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234.転売屋は遺跡を見つける

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図書館に通いつめ、例の盃が旧王朝時代の祭器である事は確認が出来た。

何でも遥か彼方から何かを呼び出すために使ったのだとか。

だが、その祭事を行う為にはかなりの犠牲を伴うらしく、記録はほとんど残されていない。

ってのが今の所わかっている内容だ。

個人的にはふ~んって程度だが、まさかこれを使って俺が呼ばれたとかそういうのは無いよな?

呼び出したところで何が出来るわけでもなく、こうやって金儲けに精を出すしか能のない男だ。

それに七つ全部が土に埋もれていたわけだし、隠されていたと考えるのが妥当だろう。

まぁ、埋められていた場所は浅く土は固くなかったからそれ程前ではないというのも気がかりではあるが・・・。

「ただいま。」

「おかえりなさいませ。」

「なにかわかった?」

「わかったようなわからないような。ともかく大昔の大事な物ってのは間違いなさそうだな。」

「ふ~ん。」

お宝ではないと知りすぐに興味を無くすエリザ。

まぁ、脳筋かつ冒険者気質だし仕方ない。

「ではあれは・・・。」

「あれはあれで置いておくつもりだ。次のオークションにでも出せばそれなりの値段がつくだろう。」

「今の王家に献上される気はないのですね?」

「国王陛下とは多少のご縁があっただけでそこまで積極的に媚を売りたい相手ではない。それに、こんな事で連絡するのもあれだしな。必要であれば声をかけるさ。」

「献上しちゃったら稼げないもんね。」

「褒美は貰えるだろうがやっぱり売るに限るよな。」

願いの小石は連絡する必要があるが、そうでないのならワザワザこっちからアポを取る必要はない。

好きにやらせてもらうさ。

「で、そっちはどうだった?」

「シロウの見つけた場所はこっちでも確認できたけど、目ぼしい物は無かったみたい。」

「そうか、あれだけか。」

「でもね!近くに同じような場所が発見されたの。それも三か所も!」

「そんなにか。」

「うん、今はそっちを調査しているみたいよ。久々の大発見かもしれないから皆気合が入ってるみたいね。」

大発見って、別に何が見つかったわけじゃないんだが。

いや、見つかったのか。

「夜を徹してやるものかね。」


「最近はダンジョン人気も下火になって来たから、新しい発見が必要なのよ。もし何か見つかったらまた大勢の冒険者が集まってくるわ。それこそ、この間のジェイドのようにね。」

「余所者が来るのは迷惑とか言ってなかったか?」

「そりゃ多すぎると邪魔だけど、冒険者が増えればシロウも儲かるでしょ?」

「まぁなぁ。」

「じゃあ良い事じゃない。その間ゆっくりすればいいんだし。」

ゆっくりナニをするつもりなんだろうか。

順番は守れよ、何が起きても俺は知らないからな。

「ひとまず何か見つかったら連絡が来ることになってるから、その時は鑑定宜しくね。」

「俺が鑑定するのかよ。」

「ギルドはいつも通り営業するからそっち関係の子は外にいけないんだもの。自由に出入りできるのは第一発見者のシロウだけよ。」

「なんだかなぁ。」

「ってことで明日は朝一番で現場に集合だからね。」

「店番はお任せください。」

「なんだかなぁ。」

俺が発見したとはいえなんで調査まで手伝わねばならないのだろうか。

確かにエリザの言うように冒険者が増えれば儲かるかもしれないが・・・。

取り越し苦労って可能性もあるんだけどな。

とか何とか思いながらも迎えた翌朝。

エリザと共にルフを迎えに行き、調査団の基地へと向かった。

「おはようさん。」

「おはようございますシロウさん。」

「なんだ、ニアまで来てるのか。」

「だってこんな面白い事ギルドで待ってるなんて勿体ないでしょ。」

「でもシープさんが心配しない?」

「むしろ喜んで送り出してくれたわ。自分も手が空いたら行くって言ってたわ。」

「あいつも来るのかよ。」

ギルド協会が何しに来るんだ?

監視か?

「仕事を休む口実かもね、還年祭の後始末でまだ忙しいみたいだから。」

「同情するよ。で、どんな感じだ?」

「新たに発見された四か所からは残念ながら何も出てこなかったわ。で、これがその場所。」

待ちを中心にした地図だが、その右上に四つのバツが記されていた。

若干ずれてはいるものの、ほぼ正方形な感じ。

「これはどう考えても怪しいよな。」

「ね、怪しいわよね。」

「そう思って調べてみたんだけど中心には何もなかったのよ。」

「マジかよ。」

出来上がった四角形の対角同士を線で結び、交差したど真ん中を調べるのはセオリーだがどうやらそれははずれだったようだ。

「今は魔力検知を試してる所だけど、おそらく何も出ないでしょうね。」

「魔力検知?」

「地面に魔力を流して魔力を発する物がないか探すの。」

「あぁ、ソナーみたいなものか。」

「大体深さ10mまでは検知できるからそれで出なかったら難しいでしょうね。」

「掘るのも大変だしな。」

10mもの大穴を開けるのは大変だ。

そこにあるとわかっているのならばやりようもあるが、そうでないのならその労力をかけるだけ無駄というもの。

しっかし、ここにないとなると・・・。

「なぁ、俺が見つけたのってここだよな?」

「えぇ、シロウさんが見つけたのはそこね。」

地図を見てふと気が付いた。

俺が発見したのが右下。

左上からまっすぐに線を引き、右下を中心とした真反対が俺達の街だ。

そこに何がある?

ダンジョンじゃないか。

ならさ、右上から左下に線を引いた時はどうだろうか。

「この辺って何かあるか?」

「え、そこ?」

俺が指さしたのは左下を中心として右上から線を引いた場所。

丁度ダンジョンと向かい合うような場所だ。

「この辺は・・・確か古いダンジョンがありましたね。ダンジョンと言っても階層は浅く探索しつくされて放置されています。特に目ぼしい者も無かったと記憶していますが・・・。」

「じゃあこれをこうやって・・・ここは?」

四角形の中心を頂点とし、街と、その古いダンジョンを点に見立てて線を引く。

するとあらびっくり、三角形の出来上がりだ。

「え、ここ?」

「そこは何もなかったと思いますけど。」

「調べたのか?」

「そういうわけではありませんが・・・。」

「なかったら別に構わないさ。どうせここにいても暇なんだし、ルフ行くぞ。」

「あ、待ってよシロウ!」

「それでしたらこれをお持ちください。簡易の魔力検知機です。」

「助かる。」

地図上ではわかりやすいが肉眼だとどこが目的地かわからないので、とりあえず何も見つからなかった中心地へと向かい、そこからまっすぐ降りることにした。

四角形の中心が北で、街が南東、古いダンジョンが南西の正三角形。

なら中心地からまっすぐ南に降りれば目的地だ。

太陽で方角を確認して・・・こっちだな。

「ねぇ、本当にあってるの?」

「多分。」

「適当ねぇ。」

「それぐらいでいいのさ、気負えばそれだけ見つからなくなる。俺が見つけたのも偶然だったんだし、気の向くまま適当に行けばいいんだよ、なぁルフ。」

ブンブン。

ルフからすれば散歩の延長みたいなものだ。

もし見つかればご褒美がもらえる程度のな。

「お前だって、宝物を狙ってダンジョンに入って見つけたか?」

「ん~、言われてみればそうかも。」

「だろ?狙えば狙うだけ外れるんだよ、世の中そう出来てるんだ。」

目的の品を狙って買いに行ったら大抵売り切れ。

何も考えずに入った店で偶然それを見つけた、何てのは良くある話だ。

なんだっけ、物欲センサー?

欲しいと願えば願うほど欲しい物は逃げていく。

足でもついているのかもな。

なんて考えながら当てもなくウロウロしていたその時。

「イテッ。」

何かに躓きこけそうになった。

「ちょっと危ないわね。」

「すまん、何かに引っかかったみたいだ。」

後ろを振り返るとそこにはとがった石があった。

ご丁寧にとがった方が上を向いている。

何も知らずにこけて頭を打ったら死ぬなってぐらいに鋭角だ。

「なぁ、普通に考えてあんなにとがった石があるか?」

「・・・ないわね。」

どう見ても怪しいそれに近づいて周りを掘ってみる。

掘れば掘るほどそれは大きくなり、途中で掘るのを止めた。

「っと、そうだこれを使うか。」

ニアから預かった魔力検知機を取り出してみる。

魔道具と同じでスイッチを入れるだけで作動し、検知すれば音が鳴る設計だ。

「いくぞ。」

ポチっとな。

『ビィーーーー!』

「うるせぇよ!」

入れた瞬間に耳をつんざく音が響き慌ててスイッチを切る。

三人・・・二人と一匹が顔を見合わせ、そして改めて地面を見る。

「・・・ニアに報告だな。」

「そうね。」

「ルフ、場所は覚えたか?」

ブンブン。

急ぎ基地に戻り、ちょうど戻ってきていた調査隊を引き連れて元の場所に戻る。

その日を境に街が大騒ぎになったのは言うまでもない。
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