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323.転売屋は贋作をたたき割る
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例の怪しい人物が三日月亭に宿泊して三日。
街には贋作が流れ始めた。
何処をどう見ても本物。
鑑定スキル持ちを欺く何かで作られているんだろう。
アナスタシア様のスキルは短時間ながらも精巧な偽物を作る事が出来る。
が、今回は三日たってもボロが出る様子はない。
しかし俺の二つ目のスキルは欺けなかったようで、俺が鑑定するとしっかりと偽物だと判定される。
マスターも商談を持ちかけられたが、俺の助言を信じてくれたおかげで被害を免れた。
売りつけたからには速攻で街を出ていくと思ったのだが、カモが多いと判断したんだろうか。
ともかく奴は今も三日月亭に宿泊し続けている。
被害総額は金貨100枚を超えたはずだ。
マスターに撒いてもらった種はまだ芽吹かない。
が、もしその時が来たらそれが奴の年貢の納め時ってね。
「シロウ様、お客様が参られました。」
「だれだ?」
「例の詐欺師のようです。」
「やっと来たか。」
どうやら種は芽吹いたようだ。
ミラに呼ばれて店頭に出ると、前と違い上品な服に身を固めた例の男が立っていた。
「買取か?」
「三日月亭の主人より紹介されましてね、ここならどんな品でも買い取ってくれるのだとか。」
「マスターの紹介なら無下にするのもあれだな、品を見せてくれ。」
「二つありますが構いませんかな?」
「別に何個でも構わないぞ。」
「では遠慮なく。」
男がカウンターの上に乗せたのは二つ。
一つは精巧な細工の施された皿。
もう一つは古びた壺だった。
「年代物だな。」
「どれも珍しくそして非常に価値のある物、ここはこういった品を集めておられると聞いてきましたが・・・。」
「あぁ高く売れそうなものは買い取らせてもらっている。念の為に助手にも鑑定させるが構わないな?」
「えぇどうぞ。」
自信満々の顔でこちらをみてくる。
先日ここに来たことはあえて触れないのが面白い。
身なりを変えただけでばれないと思っているんだろうか。
とりあえず手前の皿から鑑定してみる。
ミラは壺だ。
『旧王朝の皿。旧王朝時代に使われていた皿で、現在では失われた技法で模様が描かれている。贋作。最近の平均取引価格は金貨9枚。最安値銀貨1枚、最高値金貨19枚。最終取引日は551日前と記録されています。』
ふむ、やっぱり贋作か。
贋作にも関わらず普通に鑑定結果が出るのがわからないが、そういうスキルか何かを使っているんだろう。
こいつがここに来るまでの三日間、俺なりに準備をしてきたが偽物はただの皿とか壺、としか鑑定されなかった。
本物はちゃんとした結果が出る。
でもこいつはそうじゃない。
贋作という表示が出るんだよなぁ。
「ミラ、こっちも頼む。」
「かしこまりました。」
今度はこっちの壺だ。
『大食いの壺。中に物を入れるといつの間にかなくなってしまう不思議な壺。容量以上のものを入れることができる。贋作。最近の平均取引価格は金貨11枚。最安値銀貨29枚、最高値金貨20枚。最終取引日は1年と224日前と記録されています。』
こっちも贋作か。
まぁわかっていたけどこっちも鑑定結果が表示されている。
なんだよ入れたものがなくなる壺って。
容量以上に入れても中身がなくなるんじゃ意味ないんじゃないか?
存在を消したいものを入れるのか?
謎過ぎる。
「ふむ、旧王朝時代の皿と大食いの壺。確かに珍しいもののようだ。ミラ、どうだ?」
「同じ鑑定結果です。」
「いかがですか、旧王朝の皿は近年貴族間で高値で取引されています。特にこの技法が描かれた皿は非常に珍しく、出回ることもめったにありません。大食いの壺も使用方法によっては同じく貴族が喜ぶ品。オークションにぴったりだと思いませんか?」
「確かに貴族が喜びそうだ。」
「聞けば王家にも伝手があるのだとか、旧王朝の品を集めているという話もありますしそちらの方が高いかもしれませんね。」
「それもマスターが?」
「おっと、これは内緒でしたね。」
まぁ俺がわざとばらすように言ったんだけどな。
マスターにお願いしたのは二つ。
俺が骨董品を集めているということと、王族に伝手があること。
この二つをさりげなく伝えてもらうようにお願いした。
で、その結果がこれだ。
骨董品といえば皿と壺。
他にも選択肢はあっただろうに、まさかこんなど真ん中の品を持ってくるとは。
さぁ、その得意げな顔を叩き潰してやろうじゃないか。
「ものとしては非常にいいもののようだ。そうだな、二つで金貨30枚出そう。」
「金貨30枚ですか。」
「不服か?」
「いえ!むしろそんなに高く買い取ってもらえるとは思っていませんでしたので。」
「あぁ、本物ならな。」
「え?」
「よくできているがどれも贋作だ。どういうカラクリかはわからないが、こうすればはっきりする。」
キョトンとした顔をした男の前で先ほどの皿を手に取り、頭上高く持ち上げそして手を離した。
「あ!」
男が正気に戻り手を伸ばすよりも早く、皿は重力に従い落下をはじめ、そして地面にぶつかった。
ガシャンという甲高い音が店中に響き渡る。
いや~いい音だなぁ。
「ななな、なんて事をしてくれたんですか!」
「いや、偽物だし別に構わないだろ?」
「偽物だなんてそんなことがあるはずないじゃないですか!」
「とりあえずこっちも割るか。」
「はい、割りましょう。」
「割りましょうじゃな・・・あぁぁぁぁぁ!」
今度はミラが壺を振り上げ、地面にたたきつけた。
これまたいい音が店中に響き、破片があたりに飛び散る。
掃除が面倒だなぁ。
なんてことを思ってしまった。
「き、金貨30枚の皿と壺が・・・。」
「だから、それは本物だったらの話だろ?こいつは偽物、せいぜい二つで銀貨1枚ってところだろう。」
「何をばかなことを!貴方には物の価値がわからないんですか!?」
「わかってるからやってるんだよ。ミラ、その破片を鑑定してみろどうなってる?」
「これですか?」
散らばった破片を手に取りスキルを発動するミラ。
とたんにその目が大きく見開かれた。
「そんな、こんなことがあるのですか?」
「どういうカラクリかはわからないが、コレが事実だ。」
「いったい何を言っているんです?弁償してください!」
「弁償してやるさ。その前にこいつを確認したらな、お前にも鑑定スキルがあるんだろ?」
動揺を隠しきれない男に足元に転がっていた破片を押し付ける。
最初は受け取らなかった男だったが、ぐいぐい押し付けるとしぶしぶといった感じでそれを受け取った。
『割れた皿の破片。何の変哲もない皿の破片。割れている。最近の平均取引価格は銅貨15枚。最安値銅貨1枚、最高値銀貨2枚。最終取引日は11日前と記録されています。』
何の変哲もない皿。
俺の鑑定スキルにはそうあらわされている。
ミラも同じだろう。
だから驚いていたんだ。
「なぁ、鑑定結果はどうなってる?」
「・・・。」
「割れていようが欠けていようが、それが本物だったらちゃんと表示されるんだよ、こんな風に。」
俺は用意してあった古びた皿を取り出しさっきと同じように床に落とす。
劈くような音共に破片が飛び散り、その一つを手にとって鑑定してみる。
『旧王朝の皿。旧王朝時代の皿で、主に日常生活に使われていた。割れている。最近の平均取引価格は銀貨30枚、最安値銅貨10枚、最高値金貨1枚と銀貨55枚。最終取引日は290日前と記録されています。』
仮に本物ならば割れていてもこういう風に表示される。
でも、さっきのは違った。
何の変哲もない皿。
さっきまで旧王朝時代の皿だったものが、どういうカラクリか変わってしまった。
「ミラ、違いがわかるか?」
「はい、こちらは割れていても旧王朝のものだと鑑定されます。」
「そういうことだ。だが、お前の奴は違うな。なぁ、どういうカラクリなんだ、教えて貰えないか?」
「そ、それは。」
男が一歩後ずさる。
追いかけるように一歩歩み寄る。
一歩、また一歩。
そして次の瞬間、男は反転し店を飛び出ようとした。
「ちょっと、どこにいくのよ。」
が、それを許すはずがない。
外で待機していたエリザが男の手を掴み、そのまま組み伏せる。
突然の出来事に男は受身も取れなかったようだ。
ちょっとやりすぎかもしれないが、まぁ大丈夫だろう。
「コレでお前の悪事も終わりだ。俺の知り合いを騙そうなんてことは俺の目の黒いうちは絶対に許さない、覚えとけ。」
「なんで、何でお前にはわかる!」
「俺は買取屋だぞ、真贋がわからなくてどうするよ。」
「鑑定スキルをも騙す私のスキルが、こんな男に・・・。」
「余罪はたんまりありそうだな、とりあえずこの街で稼いだ分は全部返して貰うとしよう。今頃三日月亭にも調査が入っているだろうな。」
「じゃあ私はこの人を警備に突き出してくるわね。」
「くれぐれも慎重にたのむぞ。」
「まかせといてよ。」
コレにて悪は滅んだ。
後は警備・・・それと騙された貴族達が責任を持って裁いてくれるだろう。
余罪は山の様にある。
どういう結末になるか、楽しみだな。
街には贋作が流れ始めた。
何処をどう見ても本物。
鑑定スキル持ちを欺く何かで作られているんだろう。
アナスタシア様のスキルは短時間ながらも精巧な偽物を作る事が出来る。
が、今回は三日たってもボロが出る様子はない。
しかし俺の二つ目のスキルは欺けなかったようで、俺が鑑定するとしっかりと偽物だと判定される。
マスターも商談を持ちかけられたが、俺の助言を信じてくれたおかげで被害を免れた。
売りつけたからには速攻で街を出ていくと思ったのだが、カモが多いと判断したんだろうか。
ともかく奴は今も三日月亭に宿泊し続けている。
被害総額は金貨100枚を超えたはずだ。
マスターに撒いてもらった種はまだ芽吹かない。
が、もしその時が来たらそれが奴の年貢の納め時ってね。
「シロウ様、お客様が参られました。」
「だれだ?」
「例の詐欺師のようです。」
「やっと来たか。」
どうやら種は芽吹いたようだ。
ミラに呼ばれて店頭に出ると、前と違い上品な服に身を固めた例の男が立っていた。
「買取か?」
「三日月亭の主人より紹介されましてね、ここならどんな品でも買い取ってくれるのだとか。」
「マスターの紹介なら無下にするのもあれだな、品を見せてくれ。」
「二つありますが構いませんかな?」
「別に何個でも構わないぞ。」
「では遠慮なく。」
男がカウンターの上に乗せたのは二つ。
一つは精巧な細工の施された皿。
もう一つは古びた壺だった。
「年代物だな。」
「どれも珍しくそして非常に価値のある物、ここはこういった品を集めておられると聞いてきましたが・・・。」
「あぁ高く売れそうなものは買い取らせてもらっている。念の為に助手にも鑑定させるが構わないな?」
「えぇどうぞ。」
自信満々の顔でこちらをみてくる。
先日ここに来たことはあえて触れないのが面白い。
身なりを変えただけでばれないと思っているんだろうか。
とりあえず手前の皿から鑑定してみる。
ミラは壺だ。
『旧王朝の皿。旧王朝時代に使われていた皿で、現在では失われた技法で模様が描かれている。贋作。最近の平均取引価格は金貨9枚。最安値銀貨1枚、最高値金貨19枚。最終取引日は551日前と記録されています。』
ふむ、やっぱり贋作か。
贋作にも関わらず普通に鑑定結果が出るのがわからないが、そういうスキルか何かを使っているんだろう。
こいつがここに来るまでの三日間、俺なりに準備をしてきたが偽物はただの皿とか壺、としか鑑定されなかった。
本物はちゃんとした結果が出る。
でもこいつはそうじゃない。
贋作という表示が出るんだよなぁ。
「ミラ、こっちも頼む。」
「かしこまりました。」
今度はこっちの壺だ。
『大食いの壺。中に物を入れるといつの間にかなくなってしまう不思議な壺。容量以上のものを入れることができる。贋作。最近の平均取引価格は金貨11枚。最安値銀貨29枚、最高値金貨20枚。最終取引日は1年と224日前と記録されています。』
こっちも贋作か。
まぁわかっていたけどこっちも鑑定結果が表示されている。
なんだよ入れたものがなくなる壺って。
容量以上に入れても中身がなくなるんじゃ意味ないんじゃないか?
存在を消したいものを入れるのか?
謎過ぎる。
「ふむ、旧王朝時代の皿と大食いの壺。確かに珍しいもののようだ。ミラ、どうだ?」
「同じ鑑定結果です。」
「いかがですか、旧王朝の皿は近年貴族間で高値で取引されています。特にこの技法が描かれた皿は非常に珍しく、出回ることもめったにありません。大食いの壺も使用方法によっては同じく貴族が喜ぶ品。オークションにぴったりだと思いませんか?」
「確かに貴族が喜びそうだ。」
「聞けば王家にも伝手があるのだとか、旧王朝の品を集めているという話もありますしそちらの方が高いかもしれませんね。」
「それもマスターが?」
「おっと、これは内緒でしたね。」
まぁ俺がわざとばらすように言ったんだけどな。
マスターにお願いしたのは二つ。
俺が骨董品を集めているということと、王族に伝手があること。
この二つをさりげなく伝えてもらうようにお願いした。
で、その結果がこれだ。
骨董品といえば皿と壺。
他にも選択肢はあっただろうに、まさかこんなど真ん中の品を持ってくるとは。
さぁ、その得意げな顔を叩き潰してやろうじゃないか。
「ものとしては非常にいいもののようだ。そうだな、二つで金貨30枚出そう。」
「金貨30枚ですか。」
「不服か?」
「いえ!むしろそんなに高く買い取ってもらえるとは思っていませんでしたので。」
「あぁ、本物ならな。」
「え?」
「よくできているがどれも贋作だ。どういうカラクリかはわからないが、こうすればはっきりする。」
キョトンとした顔をした男の前で先ほどの皿を手に取り、頭上高く持ち上げそして手を離した。
「あ!」
男が正気に戻り手を伸ばすよりも早く、皿は重力に従い落下をはじめ、そして地面にぶつかった。
ガシャンという甲高い音が店中に響き渡る。
いや~いい音だなぁ。
「ななな、なんて事をしてくれたんですか!」
「いや、偽物だし別に構わないだろ?」
「偽物だなんてそんなことがあるはずないじゃないですか!」
「とりあえずこっちも割るか。」
「はい、割りましょう。」
「割りましょうじゃな・・・あぁぁぁぁぁ!」
今度はミラが壺を振り上げ、地面にたたきつけた。
これまたいい音が店中に響き、破片があたりに飛び散る。
掃除が面倒だなぁ。
なんてことを思ってしまった。
「き、金貨30枚の皿と壺が・・・。」
「だから、それは本物だったらの話だろ?こいつは偽物、せいぜい二つで銀貨1枚ってところだろう。」
「何をばかなことを!貴方には物の価値がわからないんですか!?」
「わかってるからやってるんだよ。ミラ、その破片を鑑定してみろどうなってる?」
「これですか?」
散らばった破片を手に取りスキルを発動するミラ。
とたんにその目が大きく見開かれた。
「そんな、こんなことがあるのですか?」
「どういうカラクリかはわからないが、コレが事実だ。」
「いったい何を言っているんです?弁償してください!」
「弁償してやるさ。その前にこいつを確認したらな、お前にも鑑定スキルがあるんだろ?」
動揺を隠しきれない男に足元に転がっていた破片を押し付ける。
最初は受け取らなかった男だったが、ぐいぐい押し付けるとしぶしぶといった感じでそれを受け取った。
『割れた皿の破片。何の変哲もない皿の破片。割れている。最近の平均取引価格は銅貨15枚。最安値銅貨1枚、最高値銀貨2枚。最終取引日は11日前と記録されています。』
何の変哲もない皿。
俺の鑑定スキルにはそうあらわされている。
ミラも同じだろう。
だから驚いていたんだ。
「なぁ、鑑定結果はどうなってる?」
「・・・。」
「割れていようが欠けていようが、それが本物だったらちゃんと表示されるんだよ、こんな風に。」
俺は用意してあった古びた皿を取り出しさっきと同じように床に落とす。
劈くような音共に破片が飛び散り、その一つを手にとって鑑定してみる。
『旧王朝の皿。旧王朝時代の皿で、主に日常生活に使われていた。割れている。最近の平均取引価格は銀貨30枚、最安値銅貨10枚、最高値金貨1枚と銀貨55枚。最終取引日は290日前と記録されています。』
仮に本物ならば割れていてもこういう風に表示される。
でも、さっきのは違った。
何の変哲もない皿。
さっきまで旧王朝時代の皿だったものが、どういうカラクリか変わってしまった。
「ミラ、違いがわかるか?」
「はい、こちらは割れていても旧王朝のものだと鑑定されます。」
「そういうことだ。だが、お前の奴は違うな。なぁ、どういうカラクリなんだ、教えて貰えないか?」
「そ、それは。」
男が一歩後ずさる。
追いかけるように一歩歩み寄る。
一歩、また一歩。
そして次の瞬間、男は反転し店を飛び出ようとした。
「ちょっと、どこにいくのよ。」
が、それを許すはずがない。
外で待機していたエリザが男の手を掴み、そのまま組み伏せる。
突然の出来事に男は受身も取れなかったようだ。
ちょっとやりすぎかもしれないが、まぁ大丈夫だろう。
「コレでお前の悪事も終わりだ。俺の知り合いを騙そうなんてことは俺の目の黒いうちは絶対に許さない、覚えとけ。」
「なんで、何でお前にはわかる!」
「俺は買取屋だぞ、真贋がわからなくてどうするよ。」
「鑑定スキルをも騙す私のスキルが、こんな男に・・・。」
「余罪はたんまりありそうだな、とりあえずこの街で稼いだ分は全部返して貰うとしよう。今頃三日月亭にも調査が入っているだろうな。」
「じゃあ私はこの人を警備に突き出してくるわね。」
「くれぐれも慎重にたのむぞ。」
「まかせといてよ。」
コレにて悪は滅んだ。
後は警備・・・それと騙された貴族達が責任を持って裁いてくれるだろう。
余罪は山の様にある。
どういう結末になるか、楽しみだな。
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