。
そういえば前にも同じようなことがあった気がする。
確かあの時は・・・。
そんな疑問が確信に代わったのは、豆粒だった馬車が大きくなってきた頃だ。
巨大な馬車のてっぺんに見覚えのある旗がゆれている。
なるほど、通りでルフが落ち着かないわけだ。
子供達はそんなルフの周りをくるくると回っている。
街道まで近づくと、先頭の馬車がゆっくりと速度を落としそして止まった。
「シロウじゃないか!」
「やっぱりアンタだったか。」
先頭の馬車に乗っていたのは、前に街にやってきたサーカス団の団長シャウトさんだ。
馬車を飛び降りた彼はまっすぐにこちらへ向かってくる。
硬い握手を交わし、そしてハグをする。
この世界でよく行われる再会の挨拶だ。
「元気そうだな。」
「おかげさんで、どうだ興行はうまくいってるか?」
「あの後は雨にも当たらずいい感じで回れたと思う。」
「そいつは何よりだ、また街に滞在するのか?」
「いや、今回は通り過ぎるだけだ。」
「そうか、残念だな。」
「の、予定だったんだが・・・。」
ふとシャウトさんの視線が下に降りる。
その先にいたのはルフと二匹の子供たちだ。
「ホワイトの子供か?」
「それしかないだろ?」
「だよな。」
「親子対面といきたいところだが、それは母親に聞いてくれ。ルフ、会わせても構わないか?」
何でそんな事を聞くの?といわんばかりに首をかしげるルフ。
聞くまでもなかったようだ。
「そうと決まれば予定変更だ、皆!今日はここで一泊するぞ、ホワイトの子供だ!」
後ろの馬車から歓声が上がる。
彼らの滞在は街の皆も喜ぶだろう。
俺だって知人に会えるのは純粋に嬉しい。
馬車に乗せて貰いひとまず街へ、ギルド協会に話を通すと二つ返事で許可が下りた。
ま、それもそうだろう。
彼ら来ることで色々と売れるだろうし、活気が出れば消費も増える。
興行までは行かないが、お礼もかねて簡単なショーを開演してくれることになった。
「なんだか凄いことになってるわね。」
「そりゃ、皆この前の興行を覚えてるんだろう。シャウト達の技がまた見れるとなれば興奮もするさ。」
「違うわよ、ルフの方よ。」
「あぁそっちか。」
「まさか本人?も子供に会えるとは思ってなかったんでしょうね、キョトンとした顔をしていたそうよ。」
「感動の親子対面だろうからそっとしといてやれよ?」
「わかってるわよ。」
ちょっと膨れた顔をするエリザだが、すぐにまた元に戻る。
最初こそ戸惑っていた子供達だが、やはり親だとわかるんだろうかすぐにホワイトにじゃれてついていた。
ホワイト自身も不思議そうな顔をしていたが、やはり自分と同じ毛色の子を見ると嫌でも自覚が出てくるんだろう。
今では団員も見たことないぐらいに尻尾を振って喜びを爆発させている。
「さて、俺はちょっと出てくる。」
「ちょっとって、どこ行くのよ。」
「ちょっとな。」
畑の横に設営されつつある簡易の舞台から離れ、一人で街の中へ。
向かったのはマスターの店だ。
「いらっしゃい、ってお前かよ。」
「一応客なんだが?」
「お前は主賓だろ、行かなくていいのか?」
「時間になったらちゃんと行くさ。」
「待ち合わせか?」
「そんなところだ。」
マスターは何も言わずに琥珀色の液体の入ったショットグラスをカウンターの上に置いた。
うむ、美味い。
でもこれ、ここでかなり高い部類に入る酒だよな?
何も言わずにそれを出すとか、相変わらずやることがえぐい。
でも飲むけどな。
しばらくすると店に誰かが入ってくる音がした。
敢えてそちらを見ずにいると、その人物が横に座る。
「いいのか、団長が抜け出して。」
「準備は仲間がやってくれる、それに今日は本業じゃなくちょっとしたサービスだ、危険なことはしないから大丈夫だよ。」
「それならいいけど。」
何も言わなくてもシャウトさんの前に同じ酒が置かれる。
仕事が終わるとマスターは無言でグラスを拭きはじめた。
「で、話ってのはあれか?子供の事か?」
「あぁ。無理を言うのはわかっている、だが今を逃すともう出会えない気がするんだ。俺の勘がそう言ってる。」
「その勘は良く当たるのか?」
「俺達がこうやって今日も無事に仕事ができるのが何よりの証拠だろ?」
「そこは経験と交渉、それと仲間のおかげとかいうところだと思うがね。」
「どこで当たるかなんて運と勘が七割だ、外れたらそこで終わりさ。」
どこに行けば興業が当たるかなんて誰にもわからない。
シャウトさんの勘があったからこそ今までやってこれたってのもあながち間違いではないんだろう。
「正直に言って俺はどっちでもいい。決めるのはルフだ。」
「いいのか?」
「うちの小さな畑に番犬が三頭ってのはちょっと多すぎる。求められる場所で暮らすのもまた一つの選択肢だろう。ただし、それをルフが許せばの話だ。あの子達はルフが腹を痛めて産んだ子だ。決定権は彼女にある。」
「そうか・・・わかった。」
「俺が言えるのは連れていくからには幸せにしてくれってことだ。二代目だからと酷使するようじゃ・・・いや、そんな事をするような人じゃないな。」
この人は仲間を大切にする。
それは他の魔獣を見てもわかる。
あの獰猛な魔獣や魔物が、シャウトさんにはなついている。
これは餌をくれるからとかじゃない、純粋な信頼関係があってこそだ。
「随分と買ってくれるんだな。」
「そりゃ、スポンサーが支援先を信頼しないでどうするよ。」
「有難いことだ。そんじゃま、スポンサー様にしっかりと楽しんでもらうとするか!」
一息でグラスの酒を飲みほし、シャウトさんが勢い良く立ち上がる。
「開演は夕方だ、短い時間だが楽しんでくれ。」
「了解。」
「マスター御馳走様、良い酒だった。」
「また来てくれ。」
シャウトさんが店を出ていっても俺は手元の酒を見続けていた。
これでいいんだろうか。
そんな思いが頭の中でぐるぐると回っている。
「なんだ、偉そうなこと言っといて後悔してるのか?」
「そんなんじゃないって。」
「お前が言うように決めるのは母親だ。種をまいた父親の事なんて放っておけ。」
「種をまいたって・・・。でもまぁ、そうだよな。」
「子供はいずれ巣立つもんだ、見送るのも親の仕事ってよく言うだろ。」
「マスターは見送ったのか?」
「生憎子供はいないんでその機会には恵まれなかったな。」
「ほんとかよ。」
マスターが昔結婚していたのは知っている。
だがその元嫁との間に子供が出来ていたかは知らない。
仮にいたとしてもマスターなら何も言わずに見送りそうだ。
俺?
そもそも子供がいないんで何とも言えん。
「ほら、さっさと行けよスポンサー様。終わったらお前の奢りで大騒ぎするんだろ?酒は用意しといてやるから食い物は自前で何とかしろ。」
「いや、なんで奢りなんだよ。」
「最後の夜ぐらい良い思いさせてやれよな。」
最後の夜・・・か。
ルフがどうするかはなんとなく分かっている。
なら、いつ思い出しても笑顔になるぐらいに楽しい時間にしてやるべきだろう。
「じゃ、行くわ。」
「おぅ、俺も行くから場所取り宜しく。」
「へいへい。」
その日の夜。
短いながらも最高のショーを終えた一座の為に街を上げての盛大な宴が催された。
街中の人間が団員たちと共に、笑い、騒ぎ、夜遅くまで楽しそうな声が夜空に響きわたる。
そんな中、ルフと子供達は少し離れた場所で静かな夜を迎えていた。
ぴったりとくっつき今という時を名残惜しむように。
朝を迎え、いつものように朝食を済ませた俺達は静かにその時を見つめていた。
大勢の街の人に見送られながらサーカス一座の馬車はゆっくりと動きだす。
だがそこに白い子犬の姿は無い。
いるのは母親と同じ毛色をした子犬のみ。
ドンドンと小さくなっていく馬車の荷台を見つめていると、ルフが一度だけ大きく吠えた。
悲しくも誇らしい、そんな思いの詰まった声は秋の空にどこまでも響き続けるのだった。
10
お気に入りに追加
329
あなたにおすすめの小説
貴族に生まれたのに誘拐され1歳で死にかけた
佐藤醤油
ファンタジー
貴族に生まれ、のんびりと赤ちゃん生活を満喫していたのに、気がついたら世界が変わっていた。
僕は、盗賊に誘拐され魔力を吸われながら生きる日々を過ごす。
魔力枯渇に陥ると死ぬ確率が高いにも関わらず年に1回は魔力枯渇になり死にかけている。
言葉が通じる様になって気がついたが、僕は他の人が持っていないステータスを見る力を持ち、さらに異世界と思われる世界の知識を覗ける力を持っている。
この力を使って、いつか脱出し母親の元へと戻ることを夢見て過ごす。
小さい体でチートな力は使えない中、どうにか生きる知恵を出し生活する。
------------------------------------------------------------------
お知らせ
「転生者はめぐりあう」 始めました。
------------------------------------------------------------------
注意
作者の暇つぶし、気分転換中の自己満足で公開する作品です。
感想は受け付けていません。
誤字脱字、文面等気になる方はお気に入りを削除で対応してください。
せっかくのクラス転移だけども、俺はポテトチップスでも食べながらクラスメイトの冒険を見守りたいと思います
霖空
ファンタジー
クラス転移に巻き込まれてしまった主人公。
得た能力は悪くない……いや、むしろ、チートじみたものだった。
しかしながら、それ以上のデメリットもあり……。
傍観者にならざるをえない彼が傍観者するお話です。
基本的に、勇者や、影井くんを見守りつつ、ほのぼの?生活していきます。
が、そのうち、彼自身の物語も始まる予定です。
神様との賭けに勝ったので、スキルを沢山貰えた件。
猫丸
ファンタジー
ある日の放課後。突然足元に魔法陣が現れると、気付けば目の前には神を名乗る存在が居た。
そこで神は異世界に送るからスキルを1つ選べと言ってくる。
あれ?これもしかして頑張ったらもっと貰えるパターンでは?
そこで彼は思った――もっと欲しい!
欲をかいた少年は神様に賭けをしないかと提案した。
神様とゲームをすることになった悠斗はその結果――
※過去に投稿していたものを大きく加筆修正したものになります。
大和型戦艦、異世界に転移する。
焼飯学生
ファンタジー
第二次世界大戦が起きなかった世界。大日本帝国は仮想敵国を定め、軍事力を中心に強化を行っていた。ある日、大日本帝国海軍は、大和型戦艦四隻による大規模な演習と言う名目で、太平洋沖合にて、演習を行うことに決定。大和、武蔵、信濃、紀伊の四隻は、横須賀海軍基地で補給したのち出港。しかし、移動の途中で濃霧が発生し、レーダーやソナーが使えなくなり、更に信濃と紀伊とは通信が途絶してしまう。孤立した大和と武蔵は濃霧を突き進み、太平洋にはないはずの、未知の島に辿り着いた。
※ この作品は私が書きたいと思い、書き進めている作品です。文章がおかしかったり、不明瞭な点、あるいは不快な思いをさせてしまう可能性がございます。できる限りそのような事態が起こらないよう気をつけていますが、何卒ご了承賜りますよう、お願い申し上げます。
僕の家族は母様と母様の子供の弟妹達と使い魔達だけだよ?
闇夜の現し人(ヤミヨノウツシビト)
ファンタジー
ー 母さんは、「絶世の美女」と呼ばれるほど美しく、国の中で最も権力の強い貴族と呼ばれる公爵様の寵姫だった。
しかし、それをよく思わない正妻やその親戚たちに毒を盛られてしまった。
幸い発熱だけですんだがお腹に子が出来てしまった以上ここにいては危険だと判断し、仲の良かった侍女数名に「ここを離れる」と言い残し公爵家を後にした。
お母さん大好きっ子な主人公は、毒を盛られるという失態をおかした父親や毒を盛った親戚たちを嫌悪するがお母さんが日々、「家族で暮らしたい」と話していたため、ある出来事をきっかけに一緒に暮らし始めた。
しかし、自分が家族だと認めた者がいれば初めて見た者は跪くと言われる程の華の顔(カンバセ)を綻ばせ笑うが、家族がいなければ心底どうでもいいというような表情をしていて、人形の方がまだ表情があると言われていた。
『無能で無価値の稚拙な愚父共が僕の家族を名乗る資格なんて無いんだよ?』
さぁ、ここに超絶チートを持つ自分が認めた家族以外の生き物全てを嫌う主人公の物語が始まる。
〈念の為〉
稚拙→ちせつ
愚父→ぐふ
⚠︎注意⚠︎
不定期更新です。作者の妄想をつぎ込んだ作品です。
クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?
青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。
最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。
普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた?
しかも弱いからと森に捨てられた。
いやちょっとまてよ?
皆さん勘違いしてません?
これはあいの不思議な日常を書いた物語である。
本編完結しました!
相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです!
1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…
25歳のオタク女子は、異世界でスローライフを送りたい
こばやん2号
ファンタジー
とある会社に勤める25歳のOL重御寺姫(じゅうおんじひめ)は、漫画やアニメが大好きなオタク女子である。
社員旅行の最中謎の光を発見した姫は、気付けば異世界に来てしまっていた。
頭の中で妄想していたことが現実に起こってしまったことに最初は戸惑う姫だったが、自身の知識と持ち前の性格でなんとか異世界を生きていこうと奮闘する。
オタク女子による異世界生活が今ここに始まる。
※この小説は【アルファポリス】及び【小説家になろう】の同時配信で投稿しています。
異世界でのんびり暮らしてみることにしました
松石 愛弓
ファンタジー
アラサーの社畜OL 湊 瑠香(みなと るか)は、過労で倒れている時に、露店で買った怪しげな花に導かれ異世界に。忙しく辛かった過去を忘れ、異世界でのんびり楽しく暮らしてみることに。優しい人々や可愛い生物との出会い、不思議な植物、コメディ風に突っ込んだり突っ込まれたり。徐々にコメディ路線になっていく予定です。お話の展開など納得のいかないところがあるかもしれませんが、書くことが未熟者の作者ゆえ見逃していただけると助かります。他サイトにも投稿しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる