190 / 1,063
190.転売屋は風邪をひく
しおりを挟む
「おはよう。」
いつものように起き上がり、身支度を済ませて一階に降りる。
女達は食事の準備をして俺が来るのを待っていてくれたようだ。
「おはようございま・・・シロウ様、顔色が悪いですよ?」
「顔が悪い?」
「いえ、顔色です。」
どうやら聞き間違えだったようだ。
いきなりミラに顔が悪いなんて言われたら今更ながら立ち直れないところだが、そうじゃなかったらしい。
うーむ、ぼーっとするしなんだか熱っぽい。
「今日は冷えるな。」
「そうですか?むしろ昨日よりも暖かいような。」
「ちょっと、大丈夫・・・って熱あるじゃないの!」
横にいたエリザが俺のおでこに手を乗せてくる。
冷たくて気持ちがいい、このままずっと乗せておいてほしいところだが・・・。
「風邪ですね。」
「風邪か。」
「お薬をお出ししますね。」
「注射はやめてくれよ。」
「飲み薬にしますから。」
なら大丈夫だ。
昔は注射するぞ!と脅されたもんだが、風邪で注射するなんて考えられない。
点滴ならわかるけど。
「ほら、さっさと上行くわよ。」
「だが今日はシープさんと打ち合わせが・・・。」
「そんなの日を変えてもらえばいいじゃない。さっさと部屋に戻る!」
エリザに腕を引っ張られ、無理やり寝室に連れていかれる。
「ほら、服脱いで。」
「襲うなよ?」
「襲わないわよ!」
「そうか。」
「何残念な顔してるのよ、また治ったら、ね。」
まるで子供を諭すような言い方に少しむっとしてしまう。
仕方ないので目の前にある胸に手を伸ばし・・・。
「治ってからって言ったでしょ。」
素早く手を動かせずあえなく叩き落とされてしまった。
残念。
無理やり服を脱がされ、寝巻に着替えさせられる。
そしてベッドに押し込まれてしまった。
「暑い。」
「熱があるんだから当然よ。シープさんにはニアから連絡してもらうからゆっくり休みなさい。お店はミラがいるから大丈夫でしょ。薬飲むのよ?わかった?」
「オカンかよ。」
「なにそれ。」
「なんでもない。」
どうやら関西弁は通じないようだ。
この前の寒気でも風邪をひかなかったし、最近もそれといって風邪をひくようなことはしてこなかった。
むしろ毛布を新調してから快眠だったんだけどなぁ。
いったいどこで風邪を貰ってきたんだろうか。
エリザが下に降り、代わりにアネットが上がってきた。
「今お薬を作りますので、少しお待ちくださいね。」
「すまん。」
返事を聞く間もなくパタパタと上がって行ってしまった。
部屋に一人、何も音が聞こえない。
よくシーンと静まり返るというけれど、まさにそんな感じ。
何も聞こえないはずなのに、きーんとかシーンとかそんな音がしているように思える。
ただ耳を澄ますと、上からアネットの動き回る足音が聞こえる。
下からは台所で何かを作る音が聞こえる。
そういや、若い時に風邪をひいて寂しい思いをしたっけなぁ。
あの時は誰も近くにいなくて、風邪で死ぬんじゃないかとかそんな事も思ったりもした。
結局二日ほど寝てすっかり良くなったんだっけ。
あの時は前日深酒をして薄着で寝たのが風邪を引いた原因だったはずだ。
昨夜はミラと楽しんだ後一緒になって眠ったはず・・・。
「それが原因か。」
汗をかいたまま寝たせいだろう。
最近忙しくて免疫が落ちていたのかもしれない。
あのセールがまさかあんな大事になるとは思いもしなかった。
まぁ結果的にみんな喜んでいたし俺も随分と稼がせてもらったから別に構わないんだが。
「お待たせしました。」
とか何とか考えていたらアネットが戻ってきた。
「随分といっぱいあるんだな。」
両手に抱えるように液体の入ったフラスコを何本も抱えている。
あれ全部飲むのか?
「ちょっと失礼しますね。」
寝たままの俺の身体を医者のように触っていく。
おでこ、首、そして胸。
「熱と喉に腫れがありますね。鼻水はそうでもなさそうですから、熱さましと炎症を抑える薬にしましょう。」
「ここで作るのか。」
「症状によって薬が違いますから。ちょっと苦いですけど我慢してください。」
「良薬口に苦しってやつだな。」
「そういう事です。」
すぐ横のテーブルにビーカーのようなものを置き、それにフラスコの中身を注いでいく。
色はよろしくない。
深緑っぽい色でいかにも苦そうだな。
「体は起こせますか?」
いつもより力を入れてみるが中々身体がもちあがらない。
結局アネットに背中を支えてもらい上半身を起こした。
「ふぅ、まるで年寄りだな。」
「ご主人様がお爺ちゃんなら私達はみんなおばあちゃんですよ。」
「それもそうか。」
「飲んだら一時間ぐらいで楽になります。そしたら食事にしましょう。」
「食欲は無いんだが。」
「ダメですよ、ちゃんと食べなきゃ。」
薬師がそう言うんだ、いう事を聞いておこう。
渡されたビーカーを口に当て一気に流し込む。
う~む、不味い。
もういらない。
こみあげてくるのを何とか押しとどめ、そのまま横になる。
「では私は戻ります。」
「助かった。」
「お疲れが出たんだと思います、今日はゆっくり休んでくださいね。」
「そうするよ。」
まともな休みなんていつぶりだろうか。
一回ぶっ倒れてから定期的に休むようにしていたが、ここ最近の忙しさはそれを超えていたようだ。
だが今回は倒れる前に体がちゃんと知らせてくれた。
人間学習するもんだな。
アネットが居なくなるまで見送り、そこで目を閉じる。
吐き気とだるさ。
そして若干の頭痛。
完全に風邪だ。
いや、もしかしたらインフルエンザかもしれないが・・・そもそも、この世界にインフルエンザがあるのだろうか。
むしろ俺の知らないヤバい病気が山ほどありそうなもんだがなぁ。
そんな事を考えているといつの間にか眠っていたんだろう、ハッと目を開けると横に心配そうな顔をしたミラが座っていた。
「お目覚めになられましたか?」
「あぁ。」
「調子はいかがですか?」
「アネットの薬が効いたんだろうな、朝よりもだいぶ楽だ。」
「心なしか顔色も良くなられましたね。食欲はありますか?」
「かなりあるぞ。今なら大きなステーキ肉だって食べれそうだ。」
「病み上がりでお肉は良くありません。おかゆをご用意していますので、そちらでお願いします。」
おかゆか・・・。
まぁ、風邪なんだし消化のいい物じゃないとまずいよな。
無理に食べて中身を全部リバースしたくもない。
ニコリと笑ってミラが席を外し、今度は湯気の立つおかゆを持って戻ってきた。
「溶き卵を入れていますので、元気が出ますよ。」
「ミラの乳を揉めばすぐに元気になるんだが。」
「ダメです。」
「何故だ?」
「昨日そのせいで風邪を引いたじゃありませんか。」
なんだ、そんな事を思っているのか。
だから風邪を引いたって聞いて、一人浮かない顔をしていたんだな。
エリザだったら『あんたが弱いせいよ』とか言ってしまうものだが、そうじゃなかったらしい。
「俺が風邪をひいたのは俺のせいだ。ミラのせいじゃない。」
「でも・・・。」
「これは風邪だ、おばちゃんみたいな病気じゃないし、お前が気に病むようなことは何もない。だから俺に粥を食わせて、乳を揉ませてくれ。」
「わかりました。でも、胸は治ってからにして下さい。」
残念ながら乳を揉む事は叶わなかったが、美味いお粥にはありつけた。
一心地つくとまた眠気が襲ってくる。
「傍にいます。」
「そうしてくれ。」
「早く良くなってくださいね。」
「そうじゃないと乳を揉めないだろ?大丈夫だ、寝たら、すぐに良くなる。」
ミラの冷たい手が俺のおでこに乗せられる。
それを合図に俺は再び眠りに落ちた。
心地よい眠りだった。
これは毛布のおかげでも薬のおかげでもない。
ミラの手が俺に安心を与えてくれたからだろう。
再び目を開けた時、ミラが俯いて寝息を立てていた。
まったく、そんな格好で寝ていると風邪をひくぞって俺が言うのはおかしいか。
身じろぎをするとミラがハッと目を覚ます。
「おはよう。」
「すみません、寝てしまいました。」
「気にするな。」
「あ、シロウ起きたんだ。」
「よぉ、エリザ。」
「随分いい顔になったじゃない。もう大丈夫なの?」
「お陰様で。」
エリザなりに心配していたんだろう、良くなったと聞いて笑顔が戻った。
「お肉あるけど・・・。」
「肉はまた今度な。そうだろ、ミラ。」
「もちろんです。」
「ぶぅ、せっかく取って来たのに。」
「お前は風邪ひいたら肉食べるのか?」
「そうよ、食べて飲んで寝る。そしたら次の日には熱も下がってるわ。」
荒療治にもほどがある。
確かに若い時はそれが出来たかもしれないが・・・って今の俺も十分若いんだった。
「じゃあ俺も。」
「ダメです。」
「だそうだ。」
「ミラが言うんじゃ仕方ないわね。アネットと二人でた~べよ。」
「俺の分残しといてくれよ。」
「わかってるわよ。アネット~二人で食べよ~。」
薄情にもそんな事を言いながらエリザは下に戻って行った。
「ミラも行っていいんだぞ?」
「行きません。」
「もう大丈夫だから。」
「ダメです。」
「まったく、心配性だなお前は。」
まだ思いつめたような顔をしている。
さっき寝てスッキリしたわけじゃなさそうだ。
「・・・シロウ様無しでは生きていけません。」
「わかったわかった。」
「だから早く良くなってください。」
「明日には元通りだ、店を閉めた分稼ぐからな。」
「明日もお休みにしませんか?」
「ミラが揉ませてくれたら考えよう。」
そう言いながら手を伸ばしたが、返事の代わりに手を抓られてしまった。
「痛い。」
「当たり前です。」
「悪かったって。もう大丈夫だから、だから安心しろ。なんなら一緒に寝るか?」
「・・・今日は我慢します。」
「そりゃ残念だ。」
ミラの頭を撫でてやると、やっと身体から力が抜けた。
「おかゆ、まだあるよな。」
「もちろんです。」
「それを食べてもう一回寝る。食べさせてくれるか?」
「おまかせください。」
気付けばいつもの顔に戻っていた。
おちおち風邪もひいちゃいられない、これからはもっと気を付けよう。
ミラの顔を見てそう誓うのだった。
いつものように起き上がり、身支度を済ませて一階に降りる。
女達は食事の準備をして俺が来るのを待っていてくれたようだ。
「おはようございま・・・シロウ様、顔色が悪いですよ?」
「顔が悪い?」
「いえ、顔色です。」
どうやら聞き間違えだったようだ。
いきなりミラに顔が悪いなんて言われたら今更ながら立ち直れないところだが、そうじゃなかったらしい。
うーむ、ぼーっとするしなんだか熱っぽい。
「今日は冷えるな。」
「そうですか?むしろ昨日よりも暖かいような。」
「ちょっと、大丈夫・・・って熱あるじゃないの!」
横にいたエリザが俺のおでこに手を乗せてくる。
冷たくて気持ちがいい、このままずっと乗せておいてほしいところだが・・・。
「風邪ですね。」
「風邪か。」
「お薬をお出ししますね。」
「注射はやめてくれよ。」
「飲み薬にしますから。」
なら大丈夫だ。
昔は注射するぞ!と脅されたもんだが、風邪で注射するなんて考えられない。
点滴ならわかるけど。
「ほら、さっさと上行くわよ。」
「だが今日はシープさんと打ち合わせが・・・。」
「そんなの日を変えてもらえばいいじゃない。さっさと部屋に戻る!」
エリザに腕を引っ張られ、無理やり寝室に連れていかれる。
「ほら、服脱いで。」
「襲うなよ?」
「襲わないわよ!」
「そうか。」
「何残念な顔してるのよ、また治ったら、ね。」
まるで子供を諭すような言い方に少しむっとしてしまう。
仕方ないので目の前にある胸に手を伸ばし・・・。
「治ってからって言ったでしょ。」
素早く手を動かせずあえなく叩き落とされてしまった。
残念。
無理やり服を脱がされ、寝巻に着替えさせられる。
そしてベッドに押し込まれてしまった。
「暑い。」
「熱があるんだから当然よ。シープさんにはニアから連絡してもらうからゆっくり休みなさい。お店はミラがいるから大丈夫でしょ。薬飲むのよ?わかった?」
「オカンかよ。」
「なにそれ。」
「なんでもない。」
どうやら関西弁は通じないようだ。
この前の寒気でも風邪をひかなかったし、最近もそれといって風邪をひくようなことはしてこなかった。
むしろ毛布を新調してから快眠だったんだけどなぁ。
いったいどこで風邪を貰ってきたんだろうか。
エリザが下に降り、代わりにアネットが上がってきた。
「今お薬を作りますので、少しお待ちくださいね。」
「すまん。」
返事を聞く間もなくパタパタと上がって行ってしまった。
部屋に一人、何も音が聞こえない。
よくシーンと静まり返るというけれど、まさにそんな感じ。
何も聞こえないはずなのに、きーんとかシーンとかそんな音がしているように思える。
ただ耳を澄ますと、上からアネットの動き回る足音が聞こえる。
下からは台所で何かを作る音が聞こえる。
そういや、若い時に風邪をひいて寂しい思いをしたっけなぁ。
あの時は誰も近くにいなくて、風邪で死ぬんじゃないかとかそんな事も思ったりもした。
結局二日ほど寝てすっかり良くなったんだっけ。
あの時は前日深酒をして薄着で寝たのが風邪を引いた原因だったはずだ。
昨夜はミラと楽しんだ後一緒になって眠ったはず・・・。
「それが原因か。」
汗をかいたまま寝たせいだろう。
最近忙しくて免疫が落ちていたのかもしれない。
あのセールがまさかあんな大事になるとは思いもしなかった。
まぁ結果的にみんな喜んでいたし俺も随分と稼がせてもらったから別に構わないんだが。
「お待たせしました。」
とか何とか考えていたらアネットが戻ってきた。
「随分といっぱいあるんだな。」
両手に抱えるように液体の入ったフラスコを何本も抱えている。
あれ全部飲むのか?
「ちょっと失礼しますね。」
寝たままの俺の身体を医者のように触っていく。
おでこ、首、そして胸。
「熱と喉に腫れがありますね。鼻水はそうでもなさそうですから、熱さましと炎症を抑える薬にしましょう。」
「ここで作るのか。」
「症状によって薬が違いますから。ちょっと苦いですけど我慢してください。」
「良薬口に苦しってやつだな。」
「そういう事です。」
すぐ横のテーブルにビーカーのようなものを置き、それにフラスコの中身を注いでいく。
色はよろしくない。
深緑っぽい色でいかにも苦そうだな。
「体は起こせますか?」
いつもより力を入れてみるが中々身体がもちあがらない。
結局アネットに背中を支えてもらい上半身を起こした。
「ふぅ、まるで年寄りだな。」
「ご主人様がお爺ちゃんなら私達はみんなおばあちゃんですよ。」
「それもそうか。」
「飲んだら一時間ぐらいで楽になります。そしたら食事にしましょう。」
「食欲は無いんだが。」
「ダメですよ、ちゃんと食べなきゃ。」
薬師がそう言うんだ、いう事を聞いておこう。
渡されたビーカーを口に当て一気に流し込む。
う~む、不味い。
もういらない。
こみあげてくるのを何とか押しとどめ、そのまま横になる。
「では私は戻ります。」
「助かった。」
「お疲れが出たんだと思います、今日はゆっくり休んでくださいね。」
「そうするよ。」
まともな休みなんていつぶりだろうか。
一回ぶっ倒れてから定期的に休むようにしていたが、ここ最近の忙しさはそれを超えていたようだ。
だが今回は倒れる前に体がちゃんと知らせてくれた。
人間学習するもんだな。
アネットが居なくなるまで見送り、そこで目を閉じる。
吐き気とだるさ。
そして若干の頭痛。
完全に風邪だ。
いや、もしかしたらインフルエンザかもしれないが・・・そもそも、この世界にインフルエンザがあるのだろうか。
むしろ俺の知らないヤバい病気が山ほどありそうなもんだがなぁ。
そんな事を考えているといつの間にか眠っていたんだろう、ハッと目を開けると横に心配そうな顔をしたミラが座っていた。
「お目覚めになられましたか?」
「あぁ。」
「調子はいかがですか?」
「アネットの薬が効いたんだろうな、朝よりもだいぶ楽だ。」
「心なしか顔色も良くなられましたね。食欲はありますか?」
「かなりあるぞ。今なら大きなステーキ肉だって食べれそうだ。」
「病み上がりでお肉は良くありません。おかゆをご用意していますので、そちらでお願いします。」
おかゆか・・・。
まぁ、風邪なんだし消化のいい物じゃないとまずいよな。
無理に食べて中身を全部リバースしたくもない。
ニコリと笑ってミラが席を外し、今度は湯気の立つおかゆを持って戻ってきた。
「溶き卵を入れていますので、元気が出ますよ。」
「ミラの乳を揉めばすぐに元気になるんだが。」
「ダメです。」
「何故だ?」
「昨日そのせいで風邪を引いたじゃありませんか。」
なんだ、そんな事を思っているのか。
だから風邪を引いたって聞いて、一人浮かない顔をしていたんだな。
エリザだったら『あんたが弱いせいよ』とか言ってしまうものだが、そうじゃなかったらしい。
「俺が風邪をひいたのは俺のせいだ。ミラのせいじゃない。」
「でも・・・。」
「これは風邪だ、おばちゃんみたいな病気じゃないし、お前が気に病むようなことは何もない。だから俺に粥を食わせて、乳を揉ませてくれ。」
「わかりました。でも、胸は治ってからにして下さい。」
残念ながら乳を揉む事は叶わなかったが、美味いお粥にはありつけた。
一心地つくとまた眠気が襲ってくる。
「傍にいます。」
「そうしてくれ。」
「早く良くなってくださいね。」
「そうじゃないと乳を揉めないだろ?大丈夫だ、寝たら、すぐに良くなる。」
ミラの冷たい手が俺のおでこに乗せられる。
それを合図に俺は再び眠りに落ちた。
心地よい眠りだった。
これは毛布のおかげでも薬のおかげでもない。
ミラの手が俺に安心を与えてくれたからだろう。
再び目を開けた時、ミラが俯いて寝息を立てていた。
まったく、そんな格好で寝ていると風邪をひくぞって俺が言うのはおかしいか。
身じろぎをするとミラがハッと目を覚ます。
「おはよう。」
「すみません、寝てしまいました。」
「気にするな。」
「あ、シロウ起きたんだ。」
「よぉ、エリザ。」
「随分いい顔になったじゃない。もう大丈夫なの?」
「お陰様で。」
エリザなりに心配していたんだろう、良くなったと聞いて笑顔が戻った。
「お肉あるけど・・・。」
「肉はまた今度な。そうだろ、ミラ。」
「もちろんです。」
「ぶぅ、せっかく取って来たのに。」
「お前は風邪ひいたら肉食べるのか?」
「そうよ、食べて飲んで寝る。そしたら次の日には熱も下がってるわ。」
荒療治にもほどがある。
確かに若い時はそれが出来たかもしれないが・・・って今の俺も十分若いんだった。
「じゃあ俺も。」
「ダメです。」
「だそうだ。」
「ミラが言うんじゃ仕方ないわね。アネットと二人でた~べよ。」
「俺の分残しといてくれよ。」
「わかってるわよ。アネット~二人で食べよ~。」
薄情にもそんな事を言いながらエリザは下に戻って行った。
「ミラも行っていいんだぞ?」
「行きません。」
「もう大丈夫だから。」
「ダメです。」
「まったく、心配性だなお前は。」
まだ思いつめたような顔をしている。
さっき寝てスッキリしたわけじゃなさそうだ。
「・・・シロウ様無しでは生きていけません。」
「わかったわかった。」
「だから早く良くなってください。」
「明日には元通りだ、店を閉めた分稼ぐからな。」
「明日もお休みにしませんか?」
「ミラが揉ませてくれたら考えよう。」
そう言いながら手を伸ばしたが、返事の代わりに手を抓られてしまった。
「痛い。」
「当たり前です。」
「悪かったって。もう大丈夫だから、だから安心しろ。なんなら一緒に寝るか?」
「・・・今日は我慢します。」
「そりゃ残念だ。」
ミラの頭を撫でてやると、やっと身体から力が抜けた。
「おかゆ、まだあるよな。」
「もちろんです。」
「それを食べてもう一回寝る。食べさせてくれるか?」
「おまかせください。」
気付けばいつもの顔に戻っていた。
おちおち風邪もひいちゃいられない、これからはもっと気を付けよう。
ミラの顔を見てそう誓うのだった。
5
お気に入りに追加
332
あなたにおすすめの小説
いきなり異世界って理不尽だ!
みーか
ファンタジー
三田 陽菜25歳。会社に行こうと家を出たら、足元が消えて、気付けば異世界へ。
自称神様の作った機械のシステムエラーで地球には帰れない。地球の物は何でも魔力と交換できるようにしてもらい、異世界で居心地良く暮らしていきます!
せっかくのクラス転移だけども、俺はポテトチップスでも食べながらクラスメイトの冒険を見守りたいと思います
霖空
ファンタジー
クラス転移に巻き込まれてしまった主人公。
得た能力は悪くない……いや、むしろ、チートじみたものだった。
しかしながら、それ以上のデメリットもあり……。
傍観者にならざるをえない彼が傍観者するお話です。
基本的に、勇者や、影井くんを見守りつつ、ほのぼの?生活していきます。
が、そのうち、彼自身の物語も始まる予定です。
勇者召喚に巻き込まれ、異世界転移・貰えたスキルも鑑定だけ・・・・だけど、何かあるはず!
よっしぃ
ファンタジー
9月11日、12日、ファンタジー部門2位達成中です!
僕はもうすぐ25歳になる常山 順平 24歳。
つねやま じゅんぺいと読む。
何処にでもいる普通のサラリーマン。
仕事帰りの電車で、吊革に捕まりうつらうつらしていると・・・・
突然気分が悪くなり、倒れそうになる。
周りを見ると、周りの人々もどんどん倒れている。明らかな異常事態。
何が起こったか分からないまま、気を失う。
気が付けば電車ではなく、どこかの建物。
周りにも人が倒れている。
僕と同じようなリーマンから、数人の女子高生や男子学生、仕事帰りの若い女性や、定年近いおっさんとか。
気が付けば誰かがしゃべってる。
どうやらよくある勇者召喚とやらが行われ、たまたま僕は異世界転移に巻き込まれたようだ。
そして・・・・帰るには、魔王を倒してもらう必要がある・・・・と。
想定外の人数がやって来たらしく、渡すギフト・・・・スキルらしいけど、それも数が限られていて、勇者として召喚した人以外、つまり巻き込まれて転移したその他大勢は、1人1つのギフト?スキルを。あとは支度金と装備一式を渡されるらしい。
どうしても無理な人は、戻ってきたら面倒を見ると。
一方的だが、日本に戻るには、勇者が魔王を倒すしかなく、それを待つのもよし、自ら勇者に協力するもよし・・・・
ですが、ここで問題が。
スキルやギフトにはそれぞれランク、格、強さがバラバラで・・・・
より良いスキルは早い者勝ち。
我も我もと群がる人々。
そんな中突き飛ばされて倒れる1人の女性が。
僕はその女性を助け・・・同じように突き飛ばされ、またもや気を失う。
気が付けば2人だけになっていて・・・・
スキルも2つしか残っていない。
一つは鑑定。
もう一つは家事全般。
両方とも微妙だ・・・・
彼女の名は才村 友郁
さいむら ゆか。 23歳。
今年社会人になりたて。
取り残された2人が、すったもんだで生き残り、最終的には成り上がるお話。
異世界転生してしまったがさすがにこれはおかしい
増月ヒラナ
ファンタジー
不慮の事故により死んだ主人公 神田玲。
目覚めたら見知らぬ光景が広がっていた
3歳になるころ、母に催促されステータスを確認したところ
いくらなんでもこれはおかしいだろ!
クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?
青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。
最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。
普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた?
しかも弱いからと森に捨てられた。
いやちょっとまてよ?
皆さん勘違いしてません?
これはあいの不思議な日常を書いた物語である。
本編完結しました!
相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです!
1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…
Sランク昇進を記念して追放された俺は、追放サイドの令嬢を助けたことがきっかけで、彼女が押しかけ女房のようになって困る!
仁徳
ファンタジー
シロウ・オルダーは、Sランク昇進をきっかけに赤いバラという冒険者チームから『スキル非所持の無能』とを侮蔑され、パーティーから追放される。
しかし彼は、異世界の知識を利用して新な魔法を生み出すスキル【魔学者】を使用できるが、彼はそのスキルを隠し、無能を演じていただけだった。
そうとは知らずに、彼を追放した赤いバラは、今までシロウのサポートのお陰で強くなっていたことを知らずに、ダンジョンに挑む。だが、初めての敗北を経験したり、その後借金を背負ったり地位と名声を失っていく。
一方自由になったシロウは、新な町での冒険者活動で活躍し、一目置かれる存在となりながら、追放したマリーを助けたことで惚れられてしまう。手料理を振る舞ったり、背中を流したり、それはまるで押しかけ女房だった!
これは、チート能力を手に入れてしまったことで、無能を演じたシロウがパーティーを追放され、その後ソロとして活躍して無双すると、他のパーティーから追放されたエルフや魔族といった様々な追放少女が集まり、いつの間にかハーレムパーティーを結成している物語!
異世界でお取り寄せ生活
マーチ・メイ
ファンタジー
異世界の魔力不足を補うため、年に数人が魔法を貰い渡り人として渡っていく、そんな世界である日、日本で普通に働いていた橋沼桜が選ばれた。
突然のことに驚く桜だったが、魔法を貰えると知りすぐさま快諾。
貰った魔法は、昔食べて美味しかったチョコレートをまた食べたいがためのお取り寄せ魔法。
意気揚々と異世界へ旅立ち、そして桜の異世界生活が始まる。
貰った魔法を満喫しつつ、異世界で知り合った人達と緩く、のんびりと異世界生活を楽しんでいたら、取り寄せ魔法でとんでもないことが起こり……!?
そんな感じの話です。
のんびり緩い話が好きな人向け、恋愛要素は皆無です。
※小説家になろう、カクヨムでも同時掲載しております。
おっさんの神器はハズレではない
兎屋亀吉
ファンタジー
今日も元気に満員電車で通勤途中のおっさんは、突然異世界から召喚されてしまう。一緒に召喚された大勢の人々と共に、女神様から一人3つの神器をいただけることになったおっさん。はたしておっさんは何を選ぶのか。おっさんの選んだ神器の能力とは。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる