402 / 1,027
400.転売屋は収穫祭で歌う
しおりを挟む
収穫祭が始まった。
街のいたるところで飲食の露店が開かれ、どこも長蛇の列になっている。
その中でも特に行列を作っているのが、俺の用意したワインだ。
「美味しい!」
「甘くて飲みやすい、コレならいくらでも飲めるわね。」
「フルーツも入ってお洒落よねぇ。この時期しか飲めない限定品なんだって。」
「え、それならたくさん飲まなきゃ!」
ってな感じで女性には大好評。
飲みやすさと低アルコールから主婦の皆様にも受け入れて貰っている。
「おい、次は火酒いってみようぜ。」
「つぶれるなよ。」
「お前じゃないんだからつぶれねぇよ、お子ちゃまはおとなしく琥珀酒で止めといたらどうだ?」
「うるせぇ!負けたほうが奢りだからな!」
こんな感じで強い酒を好む皆様にも受け入れてもらえたようだ。
ギルド協会は今頃大騒ぎだろうなぁ。
主に作るほうで。
ま、売り上げにもなるし話題性もあるんだ、羊男も大喜びだろう。
俺はつまみの仕入れで大儲けさせて貰ったしな。
「シロウ、次は向こうに行くわよ。」
「へいへい、わかったよ。」
「ミラ様あそこにドルチェ様のお店が出てますよ、行ってみませんか?」
「それは外せませんね。」
「ドルチェの菓子なら俺の名前で人数分予約してあるから貰ってきてくれ。代金は払ってある。」
「かしこまりました。」
大儲けした分はちゃんと消費で貢献するのが俺達のやり方だ。
せっかくの収穫祭なんだし今日はたらふく飲み食いさせて貰うとしよう。
しかしアレだな、秋になったばっかりなのに収穫祭とはこれいかに。
麦の収穫はまだ先だし、そもそもこの町に収穫するような畑は無いはずだが。
ま、いいか。
「シロウ様、お待たせしました。」
「新作のマンマロンタルトです。」
「しょっぱいものを食べた後って甘いものが食べたくなるわよね。」
「え、もう食べたのかよ。」
「当たり前じゃない。」
ミラ達がスイーツを取りに行っている間に、俺とエリザは串焼きの露店で買い物をしていた。
俺の手にはまだ丸々残っているんだが・・・。
いくらなんでも早食い過ぎる。
「ほら、二人の分。」
「ありがとうございます。」
「食べ歩きは難しそうね。えぇっと・・・あそこに机があるわ。」
「なら飲み物も確保して休憩だな。」
「飲み物は任せてよね。」
「自分が飲みたいだけだろうが。」
この日のために街のいたるところに用意された簡易テーブルを一つ使わせて貰い、買ってきた食べ物を並べていく。
食べ歩きしていただけなのにどうして疲れるんだろうなぁ。
「はぁ、よっこいしょ。」
「ご主人様おじいさんみたいですよ。」
「中身は中年のオッサンだからな。」
「ですが肉体は若々しいままです。食べて元気を出しましょう。」
「ま、そうだな。」
座るとすぐにミラが串焼きを差し出してくれた。
遠慮なくそれを頬張るとミラが嬉しそうな顔をする。
「あ、ミラ様ずるい!」
「アネットもするのか?」
「当然です。」
あ~んと言いながら串を出してくるのが微妙に恥ずかしい。
とはいえ恥ずかしいからという理由で食べない理由は無いよな。
アネットの串にもかぶりつき、口の端についたソースをミラがぬぐってくれる。
まるで王様状態だ。
どうだいいだろうとチラ見してくる男達に見せ付けながら串をいただいていると、大量のジョッキを抱えてエリザが戻ってきた。
「シロウ、向こうでシープさんが呼んでいたわよ。」
「シープさんが?」
「なんでもワインのお礼をしたいとかなんとか。」
「随分と適当だな。」
「だってこれ持ってたんだもん仕方ないじゃない。まだ同じだけ注文してるから後で取りに行かなくちゃ。」
「まだ飲むのかよ。」
「ワインの火酒入りも飲んでないし、琥珀酒ももう一杯飲みたいし。注文しとかないと無くなっちゃうじゃない。」
「はぁ、これだから酒飲みは。」
これ以上は何も言うまい。
呼ばれているのはわかっているが、腹が空いてはなんとやらだ。
とりあえず串焼きとスイーツを美味しくいただいてから、ギルド協会が酒を売っているブースへと向かった。
「あ、シロウ様!」
「シープさんシロウ様が来られましたよ!」
「ささ、どうぞ奥へ!」
ブースに顔を出すなり受付嬢に見つかり、さらに奥から出てきた職員さんたちに囲まれてしまった。
よく見れば一緒にワインを試飲した皆さんだ。
大好評のお礼にしてはどうも雰囲気がおかしい。
なんだろうこの逃がさないぞという感じは。
そんな事を考えていると、羊男が息を切らせながらやってきた。
どこかに行っていたんだろうか。
「エリザに呼ばれてきたんだが・・・。どこ行ってたんだ?」
「ちょっと中央のステージへ。」
「そういや通りのど真ん中にデカいやつ組み立ててたなぁ。何するんだ?」
「歌うんです。」
「は?」
「ですから、得意な歌を歌ってもらうんです。その名ものど自慢大会!」
「いや、のど自慢大会はどうでもいいんだが俺が呼ばれた理由は?」
「え?」
「え?」
何だこの意思の疎通のできなささは。
俺は呼ばれたからここに来ただけでって、おい、まさか!
「歌わないぞ。」
「そこを何とか!」
「いや、のど自慢大会なんだろ?自慢するほど上手くないから、そもそも出ないから!」
「そこを何とか!今回のワインもシロウさんが見つけてきてくれたじゃないですか、みんなお礼を言いたいんですよ!」
「お礼なら金と物で結構だ!っていうかなんでお礼が歌う事なんだよ、意味わからんのだが!?」
ダメだ、こいつに話しても埒が明かない。
誰か責任者を読んで来い!ってこいつが責任者だわ。
最低だな!
「ともかくもう登録してあるんです!もうすぐ順番ですから早く来てください!優勝賞金はなんと金貨1枚ですよ!」
「そんなはした金で歌うと思ってんのか?」
「なんなら今回のワインもセットで付けます。」
「いや、どや顔してもそれ、俺が用意した酒だから。」
「え~じゃあ・・・畑とかいります?」
「いらねぇよ!」
どついてやろうか。
怒りでこぶしを強く握りしめてしまったが、殴ったところで状況は改善しない。
むしろそれをネタに出ろと言われかねない。
どうする。
どうすればいい。
周りを職員の囲まれ逃げることすら許されない・・・っていうか、強制はダメだろ強制は。
そもそも俺を囲んだところで俺が出るというわけもなく、むしろ悪影響なのがわからんか?
「どうします?出ます?」
「出るわけないだろ。さっさとそこをどけ、さもないと年末の感謝祭に一切協力しないからな。」
「ぐっ、卑怯ですよ。」
「卑怯はそっちだろうが、まったく。」
「ですがもうシロウさんの名前で登録しちゃってるんですよ、どうすればいいんですか?」
「そっちの勝手が原因だろうが。何とかしやがれ。」
俺はもう知らないからな。
職員を押しのけブースから出ると、女たちが不思議そうな顔をしてこちらを見ていた。
「どうかされたんですか?」
「いつもの事だよ。ったく、好き勝手言いやがって。」
「シープ様も色々と大変なのでしょう。とはいえ、シロウ様がお手伝いする必要はどこにもありませんね。」
「だろ?さすがミラだな。」
ド正論過ぎてぐうの音も出まい。
職員たちの視線を振り切りこの場から離れようとしたその時だった。
良い感じに酔っぱらったエリザを見てあることを思いつく。
もしかすると羊男に大きな恩を売れるかもしれない。
でもその為にはこいつをどうにかしないといけないわけで・・・。
「ちょっと来い。」
「え、シロウ?」
「ミラ、アネット、通りの真ん中にできたステージ前に集合だ。俺の名前を出せば良い感じの場所を確保してくれるだろう。」
「ステージですか?」
「頼んだぞ。」
エリザの手をつかみ再びブースへと戻る。
「シロウさん考え直してくれましたか!」
「出場すれば酒がもらえるんだよな?」
「もちろんです!」
「優勝すれば金貨1枚、もしくは金貨1枚分の酒をもらえるんだよな?」
「お酒に関しては残ればになりますが・・・出てくれるんですか?」
「あぁ、出るぞ。エリザがな。」
「え?」
「え?」
真っ赤な顔をしたエリザと職員たちがキョトンとした顔をしている。
「こう見えてもかなりのレベルだぞ、俺が自信をもって推薦できるぐらいにな。」
「ムリムリムリ、絶対に無理!」
「優勝したら金貨1枚分酒がもらえるぞ。」
「優勝だなんてそんなの無理!」
「そうか、残念だな。優勝出来たら一日デートしてやろうと思ったのに。」
「デート?」
「さすがにダンジョンの下層は無理だが中層ぐらいまでは行ってもいい。ただし一日だぞ。それと死ぬ気で俺を守れ。」
とっておきのネタを出してみたものの、酒が回りすぎて話をよく理解していないようだ。
ぐぬぬ、変わり身の術は失敗か。
「確かにニアからエリザ様は歌が上手いというのは聞いたことがあります。」
「だがこの様子じゃ酔っぱらいすぎて無理みたいだな。」
「ですね。なので諦めて出場しましょうよ。」
「やなこった。誰が出場なんか・・・。」
「出るわ。」
「「え?」」
「優勝したら金貨1枚分のお酒にシロウとデートでしょ?私、やるわ。」
「まじか。」
「うん。だから約束、守ってよね。」
その時のエリザの目は、初めて会った時と同じ獣のような鋭さがあった。
さっきまでの腑抜けた顔はどこへやら、あっという間に戦士の顔になっている。
いや、のど自慢だからな?
魔物を殺すわけじゃないからな?
その後、ステージ下でデート権を聞きつけたミラとアネットも、のど自慢大会に参加。
見事アネットが二位、ミラが三位になり副賞としてスイーツ券とお食事券を獲得した。
え、エリザはどうなったかって?
あまりの上手さに全員が度肝を抜かれ、見事優勝したよ。
はぁ、俺はいったいどこに連れて行かれるんだろうか。
満面の笑みで周囲の歓声に応えるエリザを見つめながら、後悔するのだった。
街のいたるところで飲食の露店が開かれ、どこも長蛇の列になっている。
その中でも特に行列を作っているのが、俺の用意したワインだ。
「美味しい!」
「甘くて飲みやすい、コレならいくらでも飲めるわね。」
「フルーツも入ってお洒落よねぇ。この時期しか飲めない限定品なんだって。」
「え、それならたくさん飲まなきゃ!」
ってな感じで女性には大好評。
飲みやすさと低アルコールから主婦の皆様にも受け入れて貰っている。
「おい、次は火酒いってみようぜ。」
「つぶれるなよ。」
「お前じゃないんだからつぶれねぇよ、お子ちゃまはおとなしく琥珀酒で止めといたらどうだ?」
「うるせぇ!負けたほうが奢りだからな!」
こんな感じで強い酒を好む皆様にも受け入れてもらえたようだ。
ギルド協会は今頃大騒ぎだろうなぁ。
主に作るほうで。
ま、売り上げにもなるし話題性もあるんだ、羊男も大喜びだろう。
俺はつまみの仕入れで大儲けさせて貰ったしな。
「シロウ、次は向こうに行くわよ。」
「へいへい、わかったよ。」
「ミラ様あそこにドルチェ様のお店が出てますよ、行ってみませんか?」
「それは外せませんね。」
「ドルチェの菓子なら俺の名前で人数分予約してあるから貰ってきてくれ。代金は払ってある。」
「かしこまりました。」
大儲けした分はちゃんと消費で貢献するのが俺達のやり方だ。
せっかくの収穫祭なんだし今日はたらふく飲み食いさせて貰うとしよう。
しかしアレだな、秋になったばっかりなのに収穫祭とはこれいかに。
麦の収穫はまだ先だし、そもそもこの町に収穫するような畑は無いはずだが。
ま、いいか。
「シロウ様、お待たせしました。」
「新作のマンマロンタルトです。」
「しょっぱいものを食べた後って甘いものが食べたくなるわよね。」
「え、もう食べたのかよ。」
「当たり前じゃない。」
ミラ達がスイーツを取りに行っている間に、俺とエリザは串焼きの露店で買い物をしていた。
俺の手にはまだ丸々残っているんだが・・・。
いくらなんでも早食い過ぎる。
「ほら、二人の分。」
「ありがとうございます。」
「食べ歩きは難しそうね。えぇっと・・・あそこに机があるわ。」
「なら飲み物も確保して休憩だな。」
「飲み物は任せてよね。」
「自分が飲みたいだけだろうが。」
この日のために街のいたるところに用意された簡易テーブルを一つ使わせて貰い、買ってきた食べ物を並べていく。
食べ歩きしていただけなのにどうして疲れるんだろうなぁ。
「はぁ、よっこいしょ。」
「ご主人様おじいさんみたいですよ。」
「中身は中年のオッサンだからな。」
「ですが肉体は若々しいままです。食べて元気を出しましょう。」
「ま、そうだな。」
座るとすぐにミラが串焼きを差し出してくれた。
遠慮なくそれを頬張るとミラが嬉しそうな顔をする。
「あ、ミラ様ずるい!」
「アネットもするのか?」
「当然です。」
あ~んと言いながら串を出してくるのが微妙に恥ずかしい。
とはいえ恥ずかしいからという理由で食べない理由は無いよな。
アネットの串にもかぶりつき、口の端についたソースをミラがぬぐってくれる。
まるで王様状態だ。
どうだいいだろうとチラ見してくる男達に見せ付けながら串をいただいていると、大量のジョッキを抱えてエリザが戻ってきた。
「シロウ、向こうでシープさんが呼んでいたわよ。」
「シープさんが?」
「なんでもワインのお礼をしたいとかなんとか。」
「随分と適当だな。」
「だってこれ持ってたんだもん仕方ないじゃない。まだ同じだけ注文してるから後で取りに行かなくちゃ。」
「まだ飲むのかよ。」
「ワインの火酒入りも飲んでないし、琥珀酒ももう一杯飲みたいし。注文しとかないと無くなっちゃうじゃない。」
「はぁ、これだから酒飲みは。」
これ以上は何も言うまい。
呼ばれているのはわかっているが、腹が空いてはなんとやらだ。
とりあえず串焼きとスイーツを美味しくいただいてから、ギルド協会が酒を売っているブースへと向かった。
「あ、シロウ様!」
「シープさんシロウ様が来られましたよ!」
「ささ、どうぞ奥へ!」
ブースに顔を出すなり受付嬢に見つかり、さらに奥から出てきた職員さんたちに囲まれてしまった。
よく見れば一緒にワインを試飲した皆さんだ。
大好評のお礼にしてはどうも雰囲気がおかしい。
なんだろうこの逃がさないぞという感じは。
そんな事を考えていると、羊男が息を切らせながらやってきた。
どこかに行っていたんだろうか。
「エリザに呼ばれてきたんだが・・・。どこ行ってたんだ?」
「ちょっと中央のステージへ。」
「そういや通りのど真ん中にデカいやつ組み立ててたなぁ。何するんだ?」
「歌うんです。」
「は?」
「ですから、得意な歌を歌ってもらうんです。その名ものど自慢大会!」
「いや、のど自慢大会はどうでもいいんだが俺が呼ばれた理由は?」
「え?」
「え?」
何だこの意思の疎通のできなささは。
俺は呼ばれたからここに来ただけでって、おい、まさか!
「歌わないぞ。」
「そこを何とか!」
「いや、のど自慢大会なんだろ?自慢するほど上手くないから、そもそも出ないから!」
「そこを何とか!今回のワインもシロウさんが見つけてきてくれたじゃないですか、みんなお礼を言いたいんですよ!」
「お礼なら金と物で結構だ!っていうかなんでお礼が歌う事なんだよ、意味わからんのだが!?」
ダメだ、こいつに話しても埒が明かない。
誰か責任者を読んで来い!ってこいつが責任者だわ。
最低だな!
「ともかくもう登録してあるんです!もうすぐ順番ですから早く来てください!優勝賞金はなんと金貨1枚ですよ!」
「そんなはした金で歌うと思ってんのか?」
「なんなら今回のワインもセットで付けます。」
「いや、どや顔してもそれ、俺が用意した酒だから。」
「え~じゃあ・・・畑とかいります?」
「いらねぇよ!」
どついてやろうか。
怒りでこぶしを強く握りしめてしまったが、殴ったところで状況は改善しない。
むしろそれをネタに出ろと言われかねない。
どうする。
どうすればいい。
周りを職員の囲まれ逃げることすら許されない・・・っていうか、強制はダメだろ強制は。
そもそも俺を囲んだところで俺が出るというわけもなく、むしろ悪影響なのがわからんか?
「どうします?出ます?」
「出るわけないだろ。さっさとそこをどけ、さもないと年末の感謝祭に一切協力しないからな。」
「ぐっ、卑怯ですよ。」
「卑怯はそっちだろうが、まったく。」
「ですがもうシロウさんの名前で登録しちゃってるんですよ、どうすればいいんですか?」
「そっちの勝手が原因だろうが。何とかしやがれ。」
俺はもう知らないからな。
職員を押しのけブースから出ると、女たちが不思議そうな顔をしてこちらを見ていた。
「どうかされたんですか?」
「いつもの事だよ。ったく、好き勝手言いやがって。」
「シープ様も色々と大変なのでしょう。とはいえ、シロウ様がお手伝いする必要はどこにもありませんね。」
「だろ?さすがミラだな。」
ド正論過ぎてぐうの音も出まい。
職員たちの視線を振り切りこの場から離れようとしたその時だった。
良い感じに酔っぱらったエリザを見てあることを思いつく。
もしかすると羊男に大きな恩を売れるかもしれない。
でもその為にはこいつをどうにかしないといけないわけで・・・。
「ちょっと来い。」
「え、シロウ?」
「ミラ、アネット、通りの真ん中にできたステージ前に集合だ。俺の名前を出せば良い感じの場所を確保してくれるだろう。」
「ステージですか?」
「頼んだぞ。」
エリザの手をつかみ再びブースへと戻る。
「シロウさん考え直してくれましたか!」
「出場すれば酒がもらえるんだよな?」
「もちろんです!」
「優勝すれば金貨1枚、もしくは金貨1枚分の酒をもらえるんだよな?」
「お酒に関しては残ればになりますが・・・出てくれるんですか?」
「あぁ、出るぞ。エリザがな。」
「え?」
「え?」
真っ赤な顔をしたエリザと職員たちがキョトンとした顔をしている。
「こう見えてもかなりのレベルだぞ、俺が自信をもって推薦できるぐらいにな。」
「ムリムリムリ、絶対に無理!」
「優勝したら金貨1枚分酒がもらえるぞ。」
「優勝だなんてそんなの無理!」
「そうか、残念だな。優勝出来たら一日デートしてやろうと思ったのに。」
「デート?」
「さすがにダンジョンの下層は無理だが中層ぐらいまでは行ってもいい。ただし一日だぞ。それと死ぬ気で俺を守れ。」
とっておきのネタを出してみたものの、酒が回りすぎて話をよく理解していないようだ。
ぐぬぬ、変わり身の術は失敗か。
「確かにニアからエリザ様は歌が上手いというのは聞いたことがあります。」
「だがこの様子じゃ酔っぱらいすぎて無理みたいだな。」
「ですね。なので諦めて出場しましょうよ。」
「やなこった。誰が出場なんか・・・。」
「出るわ。」
「「え?」」
「優勝したら金貨1枚分のお酒にシロウとデートでしょ?私、やるわ。」
「まじか。」
「うん。だから約束、守ってよね。」
その時のエリザの目は、初めて会った時と同じ獣のような鋭さがあった。
さっきまでの腑抜けた顔はどこへやら、あっという間に戦士の顔になっている。
いや、のど自慢だからな?
魔物を殺すわけじゃないからな?
その後、ステージ下でデート権を聞きつけたミラとアネットも、のど自慢大会に参加。
見事アネットが二位、ミラが三位になり副賞としてスイーツ券とお食事券を獲得した。
え、エリザはどうなったかって?
あまりの上手さに全員が度肝を抜かれ、見事優勝したよ。
はぁ、俺はいったいどこに連れて行かれるんだろうか。
満面の笑みで周囲の歓声に応えるエリザを見つめながら、後悔するのだった。
24
お気に入りに追加
328
あなたにおすすめの小説
貴族に生まれたのに誘拐され1歳で死にかけた
佐藤醤油
ファンタジー
貴族に生まれ、のんびりと赤ちゃん生活を満喫していたのに、気がついたら世界が変わっていた。
僕は、盗賊に誘拐され魔力を吸われながら生きる日々を過ごす。
魔力枯渇に陥ると死ぬ確率が高いにも関わらず年に1回は魔力枯渇になり死にかけている。
言葉が通じる様になって気がついたが、僕は他の人が持っていないステータスを見る力を持ち、さらに異世界と思われる世界の知識を覗ける力を持っている。
この力を使って、いつか脱出し母親の元へと戻ることを夢見て過ごす。
小さい体でチートな力は使えない中、どうにか生きる知恵を出し生活する。
------------------------------------------------------------------
お知らせ
「転生者はめぐりあう」 始めました。
------------------------------------------------------------------
注意
作者の暇つぶし、気分転換中の自己満足で公開する作品です。
感想は受け付けていません。
誤字脱字、文面等気になる方はお気に入りを削除で対応してください。
僕の家族は母様と母様の子供の弟妹達と使い魔達だけだよ?
闇夜の現し人(ヤミヨノウツシビト)
ファンタジー
ー 母さんは、「絶世の美女」と呼ばれるほど美しく、国の中で最も権力の強い貴族と呼ばれる公爵様の寵姫だった。
しかし、それをよく思わない正妻やその親戚たちに毒を盛られてしまった。
幸い発熱だけですんだがお腹に子が出来てしまった以上ここにいては危険だと判断し、仲の良かった侍女数名に「ここを離れる」と言い残し公爵家を後にした。
お母さん大好きっ子な主人公は、毒を盛られるという失態をおかした父親や毒を盛った親戚たちを嫌悪するがお母さんが日々、「家族で暮らしたい」と話していたため、ある出来事をきっかけに一緒に暮らし始めた。
しかし、自分が家族だと認めた者がいれば初めて見た者は跪くと言われる程の華の顔(カンバセ)を綻ばせ笑うが、家族がいなければ心底どうでもいいというような表情をしていて、人形の方がまだ表情があると言われていた。
『無能で無価値の稚拙な愚父共が僕の家族を名乗る資格なんて無いんだよ?』
さぁ、ここに超絶チートを持つ自分が認めた家族以外の生き物全てを嫌う主人公の物語が始まる。
〈念の為〉
稚拙→ちせつ
愚父→ぐふ
⚠︎注意⚠︎
不定期更新です。作者の妄想をつぎ込んだ作品です。
せっかくのクラス転移だけども、俺はポテトチップスでも食べながらクラスメイトの冒険を見守りたいと思います
霖空
ファンタジー
クラス転移に巻き込まれてしまった主人公。
得た能力は悪くない……いや、むしろ、チートじみたものだった。
しかしながら、それ以上のデメリットもあり……。
傍観者にならざるをえない彼が傍観者するお話です。
基本的に、勇者や、影井くんを見守りつつ、ほのぼの?生活していきます。
が、そのうち、彼自身の物語も始まる予定です。
神様との賭けに勝ったので、スキルを沢山貰えた件。
猫丸
ファンタジー
ある日の放課後。突然足元に魔法陣が現れると、気付けば目の前には神を名乗る存在が居た。
そこで神は異世界に送るからスキルを1つ選べと言ってくる。
あれ?これもしかして頑張ったらもっと貰えるパターンでは?
そこで彼は思った――もっと欲しい!
欲をかいた少年は神様に賭けをしないかと提案した。
神様とゲームをすることになった悠斗はその結果――
※過去に投稿していたものを大きく加筆修正したものになります。
転生受験生の教科書チート生活 ~その知識、学校で習いましたよ?~
hisa
ファンタジー
受験生の少年が、大学受験前にいきなり異世界に転生してしまった。
自称天使に与えられたチートは、社会に出たら役に立たないことで定評のある、学校の教科書。
戦争で下級貴族に成り上がった脳筋親父の英才教育をくぐり抜けて、少年は知識チートで生きていけるのか?
教科書の力で、目指せ異世界成り上がり!!
※なろうとカクヨムにそれぞれ別のスピンオフがあるのでそちらもよろしく!
※第5章に突入しました。
※小説家になろう96万PV突破!
※カクヨム68万PV突破!
※令和4年10月2日タイトルを『転生した受験生の異世界成り上がり 〜生まれは脳筋な下級貴族家ですが、教科書の知識だけで成り上がってやります〜』から変更しました
大和型戦艦、異世界に転移する。
焼飯学生
ファンタジー
第二次世界大戦が起きなかった世界。大日本帝国は仮想敵国を定め、軍事力を中心に強化を行っていた。ある日、大日本帝国海軍は、大和型戦艦四隻による大規模な演習と言う名目で、太平洋沖合にて、演習を行うことに決定。大和、武蔵、信濃、紀伊の四隻は、横須賀海軍基地で補給したのち出港。しかし、移動の途中で濃霧が発生し、レーダーやソナーが使えなくなり、更に信濃と紀伊とは通信が途絶してしまう。孤立した大和と武蔵は濃霧を突き進み、太平洋にはないはずの、未知の島に辿り着いた。
※ この作品は私が書きたいと思い、書き進めている作品です。文章がおかしかったり、不明瞭な点、あるいは不快な思いをさせてしまう可能性がございます。できる限りそのような事態が起こらないよう気をつけていますが、何卒ご了承賜りますよう、お願い申し上げます。
クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?
青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。
最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。
普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた?
しかも弱いからと森に捨てられた。
いやちょっとまてよ?
皆さん勘違いしてません?
これはあいの不思議な日常を書いた物語である。
本編完結しました!
相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです!
1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…
異世界でのんびり暮らしてみることにしました
松石 愛弓
ファンタジー
アラサーの社畜OL 湊 瑠香(みなと るか)は、過労で倒れている時に、露店で買った怪しげな花に導かれ異世界に。忙しく辛かった過去を忘れ、異世界でのんびり楽しく暮らしてみることに。優しい人々や可愛い生物との出会い、不思議な植物、コメディ風に突っ込んだり突っ込まれたり。徐々にコメディ路線になっていく予定です。お話の展開など納得のいかないところがあるかもしれませんが、書くことが未熟者の作者ゆえ見逃していただけると助かります。他サイトにも投稿しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる