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176.転売屋は氷室を作る
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俺の予想は大当たりだった。
面倒を嫌った冒険者は早速血抜きをした魔獣を持って戻って来た。
特にアングリーチキンは持ち帰るのに楽なので大好評だ。
いつもなら店に持ち込んでもらうのだが、今回は周りの迷惑も考えて買取場所を変更している。
「アングリーチキン5羽だ。」
「血抜きも・・・オッケーだな。銀貨4枚だ、ご苦労さん。ついでに奥の倉庫に持って行ってくれ、人がいるから置いとくだけで良い。」
「奥の倉庫?」
「簡易の冷蔵庫にしてるんだよ。」
「なるほどな、雪なら大量にあるもんな。」
「そういう事だ。はいよ、次の人。」
予想外だったのはもちこむ冒険者が予想よりも多くなったことだ。
皆考える事は同じなのか、捌いてギルドに持ち込むよりも血抜きをしてうちに持ち込むことを選んだらしい。
おかげで血なまぐさいったりゃありゃしない。
良かった、外で買取してて。
「シロウ様、シープ様が参られましたがどうしますか?」
「氷室の前に来るように言ってくれ、俺もすぐ行く。」
「では案内が終わりましたら買取替わりましょう。」
「すまん、任せた。」
吐く息は白く、予想外の寒気はいまだ継続中。
日中は降らないのだが何故か夜に良く雪が降る。
そのせいで物流はあまり回復していない。
おそらくはその件で来たんだろうな。
ミラが戻って来てから買取替わり、倉庫に向かう。
「よぉ、ギルド協会のえらいさんがこんな寒い所に何の用だ?」
「冒険者ギルドからの苦情をお伝えしに来ました、商売あがったりだそうです。」
「知るかよ、やり方がまずかったんだって嫁さんに言っとけ。」
「せっかく作った倉庫をこんな使い方するなんて・・・、シロウさんしか思いつきませんねぇ。」
そういいながら羊男が作りかけの倉庫に目を向ける。
入れ物だけは何とか出来上がった倉庫、そこに大量の雪を詰め込み即席の冷蔵庫にしたのだ。
昔でいう氷室ってやつだな。
夜はかなり冷え込むし、日中も雪のおかげでいい感じに冷えてくれる。
ドアが無いので魔物や獣が寄ってくる危険はあるが、そこは大量の肉を食べたルフが鉄壁のガードで防いでくれている。
一応簡易扉はつけたぞ?
それと虫がつかない様にも気を使ってる。
マイナスまで行かないから長期保存は難しいが、ここはあくまでも一時保管場所。
ある程度溜まったら肉屋に持って行って買い取ってもらうだけだ。
「いや~作りかけとはいえ助かった。」
「まったく、掃除は自分でしてくださいね。」
「わかってるって。」
「で、この肉なんですけど・・・。」
「肉なら卸し先は決まってるぞ。」
「でもそっちも飽和気味と聞いています。」
「まぁなぁ、さすがにおっちゃん一人でこの量は捌き切れないよなぁ。」
こんな話をしていながらも、ひっきりなしに冒険者が肉を運んでくる。
それを普段は畑作業に従事している男たちが倉庫の奥へと運んでいた。
因みに指示を出しているのはアグリである。
「シロウ様、ちょうど良い所に。」
「アグリどうした?」
「このままでは今日中に倉庫がいっぱいになりそうなんです。雪を上からかければ何とかなりますが、何分足場などは無いのであまり高さが出せなくて・・・。」
「マジかぁ。」
「いかがなさいますか?」
「今更止められないんだよなぁ、ギルドに持って行っても文句を言われるだろうし。」
横で羊男がうんうんと頷いている。
なんならギルドが買い取ってくれたら話が早いんだが、そうしてくれる気配はない。
あくまでも捌いた肉をどうにかするだけのようだ。
「そこで我々の登場というわけですよ。」
「横から出て来て美味しい所を持って行こうってわけだな?」
「でも、損をするのはお嫌いでしょう?」
「まぁな。」
「この寒気もいつまで続くかわかりませんし、我々としても食料問題の解決は急務です。幸い小麦の備蓄は大量にありますので、肉さえあれば食いつなげるんですよね。ダンジョン産の野菜も無くはないわけですし。」
「ほんと、ダンジョンって便利だな。」
「ダンジョンで成り立っていますからねぇ、この街は。」
まさか食料まで頼ることになるとは思わなかったが、それで生計を立ててるわけだしな、俺も。
「卸値は安くしないからな、おっちゃんに悪いだろ?」
「溢れるよりましだと思いますが?」
「・・・カウ銀貨15、チキン銀貨1、ボア銀貨4でどうだ?」
「カウ銀貨14、ボア3.5です。」
「足元見やがって。」
「別にいいんですよ?ご自身で処理なさるんでしたら。」
上から目線なのがかなり癪に障るが、奴の言っていることに間違いはない。
いくら安く買った所で処理できなければ捨てなければならない。
捨てればまるまる損になる。
そんな事するぐらいならわずかでも利益を出した方がマシって事だ。
羊男の策略に見事嵌ってしまったってわけだな。
昨日の会議も、俺が先に動くことを見越して話し合っていたんじゃないだろうか。
「ちなみに買い取ったやつはどうするんだ?」
「まずは処理して市場に回します。それでも余れば備蓄ですね。」
「備蓄に回ったやつの二割、いや一割でいいからこっちに回せよ。」
「ただで譲ると後々面倒ですので、格安でとだけお答えします。最近うるさいんですよね、こういうの。」
「横領だなんだってあるからなぁ。」
「他人ならともかく身内だと余計に面倒で・・・。」
これ以上この話題には触れない方がいいだろう。
一先ず処理する先は決まったわけだし、あとはガンガン買い取るだけだ。
「じゃあ俺は戻るぞ。」
「えぇ、お邪魔しました。搬出は夕方で構いませんか?」
「あぁ、肉屋への納品が終わったら残りを頼む。」
いくら氷室があるとはいえ、あまり肉を置きっぱなしにするのもあれだ。
定期的に運んでくれるならこっちも心置きなく買取を続けられる。
アグリ達も楽できるしな。
羊男と別れてミラの所に戻る。
買取は・・・大盛況だった。
「あ、シロウ様お帰りなさい。」
「大行列だな。」
「皆さん捌くのが嫌でこっちに来ているそうです。」
「それはそれでどうなんだ?」
「さっきギルドの職員さんが来て泣き言を言って帰られました。」
「そんなこと言われてもなぁ・・・。」
さっきも言ったが目の付け所はよかったが、やり方がまずかった。
「シロウさんのおかげで楽できますよ。」
「ほんとほんと!」
「そう思うならじゃんじゃん持ってきてくれ。」
「わかってますって!」
「だが簡単だからってアングリーチキンばかりなのはどうなんだ?ワイルドカウを持って来てくれよ、あっちの方が色々使い道あるんだから。」
「あれ重いんですよね。」
「まぁ、気持ちはわかる。」
後ろの冒険者もウンウンと頷いている。
いくら金額が大きいからって牛一頭を持ち帰るよりも鳥一羽を運ぶ方が断然楽だ。
実際ギルドに持ち込まれているのは牛がほとんどである。
重いのでその場でバラして素材と肉に分け、別々に持ち込むことでそれなりの額が手に入るらしい。
そうか、素材か。
そこまでは考えられなかった。
肉屋のおっちゃんも裏では素材を卸しているんだろうなぁ。
それぐらいのうまみが無いとやってられないか。
結局寒気は一週間ほどで過ぎ去り、肉の買い付けは終了した。
かなりの数を買い取ったので街は肉で溢れ、物流が解消されてからはそれはもうお祭り騒ぎのような状況だった。
いたるところで肉が焼かれ、良い匂いが町中を包んでいる。
「シロウ様、食事が出来ました。」
「おぉぅ、今日もか。」
朝の営業が一段落したのでミラが昼食を準備してくれた。
今日の昼食は・・・分厚いステーキだ。
今日は、じゃないな。
今日も、だ。
「御主人様があんなに買い付けるからですよ。」
「いいじゃない、食べた分だけ動けば問題ないわ。」
「そうなんだが・・・。」
「それに、食べ続けないと倉庫が空かないわよ。」
「奥に眠らせてあるグリーンスライムの核を取り出す為にもご協力お願いいたします。」
倉庫には大量の肉が眠っている。
確かに備蓄に回った分の一割をよこせと言った。
だが、あんなにあるとは思わないじゃないか。
「大丈夫です、食べたら無くなりますから。」
「そうだな。頑張って食べるか。」
食べれば無くなる。
それでも減らなければ売りに行けばいい。
この街には溢れていても隣町にはないはずだ。
ホワイトベリーの納品ついでに売りに行けばいいだろう。
「しっかり食べて夜まで働いて、またいっぱい食べて、夜もしっかり働いてよね。」
「昼間からお盛んだな。」
「だって寒いんだもの、人肌恋しいじゃない?」
「ま、いいけどな。」
肉食系女子という言葉が昔流行ったのを思い出した。
確かに女はそう言う部分がある。
特に肉を好んで食べる女はな。
面倒を嫌った冒険者は早速血抜きをした魔獣を持って戻って来た。
特にアングリーチキンは持ち帰るのに楽なので大好評だ。
いつもなら店に持ち込んでもらうのだが、今回は周りの迷惑も考えて買取場所を変更している。
「アングリーチキン5羽だ。」
「血抜きも・・・オッケーだな。銀貨4枚だ、ご苦労さん。ついでに奥の倉庫に持って行ってくれ、人がいるから置いとくだけで良い。」
「奥の倉庫?」
「簡易の冷蔵庫にしてるんだよ。」
「なるほどな、雪なら大量にあるもんな。」
「そういう事だ。はいよ、次の人。」
予想外だったのはもちこむ冒険者が予想よりも多くなったことだ。
皆考える事は同じなのか、捌いてギルドに持ち込むよりも血抜きをしてうちに持ち込むことを選んだらしい。
おかげで血なまぐさいったりゃありゃしない。
良かった、外で買取してて。
「シロウ様、シープ様が参られましたがどうしますか?」
「氷室の前に来るように言ってくれ、俺もすぐ行く。」
「では案内が終わりましたら買取替わりましょう。」
「すまん、任せた。」
吐く息は白く、予想外の寒気はいまだ継続中。
日中は降らないのだが何故か夜に良く雪が降る。
そのせいで物流はあまり回復していない。
おそらくはその件で来たんだろうな。
ミラが戻って来てから買取替わり、倉庫に向かう。
「よぉ、ギルド協会のえらいさんがこんな寒い所に何の用だ?」
「冒険者ギルドからの苦情をお伝えしに来ました、商売あがったりだそうです。」
「知るかよ、やり方がまずかったんだって嫁さんに言っとけ。」
「せっかく作った倉庫をこんな使い方するなんて・・・、シロウさんしか思いつきませんねぇ。」
そういいながら羊男が作りかけの倉庫に目を向ける。
入れ物だけは何とか出来上がった倉庫、そこに大量の雪を詰め込み即席の冷蔵庫にしたのだ。
昔でいう氷室ってやつだな。
夜はかなり冷え込むし、日中も雪のおかげでいい感じに冷えてくれる。
ドアが無いので魔物や獣が寄ってくる危険はあるが、そこは大量の肉を食べたルフが鉄壁のガードで防いでくれている。
一応簡易扉はつけたぞ?
それと虫がつかない様にも気を使ってる。
マイナスまで行かないから長期保存は難しいが、ここはあくまでも一時保管場所。
ある程度溜まったら肉屋に持って行って買い取ってもらうだけだ。
「いや~作りかけとはいえ助かった。」
「まったく、掃除は自分でしてくださいね。」
「わかってるって。」
「で、この肉なんですけど・・・。」
「肉なら卸し先は決まってるぞ。」
「でもそっちも飽和気味と聞いています。」
「まぁなぁ、さすがにおっちゃん一人でこの量は捌き切れないよなぁ。」
こんな話をしていながらも、ひっきりなしに冒険者が肉を運んでくる。
それを普段は畑作業に従事している男たちが倉庫の奥へと運んでいた。
因みに指示を出しているのはアグリである。
「シロウ様、ちょうど良い所に。」
「アグリどうした?」
「このままでは今日中に倉庫がいっぱいになりそうなんです。雪を上からかければ何とかなりますが、何分足場などは無いのであまり高さが出せなくて・・・。」
「マジかぁ。」
「いかがなさいますか?」
「今更止められないんだよなぁ、ギルドに持って行っても文句を言われるだろうし。」
横で羊男がうんうんと頷いている。
なんならギルドが買い取ってくれたら話が早いんだが、そうしてくれる気配はない。
あくまでも捌いた肉をどうにかするだけのようだ。
「そこで我々の登場というわけですよ。」
「横から出て来て美味しい所を持って行こうってわけだな?」
「でも、損をするのはお嫌いでしょう?」
「まぁな。」
「この寒気もいつまで続くかわかりませんし、我々としても食料問題の解決は急務です。幸い小麦の備蓄は大量にありますので、肉さえあれば食いつなげるんですよね。ダンジョン産の野菜も無くはないわけですし。」
「ほんと、ダンジョンって便利だな。」
「ダンジョンで成り立っていますからねぇ、この街は。」
まさか食料まで頼ることになるとは思わなかったが、それで生計を立ててるわけだしな、俺も。
「卸値は安くしないからな、おっちゃんに悪いだろ?」
「溢れるよりましだと思いますが?」
「・・・カウ銀貨15、チキン銀貨1、ボア銀貨4でどうだ?」
「カウ銀貨14、ボア3.5です。」
「足元見やがって。」
「別にいいんですよ?ご自身で処理なさるんでしたら。」
上から目線なのがかなり癪に障るが、奴の言っていることに間違いはない。
いくら安く買った所で処理できなければ捨てなければならない。
捨てればまるまる損になる。
そんな事するぐらいならわずかでも利益を出した方がマシって事だ。
羊男の策略に見事嵌ってしまったってわけだな。
昨日の会議も、俺が先に動くことを見越して話し合っていたんじゃないだろうか。
「ちなみに買い取ったやつはどうするんだ?」
「まずは処理して市場に回します。それでも余れば備蓄ですね。」
「備蓄に回ったやつの二割、いや一割でいいからこっちに回せよ。」
「ただで譲ると後々面倒ですので、格安でとだけお答えします。最近うるさいんですよね、こういうの。」
「横領だなんだってあるからなぁ。」
「他人ならともかく身内だと余計に面倒で・・・。」
これ以上この話題には触れない方がいいだろう。
一先ず処理する先は決まったわけだし、あとはガンガン買い取るだけだ。
「じゃあ俺は戻るぞ。」
「えぇ、お邪魔しました。搬出は夕方で構いませんか?」
「あぁ、肉屋への納品が終わったら残りを頼む。」
いくら氷室があるとはいえ、あまり肉を置きっぱなしにするのもあれだ。
定期的に運んでくれるならこっちも心置きなく買取を続けられる。
アグリ達も楽できるしな。
羊男と別れてミラの所に戻る。
買取は・・・大盛況だった。
「あ、シロウ様お帰りなさい。」
「大行列だな。」
「皆さん捌くのが嫌でこっちに来ているそうです。」
「それはそれでどうなんだ?」
「さっきギルドの職員さんが来て泣き言を言って帰られました。」
「そんなこと言われてもなぁ・・・。」
さっきも言ったが目の付け所はよかったが、やり方がまずかった。
「シロウさんのおかげで楽できますよ。」
「ほんとほんと!」
「そう思うならじゃんじゃん持ってきてくれ。」
「わかってますって!」
「だが簡単だからってアングリーチキンばかりなのはどうなんだ?ワイルドカウを持って来てくれよ、あっちの方が色々使い道あるんだから。」
「あれ重いんですよね。」
「まぁ、気持ちはわかる。」
後ろの冒険者もウンウンと頷いている。
いくら金額が大きいからって牛一頭を持ち帰るよりも鳥一羽を運ぶ方が断然楽だ。
実際ギルドに持ち込まれているのは牛がほとんどである。
重いのでその場でバラして素材と肉に分け、別々に持ち込むことでそれなりの額が手に入るらしい。
そうか、素材か。
そこまでは考えられなかった。
肉屋のおっちゃんも裏では素材を卸しているんだろうなぁ。
それぐらいのうまみが無いとやってられないか。
結局寒気は一週間ほどで過ぎ去り、肉の買い付けは終了した。
かなりの数を買い取ったので街は肉で溢れ、物流が解消されてからはそれはもうお祭り騒ぎのような状況だった。
いたるところで肉が焼かれ、良い匂いが町中を包んでいる。
「シロウ様、食事が出来ました。」
「おぉぅ、今日もか。」
朝の営業が一段落したのでミラが昼食を準備してくれた。
今日の昼食は・・・分厚いステーキだ。
今日は、じゃないな。
今日も、だ。
「御主人様があんなに買い付けるからですよ。」
「いいじゃない、食べた分だけ動けば問題ないわ。」
「そうなんだが・・・。」
「それに、食べ続けないと倉庫が空かないわよ。」
「奥に眠らせてあるグリーンスライムの核を取り出す為にもご協力お願いいたします。」
倉庫には大量の肉が眠っている。
確かに備蓄に回った分の一割をよこせと言った。
だが、あんなにあるとは思わないじゃないか。
「大丈夫です、食べたら無くなりますから。」
「そうだな。頑張って食べるか。」
食べれば無くなる。
それでも減らなければ売りに行けばいい。
この街には溢れていても隣町にはないはずだ。
ホワイトベリーの納品ついでに売りに行けばいいだろう。
「しっかり食べて夜まで働いて、またいっぱい食べて、夜もしっかり働いてよね。」
「昼間からお盛んだな。」
「だって寒いんだもの、人肌恋しいじゃない?」
「ま、いいけどな。」
肉食系女子という言葉が昔流行ったのを思い出した。
確かに女はそう言う部分がある。
特に肉を好んで食べる女はな。
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