198 / 1,027
198.転売屋は加工を依頼する
しおりを挟む
目的の工房は、職人通りの少し奥まったところにあった。
ここだな。
エンブレムのようなものは無かったが、扉に小さく『ヒューターとアニーの工房』と書かれている。
二回ノックしてみるも返事は無い。
再度ノックしてみる。
「・・・誰?」
「商店街で買取屋をしているシロウという者だ。ヒューターさんはいるか?」
扉は開かなかったが中から声が聞こえてきた。
「夫は不在です。」
「いつ頃戻る?」
「夕方ごろには・・・。」
夕方か。
アポなしで飛び込んだんだし仕方がないだろう。
「そうか、ならその時間にまた来る。」
「何の御用かお伺いしておきましょうか、夫に伝えておきます。」
「そうだな。なら、『珍しい布が手に入ったので加工してほしいと・・・。」
そこまで言った所で固く閉ざされていた扉が突然開き、ぶつかりそうになってしまった。
何とか避けたが、反物一つ地面に落ちてしまう。
「これね!」
中から飛び出してきた女性が目にもとまらぬ速さで拾い上げ・・・ほおずりし始めた。
「あぁ、なんてスベスベしたさわり心地!そしてほのかに感じるこの温かさ!間違いないわ、ヒーターカプラの毛で出来た布ね!」
「よくわかるな。」
「反物で見るのは初めてだわ!これで仕事を?何を作るの?あぁ、どうしましょう!作りたいものがいっぱいありすぎて困っちゃうわ!」
いや、困っちゃう話じゃなくてそれを返して貰えないだろうか。
手を伸ばすもその女性は反物を抱きしめたまま動こうとしない。
いや、動いた。
そのまま何事もなかったかのように工房に戻ろうとしている。
「いやいやいや、それは俺のものだ返してくれ。」
「工房に御用なんでしょ?これを使って何かを作ってほしいのでしょ?ならどうぞお入りくださいな。」
「いや、お入りくださいなじゃなくてだな。」
「夫なら夕方には戻ります。それまでに色々、本当に色々と考えましょう!マフラー?手袋もいいですね、防寒用に服の内側に縫い付けてもいいかもしれない。ねぇいくつ持っておられるの?」
「合計で11反だ。」
「11反も!それだけあれば沢山、たくさん作れるわ!この色、この肌触り!間違いなくこの冬一番の商品になる。あぁ、神様こんな素敵な物をくださってありがとうございます!」
ツッコミどころが多すぎて何も言えない。
このまま帰るわけにもいかないので仕方なく工房に入るも、その人は反物を抱きしめたままクネクネ体を動かしているだけで、意識は向こうの世界に旅立ってしまったようだ。
仕方ないので工房内を見させてもらう。
ごく普通の工房、半分は販売用の品々が置かれており、もう半分に打ち合わせ用の机が置かれている。
カウンターの奥はバックヤード兼住居だろうか。
この街の工房はどこも同じような作りだなぁ。
長屋みたいな感じで大量生産し易かったんだろうか。
それともこの方が効率がいいんだろうか。
わからん。
しばらく店内をウロウロしていると、ドアの空く気配がしたのでそちらを振り向く。
「おや、アニーお客さんかな?」
「一応客なんだが、あんたがヒューターさんか?」
「あぁ、そうだが・・・。あの反物は貴方が?」
「落とした奴を拾われたらああなっちまった。モイラさんの紹介で来たんだが・・・気をつけろと言われた意味が良く分かったよ。」
「それは大変申し訳ない事をした。どうぞかけてください、今お茶を淹れましょう。」
さわやかな好青年。
いや、青年って年でもないか。
中年との微妙なところ、30代後半でも見た目は若いって感じだ。
細見で身長は高く、指先は驚くほどに細い。
女受けしそうというと怒られるかもしれないが、男の俺でも思わず魅入ってしまう綺麗な指をしていた。
「なにか?」
「いや、裁縫屋だけに器用そうな指だなと思ってな。」
「もっと男らしいごつごつとした指が良かったんですけど・・・。」
「別に見た目で仕事するわけじゃないさ。」
「お気遣いありがとうございます。どうぞ。」
商談用のテーブルに香茶が置かれる。
湯気と共に優しい香りが工房中に広がった。
「モイラさんにはいつもお世話になっています。それで、今日はどのような御用で?」
「あんたの嫁さんが手放さないあの布を使って商品を作ってほしいんだ。」
「鮮やかな布ですね、拝見しても?」
「あぁ。」
持ってきていた二つ目を机の上に乗せると、興味深そうに手を出した。
「絹のような滑らかさ、でも少し硬いようです。それに布自体が熱を帯びていますね。これは・・・たしかヒーターカプラの毛で織られたものですね。」
「夫婦そろって流石だな。鑑定スキルは持ってないんだろ?」
「生憎そう言ったスキルは持ち合わせていません。この辺はさほど寒くならないので目にするのは製品ばかりでしたが・・・。どのぐらいありますか?」
「全部で11反。全て加工してもらいたい。」
「ご希望はありますか?」
「ない。」
「え?」
「ついさっき買い取ったばかりで何を作るかは考えていないんだ。」
「買取・・・、貴方が噂の買取屋さんでしたか。」
「自己紹介が遅くなった、買取屋のシロウだ。」
今更だがお互いに自己紹介をする。
それからしばらくは雑談タイムだ。
お互いの仕事内容から今回の件まで、出された香茶がぬるくなるまでつい話し込んでしあった。
「っと、長々話して悪いな。」
「いえ、アニーもあの調子ですから。」
「で、何を作ってくれる?」
「そうですね・・・、マフラーや手袋は手堅いでしょう。この色です、よく売れると思います。」
「嫁もそんな事を言っていたな。」
「この夏は少し派手な色遣いが流行りましたから、この冬も同じ流れが来るはずです。後は刺繍で違いをつけたり、飾り石をつけるのも綺麗かもしれません。」
「布に石を?」
「小さな石ですけど、垂らした先に付けるのがいいのだとか。私は刺繍の方が好きですけどね。」
「ダメよ!絶対に飾り石が似合うわ!」
と、さっきまで別の世界にトリップしていた嫁さんが旦那にツッコミを入れた。
「お帰りアニー、いいアイデアは浮かんだかい?」
「えぇ!とっても素敵な物を見つけてきたわ。ちょっと量は少ないけど、これでこの還年祭りは優勝間違いなしよ!」
「何の話だ?」
「実は、職人通り内で新作の発表会が有りましてね。その中で一番人気の高かった店に人気店の看板が付けられるんです。」
それは知らなかった。
恐らくは職人通り独自の催しなんだろう。
「で、それにこの布を使うと?」
「お願い!絶対に悪い様にしないからやらせて!」
「こらアニー、まだ何を作るかもお客様の許可も貰っていないんだよ。」
「別に俺は構わないぞ、いい品を作って儲けてくれればそれでいい。」
「え、本当ですか?」
「話をしてみて二人が真面目なのは分かったし、優勝したいという意気込みも申し分ない。適当な仕事をされるより本気で仕事をしてくれる方がこの布も喜ぶだろう。」
「聞いた!?すぐに打ち合わせをしましょ!」
旦那の手を引っ張り裏へと行こうとする嫁だったが、旦那がそれを優しく宥める。
「ダメ。そうやって勢いでやって失敗したら大変だ。それに契約書も作ってないんだから。」
「そういえばそうだな。」
「正直に言って私もこの布が有れば優勝できると思っています。ぜひ使わせて頂きたいのですが、そちらの望みを教えてください。」
「こういったところは初めてでな、むしろそちらの条件を先に教えてくれ。」
「そうですね・・・。デザイン料で銀貨50枚、加工料で銀貨50枚の合計金貨1枚で11反分作らせて頂きます。この布はいかほどでしたか?」
「全部で金貨2枚だ。」
「思ったよりも高いですね・・・。」
そこで腕を組み旦那が何かを考えはじめる。
嫁は早く仕事がしたいのかそわそわとその場で体を揺らしていた。
「販売方法はどうするおつもりですか?」
「露店に出すつもりだったが、還年祭に合わせて何かするんだろ?そこで売り出して貰っても構わない。」
「利益はあまり出ないかもしれませんよ。」
「ならこうしよう、最低金貨1枚の儲けが出るようにしてくれ。」
「全部で金貨4枚、それ以上売れればということですね。」
「そういう事だ。そっちは作りたい物を作り、それを売って利益を出す。作る物に対して俺は一切口を出すつもりはない。だがそうだな・・・、最初にひざ掛けを二つとマフラー一つ、それと冒険者が使える様な手袋を一つ作ってほしい。」
「それぐらいでしたらお安い御用です。」
交渉成立だ。
ひざ掛けと手袋は彼女達に。
俺はマフラーを作ってもらおう。
せっかく買ったのに自分たちの分が無いのは寂しいからな。
契約書を作り、お互いにサインをする。
これでよしっと。
「全てお任せで本当にいいんですか?」
「言っただろ、何かを作りたくて買い付けた物じゃないんだ。それが金になるのであれば何でもいいさ。目的の物も作ってもらえるしな。」
「何でもいいのよね?後で怒らないわよね?」
「あぁ、好きにしてくれ。」
「嬉しい!なんて素敵なお客様なの!」
感極まった嫁が反物を頭上高く放り投げそしてそれをキャッチする。
かなりのオーバーリアクションだなぁ。
最初に顔を出した時とは別人だ。
余りの暴走ぶりに旦那が居なかったら今頃どうなっていたか想像もつかない。
モイラさんの忠告を聞いていてよかった。
「最初の品はいつできる?」
「マフラーとひざ掛けは二日もあれば。手袋は出来れば採寸したいのですが構いませんか?」
「あぁ、残りの布と一緒に明日の朝一番でここに来るように伝えておくよ。」
「ありがとうございます。」
固い握手を交わして工房を後にした。
冬の夜は早い。
いつの間にか外は真っ暗になってしまった。
北風が細長い通りを勢いよく通り抜けていく。
う~さぶ。
早くマフラーをつけたいなぁ。
両腕を抱くようにして急ぎ店へともどる。
「・・・あいつか。」
こちらを見ていた人物の気配と声は北風にかき消されて俺に届くことは無かった。
ここだな。
エンブレムのようなものは無かったが、扉に小さく『ヒューターとアニーの工房』と書かれている。
二回ノックしてみるも返事は無い。
再度ノックしてみる。
「・・・誰?」
「商店街で買取屋をしているシロウという者だ。ヒューターさんはいるか?」
扉は開かなかったが中から声が聞こえてきた。
「夫は不在です。」
「いつ頃戻る?」
「夕方ごろには・・・。」
夕方か。
アポなしで飛び込んだんだし仕方がないだろう。
「そうか、ならその時間にまた来る。」
「何の御用かお伺いしておきましょうか、夫に伝えておきます。」
「そうだな。なら、『珍しい布が手に入ったので加工してほしいと・・・。」
そこまで言った所で固く閉ざされていた扉が突然開き、ぶつかりそうになってしまった。
何とか避けたが、反物一つ地面に落ちてしまう。
「これね!」
中から飛び出してきた女性が目にもとまらぬ速さで拾い上げ・・・ほおずりし始めた。
「あぁ、なんてスベスベしたさわり心地!そしてほのかに感じるこの温かさ!間違いないわ、ヒーターカプラの毛で出来た布ね!」
「よくわかるな。」
「反物で見るのは初めてだわ!これで仕事を?何を作るの?あぁ、どうしましょう!作りたいものがいっぱいありすぎて困っちゃうわ!」
いや、困っちゃう話じゃなくてそれを返して貰えないだろうか。
手を伸ばすもその女性は反物を抱きしめたまま動こうとしない。
いや、動いた。
そのまま何事もなかったかのように工房に戻ろうとしている。
「いやいやいや、それは俺のものだ返してくれ。」
「工房に御用なんでしょ?これを使って何かを作ってほしいのでしょ?ならどうぞお入りくださいな。」
「いや、お入りくださいなじゃなくてだな。」
「夫なら夕方には戻ります。それまでに色々、本当に色々と考えましょう!マフラー?手袋もいいですね、防寒用に服の内側に縫い付けてもいいかもしれない。ねぇいくつ持っておられるの?」
「合計で11反だ。」
「11反も!それだけあれば沢山、たくさん作れるわ!この色、この肌触り!間違いなくこの冬一番の商品になる。あぁ、神様こんな素敵な物をくださってありがとうございます!」
ツッコミどころが多すぎて何も言えない。
このまま帰るわけにもいかないので仕方なく工房に入るも、その人は反物を抱きしめたままクネクネ体を動かしているだけで、意識は向こうの世界に旅立ってしまったようだ。
仕方ないので工房内を見させてもらう。
ごく普通の工房、半分は販売用の品々が置かれており、もう半分に打ち合わせ用の机が置かれている。
カウンターの奥はバックヤード兼住居だろうか。
この街の工房はどこも同じような作りだなぁ。
長屋みたいな感じで大量生産し易かったんだろうか。
それともこの方が効率がいいんだろうか。
わからん。
しばらく店内をウロウロしていると、ドアの空く気配がしたのでそちらを振り向く。
「おや、アニーお客さんかな?」
「一応客なんだが、あんたがヒューターさんか?」
「あぁ、そうだが・・・。あの反物は貴方が?」
「落とした奴を拾われたらああなっちまった。モイラさんの紹介で来たんだが・・・気をつけろと言われた意味が良く分かったよ。」
「それは大変申し訳ない事をした。どうぞかけてください、今お茶を淹れましょう。」
さわやかな好青年。
いや、青年って年でもないか。
中年との微妙なところ、30代後半でも見た目は若いって感じだ。
細見で身長は高く、指先は驚くほどに細い。
女受けしそうというと怒られるかもしれないが、男の俺でも思わず魅入ってしまう綺麗な指をしていた。
「なにか?」
「いや、裁縫屋だけに器用そうな指だなと思ってな。」
「もっと男らしいごつごつとした指が良かったんですけど・・・。」
「別に見た目で仕事するわけじゃないさ。」
「お気遣いありがとうございます。どうぞ。」
商談用のテーブルに香茶が置かれる。
湯気と共に優しい香りが工房中に広がった。
「モイラさんにはいつもお世話になっています。それで、今日はどのような御用で?」
「あんたの嫁さんが手放さないあの布を使って商品を作ってほしいんだ。」
「鮮やかな布ですね、拝見しても?」
「あぁ。」
持ってきていた二つ目を机の上に乗せると、興味深そうに手を出した。
「絹のような滑らかさ、でも少し硬いようです。それに布自体が熱を帯びていますね。これは・・・たしかヒーターカプラの毛で織られたものですね。」
「夫婦そろって流石だな。鑑定スキルは持ってないんだろ?」
「生憎そう言ったスキルは持ち合わせていません。この辺はさほど寒くならないので目にするのは製品ばかりでしたが・・・。どのぐらいありますか?」
「全部で11反。全て加工してもらいたい。」
「ご希望はありますか?」
「ない。」
「え?」
「ついさっき買い取ったばかりで何を作るかは考えていないんだ。」
「買取・・・、貴方が噂の買取屋さんでしたか。」
「自己紹介が遅くなった、買取屋のシロウだ。」
今更だがお互いに自己紹介をする。
それからしばらくは雑談タイムだ。
お互いの仕事内容から今回の件まで、出された香茶がぬるくなるまでつい話し込んでしあった。
「っと、長々話して悪いな。」
「いえ、アニーもあの調子ですから。」
「で、何を作ってくれる?」
「そうですね・・・、マフラーや手袋は手堅いでしょう。この色です、よく売れると思います。」
「嫁もそんな事を言っていたな。」
「この夏は少し派手な色遣いが流行りましたから、この冬も同じ流れが来るはずです。後は刺繍で違いをつけたり、飾り石をつけるのも綺麗かもしれません。」
「布に石を?」
「小さな石ですけど、垂らした先に付けるのがいいのだとか。私は刺繍の方が好きですけどね。」
「ダメよ!絶対に飾り石が似合うわ!」
と、さっきまで別の世界にトリップしていた嫁さんが旦那にツッコミを入れた。
「お帰りアニー、いいアイデアは浮かんだかい?」
「えぇ!とっても素敵な物を見つけてきたわ。ちょっと量は少ないけど、これでこの還年祭りは優勝間違いなしよ!」
「何の話だ?」
「実は、職人通り内で新作の発表会が有りましてね。その中で一番人気の高かった店に人気店の看板が付けられるんです。」
それは知らなかった。
恐らくは職人通り独自の催しなんだろう。
「で、それにこの布を使うと?」
「お願い!絶対に悪い様にしないからやらせて!」
「こらアニー、まだ何を作るかもお客様の許可も貰っていないんだよ。」
「別に俺は構わないぞ、いい品を作って儲けてくれればそれでいい。」
「え、本当ですか?」
「話をしてみて二人が真面目なのは分かったし、優勝したいという意気込みも申し分ない。適当な仕事をされるより本気で仕事をしてくれる方がこの布も喜ぶだろう。」
「聞いた!?すぐに打ち合わせをしましょ!」
旦那の手を引っ張り裏へと行こうとする嫁だったが、旦那がそれを優しく宥める。
「ダメ。そうやって勢いでやって失敗したら大変だ。それに契約書も作ってないんだから。」
「そういえばそうだな。」
「正直に言って私もこの布が有れば優勝できると思っています。ぜひ使わせて頂きたいのですが、そちらの望みを教えてください。」
「こういったところは初めてでな、むしろそちらの条件を先に教えてくれ。」
「そうですね・・・。デザイン料で銀貨50枚、加工料で銀貨50枚の合計金貨1枚で11反分作らせて頂きます。この布はいかほどでしたか?」
「全部で金貨2枚だ。」
「思ったよりも高いですね・・・。」
そこで腕を組み旦那が何かを考えはじめる。
嫁は早く仕事がしたいのかそわそわとその場で体を揺らしていた。
「販売方法はどうするおつもりですか?」
「露店に出すつもりだったが、還年祭に合わせて何かするんだろ?そこで売り出して貰っても構わない。」
「利益はあまり出ないかもしれませんよ。」
「ならこうしよう、最低金貨1枚の儲けが出るようにしてくれ。」
「全部で金貨4枚、それ以上売れればということですね。」
「そういう事だ。そっちは作りたい物を作り、それを売って利益を出す。作る物に対して俺は一切口を出すつもりはない。だがそうだな・・・、最初にひざ掛けを二つとマフラー一つ、それと冒険者が使える様な手袋を一つ作ってほしい。」
「それぐらいでしたらお安い御用です。」
交渉成立だ。
ひざ掛けと手袋は彼女達に。
俺はマフラーを作ってもらおう。
せっかく買ったのに自分たちの分が無いのは寂しいからな。
契約書を作り、お互いにサインをする。
これでよしっと。
「全てお任せで本当にいいんですか?」
「言っただろ、何かを作りたくて買い付けた物じゃないんだ。それが金になるのであれば何でもいいさ。目的の物も作ってもらえるしな。」
「何でもいいのよね?後で怒らないわよね?」
「あぁ、好きにしてくれ。」
「嬉しい!なんて素敵なお客様なの!」
感極まった嫁が反物を頭上高く放り投げそしてそれをキャッチする。
かなりのオーバーリアクションだなぁ。
最初に顔を出した時とは別人だ。
余りの暴走ぶりに旦那が居なかったら今頃どうなっていたか想像もつかない。
モイラさんの忠告を聞いていてよかった。
「最初の品はいつできる?」
「マフラーとひざ掛けは二日もあれば。手袋は出来れば採寸したいのですが構いませんか?」
「あぁ、残りの布と一緒に明日の朝一番でここに来るように伝えておくよ。」
「ありがとうございます。」
固い握手を交わして工房を後にした。
冬の夜は早い。
いつの間にか外は真っ暗になってしまった。
北風が細長い通りを勢いよく通り抜けていく。
う~さぶ。
早くマフラーをつけたいなぁ。
両腕を抱くようにして急ぎ店へともどる。
「・・・あいつか。」
こちらを見ていた人物の気配と声は北風にかき消されて俺に届くことは無かった。
7
お気に入りに追加
328
あなたにおすすめの小説
貴族に生まれたのに誘拐され1歳で死にかけた
佐藤醤油
ファンタジー
貴族に生まれ、のんびりと赤ちゃん生活を満喫していたのに、気がついたら世界が変わっていた。
僕は、盗賊に誘拐され魔力を吸われながら生きる日々を過ごす。
魔力枯渇に陥ると死ぬ確率が高いにも関わらず年に1回は魔力枯渇になり死にかけている。
言葉が通じる様になって気がついたが、僕は他の人が持っていないステータスを見る力を持ち、さらに異世界と思われる世界の知識を覗ける力を持っている。
この力を使って、いつか脱出し母親の元へと戻ることを夢見て過ごす。
小さい体でチートな力は使えない中、どうにか生きる知恵を出し生活する。
------------------------------------------------------------------
お知らせ
「転生者はめぐりあう」 始めました。
------------------------------------------------------------------
注意
作者の暇つぶし、気分転換中の自己満足で公開する作品です。
感想は受け付けていません。
誤字脱字、文面等気になる方はお気に入りを削除で対応してください。
せっかくのクラス転移だけども、俺はポテトチップスでも食べながらクラスメイトの冒険を見守りたいと思います
霖空
ファンタジー
クラス転移に巻き込まれてしまった主人公。
得た能力は悪くない……いや、むしろ、チートじみたものだった。
しかしながら、それ以上のデメリットもあり……。
傍観者にならざるをえない彼が傍観者するお話です。
基本的に、勇者や、影井くんを見守りつつ、ほのぼの?生活していきます。
が、そのうち、彼自身の物語も始まる予定です。
神様との賭けに勝ったので、スキルを沢山貰えた件。
猫丸
ファンタジー
ある日の放課後。突然足元に魔法陣が現れると、気付けば目の前には神を名乗る存在が居た。
そこで神は異世界に送るからスキルを1つ選べと言ってくる。
あれ?これもしかして頑張ったらもっと貰えるパターンでは?
そこで彼は思った――もっと欲しい!
欲をかいた少年は神様に賭けをしないかと提案した。
神様とゲームをすることになった悠斗はその結果――
※過去に投稿していたものを大きく加筆修正したものになります。
僕の家族は母様と母様の子供の弟妹達と使い魔達だけだよ?
闇夜の現し人(ヤミヨノウツシビト)
ファンタジー
ー 母さんは、「絶世の美女」と呼ばれるほど美しく、国の中で最も権力の強い貴族と呼ばれる公爵様の寵姫だった。
しかし、それをよく思わない正妻やその親戚たちに毒を盛られてしまった。
幸い発熱だけですんだがお腹に子が出来てしまった以上ここにいては危険だと判断し、仲の良かった侍女数名に「ここを離れる」と言い残し公爵家を後にした。
お母さん大好きっ子な主人公は、毒を盛られるという失態をおかした父親や毒を盛った親戚たちを嫌悪するがお母さんが日々、「家族で暮らしたい」と話していたため、ある出来事をきっかけに一緒に暮らし始めた。
しかし、自分が家族だと認めた者がいれば初めて見た者は跪くと言われる程の華の顔(カンバセ)を綻ばせ笑うが、家族がいなければ心底どうでもいいというような表情をしていて、人形の方がまだ表情があると言われていた。
『無能で無価値の稚拙な愚父共が僕の家族を名乗る資格なんて無いんだよ?』
さぁ、ここに超絶チートを持つ自分が認めた家族以外の生き物全てを嫌う主人公の物語が始まる。
〈念の為〉
稚拙→ちせつ
愚父→ぐふ
⚠︎注意⚠︎
不定期更新です。作者の妄想をつぎ込んだ作品です。
大和型戦艦、異世界に転移する。
焼飯学生
ファンタジー
第二次世界大戦が起きなかった世界。大日本帝国は仮想敵国を定め、軍事力を中心に強化を行っていた。ある日、大日本帝国海軍は、大和型戦艦四隻による大規模な演習と言う名目で、太平洋沖合にて、演習を行うことに決定。大和、武蔵、信濃、紀伊の四隻は、横須賀海軍基地で補給したのち出港。しかし、移動の途中で濃霧が発生し、レーダーやソナーが使えなくなり、更に信濃と紀伊とは通信が途絶してしまう。孤立した大和と武蔵は濃霧を突き進み、太平洋にはないはずの、未知の島に辿り着いた。
※ この作品は私が書きたいと思い、書き進めている作品です。文章がおかしかったり、不明瞭な点、あるいは不快な思いをさせてしまう可能性がございます。できる限りそのような事態が起こらないよう気をつけていますが、何卒ご了承賜りますよう、お願い申し上げます。
【完結】彼女以外、みんな思い出す。
❄️冬は つとめて
ファンタジー
R15をつける事にしました。
幼い頃からの婚約者、この国の第二王子に婚約破棄を告げられ。あらぬ冤罪を突きつけられたリフィル。この場所に誰も助けてくれるものはいない。
クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?
青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。
最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。
普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた?
しかも弱いからと森に捨てられた。
いやちょっとまてよ?
皆さん勘違いしてません?
これはあいの不思議な日常を書いた物語である。
本編完結しました!
相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです!
1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…
25歳のオタク女子は、異世界でスローライフを送りたい
こばやん2号
ファンタジー
とある会社に勤める25歳のOL重御寺姫(じゅうおんじひめ)は、漫画やアニメが大好きなオタク女子である。
社員旅行の最中謎の光を発見した姫は、気付けば異世界に来てしまっていた。
頭の中で妄想していたことが現実に起こってしまったことに最初は戸惑う姫だったが、自身の知識と持ち前の性格でなんとか異世界を生きていこうと奮闘する。
オタク女子による異世界生活が今ここに始まる。
※この小説は【アルファポリス】及び【小説家になろう】の同時配信で投稿しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる