264 / 1,240
263.転売屋は行商人と出会う
しおりを挟む
「あ~極楽極楽。」
「気持ちいいですね。」
「あ゛~最高。」
「オッサンだな。」
「誰がオッサンよ!」
お前だよお前、とエリザにお湯をかけてやると10倍になって返って来た。
ったく、これだから脳筋は。
お湯をかけると湯面が揺れ、エリザの乳やミラの乳が良い感じに揺れる。
今更だが乳って浮くんだな。
囲いすら一切ない山のど真ん中。
そこにぽっかりと直径10m程の円形露天風呂が出来ていた。
そこから少し離れた所に持って来た天幕を張り、四方に魔除けを設置。
今はアネットとビアンカが飯の準備をしてくれている。
温泉はまた後で入るそうだ。
「やはり私も手伝いましょうか。」
「いや、本人たちがやるって言ってるんだやらせておけばいい。」
「そうですね。」
「ビアンカが恥ずかしくて入れないからアネットも付き合ってるんでしょ。奴隷なら主人の命令は絶対・・・って命令してなかったわね。」
「一緒に温泉に入れって?どこの変態上司だよ。」
そんな命令しなくてもいずれ入るしかない。
それだけの魅力がこの温泉にはある。
「あ゛~最高。」
「さっきも言ったわよ。」
「いいんだよ。」
オレンジ色に染まる山々を見ながら自分の女達を抱き、温泉に浸かる。
これ以上の至福があるか?
いや、ない。
「ちょっと、何触ってるのよ。」
「まずかったか?」
「そんなことないけど・・・。」
「シロウ様よろしければ私もいかがです?」
「あぁ、もちろんだ。」
くっついてきたミラの尻をお湯の中で堪能する。
このまま致したい気持ちはあるのだが・・・。
ま、それは飯を食ってからでいいだろう。
エリザも文句を言いながら揉ませてくれるんだよな。
二人ともいい女だ。
のぼせるギリギリまで温泉を堪能し、ホカホカのまま天幕に戻る。
丁度晩飯が出来上がったようで、机代わりの巨大な岩の上にはたくさんの料理が並んでいた。
「すごい量だな。」
「えへへ、頑張りました。」
「お二人とも有難うございます。」
「早速食べるか。」
湯冷めしないように毛布を羽織ってから椅子代わりの岩に座る。
最初は座れるような形をしていなかったのだが、エリザの斧にかかれば御覧の通りだ。
机も巨石を真っ二つに割って作り上げた。
今後ここを利用するのなら放置して帰っていいだろう。
「「「「いただきます。」」」」
簡易調理になるのでここまでの料理を期待していなかったのだが、ちゃんと前菜にサラダにメインと4品もの料理が並んでいた。
サラダなんかは来る途中で見つけた山菜?だ。
覚悟して食べてみたが思ったよりも苦くなく、ドレッシングがいい感じに効いている。
うん、美味い。
これなんかキュウリみたいな触感だ。
あー、ここに味噌があればもろキュウなんだが・・・。
残念ながらこの世界ではまだ醤油しかお目にかかっていない。
それも使い切ってしまったので寂しい限りだ。
大満足のディナーを終える頃にはすっかりと日が落ちてしまった。
焚火の明かりに照らされて温泉から立ち上る湯気がなんとまぁ美しい事。
それから二度ほど湯船を堪能し、心も体もホッカホカ。
後は寝るだけ・・・そう思っていた時だった。
ガサガサと離れた茂みから音がする。
いち早く気づいたエリザが横に置いていた斧を手に取った。
「魔物か?」
「一応魔物除けはしているけど、強い魔物だと偶に効かないのよね。」
「ミラ、アネット、後ろに下がれ。」
「ビアンカ、悪いけどフォロー宜しく。」
「は、はい!」
皆風呂上りなのでラフな格好だ。
それでいて重厚な武器を持っているというのは何ともアンバランスな感じだが、音はどんどんと大きくなりこちらに近づいてくるのが分かる。
ゴくりと唾をのみ、その時を待つ。
そして次の瞬間。
「た、たすけてください・・・。」
茂みから出てきた何かはそういうと、その場に倒れてしまった。
全員で顔を見合わせ、大きく息を吐く。
「魔物じゃなかったか。」
「そうみたいね。」
「とりあえず救助したい所だが・・・。その前に着替えからだな。」
「あ。」
「確かにこの格好を見られるのはよろしくありません。」
「ですね。」
漫画なんかだとなりふり構わず駆け寄るだろうが、残念ながらそれほど正義感があるわけじゃない。
声の感じから男だろう。
俺の女達の裸を他所の男に見せるなど・・・。
あれ?
俺ってこんなに独占欲強かったっけ。
まぁいいか。
皆が着替えている間に男をこっちまで引きずり、着替えの終わったビアンカとアネットに状態を確認してもらう。
大きな傷は無く、恐らくは疲労か何かで気を失ったんだろうという見解だった。
「この荷物の量から察するに行商人か?」
「何でこんな山奥に行商人がいるのよ。」
「さぁ、迷子になったとか。」
「魔物に追われてという可能性はありますね。」
「ふむ・・・。」
中肉中背、歳は20代後半って所か。
前の俺からしたら若造だが、今の俺からしたら年上になる。
ややこしいなぁ、もう。
「ん・・・。」
「シロウ様、気づかれたようです。」
「エリザ頼む。」
「任せて。」
盗賊の可能性もゼロじゃない。
いきなり襲われるって事もあり得るのでエリザにも一緒にきてもらった。
「こ、ここは?」
「山奥の温泉だよ。俺達が利用している所にアンタが茂みから出てきたんだ。」
「いたた・・・。あ、私の荷物は!」
「後ろに置いてある、心配するな手をつけちゃいない。」
「あぁ、よかった。」
覚醒してすぐに荷物を探すとは、よっぽど大事なものが入っているんだろう。
「助けて頂きありがとうございました。救いに神とはまさにこの事です。」
「なに、俺達は休暇に来ていただけだ。俺はシロウ、買取屋だ。あんたは?」
「ティナカです。行商人と言えばわかりますか?」
「田中?」
「もしかして西方の生まれですか?」
「いや、そうじゃないがそう聞こえただけだ。」
名前はそれっぽいがどう見ても日本人の顔じゃない。
アジアっぽい感じはあるが、どちらかというとベトナムとかそっち系の顔だ。
「てっきりご同郷の方かと思ってしまいましたよ。」
「期待させて悪かったな。」
「いえいえ、ここまで来る仲間はいないでしょう。私の場合は半分流浪の旅みたいなものですから。」
「流浪、何か探し物か?」
「いえ、単に世界を見てみたいだけです。」
と、本人は言っているがそんな単純な理由で魔物の溢れる世界を旅しようと思う者だろうか。
ま、俺には関係ないけどな。
「よかったら飯食っていくか?残り物で悪いんだが。」
「そんな!助けて頂いたばかりか食事まで頂くわけにはいきません。」
「いえ、こちらも食べて頂けると助かります。残ると魔物や獣が匂いに誘われてやってきますので。」
「って事だ、とりあえずゆっくりしてくれ。」
「ではお言葉に甘えて。」
テーブルまで案内して持ってきた酒をふるまってやる。
袖振り合うのも他生の縁ってね、たまには人助けをするのもいいだろう。
「美味しい。」
「だ、そうだ。」
「ありがとうございます。」
「実は山に入って二日、何も食べていなかったんです。がけ崩れでもあったのか道もわからなくなってしまい、オレンジ色の明かりが見えた時はがむしゃらに走っていました。」
「二日か、大変だったな。」
「本当に有難うございます。」
涙を流しながら料理を食べるティナカ。
二日か、ここに来る前の俺だったら早々に諦めているかもなぁ。
流石に他人のいる状況で真横の風呂に入るわけにはいかないので、今日は早めに寝ることにしよう。
村に送ってからもう一度戻ってきてもいい。
元々二日ぐらいは想定していたし、この温泉を一回で終わらせるのはもったいない。
「ふぅ、ごちそうさまでした。」
「満足したか?」
「はい、堪能させて頂きました。」
「明日の朝には村まで送ってやれるんだが、天幕は定員オーバーでな、寝る時は悪いがその毛布を使ってくれ。焚火の傍なら寒くないだろう。」
「十分です、ありがとうございます。」
「荷物も無事で何よりだった、次は迷うなよ。」
「そうします。っと、そうだよろしければ・・・。」
と、ティナカはカバンをさぐり何かの液体が入った瓶と木製の箱を取り出した。
「助けてもらったお礼です。よろしければお納めください。」
「これは?」
「西方で作られている調味料で醤油と味噌といいます。」
「醤油と味噌!」
思わず大きな声を出してしまった。
「ご存じなのですか?」
「もちろんだ。醤油は一度手に入れたが、そうか味噌まであるのか。あけていいか?」
「ど、どうぞ。」
俺の勢いにティナカが若干ビビっているが気にせず木箱を開ける。
中に入っていたのは茶色いペースト。
横に合ったスプーンで軽く表面をなぞり口に入れる。
あぁ、この味。
この風味。
間違いない、みそだ。
「美味い。」
「よかった、こちらの方にはあまりなじみのないものですから。」
「これを売って歩いているのか?」
「そうです。」
「いくらだ?」
「そんな、差し上げますよ。」
「良いからいくらだ?」
「えっと、醤油が一瓶銀貨20枚で味噌が一つ銀貨10枚です。」
高い。
高いが、俺には安い。
むしろその値段でこの味が買えるのであれば大安売りだ。
「そんなにするの?」
「向こうではそんなに高くないんですけど、ここまで持ってくる費用を勘案するとどうしても・・・。」
「買った。」
「いえ、差し上げます。」
「いいや、買う。そしてその金を持って向こうに戻ってまた卸しに来てくれ、ここまでどのぐらいかかる?」
「そうですね、二カ月ぐらいでしょうか。」
「わかった。また二か月後、持ってきてくれ。これがその分の支払いだ。」
男の前に金貨を一枚置く。
それを見て男が目を見開いた。
おいおい、目玉が落ちるぞ。
「お、多すぎますよ!」
「今回が銀貨30枚。で、次回来るときに醤油三つに味噌一つを持ってきてくれ。計算合うだろ?」
「ですが来ない可能性も。」
「来るよな?」
「・・・来ます。」
「よし!あー、これで醤油と味噌を好きな時に味わえる。最高だな。」
「ほ、本当に西方の生まれじゃないんですよね?」
「あぁ、どっちかっていうと東方だな。」
信じられないという顔をした女達を無視して、俺は味噌をもう一度口に運んだ。
あぁ、最高だ。
こんな所で、こんなものに出会えるとは。
情けは人の為ならず。
良い事はするものだな。
そんな事を考えるのだった。
「気持ちいいですね。」
「あ゛~最高。」
「オッサンだな。」
「誰がオッサンよ!」
お前だよお前、とエリザにお湯をかけてやると10倍になって返って来た。
ったく、これだから脳筋は。
お湯をかけると湯面が揺れ、エリザの乳やミラの乳が良い感じに揺れる。
今更だが乳って浮くんだな。
囲いすら一切ない山のど真ん中。
そこにぽっかりと直径10m程の円形露天風呂が出来ていた。
そこから少し離れた所に持って来た天幕を張り、四方に魔除けを設置。
今はアネットとビアンカが飯の準備をしてくれている。
温泉はまた後で入るそうだ。
「やはり私も手伝いましょうか。」
「いや、本人たちがやるって言ってるんだやらせておけばいい。」
「そうですね。」
「ビアンカが恥ずかしくて入れないからアネットも付き合ってるんでしょ。奴隷なら主人の命令は絶対・・・って命令してなかったわね。」
「一緒に温泉に入れって?どこの変態上司だよ。」
そんな命令しなくてもいずれ入るしかない。
それだけの魅力がこの温泉にはある。
「あ゛~最高。」
「さっきも言ったわよ。」
「いいんだよ。」
オレンジ色に染まる山々を見ながら自分の女達を抱き、温泉に浸かる。
これ以上の至福があるか?
いや、ない。
「ちょっと、何触ってるのよ。」
「まずかったか?」
「そんなことないけど・・・。」
「シロウ様よろしければ私もいかがです?」
「あぁ、もちろんだ。」
くっついてきたミラの尻をお湯の中で堪能する。
このまま致したい気持ちはあるのだが・・・。
ま、それは飯を食ってからでいいだろう。
エリザも文句を言いながら揉ませてくれるんだよな。
二人ともいい女だ。
のぼせるギリギリまで温泉を堪能し、ホカホカのまま天幕に戻る。
丁度晩飯が出来上がったようで、机代わりの巨大な岩の上にはたくさんの料理が並んでいた。
「すごい量だな。」
「えへへ、頑張りました。」
「お二人とも有難うございます。」
「早速食べるか。」
湯冷めしないように毛布を羽織ってから椅子代わりの岩に座る。
最初は座れるような形をしていなかったのだが、エリザの斧にかかれば御覧の通りだ。
机も巨石を真っ二つに割って作り上げた。
今後ここを利用するのなら放置して帰っていいだろう。
「「「「いただきます。」」」」
簡易調理になるのでここまでの料理を期待していなかったのだが、ちゃんと前菜にサラダにメインと4品もの料理が並んでいた。
サラダなんかは来る途中で見つけた山菜?だ。
覚悟して食べてみたが思ったよりも苦くなく、ドレッシングがいい感じに効いている。
うん、美味い。
これなんかキュウリみたいな触感だ。
あー、ここに味噌があればもろキュウなんだが・・・。
残念ながらこの世界ではまだ醤油しかお目にかかっていない。
それも使い切ってしまったので寂しい限りだ。
大満足のディナーを終える頃にはすっかりと日が落ちてしまった。
焚火の明かりに照らされて温泉から立ち上る湯気がなんとまぁ美しい事。
それから二度ほど湯船を堪能し、心も体もホッカホカ。
後は寝るだけ・・・そう思っていた時だった。
ガサガサと離れた茂みから音がする。
いち早く気づいたエリザが横に置いていた斧を手に取った。
「魔物か?」
「一応魔物除けはしているけど、強い魔物だと偶に効かないのよね。」
「ミラ、アネット、後ろに下がれ。」
「ビアンカ、悪いけどフォロー宜しく。」
「は、はい!」
皆風呂上りなのでラフな格好だ。
それでいて重厚な武器を持っているというのは何ともアンバランスな感じだが、音はどんどんと大きくなりこちらに近づいてくるのが分かる。
ゴくりと唾をのみ、その時を待つ。
そして次の瞬間。
「た、たすけてください・・・。」
茂みから出てきた何かはそういうと、その場に倒れてしまった。
全員で顔を見合わせ、大きく息を吐く。
「魔物じゃなかったか。」
「そうみたいね。」
「とりあえず救助したい所だが・・・。その前に着替えからだな。」
「あ。」
「確かにこの格好を見られるのはよろしくありません。」
「ですね。」
漫画なんかだとなりふり構わず駆け寄るだろうが、残念ながらそれほど正義感があるわけじゃない。
声の感じから男だろう。
俺の女達の裸を他所の男に見せるなど・・・。
あれ?
俺ってこんなに独占欲強かったっけ。
まぁいいか。
皆が着替えている間に男をこっちまで引きずり、着替えの終わったビアンカとアネットに状態を確認してもらう。
大きな傷は無く、恐らくは疲労か何かで気を失ったんだろうという見解だった。
「この荷物の量から察するに行商人か?」
「何でこんな山奥に行商人がいるのよ。」
「さぁ、迷子になったとか。」
「魔物に追われてという可能性はありますね。」
「ふむ・・・。」
中肉中背、歳は20代後半って所か。
前の俺からしたら若造だが、今の俺からしたら年上になる。
ややこしいなぁ、もう。
「ん・・・。」
「シロウ様、気づかれたようです。」
「エリザ頼む。」
「任せて。」
盗賊の可能性もゼロじゃない。
いきなり襲われるって事もあり得るのでエリザにも一緒にきてもらった。
「こ、ここは?」
「山奥の温泉だよ。俺達が利用している所にアンタが茂みから出てきたんだ。」
「いたた・・・。あ、私の荷物は!」
「後ろに置いてある、心配するな手をつけちゃいない。」
「あぁ、よかった。」
覚醒してすぐに荷物を探すとは、よっぽど大事なものが入っているんだろう。
「助けて頂きありがとうございました。救いに神とはまさにこの事です。」
「なに、俺達は休暇に来ていただけだ。俺はシロウ、買取屋だ。あんたは?」
「ティナカです。行商人と言えばわかりますか?」
「田中?」
「もしかして西方の生まれですか?」
「いや、そうじゃないがそう聞こえただけだ。」
名前はそれっぽいがどう見ても日本人の顔じゃない。
アジアっぽい感じはあるが、どちらかというとベトナムとかそっち系の顔だ。
「てっきりご同郷の方かと思ってしまいましたよ。」
「期待させて悪かったな。」
「いえいえ、ここまで来る仲間はいないでしょう。私の場合は半分流浪の旅みたいなものですから。」
「流浪、何か探し物か?」
「いえ、単に世界を見てみたいだけです。」
と、本人は言っているがそんな単純な理由で魔物の溢れる世界を旅しようと思う者だろうか。
ま、俺には関係ないけどな。
「よかったら飯食っていくか?残り物で悪いんだが。」
「そんな!助けて頂いたばかりか食事まで頂くわけにはいきません。」
「いえ、こちらも食べて頂けると助かります。残ると魔物や獣が匂いに誘われてやってきますので。」
「って事だ、とりあえずゆっくりしてくれ。」
「ではお言葉に甘えて。」
テーブルまで案内して持ってきた酒をふるまってやる。
袖振り合うのも他生の縁ってね、たまには人助けをするのもいいだろう。
「美味しい。」
「だ、そうだ。」
「ありがとうございます。」
「実は山に入って二日、何も食べていなかったんです。がけ崩れでもあったのか道もわからなくなってしまい、オレンジ色の明かりが見えた時はがむしゃらに走っていました。」
「二日か、大変だったな。」
「本当に有難うございます。」
涙を流しながら料理を食べるティナカ。
二日か、ここに来る前の俺だったら早々に諦めているかもなぁ。
流石に他人のいる状況で真横の風呂に入るわけにはいかないので、今日は早めに寝ることにしよう。
村に送ってからもう一度戻ってきてもいい。
元々二日ぐらいは想定していたし、この温泉を一回で終わらせるのはもったいない。
「ふぅ、ごちそうさまでした。」
「満足したか?」
「はい、堪能させて頂きました。」
「明日の朝には村まで送ってやれるんだが、天幕は定員オーバーでな、寝る時は悪いがその毛布を使ってくれ。焚火の傍なら寒くないだろう。」
「十分です、ありがとうございます。」
「荷物も無事で何よりだった、次は迷うなよ。」
「そうします。っと、そうだよろしければ・・・。」
と、ティナカはカバンをさぐり何かの液体が入った瓶と木製の箱を取り出した。
「助けてもらったお礼です。よろしければお納めください。」
「これは?」
「西方で作られている調味料で醤油と味噌といいます。」
「醤油と味噌!」
思わず大きな声を出してしまった。
「ご存じなのですか?」
「もちろんだ。醤油は一度手に入れたが、そうか味噌まであるのか。あけていいか?」
「ど、どうぞ。」
俺の勢いにティナカが若干ビビっているが気にせず木箱を開ける。
中に入っていたのは茶色いペースト。
横に合ったスプーンで軽く表面をなぞり口に入れる。
あぁ、この味。
この風味。
間違いない、みそだ。
「美味い。」
「よかった、こちらの方にはあまりなじみのないものですから。」
「これを売って歩いているのか?」
「そうです。」
「いくらだ?」
「そんな、差し上げますよ。」
「良いからいくらだ?」
「えっと、醤油が一瓶銀貨20枚で味噌が一つ銀貨10枚です。」
高い。
高いが、俺には安い。
むしろその値段でこの味が買えるのであれば大安売りだ。
「そんなにするの?」
「向こうではそんなに高くないんですけど、ここまで持ってくる費用を勘案するとどうしても・・・。」
「買った。」
「いえ、差し上げます。」
「いいや、買う。そしてその金を持って向こうに戻ってまた卸しに来てくれ、ここまでどのぐらいかかる?」
「そうですね、二カ月ぐらいでしょうか。」
「わかった。また二か月後、持ってきてくれ。これがその分の支払いだ。」
男の前に金貨を一枚置く。
それを見て男が目を見開いた。
おいおい、目玉が落ちるぞ。
「お、多すぎますよ!」
「今回が銀貨30枚。で、次回来るときに醤油三つに味噌一つを持ってきてくれ。計算合うだろ?」
「ですが来ない可能性も。」
「来るよな?」
「・・・来ます。」
「よし!あー、これで醤油と味噌を好きな時に味わえる。最高だな。」
「ほ、本当に西方の生まれじゃないんですよね?」
「あぁ、どっちかっていうと東方だな。」
信じられないという顔をした女達を無視して、俺は味噌をもう一度口に運んだ。
あぁ、最高だ。
こんな所で、こんなものに出会えるとは。
情けは人の為ならず。
良い事はするものだな。
そんな事を考えるのだった。
7
お気に入りに追加
361
あなたにおすすめの小説
S級騎士の俺が精鋭部隊の隊長に任命されたが、部下がみんな年上のS級女騎士だった
ミズノみすぎ
ファンタジー
「黒騎士ゼクード・フォルス。君を竜狩り精鋭部隊【ドラゴンキラー隊】の隊長に任命する」
15歳の春。
念願のS級騎士になった俺は、いきなり国王様からそんな命令を下された。
「隊長とか面倒くさいんですけど」
S級騎士はモテるって聞いたからなったけど、隊長とかそんな重いポジションは……
「部下は美女揃いだぞ?」
「やらせていただきます!」
こうして俺は仕方なく隊長となった。
渡された部隊名簿を見ると隊員は俺を含めた女騎士3人の計4人構成となっていた。
女騎士二人は17歳。
もう一人の女騎士は19歳(俺の担任の先生)。
「あの……みんな年上なんですが」
「だが美人揃いだぞ?」
「がんばります!」
とは言ったものの。
俺のような若輩者の部下にされて、彼女たちに文句はないのだろうか?
と思っていた翌日の朝。
実家の玄関を部下となる女騎士が叩いてきた!
★のマークがついた話数にはイラストや4コマなどが後書きに記載されています。
※2023年11月25日に書籍が発売!
イラストレーターはiltusa先生です!
※コミカライズも進行中!
最遅で最強のレベルアップ~経験値1000分の1の大器晩成型探索者は勤続10年目10度目のレベルアップで覚醒しました!~
ある中管理職
ファンタジー
勤続10年目10度目のレベルアップ。
人よりも貰える経験値が極端に少なく、年に1回程度しかレベルアップしない32歳の主人公宮下要は10年掛かりようやくレベル10に到達した。
すると、ハズレスキル【大器晩成】が覚醒。
なんと1回のレベルアップのステータス上昇が通常の1000倍に。
チートスキル【ステータス上昇1000】を得た宮下はこれをきっかけに、今まで出会う事すら想像してこなかったモンスターを討伐。
探索者としての知名度や地位を一気に上げ、勤めていた店は討伐したレアモンスターの肉と素材の販売で大繁盛。
万年Fランクの【永遠の新米おじさん】と言われた宮下の成り上がり劇が今幕を開ける。
辺境の最強魔導師 ~魔術大学を13歳で首席卒業した私が辺境に6年引きこもっていたら最強になってた~
日の丸
ファンタジー
ウィーラ大陸にある大国アクセリア帝国は大陸の約4割の国土を持つ大国である。
アクセリア帝国の帝都アクセリアにある魔術大学セルストーレ・・・・そこは魔術師を目指す誰もが憧れそして目指す大学・・・・その大学に13歳で首席をとるほどの天才がいた。
その天才がセレストーレを卒業する時から物語が始まる。
やさしい異世界転移
みなと
ファンタジー
妹の誕生日ケーキを買いに行く最中 謎の声に導かれて異世界へと転移してしまった主人公
神洞 優斗。
彼が転移した世界は魔法が発達しているファンタジーの世界だった!
元の世界に帰るまでの間優斗は学園に通い平穏に過ごす事にしたのだが……?
この時の優斗は気付いていなかったのだ。
己の……いや"ユウト"としての逃れられない定めがすぐ近くまで来ている事に。
この物語は 優斗がこの世界で仲間と出会い、共に様々な困難に立ち向かい希望 絶望 別れ 後悔しながらも進み続けて、英雄になって誰かに希望を託すストーリーである。
おっさんの神器はハズレではない
兎屋亀吉
ファンタジー
今日も元気に満員電車で通勤途中のおっさんは、突然異世界から召喚されてしまう。一緒に召喚された大勢の人々と共に、女神様から一人3つの神器をいただけることになったおっさん。はたしておっさんは何を選ぶのか。おっさんの選んだ神器の能力とは。
ブラックギルドマスターへ、社畜以下の道具として扱ってくれてあざーす!お陰で転職した俺は初日にSランクハンターに成り上がりました!
仁徳
ファンタジー
あらすじ
リュシアン・プライムはブラックハンターギルドの一員だった。
彼はギルドマスターやギルド仲間から、常人ではこなせない量の依頼を押し付けられていたが、夜遅くまで働くことで全ての依頼を一日で終わらせていた。
ある日、リュシアンは仲間の罠に嵌められ、依頼を終わらせることができなかった。その一度の失敗をきっかけに、ギルドマスターから無能ハンターの烙印を押され、クビになる。
途方に暮れていると、モンスターに襲われている女性を彼は見つけてしまう。
ハンターとして襲われている人を見過ごせないリュシアンは、モンスターから女性を守った。
彼は助けた女性が、隣町にあるハンターギルドのギルドマスターであることを知る。
リュシアンの才能に目をつけたギルドマスターは、彼をスカウトした。
一方ブラックギルドでは、リュシアンがいないことで依頼達成の効率が悪くなり、依頼は溜まっていく一方だった。ついにブラックギルドは町の住民たちからのクレームなどが殺到して町民たちから見放されることになる。
そんな彼らに反してリュシアンは新しい職場、新しい仲間と出会い、ブッラックギルドの経験を活かして最速でギルドランキング一位を獲得し、ギルドマスターや町の住民たちから一目置かれるようになった。
これはブラックな環境で働いていた主人公が一人の女性を助けたことがきっかけで人生が一変し、ホワイトなギルド環境で最強、無双、ときどきスローライフをしていく物語!
[鑑定]スキルしかない俺を追放したのはいいが、貴様らにはもう関わるのはイヤだから、さがさないでくれ!
どら焼き
ファンタジー
ついに!第5章突入!
舐めた奴らに、真実が牙を剥く!
何も説明無く、いきなり異世界転移!らしいのだが、この王冠つけたオッサン何を言っているのだ?
しかも、ステータスが文字化けしていて、スキルも「鑑定??」だけって酷くない?
訳のわからない言葉?を発声している王女?と、勇者らしい同級生達がオレを城から捨てやがったので、
なんとか、苦労して宿代とパン代を稼ぐ主人公カザト!
そして…わかってくる、この異世界の異常性。
出会いを重ねて、なんとか元の世界に戻る方法を切り開いて行く物語。
主人公の直接復讐する要素は、あまりありません。
相手方の、あまりにも酷い自堕落さから出てくる、ざまぁ要素は、少しづつ出てくる予定です。
ハーレム要素は、不明とします。
復讐での強制ハーレム要素は、無しの予定です。
追記
2023/07/21 表紙絵を戦闘モードになったあるヤツの参考絵にしました。
8月近くでなにが、変形するのかわかる予定です。
2024/02/23
アルファポリスオンリーを解除しました。
異世界召喚に条件を付けたのに、女神様に呼ばれた
りゅう
ファンタジー
異世界召喚。サラリーマンだって、そんな空想をする。
いや、さすがに大人なので空想する内容も大人だ。少年の心が残っていても、現実社会でもまれた人間はまた別の空想をするのだ。
その日の神岡龍二も、日々の生活から離れ異世界を想像して遊んでいるだけのハズだった。そこには何の問題もないハズだった。だが、そんなお気楽な日々は、この日が最後となってしまった。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる