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248.転売屋は鑑定スキルで真実を暴き出す
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その人物は店の前から一歩も動こうとしなかった。
酸っぱい臭いがあたりに広がる。
夏ならまだしも冬でコレってよっぽど過酷な状況だったんだろうか。
汗と尿と色々なものが混ざった臭いだ。
関りたくないがそこに居られても営業妨害なんだよね。
仕方ない、声をかけるか。
「おい、そこに居られると営業妨害なんだが?」
「・・・・・・。」
「おい、聞いてるのか?」
触りたくないがそいつの方を引張ると思った以上に簡単にこちらを向いた。
そいつの顔を見て理解する。
普通じゃない。
無理やり引張られたというのに怒るわけでもなく、そもそもこちらに気付いていない。
意識は明後日の方を向き、口からはよだれが出ている。
「アンタ、大丈夫か?」
「あ、え、い・・・。」
やっと俺のを認識したと思ったら、なにやら良くわからない事を言う。
何かを伝えたいけど言えない、そんな感じだ。
厄介な相手に関ってしまったと思う半面、何とかしてやらねば、とも思ってしまう。
なぜだろうか。
「しゃべれない、違うな、わからないのか。」
「え、い、ホ、ホリ、ア。」
「ん、ホリア?」
「い、い、いな、い、ない。」
「ここには居ない、そう言いたいのか?あーもう、この臭い勘弁してくれ。ちょっとこい!」
全身から発する臭いに我慢も限界だ。
とはいえ家の風呂にいれるわけにも行かないので、無理やり手を引張って店の中を横切り裏庭に誘導する。
店に入れた瞬間のミラの顔といったら、なかなかレアな顔を見た気がする。
って今はそんな暇なかった。
裏庭の真ん中にレンガをコの字型に三段ほど並べ、その上に2m四方の鉄板を置いてさらに木箱を乗せる。
木箱の中には風蜥蜴ではなく火炎蜥蜴の皮膜を隙間なく被せて水の魔道具で水を入れる。
下には大量の薪を突っ込んで、火の間道具を点ければあっという間に即席風呂の完成だ。
あ、コの字型のレンガは二箇所ほど隙間を空けるのを忘れちゃいけないな。
これでよしっと。
「シロウ様?」
「店内の消臭はグリーンスライムの核を大量に置いて何とかしてくれ、なんなら柑橘系の香水を使っても構わない。」
「それはいいですけど、その方は?」
「まったく、面倒な事をしたもんだ。」
何事か分かっていない男は簡易風呂の火を見つめながら三角座りをしていた。
早く風呂に入れたいがこの時期に水風呂は死んでしまう。
ガキ共に夏場プール代わりに使っていた奴だが、即席の割りにいい感じじゃないか。
30分ほどでいい感じのお湯になったので、火を弱めて服のままそいつをぶち込んだ。
「いいか、そのままじっとしてろよ。寒くないだろ?」
まるでとろけたような顔をしている。
臭いさえ取れれば後は冒険者ギルドに任せればなんとかしてくれるはずだ。
あの筋肉、そして唯一ぶら下げていた血糊だらけの剣。
あれで冒険者じゃなかったら何だってんだ。
「シロウ様、お客様です。」
「客?」
「申し訳ありませんが、私では対処出来そうになくて・・・。」
「わかった、すぐ行く。」
このタイミングで客か。
まぁあの様子だと当分は大丈夫だろう。
男から目線をそらして店に行くと、まるでヤクザと見紛う強面の男が、腕を組んで立っていた。
どう見てもカタギじゃないな。
前の世界でも何度かお会いしたが、雰囲気が明らかに違う。
「遅いぞ、何時まで待たせるんだ。」
「どうもお待たせしました。」
「それにこの臭い、お前の店は獣でも飼ってるのか?」
「魔物の素材が集まるとこういう臭いになります。消臭剤はまいているんですけど。」
面倒事はごめんなので珍しく下手に出る。
「まぁいい、コレを買取ってくれ大至急だ。」
「随分と多いですね。」
「グダグダ言うな、お前は仕事をすればいいんだよ。」
「お急ぎでしたら前の質屋が早いですよ。」
「あのメス猫、人を盗人呼ばわりしやがって・・・。ってそんな事はどうでもいいんだよ!」
ふむ、ベルナの店に入ったものの追い返されたか。
こりゃワケありもワケありって感じだな。
カウンターの上に並べられたのは魔物の素材などではなく装備品ばかりだった。
しかもどれも中古品だ。
『隕鉄の片手斧。火の属性が付与されている。鉄より硬い隕鉄はその重さと鋭さで敵を切り裂く。最近の平均取引価格は金貨3枚、最安値金貨1枚と銀貨85枚、最高値金貨5枚と銀貨37枚。最終取引日は209日前と記録されています。』
『銀の手甲。純銀で出来ており、邪悪なる物を近付けない効果がある。ひびが入っている。最近の平均取引価格は銀貨90枚、最安値銀貨55枚、最高値金貨1枚。最終取引日は154日前と記録されています。』
「ランドドラゴンの革靴。伸縮性に優れており且つ断裂しにくいランドドラゴンの革を使用しており、見た目以上に丈夫。呪われている。最近の平均取引価格は金貨1枚と銀貨45枚、最安値金貨1枚、最高値金貨2枚と銀貨33枚。最終取引日は209日前と記録されています。」
どれもついこの間まで使っていた、そんな汚れや返り血がついたままだ。
革靴にいたっては呪われてるし。
解呪しないと脱げないはずなんだけどなぁ・・・。
「どれも良い品ばかりですね、新しいのを買われたんですか?」
「どうでも良いだろ。」
「まぁ、そうですね。コレですと全部で・・・金貨2枚でしょうか。」
「はぁ!?安すぎるだろ!ぼったくってんのか!」
「いえいえ、確かに物は良いですが手甲にはヒビがありますし革靴は呪われています。普通に売れない以上どうしてもねぇ・・・。」
「げ、呪われてるのか。」
どうやって脱いだのかとツッコミをいれてもいいが、めんどくさいのでスルーだ。
「じゃあコレはどうだ?」
男が再び皮袋をあさり、中から鎧を取り出した。
鎧の横には小さなベルが付いている。
『聖銀の鎧。聖王騎士団の団員のみが身に着けることができる重厚な鎧。聖属性が付与されている。最近の平均取引価格は金貨5枚、最安値金貨2枚と銀貨45枚、最高値金貨5枚。最終取引日は209日前と記録されています。』
『共鳴の鐘。一対になっておりお互いがお互いを呼び合うことが出来る。持ち主が死んだ場合はそれぞれの鐘は壊れてしまう。持ち主以外が振っても音はならない。最近の平均取引価格は銀貨30枚、最安値銀貨15枚、最高値銀貨56枚。最終取引日は72日前と記録されています。』
「ほぉ、これは・・・。」
「中々の品だろ?」
「これも貴方が?」
「あぁ、新しいのを手に入れたからな。で、いくらになる?」
どう考えてもコイツが犯人だ。
あの盾を見ていなかったらなんとも思わなかっただろうが・・・。
どうする?
下手に警戒すれば逃げられるが、買い取ったら買い取ったで面倒な事になる。
いや、買い取っておいてあの聖騎士が来たら返すという手もあるが、そうすると丸々大損だ。
買取金額ぐらい返してもらえない事も無いだろうが、絶対ではない。
それに、この鎧も盗んだものじゃなくて本当に本人のものかもしれないし・・・。
まぁ、可能性は低いかもしれないがゼロじゃない。
「聖銀は中々お目にかかれません。金貨2枚、それとこの鐘が銀貨10枚ですね。」
「鐘?」
「横についてましたよ。」
紐を外して手渡してみる。
持ち主では無いので勿論音は鳴らなかった。
「壊れてるじゃねぇか、でもまぁ金になるなら買ってくれ。」
受け取りはするも振っても音は鳴らない。
はい、犯人確定。
ここで鳴れば何も気にせず買取れた物を・・・。
あーめんどくさいめんどくさい。
「全部で金貨4枚と銀貨10枚です。それ以上では買取れませんので他を当ってください。」
「他にあんのか?」
「残念ながら。でも冒険者ギルドでも買取してますから、聞いてみたらどうですか?」
「ギルドなんかにいけるか、わかったそれで買い取れ。」
「毎度有難う御座います、いま代金を持ってきますので。」
エリザが居たらどうにかなったかもしれないが、俺とミラだけじゃどうにもならない。
下手に刺激して襲われるぐらいなら、申し訳ないが逃がすしかないだろう。
一応買取後にギルドへは報告するが・・・。
こういう時監視カメラとかあれば楽なんだけどなぁ。
装備を持って裏に入る。
「ミラ、あの男の顔と服装覚えておけ。」
「え?」
「犯人だ。とはいえ俺達ではどうにもならないから帰ったら直ぐギルド協会へ走ってくれ。」
「わかりました。」
力強くミラが頷く。
男はソワソワと辺りを見渡している。
さっきまでの強気はハッタリか?
ミラと二人で裏口から男を見ていたその時だった。
「あ、う、あ・・・。」
「っとぉ!」
突然耳元で変な声が聞こえたので慌てて飛び上がってしまった。
拍子に装備品を落としてしまう。
ガシャン!カラカラと派手な音を立てて床を転がっていく。
「どうした!」
「すみません、手が滑って。」
「早くしてくれ、時間が無いんだ。」
「すぐに行きます。」
冷静に返事したが、心臓はバクバクだ。
後ろを振り返ると良い感じに茹で上がり、程よく臭いの取れたイケメンが全裸で立っている。
ミラが両手で顔を覆っていた。
へぇ、こんな反応するんだな・・・ってそうじゃない。
その男はおもむろに転がってきた鎧に手をかけ持ち上げる。
すると、先程まで鳴らなかった鐘がチリンと小さな音をたてた。
え、まさかこの人が?
てっきり死んだものと思っていたが、よく考えれば死んだら鐘はこわれるはずだ。
さっき鑑定スキルでそう出てきた。
ってことはだ、この人が持ち主でも何の違和感もないんだが・・・。
何があってこうなったのかは聞かない方が良いだろ。
っていうか、今犯人とあわせるのはまずい、非常にまずい。
さっさと金を渡してお引取りねが・・・。
カランカラン。
全裸男はボーっと鎧を持ったまま固まっている。
犯人はイライラしながら金を待っている。
その状態で、外の扉が開き客が入ってきた。
なんで今来るかね。
「おい、ここに鐘があるだろ!」
「誰だお前。」
「いいから答えろ!」
入ってきて早々その人は犯人に向って行く。
勘弁してくれ。
刺されたらどうするんだよ。
俺は乱雑に金の入った袋を持ち店に戻る。
そして・・・
「ホリアさん、一体何事ですか?」
犯人の胸倉を掴んでいるホリアにそう問いかけた。
酸っぱい臭いがあたりに広がる。
夏ならまだしも冬でコレってよっぽど過酷な状況だったんだろうか。
汗と尿と色々なものが混ざった臭いだ。
関りたくないがそこに居られても営業妨害なんだよね。
仕方ない、声をかけるか。
「おい、そこに居られると営業妨害なんだが?」
「・・・・・・。」
「おい、聞いてるのか?」
触りたくないがそいつの方を引張ると思った以上に簡単にこちらを向いた。
そいつの顔を見て理解する。
普通じゃない。
無理やり引張られたというのに怒るわけでもなく、そもそもこちらに気付いていない。
意識は明後日の方を向き、口からはよだれが出ている。
「アンタ、大丈夫か?」
「あ、え、い・・・。」
やっと俺のを認識したと思ったら、なにやら良くわからない事を言う。
何かを伝えたいけど言えない、そんな感じだ。
厄介な相手に関ってしまったと思う半面、何とかしてやらねば、とも思ってしまう。
なぜだろうか。
「しゃべれない、違うな、わからないのか。」
「え、い、ホ、ホリ、ア。」
「ん、ホリア?」
「い、い、いな、い、ない。」
「ここには居ない、そう言いたいのか?あーもう、この臭い勘弁してくれ。ちょっとこい!」
全身から発する臭いに我慢も限界だ。
とはいえ家の風呂にいれるわけにも行かないので、無理やり手を引張って店の中を横切り裏庭に誘導する。
店に入れた瞬間のミラの顔といったら、なかなかレアな顔を見た気がする。
って今はそんな暇なかった。
裏庭の真ん中にレンガをコの字型に三段ほど並べ、その上に2m四方の鉄板を置いてさらに木箱を乗せる。
木箱の中には風蜥蜴ではなく火炎蜥蜴の皮膜を隙間なく被せて水の魔道具で水を入れる。
下には大量の薪を突っ込んで、火の間道具を点ければあっという間に即席風呂の完成だ。
あ、コの字型のレンガは二箇所ほど隙間を空けるのを忘れちゃいけないな。
これでよしっと。
「シロウ様?」
「店内の消臭はグリーンスライムの核を大量に置いて何とかしてくれ、なんなら柑橘系の香水を使っても構わない。」
「それはいいですけど、その方は?」
「まったく、面倒な事をしたもんだ。」
何事か分かっていない男は簡易風呂の火を見つめながら三角座りをしていた。
早く風呂に入れたいがこの時期に水風呂は死んでしまう。
ガキ共に夏場プール代わりに使っていた奴だが、即席の割りにいい感じじゃないか。
30分ほどでいい感じのお湯になったので、火を弱めて服のままそいつをぶち込んだ。
「いいか、そのままじっとしてろよ。寒くないだろ?」
まるでとろけたような顔をしている。
臭いさえ取れれば後は冒険者ギルドに任せればなんとかしてくれるはずだ。
あの筋肉、そして唯一ぶら下げていた血糊だらけの剣。
あれで冒険者じゃなかったら何だってんだ。
「シロウ様、お客様です。」
「客?」
「申し訳ありませんが、私では対処出来そうになくて・・・。」
「わかった、すぐ行く。」
このタイミングで客か。
まぁあの様子だと当分は大丈夫だろう。
男から目線をそらして店に行くと、まるでヤクザと見紛う強面の男が、腕を組んで立っていた。
どう見てもカタギじゃないな。
前の世界でも何度かお会いしたが、雰囲気が明らかに違う。
「遅いぞ、何時まで待たせるんだ。」
「どうもお待たせしました。」
「それにこの臭い、お前の店は獣でも飼ってるのか?」
「魔物の素材が集まるとこういう臭いになります。消臭剤はまいているんですけど。」
面倒事はごめんなので珍しく下手に出る。
「まぁいい、コレを買取ってくれ大至急だ。」
「随分と多いですね。」
「グダグダ言うな、お前は仕事をすればいいんだよ。」
「お急ぎでしたら前の質屋が早いですよ。」
「あのメス猫、人を盗人呼ばわりしやがって・・・。ってそんな事はどうでもいいんだよ!」
ふむ、ベルナの店に入ったものの追い返されたか。
こりゃワケありもワケありって感じだな。
カウンターの上に並べられたのは魔物の素材などではなく装備品ばかりだった。
しかもどれも中古品だ。
『隕鉄の片手斧。火の属性が付与されている。鉄より硬い隕鉄はその重さと鋭さで敵を切り裂く。最近の平均取引価格は金貨3枚、最安値金貨1枚と銀貨85枚、最高値金貨5枚と銀貨37枚。最終取引日は209日前と記録されています。』
『銀の手甲。純銀で出来ており、邪悪なる物を近付けない効果がある。ひびが入っている。最近の平均取引価格は銀貨90枚、最安値銀貨55枚、最高値金貨1枚。最終取引日は154日前と記録されています。』
「ランドドラゴンの革靴。伸縮性に優れており且つ断裂しにくいランドドラゴンの革を使用しており、見た目以上に丈夫。呪われている。最近の平均取引価格は金貨1枚と銀貨45枚、最安値金貨1枚、最高値金貨2枚と銀貨33枚。最終取引日は209日前と記録されています。」
どれもついこの間まで使っていた、そんな汚れや返り血がついたままだ。
革靴にいたっては呪われてるし。
解呪しないと脱げないはずなんだけどなぁ・・・。
「どれも良い品ばかりですね、新しいのを買われたんですか?」
「どうでも良いだろ。」
「まぁ、そうですね。コレですと全部で・・・金貨2枚でしょうか。」
「はぁ!?安すぎるだろ!ぼったくってんのか!」
「いえいえ、確かに物は良いですが手甲にはヒビがありますし革靴は呪われています。普通に売れない以上どうしてもねぇ・・・。」
「げ、呪われてるのか。」
どうやって脱いだのかとツッコミをいれてもいいが、めんどくさいのでスルーだ。
「じゃあコレはどうだ?」
男が再び皮袋をあさり、中から鎧を取り出した。
鎧の横には小さなベルが付いている。
『聖銀の鎧。聖王騎士団の団員のみが身に着けることができる重厚な鎧。聖属性が付与されている。最近の平均取引価格は金貨5枚、最安値金貨2枚と銀貨45枚、最高値金貨5枚。最終取引日は209日前と記録されています。』
『共鳴の鐘。一対になっておりお互いがお互いを呼び合うことが出来る。持ち主が死んだ場合はそれぞれの鐘は壊れてしまう。持ち主以外が振っても音はならない。最近の平均取引価格は銀貨30枚、最安値銀貨15枚、最高値銀貨56枚。最終取引日は72日前と記録されています。』
「ほぉ、これは・・・。」
「中々の品だろ?」
「これも貴方が?」
「あぁ、新しいのを手に入れたからな。で、いくらになる?」
どう考えてもコイツが犯人だ。
あの盾を見ていなかったらなんとも思わなかっただろうが・・・。
どうする?
下手に警戒すれば逃げられるが、買い取ったら買い取ったで面倒な事になる。
いや、買い取っておいてあの聖騎士が来たら返すという手もあるが、そうすると丸々大損だ。
買取金額ぐらい返してもらえない事も無いだろうが、絶対ではない。
それに、この鎧も盗んだものじゃなくて本当に本人のものかもしれないし・・・。
まぁ、可能性は低いかもしれないがゼロじゃない。
「聖銀は中々お目にかかれません。金貨2枚、それとこの鐘が銀貨10枚ですね。」
「鐘?」
「横についてましたよ。」
紐を外して手渡してみる。
持ち主では無いので勿論音は鳴らなかった。
「壊れてるじゃねぇか、でもまぁ金になるなら買ってくれ。」
受け取りはするも振っても音は鳴らない。
はい、犯人確定。
ここで鳴れば何も気にせず買取れた物を・・・。
あーめんどくさいめんどくさい。
「全部で金貨4枚と銀貨10枚です。それ以上では買取れませんので他を当ってください。」
「他にあんのか?」
「残念ながら。でも冒険者ギルドでも買取してますから、聞いてみたらどうですか?」
「ギルドなんかにいけるか、わかったそれで買い取れ。」
「毎度有難う御座います、いま代金を持ってきますので。」
エリザが居たらどうにかなったかもしれないが、俺とミラだけじゃどうにもならない。
下手に刺激して襲われるぐらいなら、申し訳ないが逃がすしかないだろう。
一応買取後にギルドへは報告するが・・・。
こういう時監視カメラとかあれば楽なんだけどなぁ。
装備を持って裏に入る。
「ミラ、あの男の顔と服装覚えておけ。」
「え?」
「犯人だ。とはいえ俺達ではどうにもならないから帰ったら直ぐギルド協会へ走ってくれ。」
「わかりました。」
力強くミラが頷く。
男はソワソワと辺りを見渡している。
さっきまでの強気はハッタリか?
ミラと二人で裏口から男を見ていたその時だった。
「あ、う、あ・・・。」
「っとぉ!」
突然耳元で変な声が聞こえたので慌てて飛び上がってしまった。
拍子に装備品を落としてしまう。
ガシャン!カラカラと派手な音を立てて床を転がっていく。
「どうした!」
「すみません、手が滑って。」
「早くしてくれ、時間が無いんだ。」
「すぐに行きます。」
冷静に返事したが、心臓はバクバクだ。
後ろを振り返ると良い感じに茹で上がり、程よく臭いの取れたイケメンが全裸で立っている。
ミラが両手で顔を覆っていた。
へぇ、こんな反応するんだな・・・ってそうじゃない。
その男はおもむろに転がってきた鎧に手をかけ持ち上げる。
すると、先程まで鳴らなかった鐘がチリンと小さな音をたてた。
え、まさかこの人が?
てっきり死んだものと思っていたが、よく考えれば死んだら鐘はこわれるはずだ。
さっき鑑定スキルでそう出てきた。
ってことはだ、この人が持ち主でも何の違和感もないんだが・・・。
何があってこうなったのかは聞かない方が良いだろ。
っていうか、今犯人とあわせるのはまずい、非常にまずい。
さっさと金を渡してお引取りねが・・・。
カランカラン。
全裸男はボーっと鎧を持ったまま固まっている。
犯人はイライラしながら金を待っている。
その状態で、外の扉が開き客が入ってきた。
なんで今来るかね。
「おい、ここに鐘があるだろ!」
「誰だお前。」
「いいから答えろ!」
入ってきて早々その人は犯人に向って行く。
勘弁してくれ。
刺されたらどうするんだよ。
俺は乱雑に金の入った袋を持ち店に戻る。
そして・・・
「ホリアさん、一体何事ですか?」
犯人の胸倉を掴んでいるホリアにそう問いかけた。
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