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275.転売屋は文献を調べる
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「さてっと・・・。」
「これまたすごい量の本だね。まぁうちを使ってくれる人は少ないから来てくれるのは助かるけど・・・。」
「仕事の邪魔はしないさ、今日一日場所を貸してくれれば問題ない。」
「根の詰めすぎは体に毒だよ?」
「その点は心配無用だ。昼になったらアネットが食事を持ってくる、もちろん甘い物も一緒にな。」
「それは良い事を聞いた。今日は楽しく仕事が出来そうだ。」
朝一番で図書館に向かい、アレン少年に目的の本を探してもらう。
窓際の少し埃の積もった机を綺麗にして、探してもらった本を積み上げる。
10冊。
今日はこいつと戦わなくてはならない。
これも全部あの女豹のせいだ。
マートンさんに頼まれた素材は希望通りの性能を発揮してくれたようで、予定通り銀貨3.5枚で売り出された。
切れ味は申し分ないが、強度はやはり鉄には劣る。
それでも新米冒険者が手に取りやすくそれでまた金を稼いでくる好循環は、俺の店にも恩恵をもたらし始めた。
単価は低い。
でも数が来る。
結果、わずかではあるが利益を積み上げることが出来るようになってきた。
あと、ロイヤリティーは10%で決着がついた。
仕入れは一括してハーシェさんから行ってもらうが、別に他の仕入れ先から仕入れてもいい条件になっている。
今の所例の使用料もあって仕入れられるのは俺だけだけどな。
いずれは他の商人も仕入れを行うだろうから、今は先駆者としての利益をありがたくいただいておくとしよう。
で、その使用料の方が問題なんだ。
女豹に頼まれたのは『お肌に良い物』でしかも、『今流通していない物』という条件まである。
ようは自分の知らない新作を探して来いという要求だった。
これまでにもかなり手広く探してきたようで、それでも自分に合う物が見つからなかったそうだ。
女の美容にかける執念は半端ないなぁ。
それで新素材の使用料をタダにするんだから・・・。
「絶対に裏があるよな。」
「何か?」
「いや、何でもない独り言だ。」
ともかく、市場に出回っている化粧品では条件を満たさないのでこうやって過去の文献からお肌にいい物を探しているというわけだな。
民間療法に過去の商品。
プラス、魔物の素材について。
現在使用されている化粧品には魔物の素材がかなり使用されているらしい。
もしかすると前の蟻砂糖のように過去には知られていても、今は知られていないような素材があるかもしれない。
そんな一縷の望みに賭けて図書館に来たわけだよ。
実際新素材が取引されている以上、俺も約束を破るわけにはいかない。
おとなしく使用料を払うという手もあるが、それでは大赤字だ。
おそらくあの女豹もそれを狙っているんだろう。
出来ない事をやらせて失敗して儲ける。
もし仮に発見できても損は無し。
なかなかうまいこと考えやがって。
でもまぁ俺には継続してお金が入ってくるわけだからなぁ。
っと、仕事仕事っと。
えーっと、こっちは睡眠と食事。
定番だな。
こっちは、レレモンの定期摂取。
ビタミンCだろうか。
そういやヒアルロン酸とかお肌に良いってよくCMやってたよな。
あれって何が原料なんだろうか。
ん?
「なんだこれ。」
ふと目に留まったのは魔物を使った料理のレシピ。
なになに?
ワイルドカウの足を煮込んだスープを飲むと、翌日のお肌の調子が良くなった。
マジかよ。
コラーゲンか何かか?
さらに、眼球から美容成分が出る。
眼球って眼球だよな。
目ん玉。
それから美容成分が出る?
マジで?
っていうかどうやって見つけたんだよ。
著者は・・・。
「アレン、この本を書いたグリムモアって何者だ?」
「錬金術師であり冒険者であり自然学者であり魔科学者でありと色々な顔を持っているから、何者と定義するのは難しいね。あ、料理研究家でもあるよ。この『サバイバルグルメ!ダンジョンで飢えたらこれを食べろ!』は冒険者の中ではかなり有名な著書だね。」
「なんでもありだな。」
「で、どうしたの?」
「ここにワイルドカウの眼球から美容成分が取れたって書いてあるんだが、他にも同じ内容が書かれた本はあるか?」
「ん~・・・僕が知る限りその本だけだね。」
「食事で肌の調子をよくするってのもほとんどこの本だな。」
「共通点は脂身部分にあるプルプルとした食感のゼラチン質。これがお肌にいいんだろうね。」
「コラーゲンか。食べる方は有名だが、これを食べずに摂取できれば・・・これって抽出できるのか?」
「抽出?じゃあ魔科学の範疇だね。」
「魔科学?」
「正確には『魔術家庭科応用学』略して魔科学。ようは魔術を家庭で応用する学問だよ。」
家庭で?
魔術って事は魔法の事だろうけど、それを家で使うのか?
「ピンと来てないようだけど、魔道具なんかはまさに魔科学を応用して作られたものだね。ほら、コンロに火をつけたりお湯を沸かしたり。物を冷やしたりするのもみんなそうだろ?」
「なるほど、確かにその通りだ。」
「家で魔法を使うのは危ないけれど、魔石を用いたらそこまで危険じゃない。その人はその基礎を作り上げたとっても偉い人なんだ。」
「確かに足を向けて寝れないな。」
「その人の面白い所は多岐にわたってその才能を発揮して、そしてそれを趣味の為に研究していたって所かな。普通であれば争いごとに使われるような技術を家庭に普及させたのだって、自分がめんどくさがりだったからと自伝にも書いてあったし。」
ということはアレン少年もその自伝を読んでいるという事だ。
どの世界にも天才はいるものだ。
「話は戻すが、つまりその技術を応用すれば目的の物が作れるかもしれないと言う事だな?」
「そうだね。抽出方法については・・・たしか別の本に書いてあったはずだ。といっても目的の物を抽出する方法かはわからないから、そこは自分で調べてみてね。」
「ありがたい。」
「じゃあ取ってくるよ。」
それじゃあ俺は続きを読むか。
とりあえず抽出できると仮定をして、探すのはその原料だ。
野菜や果物なんかの普段食べている物から作るのが一番安全なんだろうけど、残念ながらこの街でそれを得るのは中々に難しい。
俺の畑もあるけれど、その為だけに野菜を作ることは出来ないしそもそも時期が合わなかったらどうしようもない。
となると、残るはただ一つ。
ダンジョンの中から得るしかないわけだ。
ダンジョン産であれば常に手に入れることが出来るし、冒険者に頼めば取ってきてもらえる。
あそこに生えている植物か、それとも魔物の素材か。
個人的には素材の方がありがたいなぁ。
って事で、そっち系の本を重点的に読んでみるか。
「さっきの本があったよ、ここに置いておくね。」
「あぁ、助かった。」
「古い本だし他に読む人もいないから特別に貸し出してあげる、そのかわり・・・。」
「わかってるって、アネットがきたらな。」
どれだけ甘いものに飢えてるんだよ。
それからしばらくしてアネットが朝食とお菓子を持って図書館にやって来た。
お菓子は丸々アレン少年へ、俺は昼食をはさみ夕方まで文献探しに没頭した。
その甲斐あっていくつかの可能性のある素材に行きつくことが出来た。
あとはここからどうやって成分を抽出するかだ。
とりあえずそれはまた今度だな。
「ただいま。」
「おかえりなさいませ。」
「お疲れさまでした。どうでしたか?」
「あぁ、いくつか面白そうな素材は見つけることが出来た。もう少し調べてみてから冒険者ギルドに依頼を出すつもりだ。」
「よかったですね!」
「取りに行くのは任せてよね、面倒な場所でなければ。」
「ありふれた魔物だから問題は無いと思う。飯を食ったらもう少し調べものをするから、先に上がらせてもらうな。」
抽出方法についてはまだ未解明だ。
そうだ、後でアネットの意見も聞かせてもらおう。
もしかすると調合機材がそのまま流用できるかもしれない。
薬草や魔物の素材から薬効成分を取り出すっていうのはかなり似たやり方だ。
「あまり無理をしないでくださいね。」
「そのつもりだ。アネット、食事の後に意見を聞きたいんだが時間を貰えるか?」
「わかりました、夜は仕込みだけですので作業しながらで良ければ大丈夫です。」
「問題ない。あ~腹減った。」
「もうすぐ出来るからちょっと待ってよね。」
「今日はエリザが当番か。」
「いつも任せっぱなしだから休みの日ぐらいはね。」
「肉か?」
「もちろん肉よ。」
知ってた。
丁度そんな気分だ、がっつり食べて元気を戻しもうひと頑張りするとしよう。
その後、靴底のような巨大なステーキをがっつりと食し、アネットと意見交換をしながら考えを纏めて行った。
今までこういうのをしたことが無かったが、案外肌に合っているかもしれない。
これも全て金の為。
そう思うと何故かやる気が出てくるんだよな。
「これまたすごい量の本だね。まぁうちを使ってくれる人は少ないから来てくれるのは助かるけど・・・。」
「仕事の邪魔はしないさ、今日一日場所を貸してくれれば問題ない。」
「根の詰めすぎは体に毒だよ?」
「その点は心配無用だ。昼になったらアネットが食事を持ってくる、もちろん甘い物も一緒にな。」
「それは良い事を聞いた。今日は楽しく仕事が出来そうだ。」
朝一番で図書館に向かい、アレン少年に目的の本を探してもらう。
窓際の少し埃の積もった机を綺麗にして、探してもらった本を積み上げる。
10冊。
今日はこいつと戦わなくてはならない。
これも全部あの女豹のせいだ。
マートンさんに頼まれた素材は希望通りの性能を発揮してくれたようで、予定通り銀貨3.5枚で売り出された。
切れ味は申し分ないが、強度はやはり鉄には劣る。
それでも新米冒険者が手に取りやすくそれでまた金を稼いでくる好循環は、俺の店にも恩恵をもたらし始めた。
単価は低い。
でも数が来る。
結果、わずかではあるが利益を積み上げることが出来るようになってきた。
あと、ロイヤリティーは10%で決着がついた。
仕入れは一括してハーシェさんから行ってもらうが、別に他の仕入れ先から仕入れてもいい条件になっている。
今の所例の使用料もあって仕入れられるのは俺だけだけどな。
いずれは他の商人も仕入れを行うだろうから、今は先駆者としての利益をありがたくいただいておくとしよう。
で、その使用料の方が問題なんだ。
女豹に頼まれたのは『お肌に良い物』でしかも、『今流通していない物』という条件まである。
ようは自分の知らない新作を探して来いという要求だった。
これまでにもかなり手広く探してきたようで、それでも自分に合う物が見つからなかったそうだ。
女の美容にかける執念は半端ないなぁ。
それで新素材の使用料をタダにするんだから・・・。
「絶対に裏があるよな。」
「何か?」
「いや、何でもない独り言だ。」
ともかく、市場に出回っている化粧品では条件を満たさないのでこうやって過去の文献からお肌にいい物を探しているというわけだな。
民間療法に過去の商品。
プラス、魔物の素材について。
現在使用されている化粧品には魔物の素材がかなり使用されているらしい。
もしかすると前の蟻砂糖のように過去には知られていても、今は知られていないような素材があるかもしれない。
そんな一縷の望みに賭けて図書館に来たわけだよ。
実際新素材が取引されている以上、俺も約束を破るわけにはいかない。
おとなしく使用料を払うという手もあるが、それでは大赤字だ。
おそらくあの女豹もそれを狙っているんだろう。
出来ない事をやらせて失敗して儲ける。
もし仮に発見できても損は無し。
なかなかうまいこと考えやがって。
でもまぁ俺には継続してお金が入ってくるわけだからなぁ。
っと、仕事仕事っと。
えーっと、こっちは睡眠と食事。
定番だな。
こっちは、レレモンの定期摂取。
ビタミンCだろうか。
そういやヒアルロン酸とかお肌に良いってよくCMやってたよな。
あれって何が原料なんだろうか。
ん?
「なんだこれ。」
ふと目に留まったのは魔物を使った料理のレシピ。
なになに?
ワイルドカウの足を煮込んだスープを飲むと、翌日のお肌の調子が良くなった。
マジかよ。
コラーゲンか何かか?
さらに、眼球から美容成分が出る。
眼球って眼球だよな。
目ん玉。
それから美容成分が出る?
マジで?
っていうかどうやって見つけたんだよ。
著者は・・・。
「アレン、この本を書いたグリムモアって何者だ?」
「錬金術師であり冒険者であり自然学者であり魔科学者でありと色々な顔を持っているから、何者と定義するのは難しいね。あ、料理研究家でもあるよ。この『サバイバルグルメ!ダンジョンで飢えたらこれを食べろ!』は冒険者の中ではかなり有名な著書だね。」
「なんでもありだな。」
「で、どうしたの?」
「ここにワイルドカウの眼球から美容成分が取れたって書いてあるんだが、他にも同じ内容が書かれた本はあるか?」
「ん~・・・僕が知る限りその本だけだね。」
「食事で肌の調子をよくするってのもほとんどこの本だな。」
「共通点は脂身部分にあるプルプルとした食感のゼラチン質。これがお肌にいいんだろうね。」
「コラーゲンか。食べる方は有名だが、これを食べずに摂取できれば・・・これって抽出できるのか?」
「抽出?じゃあ魔科学の範疇だね。」
「魔科学?」
「正確には『魔術家庭科応用学』略して魔科学。ようは魔術を家庭で応用する学問だよ。」
家庭で?
魔術って事は魔法の事だろうけど、それを家で使うのか?
「ピンと来てないようだけど、魔道具なんかはまさに魔科学を応用して作られたものだね。ほら、コンロに火をつけたりお湯を沸かしたり。物を冷やしたりするのもみんなそうだろ?」
「なるほど、確かにその通りだ。」
「家で魔法を使うのは危ないけれど、魔石を用いたらそこまで危険じゃない。その人はその基礎を作り上げたとっても偉い人なんだ。」
「確かに足を向けて寝れないな。」
「その人の面白い所は多岐にわたってその才能を発揮して、そしてそれを趣味の為に研究していたって所かな。普通であれば争いごとに使われるような技術を家庭に普及させたのだって、自分がめんどくさがりだったからと自伝にも書いてあったし。」
ということはアレン少年もその自伝を読んでいるという事だ。
どの世界にも天才はいるものだ。
「話は戻すが、つまりその技術を応用すれば目的の物が作れるかもしれないと言う事だな?」
「そうだね。抽出方法については・・・たしか別の本に書いてあったはずだ。といっても目的の物を抽出する方法かはわからないから、そこは自分で調べてみてね。」
「ありがたい。」
「じゃあ取ってくるよ。」
それじゃあ俺は続きを読むか。
とりあえず抽出できると仮定をして、探すのはその原料だ。
野菜や果物なんかの普段食べている物から作るのが一番安全なんだろうけど、残念ながらこの街でそれを得るのは中々に難しい。
俺の畑もあるけれど、その為だけに野菜を作ることは出来ないしそもそも時期が合わなかったらどうしようもない。
となると、残るはただ一つ。
ダンジョンの中から得るしかないわけだ。
ダンジョン産であれば常に手に入れることが出来るし、冒険者に頼めば取ってきてもらえる。
あそこに生えている植物か、それとも魔物の素材か。
個人的には素材の方がありがたいなぁ。
って事で、そっち系の本を重点的に読んでみるか。
「さっきの本があったよ、ここに置いておくね。」
「あぁ、助かった。」
「古い本だし他に読む人もいないから特別に貸し出してあげる、そのかわり・・・。」
「わかってるって、アネットがきたらな。」
どれだけ甘いものに飢えてるんだよ。
それからしばらくしてアネットが朝食とお菓子を持って図書館にやって来た。
お菓子は丸々アレン少年へ、俺は昼食をはさみ夕方まで文献探しに没頭した。
その甲斐あっていくつかの可能性のある素材に行きつくことが出来た。
あとはここからどうやって成分を抽出するかだ。
とりあえずそれはまた今度だな。
「ただいま。」
「おかえりなさいませ。」
「お疲れさまでした。どうでしたか?」
「あぁ、いくつか面白そうな素材は見つけることが出来た。もう少し調べてみてから冒険者ギルドに依頼を出すつもりだ。」
「よかったですね!」
「取りに行くのは任せてよね、面倒な場所でなければ。」
「ありふれた魔物だから問題は無いと思う。飯を食ったらもう少し調べものをするから、先に上がらせてもらうな。」
抽出方法についてはまだ未解明だ。
そうだ、後でアネットの意見も聞かせてもらおう。
もしかすると調合機材がそのまま流用できるかもしれない。
薬草や魔物の素材から薬効成分を取り出すっていうのはかなり似たやり方だ。
「あまり無理をしないでくださいね。」
「そのつもりだ。アネット、食事の後に意見を聞きたいんだが時間を貰えるか?」
「わかりました、夜は仕込みだけですので作業しながらで良ければ大丈夫です。」
「問題ない。あ~腹減った。」
「もうすぐ出来るからちょっと待ってよね。」
「今日はエリザが当番か。」
「いつも任せっぱなしだから休みの日ぐらいはね。」
「肉か?」
「もちろん肉よ。」
知ってた。
丁度そんな気分だ、がっつり食べて元気を戻しもうひと頑張りするとしよう。
その後、靴底のような巨大なステーキをがっつりと食し、アネットと意見交換をしながら考えを纏めて行った。
今までこういうのをしたことが無かったが、案外肌に合っているかもしれない。
これも全て金の為。
そう思うと何故かやる気が出てくるんだよな。
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