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238.転売屋は子供に囲まれる
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「じゃあ今日も行ってくるわ。」
「例のアレは持った?」
「あぁ、ポケットに入れてある。」
「子供たち喜びますよ!」
「喜ぶのは三人の作った菓子の方だと思うがな。じゃあ、後はよろしく。」
13月も終わりに近づいてきた。
ほんと一か月なんてあっという間だな。
今月は特にあれやこれやと大忙しだったからかもしれない。
来月はもう少しおとなしいと良いんだが・・・。
冬も残り一か月、あっという間に春が来るんだろうなぁ。
そんなことを考えながら向かったのは教会。
そう、今日は月に一度のご褒美の日だ。
といってもご褒美なのは子供達にとってはだが。
「はいるぞ~。」
「あ、シロウだ!」
「モニカ!シロウ来たよ!」
「早くしないと帰っちゃうよ!」
「いや、帰らないから。」
何で来て早々帰らなきゃならないんだ。
足元に群がって来る子供達を引きずるようにして中央の祭壇まで行くと、申し訳なさそうな顔をしたモニカが待っていた。
ん?
何かいつもと違うな。
例の香水か?
いや、もっと別の何かだ。
「そうか、髪飾りを変えたのか。」
「ほら~、すぐにわかったでしょ?」
「さすがシロウ!」
「おっとこまえ~。」
「お前らそんなのどこで覚えて来るんだよ。」
「え、裏のオバちゃん達。」
「オバちゃんじゃないよ奥様だよ、間違えると怒られるんだから気をつけなよね!」
まぁそんな事だろうと思ったよ。
モニカの前髪には珍しく飾り石の付いた髪飾りが止まっていた。
銀色で中央に白い石、その両隣に青い石が埋め込まれている。
宝石ではないだろうがステンドグラスから入ってくる光に照らされてキラキラと光っていた。
「良く似合ってるじゃないか。」
「あ、ありがとうございます。」
「よかったね、モニカ!」
「シロウに見てもらえたね!」
「もう茶化さないで。」
「あんまり虐めてやるなよ、お前らの面倒を見られるのはモニカしかいないんだからな。」
「え~、僕たち稼いでるよ?」
「一人暮らし出来るぐらいに稼げるようになってから言え、月銀貨25枚がノルマだぞ。」
「むり~!」
この街は物価はそんなに高くないが家賃が高いんだよな。
っていうか賃貸物件がほとんどない。
あってもかなりの高額。
だから冒険者は安宿に泊まっているっていうわけだ。
「なら今はありがたく住まわせてもらっとけ。ほら、いつものヤツ出せよ。」
「「「「は~い!」」」」
ガキ共が街の手伝いをしてもらった勲章を確認し、代わりに女達の作った菓子を渡してやる。
そして勲章分の銀貨を聖水の入った杯に沈めた。
「今月もありがとうございます。」
「今回は少なめだな。」
「皆シロウ様の畑やほかの仕事を頑張っていますから。」
「あぁ、だからか。」
「少ない稼ぎの中からちゃんと教会にお金を入れてくれるんです。あんなに小さかった子供達が・・・。」
「それもモニカの教育のおかげだろう。」
「そんなことありません。シロウ様や町の皆様がお優しいからです。」
俺が優しい?
何の冗談だろうか。
安い労働力で稼いでいる悪徳商人だぞ?
「まぁ、涙を流すのは奴らがここを出た時でいいだろう。っとそうだったそうだった。」
いつものお菓子を渡してすっかり満足していた。
鞄を漁り小さな包みを取り出す。
中には四角くて茶色い物が風蜥蜴の被膜にくるまれていた。
昨日仕込んでおいたお菓子だ。
「これは?」
「まぁ食べてみろ。」
「では遠慮なく。」
何の危機感も持たずに渡された物を食べるのはよろしくないと思うんだが・・・。
まぁ何もし込んでないけどさ。
「甘い!」
「その反応は中々だな。じゃあこっちは?」
「こっちは・・・あれ、同じ甘さですがこちらの方が控えめですね。」
「どっちが好みだ?」
「私は二つ目の方が好きです。でも子供達は最初の方を好むでしょうね。」
「そうか、やっぱり甘すぎるか。」
「何を入れたんですか?」
「蟻砂糖を入れてみたんだが、思ったよりも甘くなりすぎてな。普通の砂糖の方が大人は喜ぶだろう。」
「なんて高価な物を・・・。ありがとうございます。」
モニカに食べさせたのはキャラメルだ。
これも記憶をたどって何とか思い出せたお菓子の一つ。
残念ながらそれ以外のお菓子を思い出すことはできなかった。
ちなみにこれと似たお菓子はもうあるようで、女達はさほど喜んでくれなかったが。
「あー!シロウが何か渡してる!」
「何々?食べ物!?」
「いや、さっきいつもの菓子は渡しただろ。」
「ってことはお菓子なんだ!」
「ちょうだいちょうだい!」
あっという間に足元にガキどもが群がって来た。
両手を上げて何とかキャラメルを死守するも身動きが取れない。
「とにかく渡すものは渡したからな、じゃあ!」
「あ、シロウが逃げた!」
「おいかけろ~!」
「まてまて~!」
どうして逃げたのかは俺にもわからない。
元々これはガキ共の為に作った物であって決してモニカだけという物ではなかったはずなのだが・・・。
まぁいいか。
教会を出ても子供達は俺の後を追いかけて来る。
足の速さでは負けないが、奴らは裏通りのプロ。
大通りを走るとどこからともなく前に現れて邪魔をしてくる。
「いい加減諦めろ!」
「お菓子ちょうだ~い!」
「にげるな~!」
「さっきやっただろ!」
「足りないもん!」
「食いすぎだろ!」
蟻砂糖を使ったクッキーだぞ?
それを一瞬で食い散らかしやがって。
もっとありがたみを持てよな!
とか考えながら走っていると、気付けば足は市場に向いていた。
そうだ、おっちゃんの店に匿ってもらおう。
全速力で市場を駆け抜け、おっちゃんの店に積まれた木箱の裏に身を隠す。
「おいおい何事だ。」
「いいから、匿ってくれ。」
「兄ちゃんなら構わないが・・・。」
「シロウいないね~。」
「何処いったんだろう。」
「近くにいるはず、もうちょっと探そう。」
「うん!お菓子の為だもんね。」
ガキ共の声が木箱の向こうから聞こえてきたが、なんとかやり過ごしたらしい。
「一体何なんだ?」
「奴らはこれを狙ってるんだよ。」
「なんだこれ。」
「おや珍しい、キャメルじゃないか。」
たばこか?
と、横からのぞき込んでくるおばちゃん。
「知ってるのか?」
「昔はよく作ってやったもんさ。お金もかからないし子供は好きだからね。」
「あぁカリルな。」
「色々な名前があるんだな。俺はキャラメルって呼んでる。」
どうやらごくありふれたお菓子のようだ。
二人に蟻砂糖の方を渡すと幸せそうに目じりを下げた。
「甘い、でも美味い。疲れた時に食うといいな。」
「こりゃ随分甘いね。え、蟻砂糖を使った?贅沢だねぇ、私は普通の方が好きだよ。」
「普通ならこっちだな。」
「うん、この味だ。やっぱりこれぐらいがちょうどいいよ。」
「この間買って行った牛乳とはちみつはこれになったってわけか。」
「そういう事。また作るから在庫があったら持ってきてくれ。」
「ん~次で品切れだなぁ。春過ぎになったらまた増えるからそれまで待ってくれ。」
蜂も花が咲かなければ蜜を確保できない。
致し方ないだろう。
無ければ南方から買い付けるという手もある。
花の種類によって味が違うらしいし、色々と探すのも面白いかもしれないな。
「あ、シロウ見つけた!」
「やべ!」
「にげるなー、まてー!」
悠長に話し込んでいるとまたガキ共に見つかってしまった。
慌てて逃げ出したが、突然前から出て来た人にぶつかりそうになり慌て止まる。
「あっぶねぇ。」
「やっとみつけました!」
と、ぶつかりそうになった誰かが俺の両手をしっかりとつかむ。
突然の事に反応できないでいると、ガキ共も足に絡まって来た。
ここまでか。
「シロウちょうだい!」
「わかったわかった!その代わり全部食べるなよ、教会に戻ってここに居ないやつらにも上げるんだぞ、わかったな?」
「は~い!」
仕方なく用意したキャラメルを渡すと、ガキどもは嬉しそうに帰って行った。
「で、アンタはいつまで手を握ってるんだ?」
「す、すみませんでした。」
慌ててその人・・・例のプリン職人が手を離し顔を赤らめている。
「別にいいんだが・・・。食うか?」
「え、あ、はい。いただきます。」
モニカもモニカだがこの人もこの人だな。
まったく、知らない男からもらったものを不用心に食べて・・・。
「美味しい。」
「だろ、それぐらいがちょうどいいんだよ。蟻砂糖は万能ってのは間違いだったようだ。」
「ですが量の問題では?少量でこの甘さなら材料費の節約になります。」
「節約できても単価は三倍、いや今は四倍か。割に合わねぇよ。」
「それもそうですね・・・。う~ん。」
腕を組み難しい顔をするドルチェ。
おいおい、往来のど真ん中だぞ。
それよりも店はどうした。
「考えるなら店に戻ってからにしたらどうだ?」
「そうします。あ、お店ですが無事に完売できましたありがとうございます師匠!」
「いや、師匠じゃないって前にも言っただろ?」
「こんな美味しいお菓子を作れるんですから師匠は師匠です!次はどうやったら美味しくなりますか?」
「カラメルを乗せてその上に生地を入れて冷やすと美味いぞ。」
「カラメル?」
「砂糖を溶かした水を煮詰めるやつだよ。」
「あぁ、カルメですね!」
そりゃ焼いた方・・・。
まぁ、なんでもいいや。
「黄色と茶色の二層が異なる味で二度楽しめるってわけだな。」
「さすが師匠!早速試してみます!」
だから師匠じゃないって・・・。
いつの間にかドルチェの師匠としてあがめられることになってしまった。
ま、情報料としてプリンの無料提供をしてもらっているから文句はないが、それぐらいしか菓子は知らないから勘弁して欲しい。
目の前で嬉しそうに笑うドルチェを見ながら俺は冷や汗を流すのだった。
「例のアレは持った?」
「あぁ、ポケットに入れてある。」
「子供たち喜びますよ!」
「喜ぶのは三人の作った菓子の方だと思うがな。じゃあ、後はよろしく。」
13月も終わりに近づいてきた。
ほんと一か月なんてあっという間だな。
今月は特にあれやこれやと大忙しだったからかもしれない。
来月はもう少しおとなしいと良いんだが・・・。
冬も残り一か月、あっという間に春が来るんだろうなぁ。
そんなことを考えながら向かったのは教会。
そう、今日は月に一度のご褒美の日だ。
といってもご褒美なのは子供達にとってはだが。
「はいるぞ~。」
「あ、シロウだ!」
「モニカ!シロウ来たよ!」
「早くしないと帰っちゃうよ!」
「いや、帰らないから。」
何で来て早々帰らなきゃならないんだ。
足元に群がって来る子供達を引きずるようにして中央の祭壇まで行くと、申し訳なさそうな顔をしたモニカが待っていた。
ん?
何かいつもと違うな。
例の香水か?
いや、もっと別の何かだ。
「そうか、髪飾りを変えたのか。」
「ほら~、すぐにわかったでしょ?」
「さすがシロウ!」
「おっとこまえ~。」
「お前らそんなのどこで覚えて来るんだよ。」
「え、裏のオバちゃん達。」
「オバちゃんじゃないよ奥様だよ、間違えると怒られるんだから気をつけなよね!」
まぁそんな事だろうと思ったよ。
モニカの前髪には珍しく飾り石の付いた髪飾りが止まっていた。
銀色で中央に白い石、その両隣に青い石が埋め込まれている。
宝石ではないだろうがステンドグラスから入ってくる光に照らされてキラキラと光っていた。
「良く似合ってるじゃないか。」
「あ、ありがとうございます。」
「よかったね、モニカ!」
「シロウに見てもらえたね!」
「もう茶化さないで。」
「あんまり虐めてやるなよ、お前らの面倒を見られるのはモニカしかいないんだからな。」
「え~、僕たち稼いでるよ?」
「一人暮らし出来るぐらいに稼げるようになってから言え、月銀貨25枚がノルマだぞ。」
「むり~!」
この街は物価はそんなに高くないが家賃が高いんだよな。
っていうか賃貸物件がほとんどない。
あってもかなりの高額。
だから冒険者は安宿に泊まっているっていうわけだ。
「なら今はありがたく住まわせてもらっとけ。ほら、いつものヤツ出せよ。」
「「「「は~い!」」」」
ガキ共が街の手伝いをしてもらった勲章を確認し、代わりに女達の作った菓子を渡してやる。
そして勲章分の銀貨を聖水の入った杯に沈めた。
「今月もありがとうございます。」
「今回は少なめだな。」
「皆シロウ様の畑やほかの仕事を頑張っていますから。」
「あぁ、だからか。」
「少ない稼ぎの中からちゃんと教会にお金を入れてくれるんです。あんなに小さかった子供達が・・・。」
「それもモニカの教育のおかげだろう。」
「そんなことありません。シロウ様や町の皆様がお優しいからです。」
俺が優しい?
何の冗談だろうか。
安い労働力で稼いでいる悪徳商人だぞ?
「まぁ、涙を流すのは奴らがここを出た時でいいだろう。っとそうだったそうだった。」
いつものお菓子を渡してすっかり満足していた。
鞄を漁り小さな包みを取り出す。
中には四角くて茶色い物が風蜥蜴の被膜にくるまれていた。
昨日仕込んでおいたお菓子だ。
「これは?」
「まぁ食べてみろ。」
「では遠慮なく。」
何の危機感も持たずに渡された物を食べるのはよろしくないと思うんだが・・・。
まぁ何もし込んでないけどさ。
「甘い!」
「その反応は中々だな。じゃあこっちは?」
「こっちは・・・あれ、同じ甘さですがこちらの方が控えめですね。」
「どっちが好みだ?」
「私は二つ目の方が好きです。でも子供達は最初の方を好むでしょうね。」
「そうか、やっぱり甘すぎるか。」
「何を入れたんですか?」
「蟻砂糖を入れてみたんだが、思ったよりも甘くなりすぎてな。普通の砂糖の方が大人は喜ぶだろう。」
「なんて高価な物を・・・。ありがとうございます。」
モニカに食べさせたのはキャラメルだ。
これも記憶をたどって何とか思い出せたお菓子の一つ。
残念ながらそれ以外のお菓子を思い出すことはできなかった。
ちなみにこれと似たお菓子はもうあるようで、女達はさほど喜んでくれなかったが。
「あー!シロウが何か渡してる!」
「何々?食べ物!?」
「いや、さっきいつもの菓子は渡しただろ。」
「ってことはお菓子なんだ!」
「ちょうだいちょうだい!」
あっという間に足元にガキどもが群がって来た。
両手を上げて何とかキャラメルを死守するも身動きが取れない。
「とにかく渡すものは渡したからな、じゃあ!」
「あ、シロウが逃げた!」
「おいかけろ~!」
「まてまて~!」
どうして逃げたのかは俺にもわからない。
元々これはガキ共の為に作った物であって決してモニカだけという物ではなかったはずなのだが・・・。
まぁいいか。
教会を出ても子供達は俺の後を追いかけて来る。
足の速さでは負けないが、奴らは裏通りのプロ。
大通りを走るとどこからともなく前に現れて邪魔をしてくる。
「いい加減諦めろ!」
「お菓子ちょうだ~い!」
「にげるな~!」
「さっきやっただろ!」
「足りないもん!」
「食いすぎだろ!」
蟻砂糖を使ったクッキーだぞ?
それを一瞬で食い散らかしやがって。
もっとありがたみを持てよな!
とか考えながら走っていると、気付けば足は市場に向いていた。
そうだ、おっちゃんの店に匿ってもらおう。
全速力で市場を駆け抜け、おっちゃんの店に積まれた木箱の裏に身を隠す。
「おいおい何事だ。」
「いいから、匿ってくれ。」
「兄ちゃんなら構わないが・・・。」
「シロウいないね~。」
「何処いったんだろう。」
「近くにいるはず、もうちょっと探そう。」
「うん!お菓子の為だもんね。」
ガキ共の声が木箱の向こうから聞こえてきたが、なんとかやり過ごしたらしい。
「一体何なんだ?」
「奴らはこれを狙ってるんだよ。」
「なんだこれ。」
「おや珍しい、キャメルじゃないか。」
たばこか?
と、横からのぞき込んでくるおばちゃん。
「知ってるのか?」
「昔はよく作ってやったもんさ。お金もかからないし子供は好きだからね。」
「あぁカリルな。」
「色々な名前があるんだな。俺はキャラメルって呼んでる。」
どうやらごくありふれたお菓子のようだ。
二人に蟻砂糖の方を渡すと幸せそうに目じりを下げた。
「甘い、でも美味い。疲れた時に食うといいな。」
「こりゃ随分甘いね。え、蟻砂糖を使った?贅沢だねぇ、私は普通の方が好きだよ。」
「普通ならこっちだな。」
「うん、この味だ。やっぱりこれぐらいがちょうどいいよ。」
「この間買って行った牛乳とはちみつはこれになったってわけか。」
「そういう事。また作るから在庫があったら持ってきてくれ。」
「ん~次で品切れだなぁ。春過ぎになったらまた増えるからそれまで待ってくれ。」
蜂も花が咲かなければ蜜を確保できない。
致し方ないだろう。
無ければ南方から買い付けるという手もある。
花の種類によって味が違うらしいし、色々と探すのも面白いかもしれないな。
「あ、シロウ見つけた!」
「やべ!」
「にげるなー、まてー!」
悠長に話し込んでいるとまたガキ共に見つかってしまった。
慌てて逃げ出したが、突然前から出て来た人にぶつかりそうになり慌て止まる。
「あっぶねぇ。」
「やっとみつけました!」
と、ぶつかりそうになった誰かが俺の両手をしっかりとつかむ。
突然の事に反応できないでいると、ガキ共も足に絡まって来た。
ここまでか。
「シロウちょうだい!」
「わかったわかった!その代わり全部食べるなよ、教会に戻ってここに居ないやつらにも上げるんだぞ、わかったな?」
「は~い!」
仕方なく用意したキャラメルを渡すと、ガキどもは嬉しそうに帰って行った。
「で、アンタはいつまで手を握ってるんだ?」
「す、すみませんでした。」
慌ててその人・・・例のプリン職人が手を離し顔を赤らめている。
「別にいいんだが・・・。食うか?」
「え、あ、はい。いただきます。」
モニカもモニカだがこの人もこの人だな。
まったく、知らない男からもらったものを不用心に食べて・・・。
「美味しい。」
「だろ、それぐらいがちょうどいいんだよ。蟻砂糖は万能ってのは間違いだったようだ。」
「ですが量の問題では?少量でこの甘さなら材料費の節約になります。」
「節約できても単価は三倍、いや今は四倍か。割に合わねぇよ。」
「それもそうですね・・・。う~ん。」
腕を組み難しい顔をするドルチェ。
おいおい、往来のど真ん中だぞ。
それよりも店はどうした。
「考えるなら店に戻ってからにしたらどうだ?」
「そうします。あ、お店ですが無事に完売できましたありがとうございます師匠!」
「いや、師匠じゃないって前にも言っただろ?」
「こんな美味しいお菓子を作れるんですから師匠は師匠です!次はどうやったら美味しくなりますか?」
「カラメルを乗せてその上に生地を入れて冷やすと美味いぞ。」
「カラメル?」
「砂糖を溶かした水を煮詰めるやつだよ。」
「あぁ、カルメですね!」
そりゃ焼いた方・・・。
まぁ、なんでもいいや。
「黄色と茶色の二層が異なる味で二度楽しめるってわけだな。」
「さすが師匠!早速試してみます!」
だから師匠じゃないって・・・。
いつの間にかドルチェの師匠としてあがめられることになってしまった。
ま、情報料としてプリンの無料提供をしてもらっているから文句はないが、それぐらいしか菓子は知らないから勘弁して欲しい。
目の前で嬉しそうに笑うドルチェを見ながら俺は冷や汗を流すのだった。
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