上 下
300 / 1,027

298.転売屋は願いの小石を集めきる

しおりを挟む
「お?」

いつものように石の魔物を火の魔道具で燃やすと、初めての物を落とした。

「願いの小石?」

「みたいだな。魔石はいつも通りだが、こいつこんなのも落とすのか。」

「石なら何でもありって感じね。」

「その割には普通の石は落とさないっていうね、魔物なりの矜持なのかそれとも・・・。」

「まぁいいじゃないの当たりには変わりないんだし。」

「だな。」

「前に王子様に貯まったら教えてって言われていたんでしょ?そろそろじゃない?」

「どうだったかな、戻って調べてみるか。」

の注文は20個。

溜まったらリングさんの紋章で封をして送ってくれって話だったはずだ。

この前の騒動でもちらほら見たから、もしかしたら貯まっているかもな。

ブツを拾い上げて次の魔物に例の仮面をつけさせる。

この笑った顔がまた・・・不気味だ。

「さて帰るか。」

「帰ったら早速探さないと。」

「何処だったかなぁ。」

「倉庫の奥に箱を作ったでしょ?ミラが管理してるから絶対そこにあるわよ。」

「聞いてみるよ。」

ダンジョンを出て早朝の街をのんびりと歩く。

数が揃っていたとして、そのまま送るのも野暮ってものだ。

友人への贈り物なんだし何か別の物も入れておくべきだろう。

一応、王家への贈り物だしな。

あれ?商売だから贈り物じゃないのか?まぁどっちでもいいか。

「ただいま。」

「おかえりなさいませ。」

「どうしました?嬉しそうな顔してますよ?」

「願いの小石が出たのよ。」

「確か初めてでしたね。」

「それなりに貯まってると思うんだが、いくつある?」

「確か帳簿では・・・いえ、見てきた方が早そうです。ちょっと見てきます。」

「悪いな。」

「朝食の準備をしますからお二人は上で手を洗ってきてくださいね。」

「は~い。」

ミラが裏に出たのを見送り俺達は二階へ。

汚れてないはずが意外と汚れている手を洗い、埃を落として下に戻る。

「全部で19個ありました。」

「という事はさっきのと合わせて20個か、目標達成だな。」

「ロバート王子の注文でしたね。」

「一つ銀貨50枚で買ってくれるんでしょ?大儲けじゃない。」

「まぁ、それなりに?」

「シロウ様のように仕入れるだけの財力があればこその稼ぎ方ですね。」

「ですね。一つじゃあんまり儲かりませんけど、沢山あれば違います。」

「まぁ、本当に願いが叶うならいいんだが・・・。ま、それは俺の知ったこっちゃないけどな。」

鑑定した感じでは叶いそうな表示をしているが、実際はどうかわからない。

叶った!っていう人が周りにいれば信じられるのだが、これ全部集めるのにかかる費用は王都価格で金貨50枚。

まぁ向こうじゃなかなか手に入らないみたいだけど。

こっちではそれなりに数が手に入るものの、それだけのお金を持っている人がいないっていうね。

「願い事かぁ。シロウは何を願・・・聞くまでもなかったわね。」

「なんだよ最後まで聞けよ。」

「絶対一つしかないもの。」

「わからないだろ?」

「じゃあ何?」

「もちろん金だ。」

「知ってた。」

なんだよ、そんな呆れた顔しなくてもいいだろ。

ま、わかっててやったんだけどな。

「じゃあエリザは何を願うんだ?」

「私?そんなの決まってるじゃない、オリハルコンの剣を持つことよ。」

「それ時間さえかければ叶うんじゃないか?」

「シロウが見つけてくれたらね。願っておけば間接的に見つかるかもしれないでしょ?」

「なるほど、確かに。」

「見つかったら私にちょうだいね?」

「金貨100枚で譲ってやるよ。」

国王陛下は金貨1000枚だったんだ、安い物だろ?

「ミラ様は何を願いますか?」

「シロウ様が元気でいられるように、でしょうか。」

「また俺か。」

「母のようになってもらっては困りますから。」

「じゃあ私は皆ずっと一緒に居られますようにってお願いします!」

「つまり借金を返しても残るわけだな?」

「残らなくていいんですか?」

「いいや、残ってもらわないと困る。これからもよろしく頼むぞ。」

「えへへ、ありがとうございます。」

恥ずかしそうにくねくねと体を動かすアネット。

うん、気にしないでおこう。

「ですがあれですね、願いの小石だけでは些か物足りませんね。」

「そうなんだよなぁ。友人に送るとはいえ、相手が相手だ。それなりの物を同封するべきだろう。」

「え~、別にいいんじゃないの?」

「いけません。そういう気遣いが後々に繋がる事もあります。」

「ってことで、安すぎず高すぎずの良い物を考えてくれ。」

「なかなかに難しいですね。」

「食べ物は痛むかもしれないし、物になると好みが分かれるわよね。」

「実用重視で行きたい気もするが、俺ららしい物が良いだろう。」

せっかくダンジョンのある街にいるんだ、それにちなんだものの方が喜ばれるんじゃないだろうか。

女に送るのであればルティエのアクセサリーで良かったんだが、相手は王子様だからなぁ。

何が良いだろうか。

「お香とか?」

「匂いが合わなかったらどうする?」

「じゃあお酒。」

「毒味とか面倒そうじゃないか?」

「魔石?」

「何に使うんだよ。」

「そんなこと言うならシロウが決めてよね。」

ダメ出しをしていたら怒られてしまった。

うーむ、俺ららしい物ねぇ。

「小刀はいかがですか?」

「なに?」

「オリハルコンとまではいきませんが、ダマスカス鋼であればそれなりに見栄えもしますし実用もあります。」

「刃物なぁ・・・。」

「でしたらペーパーナイフにしましょう。」

「なるほどその手があったか。手紙にしたためておけば変な意味で取られることもないだろう。」

誰に送るか説明すればマートンさんならいい物を作ってくれるはずだ。

まぁ間違いなく驚かれるだろうけどな。

「それなら魔鉱石も一緒に埋めると良いわよ。」

「魔鉱石?魔石じゃないのか?」

「魔石は魔力をとりだせるけど、魔鉱石は魔力があっても取り出せないの。でも、見た目はかなり綺麗だから宝石みたいに映えるわ。中層よりも下の魔物が偶に落とすんだけど・・・どう、ここらしいと思わない?」

「そういうなら取って来てくれるんだよな?」

「え!?そうなるの!?」

「当たり前だろ。宝石のように見えるってことは、買うと高いって事だ。でも取って来ればタダだよな?」

「うぅ、言うんじゃなかった・・・。」

「戻ってきたらマスターの所で旨い酒を奢ってやるよ。」

「エリザ様よろしくお願いします。」

「がんばってくださ~い。」

中層より下という事はそれなりの危険もある。

無理をしないように言い聞かせつつも笑顔で見送るのが俺達らしい。

「さて、俺はマートンさんに依頼を出してくるか。」

「はい、行ってらっしゃいませ。」

「そうだ、新しいお店に薬を置くんですよね?できたら薬棚に合う薬瓶が欲しいんです。どこで注文すればいいか聞いてもらえませんか?」

「わかった、一緒に聞いとく。」

カーラから量産の目途が立って来たとの連絡が入ったのが昨日。

とはいえかなりの人気なので個数を絞って販売する事になるだろう。

店を貰ったものの、化粧品だけで棚を埋める事は出来ないのでいっそのこと薬も一緒に販売する事にした。

もちろん専門の知識を必要としない簡易型の薬で、瓶に薬の名前と使用方法を簡単に書いておけばアネットじゃなくても販売できる。

薬を注文したくてもむさ苦しい冒険者のたむろする店には入りづらい、そんな声も聞こえていたので一石二鳥だ。

瓶やら内装やらで金貨10枚ほど飛んで行くだろうから、ちょうど良かったかもしれない。

ま、その代金がいつ支払われるかはわからないけどな。

この前買い取った品々はまだ山積み。

仕分けはしたものの、時期的に売れない物やここで売りにくい物なんかもあるので全部売れるのは年末になる。

出来るだけ金は使いたくないのが本音だが、そうは言ってられないんだよなぁ。

やれやれだ。

店を出てまずはギルド協会へ。

棚の寸法を教えてもらい、その足でマートンさんの所へと向かう。

「喜んでやらせてもらおう。王家に続き今度は王子か、お前の仕事も大きくなるな。」

「別に仕事じゃない友人へのプレゼントだよ。半分は商売だしな。」

「プレゼントにダマスカス、それに魔鉱石なんて贅沢過ぎるだろ。」

「金貨1枚でつくれるんだろ?」

「いや、それをポンと出すお前がおかしいのか。」

「・・・そんなにおかしいか?」

「普通はな。だが俺はお前らしくていいと思う、別に恩を売りたいとか媚を売りたいとかじゃないんだろ?」

「あぁ。」

「金持ちなのをひけらかすわけでもない、正しい物に正しい金を払ってくれる上客だ。このままでいてくれよ。」

褒められてるんだよな?

まぁ、そういう事にしておこう。

「そのつもりだ。どのぐらいで出来る?」

「そうだな、相手が相手だけに少し時間が欲しい一週間ぐらいくれ。」

「じゃあ月末貰いに来る。」

「助かる。」

急がせていい物が出来るわけがない。

それに、職人が一週間で出来るって言ったんだし、それを信じればいいだけだ。

その間に他に送るものがないか探すことにするかな。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

貴族に生まれたのに誘拐され1歳で死にかけた

佐藤醤油
ファンタジー
 貴族に生まれ、のんびりと赤ちゃん生活を満喫していたのに、気がついたら世界が変わっていた。  僕は、盗賊に誘拐され魔力を吸われながら生きる日々を過ごす。  魔力枯渇に陥ると死ぬ確率が高いにも関わらず年に1回は魔力枯渇になり死にかけている。  言葉が通じる様になって気がついたが、僕は他の人が持っていないステータスを見る力を持ち、さらに異世界と思われる世界の知識を覗ける力を持っている。  この力を使って、いつか脱出し母親の元へと戻ることを夢見て過ごす。  小さい体でチートな力は使えない中、どうにか生きる知恵を出し生活する。 ------------------------------------------------------------------  お知らせ   「転生者はめぐりあう」 始めました。 ------------------------------------------------------------------ 注意  作者の暇つぶし、気分転換中の自己満足で公開する作品です。  感想は受け付けていません。  誤字脱字、文面等気になる方はお気に入りを削除で対応してください。

僕の家族は母様と母様の子供の弟妹達と使い魔達だけだよ?

闇夜の現し人(ヤミヨノウツシビト)
ファンタジー
ー 母さんは、「絶世の美女」と呼ばれるほど美しく、国の中で最も権力の強い貴族と呼ばれる公爵様の寵姫だった。 しかし、それをよく思わない正妻やその親戚たちに毒を盛られてしまった。 幸い発熱だけですんだがお腹に子が出来てしまった以上ここにいては危険だと判断し、仲の良かった侍女数名に「ここを離れる」と言い残し公爵家を後にした。 お母さん大好きっ子な主人公は、毒を盛られるという失態をおかした父親や毒を盛った親戚たちを嫌悪するがお母さんが日々、「家族で暮らしたい」と話していたため、ある出来事をきっかけに一緒に暮らし始めた。 しかし、自分が家族だと認めた者がいれば初めて見た者は跪くと言われる程の華の顔(カンバセ)を綻ばせ笑うが、家族がいなければ心底どうでもいいというような表情をしていて、人形の方がまだ表情があると言われていた。 『無能で無価値の稚拙な愚父共が僕の家族を名乗る資格なんて無いんだよ?』 さぁ、ここに超絶チートを持つ自分が認めた家族以外の生き物全てを嫌う主人公の物語が始まる。 〈念の為〉 稚拙→ちせつ 愚父→ぐふ ⚠︎注意⚠︎ 不定期更新です。作者の妄想をつぎ込んだ作品です。

せっかくのクラス転移だけども、俺はポテトチップスでも食べながらクラスメイトの冒険を見守りたいと思います

霖空
ファンタジー
クラス転移に巻き込まれてしまった主人公。 得た能力は悪くない……いや、むしろ、チートじみたものだった。 しかしながら、それ以上のデメリットもあり……。 傍観者にならざるをえない彼が傍観者するお話です。 基本的に、勇者や、影井くんを見守りつつ、ほのぼの?生活していきます。 が、そのうち、彼自身の物語も始まる予定です。

神様との賭けに勝ったので、スキルを沢山貰えた件。

猫丸
ファンタジー
ある日の放課後。突然足元に魔法陣が現れると、気付けば目の前には神を名乗る存在が居た。 そこで神は異世界に送るからスキルを1つ選べと言ってくる。 あれ?これもしかして頑張ったらもっと貰えるパターンでは? そこで彼は思った――もっと欲しい! 欲をかいた少年は神様に賭けをしないかと提案した。 神様とゲームをすることになった悠斗はその結果―― ※過去に投稿していたものを大きく加筆修正したものになります。

(完結)醜くなった花嫁の末路「どうぞ、お笑いください。元旦那様」

音爽(ネソウ)
ファンタジー
容姿が気に入らないと白い結婚を強いられた妻。 本邸から追い出されはしなかったが、夫は離れに愛人を囲い顔さえ見せない。 しかし、3年と待たず離縁が決定する事態に。そして元夫の家は……。 *6月18日HOTランキング入りしました、ありがとうございます。

転生受験生の教科書チート生活 ~その知識、学校で習いましたよ?~

hisa
ファンタジー
 受験生の少年が、大学受験前にいきなり異世界に転生してしまった。  自称天使に与えられたチートは、社会に出たら役に立たないことで定評のある、学校の教科書。  戦争で下級貴族に成り上がった脳筋親父の英才教育をくぐり抜けて、少年は知識チートで生きていけるのか?  教科書の力で、目指せ異世界成り上がり!! ※なろうとカクヨムにそれぞれ別のスピンオフがあるのでそちらもよろしく! ※第5章に突入しました。 ※小説家になろう96万PV突破! ※カクヨム68万PV突破! ※令和4年10月2日タイトルを『転生した受験生の異世界成り上がり 〜生まれは脳筋な下級貴族家ですが、教科書の知識だけで成り上がってやります〜』から変更しました

大和型戦艦、異世界に転移する。

焼飯学生
ファンタジー
第二次世界大戦が起きなかった世界。大日本帝国は仮想敵国を定め、軍事力を中心に強化を行っていた。ある日、大日本帝国海軍は、大和型戦艦四隻による大規模な演習と言う名目で、太平洋沖合にて、演習を行うことに決定。大和、武蔵、信濃、紀伊の四隻は、横須賀海軍基地で補給したのち出港。しかし、移動の途中で濃霧が発生し、レーダーやソナーが使えなくなり、更に信濃と紀伊とは通信が途絶してしまう。孤立した大和と武蔵は濃霧を突き進み、太平洋にはないはずの、未知の島に辿り着いた。 ※ この作品は私が書きたいと思い、書き進めている作品です。文章がおかしかったり、不明瞭な点、あるいは不快な思いをさせてしまう可能性がございます。できる限りそのような事態が起こらないよう気をつけていますが、何卒ご了承賜りますよう、お願い申し上げます。

クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?

青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。 最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。 普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた? しかも弱いからと森に捨てられた。 いやちょっとまてよ? 皆さん勘違いしてません? これはあいの不思議な日常を書いた物語である。 本編完結しました! 相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです! 1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…

処理中です...