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177.転売屋は呪われた品を売る
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ここに来て二度目の冬を迎える。
それだけ長い事買取屋をやっていると時々出会うのが呪われた品だ。
呪いにもいろいろあるらしく簡単に解呪できるものもあればそうでないものもある。
そういった品々は買取金額も安くできるので、とりあえず買い取ってモニカの所に持って行き、解呪出来たら万々歳。
出来なければ損が出ない金額で売る、というのを繰り返している。
それでも呪われた品はなかなか売れないので、倉庫に溜まっているのは言わずもがな。
いずれはどうにかしなければならないのだが、忙しくて手がつかない状況だ。
そんな時に、奴がやって来た。
寒気も通り過ぎ、いつもの冬がやって来た頃。
カランカランと音を立てて店の戸が開いた。
「イラッシャイ。」
「ここでは買い取った品を販売してると聞いたんだが・・・。」
「あぁ、やってるよ。何を探してるんだ?」
入ってきたのは背中が丸まった小柄な男性。
いや、小柄なのは背中が丸まっているからかもしれない。
なんていうか、雰囲気が普通じゃなくなんとなくおどろおどろしい感じがした。
人目にまともじゃない、そんな雰囲気がガンガンしてくる客だった。
「呪われた品を探してるんだ。」
「呪われた・・・?そりゃ物騒な物さがしてるな。」
「あるか?」
「そりゃあるさ、冒険者の手に余る品だからな。」
「見せてくれ。」
見せてくれって・・・。
そんなものかってどうするのか。
それを聞くのは野暮ってものだ。
何かに使うんだろう。
これは商売だし、ぶっちゃけ売れれば何でもいい。
犯罪に巻き込まれるのはごめんだが、売れる気配のない不良在庫を買ってくれるんだから喜んで販売しようじゃないか。
「そこに並んでる小刀がそうだ。」
「触ってもいいか?」
「触るだけならな。」
呪われた品の場合触る分には問題ない。
だが、身に着ける。例えば、指輪なら指にはめた瞬間に外れなくなる。
解呪出来る品ならまだしも、そうでない程の強い呪いは体を蝕み、死に至ることも有るそうだ。
その辺は俺が説明する義理は無いので、呪われている事だけ伝えるようにしいる。
自己責任ってやつだな。
男は棚から小刀を取ると、興味深そうに刃や柄を色々な角度から見始めた。
『誓いの小刀。その刃物で傷をつけ合いながら誓いを立てると、その誓いが叶うまで不運が押し寄せる。叶った場合は襲われた不運の倍幸運が押し寄せるという不思議な小刀。呪われている。最近の平均取引価格は銀貨33枚、最安値銀貨15枚、最高値銀貨59枚。最終取引日は667日前と記録されています。』
確かそんな感じの商品だった気がする。
前の持ち主はそれを知らずにただの刃物として使っていたようだが、あまり切れ味が良くなく露店で投げ売りしていたのを買い付けたんだ。
確か銀貨3枚だったかな?
「誓いの小刀か。」
「なんだ、鑑定持ちか。」
「まぁな。」
「それなら下手な小細工しなくてもいいな、銀貨40枚だ。」
「高くないか?」
「奴隷を使って色々と楽しむ遊びが流行ってるんだとよ。オークションでは銀貨80枚で売れた品だ、この値段は破格だよ。」
「呪われているからだろ?」
「むしろこの手の品で呪われてない方が不思議だけどな。」
「違いない。」
男がクスリと笑った。
中々の好反応だ。
これはいけるか?
「まぁ売れにくいのは間違いない、銀貨35枚でどうだ。」
「いいだろう売ってくれ。」
銀貨5枚の値引きなど売れない事を考えたら屁でもない。
男は上機嫌で銀貨を積み上げると嬉しそうに店を出て行った。
「毎度あり~。」
もちろん俺も上機嫌だ。
銀貨をジャラジャラと革袋に突っ込んでいく。
不良在庫がはけた。
これで別の品を展示できる。
折角だしまた呪われた品にしようか。
まだまだ在庫はあるんだ、また同じようなのを探しに来るやつがいるかもしれない。
そんな夢にもない事を考えながら倉庫に品を取りに行くのだった。
「昨日の品は中々だった、まだあるか?」
次の日。
夢にもない事が現実に起きた。
昨日の男がまるで恋する乙女のように頬を紅潮させながらやって来たのだ。
まさかの登場に俺も若干引き気味だったが、また買ってくれるって言うんだ。
売ろうじゃないか。
「いくつか在庫しているが・・・まさか全部買うつもりか?」
「値段と品によるが、あれだけの品であれば喜んで買わせてもらう。金はある、持ってきてくれ。」
そう言いながら男はたくさんの硬貨が詰まっているであろう革袋をカウンターの上に乗せた。
少し開いた袋からは金色の硬貨も見える。
マジの金持ちのようだ。
だが、なぜそんなに呪われた品にこだわるのか・・・。
ま、売れたらいいか。
男を待たせて倉庫から抱えられるだけ商品を運んでくる。
大小さまざま、指輪から大きな盾までより取り見取りの計6品だ。
「お、おぉ・・・。」
「まだいくつかあるが、まさか全部買わないよな?」
「触っても構わないか?」
「鑑定持ちだろ?適当に確認してくれ。」
いちいち説明しなくていいのが鑑定持ちのありがたい所だな。
説明しても嘘をついてくるとかイチャモン付けてくるやつが偶にいるが、そういう奴には売らなければいいだけの話だ。
大抵値下げしたいだけのやつなので、断ると慌てて掌を返す。
買うつもりなら下手な小細工せず交渉すればいいのに、全く。
「どれも素晴らしい品だ、だがこの盾は私の求めているようなものではない。」
『守りの大盾。鉄で作られているはずなのに聖銀のような強度を持つ不思議な盾。あまりの巨大さ故に持ち運ぶのは大変だが、それが出来るのであれば鉄壁の守りとなるだろう。呪われている。最近の平均取引価格は銀貨33枚、最安値銀貨21枚、最高値銀貨44枚。最終取引日は2年と112日前と記録されています。』
見た目のごつさに比例するだけの強度を持つ盾らしい。
にもかかわらず呪われているとはこれ如何に。
身に着けたが最後死ぬまで手放せないので買う人がほとんどいないんだ。
ベルナに売りつけようと思ったんだが断られてしまい、それ以降倉庫で埃をかぶっている。
「いい品なんだがな、残念だ。」
「それは私の求めている呪いではなかった。」
「呪いにも違いがあるのか?」
「もちろんあるさ、恨みや嫉みからくるものが殆んどだが時にはそれのように正義感や使命感からくる呪いがある。そういう物を探しているんじゃないんだ。」
「なるほどなぁ。」
呪いの概念についてはモニカから教えてもらったが種類については初めて聞いた。
男は残りの5品を金貨1枚と銀貨78枚で買うと前回同様嬉しそうに店を出て行こうとする。
「なぁ、それをどうするつもりなんだ?」
「君に言う必要はない、また必要になったら買いに来る。」
去り際に使い道を聞いてみたが教えてくれなかった。
残念だ。
「ねぇ、また買いに来たの?」
「みたいだな。金貨2枚近くする代金をポンと支払って帰っていったぞ。」
「おっかねっもち~!」
「とはいえあれだけ禍々しい品ばかり買っていくのは気味が悪い。エリザ追えるか?」
「そういうと思ってた、任せといて。」
ニヤリと笑ってエリザが店を飛び出していく。
はてさて鬼が出るか蛇が出るか。
内容次第では今後の取引を考えなきゃいけないな。
なんて思いながら待つこと数時間、夕方になってやっとエリザが戻ってきた。
「心配したぞ。」
「えへへ、ごめんね。」
「それで首尾は?」
「モニカに解呪を頼んでいたみたい。」
「モニカに?」
「でも全部断られてた。呪いが強すぎるんだって。」
「そりゃな、俺が一度持っていって断られた品だ。」
「色々と話をしてお布施を置いて帰って行ったわ。でも変なのは断られたのに嬉しそうにしているのよ?それどころか頬を赤らめちゃって、まるで恋する乙女みたい。」
恋する乙女って、そりゃいくら何でも・・・。
「あり得るかもな。」
「え?」
「モニカに恋心を抱いているが接点がない、だから解呪という名目で会いに行ってるっていうのはどうだ?」
「ありえなくは無いけど、それなら素直にお布施ですって渡しに行ったらいいんじゃない?孤児院なんだしお金はいくらあっても困らないでしょ。」
「現金を渡すとあからさまだからな、だから解呪をネタにしてるんだろう。」
「そこまでするぅ?」
「今度モニカに聞いてみるか。」
いくら考えたところで答えは出ない。
流石に今行くとあれなので翌日モニカに話を聞きに行った。
「小柄の男性で解呪を頼みに来る方?あぁ、ホラーさんですね。」
「良く来るのか?」
「最近ちょくちょく来てくださいます。ですが私の腕が未熟なばかりに解呪できなくて・・・。本当に申し訳なく思っています。」
「別にモニカの腕が悪いわけじゃない、その品の呪いが強すぎるだけだ。」
「人の怨念や執念とは何故あそこまで強いのでしょうか。」
「さぁなぁ。」
その辺は俺には専門外だ。
「でもいつか解呪できるよう精進いたします。」
「頑張れよ。これ、ガキ共に食わせてやってくれ。」
「いつもありがとございます。あら、これは?」
「ルティエが作った耳飾りだ、あまりもので悪いが良かったら付けてやってくれ。」
若いのに化粧っ気も無くアクセサリーも一切身に着けていない。
あまりものではないが、これを身に着ければあの男もさらに喜ぶだろう。
美人が着飾るほど幸せなことは無い。
眼福ってやつだな。
「ありがとうございます!」
「じゃあな、またそういった品を買い取ったら持ってくる。」
「はい!お待ちしてます!」
渡した耳飾りを嬉しそうに胸に抱き、モニカが頭を下げた。
モニカの気を引きたくて呪われた品を買いに来る男。
彼の未来に祝福あれ。
でもすぐにくっつかなくていいぞ。
長引いてくれる方がうちの不良在庫が良く売れるからな。
そんな鬼のようなことを考えながら、俺は教会を後にした。
それから二日後。
男に呪われた品を売りつけ、応援するような目で客を見送る俺の姿が目撃されたそうだ。
それだけ長い事買取屋をやっていると時々出会うのが呪われた品だ。
呪いにもいろいろあるらしく簡単に解呪できるものもあればそうでないものもある。
そういった品々は買取金額も安くできるので、とりあえず買い取ってモニカの所に持って行き、解呪出来たら万々歳。
出来なければ損が出ない金額で売る、というのを繰り返している。
それでも呪われた品はなかなか売れないので、倉庫に溜まっているのは言わずもがな。
いずれはどうにかしなければならないのだが、忙しくて手がつかない状況だ。
そんな時に、奴がやって来た。
寒気も通り過ぎ、いつもの冬がやって来た頃。
カランカランと音を立てて店の戸が開いた。
「イラッシャイ。」
「ここでは買い取った品を販売してると聞いたんだが・・・。」
「あぁ、やってるよ。何を探してるんだ?」
入ってきたのは背中が丸まった小柄な男性。
いや、小柄なのは背中が丸まっているからかもしれない。
なんていうか、雰囲気が普通じゃなくなんとなくおどろおどろしい感じがした。
人目にまともじゃない、そんな雰囲気がガンガンしてくる客だった。
「呪われた品を探してるんだ。」
「呪われた・・・?そりゃ物騒な物さがしてるな。」
「あるか?」
「そりゃあるさ、冒険者の手に余る品だからな。」
「見せてくれ。」
見せてくれって・・・。
そんなものかってどうするのか。
それを聞くのは野暮ってものだ。
何かに使うんだろう。
これは商売だし、ぶっちゃけ売れれば何でもいい。
犯罪に巻き込まれるのはごめんだが、売れる気配のない不良在庫を買ってくれるんだから喜んで販売しようじゃないか。
「そこに並んでる小刀がそうだ。」
「触ってもいいか?」
「触るだけならな。」
呪われた品の場合触る分には問題ない。
だが、身に着ける。例えば、指輪なら指にはめた瞬間に外れなくなる。
解呪出来る品ならまだしも、そうでない程の強い呪いは体を蝕み、死に至ることも有るそうだ。
その辺は俺が説明する義理は無いので、呪われている事だけ伝えるようにしいる。
自己責任ってやつだな。
男は棚から小刀を取ると、興味深そうに刃や柄を色々な角度から見始めた。
『誓いの小刀。その刃物で傷をつけ合いながら誓いを立てると、その誓いが叶うまで不運が押し寄せる。叶った場合は襲われた不運の倍幸運が押し寄せるという不思議な小刀。呪われている。最近の平均取引価格は銀貨33枚、最安値銀貨15枚、最高値銀貨59枚。最終取引日は667日前と記録されています。』
確かそんな感じの商品だった気がする。
前の持ち主はそれを知らずにただの刃物として使っていたようだが、あまり切れ味が良くなく露店で投げ売りしていたのを買い付けたんだ。
確か銀貨3枚だったかな?
「誓いの小刀か。」
「なんだ、鑑定持ちか。」
「まぁな。」
「それなら下手な小細工しなくてもいいな、銀貨40枚だ。」
「高くないか?」
「奴隷を使って色々と楽しむ遊びが流行ってるんだとよ。オークションでは銀貨80枚で売れた品だ、この値段は破格だよ。」
「呪われているからだろ?」
「むしろこの手の品で呪われてない方が不思議だけどな。」
「違いない。」
男がクスリと笑った。
中々の好反応だ。
これはいけるか?
「まぁ売れにくいのは間違いない、銀貨35枚でどうだ。」
「いいだろう売ってくれ。」
銀貨5枚の値引きなど売れない事を考えたら屁でもない。
男は上機嫌で銀貨を積み上げると嬉しそうに店を出て行った。
「毎度あり~。」
もちろん俺も上機嫌だ。
銀貨をジャラジャラと革袋に突っ込んでいく。
不良在庫がはけた。
これで別の品を展示できる。
折角だしまた呪われた品にしようか。
まだまだ在庫はあるんだ、また同じようなのを探しに来るやつがいるかもしれない。
そんな夢にもない事を考えながら倉庫に品を取りに行くのだった。
「昨日の品は中々だった、まだあるか?」
次の日。
夢にもない事が現実に起きた。
昨日の男がまるで恋する乙女のように頬を紅潮させながらやって来たのだ。
まさかの登場に俺も若干引き気味だったが、また買ってくれるって言うんだ。
売ろうじゃないか。
「いくつか在庫しているが・・・まさか全部買うつもりか?」
「値段と品によるが、あれだけの品であれば喜んで買わせてもらう。金はある、持ってきてくれ。」
そう言いながら男はたくさんの硬貨が詰まっているであろう革袋をカウンターの上に乗せた。
少し開いた袋からは金色の硬貨も見える。
マジの金持ちのようだ。
だが、なぜそんなに呪われた品にこだわるのか・・・。
ま、売れたらいいか。
男を待たせて倉庫から抱えられるだけ商品を運んでくる。
大小さまざま、指輪から大きな盾までより取り見取りの計6品だ。
「お、おぉ・・・。」
「まだいくつかあるが、まさか全部買わないよな?」
「触っても構わないか?」
「鑑定持ちだろ?適当に確認してくれ。」
いちいち説明しなくていいのが鑑定持ちのありがたい所だな。
説明しても嘘をついてくるとかイチャモン付けてくるやつが偶にいるが、そういう奴には売らなければいいだけの話だ。
大抵値下げしたいだけのやつなので、断ると慌てて掌を返す。
買うつもりなら下手な小細工せず交渉すればいいのに、全く。
「どれも素晴らしい品だ、だがこの盾は私の求めているようなものではない。」
『守りの大盾。鉄で作られているはずなのに聖銀のような強度を持つ不思議な盾。あまりの巨大さ故に持ち運ぶのは大変だが、それが出来るのであれば鉄壁の守りとなるだろう。呪われている。最近の平均取引価格は銀貨33枚、最安値銀貨21枚、最高値銀貨44枚。最終取引日は2年と112日前と記録されています。』
見た目のごつさに比例するだけの強度を持つ盾らしい。
にもかかわらず呪われているとはこれ如何に。
身に着けたが最後死ぬまで手放せないので買う人がほとんどいないんだ。
ベルナに売りつけようと思ったんだが断られてしまい、それ以降倉庫で埃をかぶっている。
「いい品なんだがな、残念だ。」
「それは私の求めている呪いではなかった。」
「呪いにも違いがあるのか?」
「もちろんあるさ、恨みや嫉みからくるものが殆んどだが時にはそれのように正義感や使命感からくる呪いがある。そういう物を探しているんじゃないんだ。」
「なるほどなぁ。」
呪いの概念についてはモニカから教えてもらったが種類については初めて聞いた。
男は残りの5品を金貨1枚と銀貨78枚で買うと前回同様嬉しそうに店を出て行こうとする。
「なぁ、それをどうするつもりなんだ?」
「君に言う必要はない、また必要になったら買いに来る。」
去り際に使い道を聞いてみたが教えてくれなかった。
残念だ。
「ねぇ、また買いに来たの?」
「みたいだな。金貨2枚近くする代金をポンと支払って帰っていったぞ。」
「おっかねっもち~!」
「とはいえあれだけ禍々しい品ばかり買っていくのは気味が悪い。エリザ追えるか?」
「そういうと思ってた、任せといて。」
ニヤリと笑ってエリザが店を飛び出していく。
はてさて鬼が出るか蛇が出るか。
内容次第では今後の取引を考えなきゃいけないな。
なんて思いながら待つこと数時間、夕方になってやっとエリザが戻ってきた。
「心配したぞ。」
「えへへ、ごめんね。」
「それで首尾は?」
「モニカに解呪を頼んでいたみたい。」
「モニカに?」
「でも全部断られてた。呪いが強すぎるんだって。」
「そりゃな、俺が一度持っていって断られた品だ。」
「色々と話をしてお布施を置いて帰って行ったわ。でも変なのは断られたのに嬉しそうにしているのよ?それどころか頬を赤らめちゃって、まるで恋する乙女みたい。」
恋する乙女って、そりゃいくら何でも・・・。
「あり得るかもな。」
「え?」
「モニカに恋心を抱いているが接点がない、だから解呪という名目で会いに行ってるっていうのはどうだ?」
「ありえなくは無いけど、それなら素直にお布施ですって渡しに行ったらいいんじゃない?孤児院なんだしお金はいくらあっても困らないでしょ。」
「現金を渡すとあからさまだからな、だから解呪をネタにしてるんだろう。」
「そこまでするぅ?」
「今度モニカに聞いてみるか。」
いくら考えたところで答えは出ない。
流石に今行くとあれなので翌日モニカに話を聞きに行った。
「小柄の男性で解呪を頼みに来る方?あぁ、ホラーさんですね。」
「良く来るのか?」
「最近ちょくちょく来てくださいます。ですが私の腕が未熟なばかりに解呪できなくて・・・。本当に申し訳なく思っています。」
「別にモニカの腕が悪いわけじゃない、その品の呪いが強すぎるだけだ。」
「人の怨念や執念とは何故あそこまで強いのでしょうか。」
「さぁなぁ。」
その辺は俺には専門外だ。
「でもいつか解呪できるよう精進いたします。」
「頑張れよ。これ、ガキ共に食わせてやってくれ。」
「いつもありがとございます。あら、これは?」
「ルティエが作った耳飾りだ、あまりもので悪いが良かったら付けてやってくれ。」
若いのに化粧っ気も無くアクセサリーも一切身に着けていない。
あまりものではないが、これを身に着ければあの男もさらに喜ぶだろう。
美人が着飾るほど幸せなことは無い。
眼福ってやつだな。
「ありがとうございます!」
「じゃあな、またそういった品を買い取ったら持ってくる。」
「はい!お待ちしてます!」
渡した耳飾りを嬉しそうに胸に抱き、モニカが頭を下げた。
モニカの気を引きたくて呪われた品を買いに来る男。
彼の未来に祝福あれ。
でもすぐにくっつかなくていいぞ。
長引いてくれる方がうちの不良在庫が良く売れるからな。
そんな鬼のようなことを考えながら、俺は教会を後にした。
それから二日後。
男に呪われた品を売りつけ、応援するような目で客を見送る俺の姿が目撃されたそうだ。
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