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131転売屋はギルドに目をつけられる
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翌朝。
若干太陽が黄色っぽく見えるが特に問題なく宿を出た。
「では私はギルドを調べてまいります。」
「くれぐれも気をつけてな。」
「お昼に昨日のお店集合ね。」
「そちらもどうかお気をつけて。」
エリザはアネットからもらった薬で元気いっぱいのようだ。
薬に頼ってまで飲むのはどうかと思うが、あの苦しみから解放されるのなら飲みたくなるな。
ミラと別れた後、宿で教えてもらった業者を探しに歩く。
残り時間は半日。
それまでに何とか買い手を見つけたいものだな。
「確か川沿いにあるって言ってたわよね。」
「あぁ、手押し車の紋章が目印らしい。」
「でもさ、ギルドが独占なんてしていいものなの?」
「それを俺に聞くなよ。固定買取制度だってある種の独占だし、絶対悪ってわけじゃないだろうな。」
「でもそれで迷惑だって思ってる人もいるわけでしょ?」
「まぁな。」
決まったところに仕事を発注させるために素材を独占するっていうのは俺もどうかと思う。
ギルドからしてみれば街の管理者に恩を売れるからやっているんだろうけど、それで工事費が値上がりしたら本末転倒じゃないだろうか。
「あ、あったよ!」
川沿いを北上すること五分程。
少し古ぼけた木造二階建ての建物にお目当ての紋章が揺れていた。
「なんだかボロくない?」
「それを言うな。だが前は綺麗だろ?あれはちゃんと掃除してある証拠だ。」
「ほんとだ。シロウってよく見てるわよね。」
「エリザだって魔物をよく見るだろ?それと同じだ。」
「確かにそうかも。」
川沿いは流れ着いたごみやなんかがたまっていることが多いが、あの建物の周辺だけ綺麗に片付けられていた。
建物の横に並べられた道具には泥汚れ一つついていない。
こういう事が出来る所にハズレはない・・・と俺は思っている。
扉の前に行くと明かりが見えた。
営業はしているようだ。
「何もないと思うが、できるだけ穏便にな。」
「わかってるわよ。」
二回ノックしてから扉を開ける。
そんなに広くない建物だ、受付は・・・ないようだな。
「何の用だ?」
「ここは工事を請け負う店だって聞いてきたんだが、あってるか?」
「あぁ。」
「責任者は?」
「俺がここの棟梁だ。で、工事の依頼か?っていうかお前余所者だろ。」
「よくわかるな。」
「この街の連中は殆ど工事部門に相談するからな。うちだって材料さえあれば工事できるんだ、それをギルドのやつらめ・・・。」
おいおい余所者を前にしてギルドの悪口はさすがにあれだろう。
ま、その様子だとかなり困ってるみたいだから俺としてはありがたいけどな。
「飯屋でここの噂を聞いたんだが、なんでもアラクネの糸を探してるそうじゃないか。」
「くそ、あの坊主(チビ)まだ覚えてやがったのか。」
「いい子じゃないか、それで俺はここにこれたんだ。」
「で、何の用なんだ?見た感じ客っぽくはないが・・・。」
「そのアラクネの糸を売りに来たんだ。興味はないか?」
「なに!?」
棟梁が机をたたきながら勢い良く立ち上がったものだから椅子が後ろに吹っ飛んでしまった。
「俺はシロウだ、隣町で買取屋をしている。」
「スカーだ。本当にアラクネの糸を用意できるのか?」
「あぁ、なんなら今すぐ持ってこようか?馬車にたんまり用意している。ほかにもレッドタートルの甲羅かロングスケルトンの骨なんかもあるぞ。」
「甲羅はいらないが骨は品質次第で買ってもいい、あれはなかなか使える素材だ。」
「今すぐ持ってこよう。エリザ、馬車をここに持ってきてくれ。」
「わかったわ。」
棟梁に問題なしと判断したんだろう。
文句を言わずに外に出た。
「立ち話もなんだ、そこに座ってくれ。」
奥にあった立派な四人掛けのテーブルに案内される。
おそらく自分で作っただろうなぁ。
「スカーさんの言うように俺は余所者だ、だから聞きたいんだがギルドはどうして買い占めを?」
「スカーでいい。去年の二回目の夏ぐらいか、商業ギルドのえらいさんが何人か変わってから急に買い占めが始まったんだ。うちに卸していた業者もギルドに圧力を受けてな、結局向こうに卸すしかなくなったんだ。」
「依頼を出して買ったりはできないのか?」
「何度も出したさ。だが奴らが圧力をかけて依頼を握り潰しちまうんだよ。」
「そりゃ随分アコギだな。」
「だろ?おかげでうちは商売あがったりで、何とか受注しても今までの二倍で売り付けられる。アラクネの糸はなんにでも使えるからな、多少高くても買う気ではいるが倍はさすがにむりだ。」
なんとなく話が読めてきた。
その急に変わった偉いさんが土木部署と癒着していて、そこに仕事を流すために買い占めを始めたと。
おそらく向こうには今まで通りの価格で卸して、他には高い値段を吹っかけてるんだろう。
ってことはだ。
多少高くてもギルドより安ければ買ってくれるってわけだ。
最高じゃないか。
「まずは物を見てもらってからになるが、それでよければここに卸したいと思っているんだが、かまわないか?」
「そりゃ大歓迎だ。だが、ギルドに目を付けられるぞ?」
「申し訳ないが今回はたまたま持ってきただけなんだ。定期的に来るわけでもないし、目をつけられても問題ないよ。」
「そうか、定期では卸せないか。」
「実は今回様子見でここに来たんだ。うまみがあるなら定期的にも来るが、そうでなければ難しいな。」
「それでも手にはいるならありがたい。」
定期購入なら多少値段交渉もできるが、単発ならこっちの言いなりになるしかない。
それでも買いたいというのだからよっぽどひっ迫しているんだろう。
しばらくその辺の話をしていると、予想していたよりも早くエリザが戻ってきた。
「お待たせ!」
「エリザか早かったな。」
「シロウ様お待たせしました。」
「ミラまで。そっちも随分早いな。」
「取引所で情報を集めていたのですが、予想していたよりもかなり危険な感じがしましたので早めに帰ってきました。」
「とりあえず無事で何よりだ。エリザ、糸と骨を全部運んでくれ。外で出すのはまずい。」
「それがいいわね。わかったわ。」
「俺も手伝おう。」
ミラと俺で辺りを警戒し、エリザと棟梁が馬車から荷物を運び出す。
特に怪しい人物は見当たらないが、ミラの話次第ではここのギルドには気を付けたほうがいいかもしれない。
搬入はすぐに終わり、棟梁が中身を検分する。
まるで密輸をしている気分だな。
「これはかなりの上物だな、傷もないし長さも申し分ない。骨も太いし十分に使えるだろう。いくらだ?」
「ミラ、ギルドの買取価格は?」
「これ全部で金貨2枚と銀貨40枚です。」
「ちなみにギルドからこれだけ買うといくらするんだ?」
「金貨4枚は要求されるな。」
「骨は?」
「骨は買い占めてないが、これなら銀貨80枚でなら買ってもいい。」
なるほどなるほど。
ギルドはかなりぼったくってるなぁ。
そこまでする理由は何かあるんだろうか。
わからん。
「なら全部で金貨4枚でどうだ?」
「本当か!」
「あぁ、こっちはギルドに売るよりも高いしそっちは安く買うことができる。代わりにグリーンスライムの核とレッドタートルの甲羅を買い取ってくれそうな店を紹介してくれないか?」
交渉成立だ。
予想通りの金額で売れたんだ、十分と言えるだろう。
核と甲羅の売り主さえ決まったら今回の行商は終了だ。
何やらギルドがきな臭い感じなのでさっさと戻って羊男から情報を仕入れるとしよう。
受領書にサインをもらって商品を引き渡し代金を貰う。
棟梁の話では核も甲羅も買占めは起きていないが市場には出回りにくくなっているらしい。
おそらくギルドが関係しているという話だが確証はないそうだ。
両方いっぺんに買い取ってくれる業者を紹介してもらって早々に引き上げる。
「なんだか面倒な感じね。」
「そうだな。ミラ、取引所ではどんな感じだったんだ?」
「マッシュルームの取引先が決まりましたので契約ついでに糸の事について聞いてみたのですが、途端に対応がおかしくなりました。話を濁され、別の場所ではヒソヒソと話をする様子も見られたので契約書にサインだけして戻ってきたんです。後で荷物だけ引き渡せば代金は別の場所で引き取れますのでさっさと帰るのがよろしいかと。」
「わかった。急ぎ取引先をはしごして帰るとするか。」
ギルドがかなりめんどくさい感じだ。
いやだねぇ、気軽に楽しく商売がしたいのにさぁ。
ミラの助言に従い取引所でさっさと荷物を引きわたし、棟梁に紹介してもらった業者に核と甲羅をひきとってもらう。
その足で昨日の職人の所に行き、ダマスカス鋼を引き取った。
「バタバタしてすまない。」
「その様子じゃさっさと帰りたいって感じだな。わかるぜ、ギルドだろ?」
「そんな所だ。」
「気をつけろ、あの女豹に目をつけられたら面倒な事になるぞ。」
「そうするよ。だが本当にいいのか、任せてしまって。」
「あぁ、布も糸も売れるのは間違いないからな。後はこっちで何とかする。」
「助かる。」
本当であれば聖布と糸を引き渡す業者を紹介してもらう予定だったのだが、事情を説明すると代わりに俺が買い取ってやると申し出てくれた。
しかも金貨2枚でだ。
どうやらその値段で売れるらしい。
ま、時間もないしそれ以上の利益を出されてもこっちとしては予想取りの値段で売れたので文句はない。
それに、昨日話しただけだがそういう事をしなさそうな人だ。
大丈夫だろう。
「シロウ、終わったわよ。」
「達者でな。」
「腰には気をつけろよ。」
「もうやっちまったっての。」
大笑いを聞きながら急ぎ馬車を走らせる。
すると、街の出口付近でこちらに向かって手を振る人影が見えた。
「シロウ様ギルド職員です。」
「なに?」
「どうしますか?」
「とりあえず話はしてみるが・・・。」
めんどくさい事になりそうだな。
ここは逃げるのが一番だが、仕方ないだろう。
エリザに合図して馬車を停車させた。
若干太陽が黄色っぽく見えるが特に問題なく宿を出た。
「では私はギルドを調べてまいります。」
「くれぐれも気をつけてな。」
「お昼に昨日のお店集合ね。」
「そちらもどうかお気をつけて。」
エリザはアネットからもらった薬で元気いっぱいのようだ。
薬に頼ってまで飲むのはどうかと思うが、あの苦しみから解放されるのなら飲みたくなるな。
ミラと別れた後、宿で教えてもらった業者を探しに歩く。
残り時間は半日。
それまでに何とか買い手を見つけたいものだな。
「確か川沿いにあるって言ってたわよね。」
「あぁ、手押し車の紋章が目印らしい。」
「でもさ、ギルドが独占なんてしていいものなの?」
「それを俺に聞くなよ。固定買取制度だってある種の独占だし、絶対悪ってわけじゃないだろうな。」
「でもそれで迷惑だって思ってる人もいるわけでしょ?」
「まぁな。」
決まったところに仕事を発注させるために素材を独占するっていうのは俺もどうかと思う。
ギルドからしてみれば街の管理者に恩を売れるからやっているんだろうけど、それで工事費が値上がりしたら本末転倒じゃないだろうか。
「あ、あったよ!」
川沿いを北上すること五分程。
少し古ぼけた木造二階建ての建物にお目当ての紋章が揺れていた。
「なんだかボロくない?」
「それを言うな。だが前は綺麗だろ?あれはちゃんと掃除してある証拠だ。」
「ほんとだ。シロウってよく見てるわよね。」
「エリザだって魔物をよく見るだろ?それと同じだ。」
「確かにそうかも。」
川沿いは流れ着いたごみやなんかがたまっていることが多いが、あの建物の周辺だけ綺麗に片付けられていた。
建物の横に並べられた道具には泥汚れ一つついていない。
こういう事が出来る所にハズレはない・・・と俺は思っている。
扉の前に行くと明かりが見えた。
営業はしているようだ。
「何もないと思うが、できるだけ穏便にな。」
「わかってるわよ。」
二回ノックしてから扉を開ける。
そんなに広くない建物だ、受付は・・・ないようだな。
「何の用だ?」
「ここは工事を請け負う店だって聞いてきたんだが、あってるか?」
「あぁ。」
「責任者は?」
「俺がここの棟梁だ。で、工事の依頼か?っていうかお前余所者だろ。」
「よくわかるな。」
「この街の連中は殆ど工事部門に相談するからな。うちだって材料さえあれば工事できるんだ、それをギルドのやつらめ・・・。」
おいおい余所者を前にしてギルドの悪口はさすがにあれだろう。
ま、その様子だとかなり困ってるみたいだから俺としてはありがたいけどな。
「飯屋でここの噂を聞いたんだが、なんでもアラクネの糸を探してるそうじゃないか。」
「くそ、あの坊主(チビ)まだ覚えてやがったのか。」
「いい子じゃないか、それで俺はここにこれたんだ。」
「で、何の用なんだ?見た感じ客っぽくはないが・・・。」
「そのアラクネの糸を売りに来たんだ。興味はないか?」
「なに!?」
棟梁が机をたたきながら勢い良く立ち上がったものだから椅子が後ろに吹っ飛んでしまった。
「俺はシロウだ、隣町で買取屋をしている。」
「スカーだ。本当にアラクネの糸を用意できるのか?」
「あぁ、なんなら今すぐ持ってこようか?馬車にたんまり用意している。ほかにもレッドタートルの甲羅かロングスケルトンの骨なんかもあるぞ。」
「甲羅はいらないが骨は品質次第で買ってもいい、あれはなかなか使える素材だ。」
「今すぐ持ってこよう。エリザ、馬車をここに持ってきてくれ。」
「わかったわ。」
棟梁に問題なしと判断したんだろう。
文句を言わずに外に出た。
「立ち話もなんだ、そこに座ってくれ。」
奥にあった立派な四人掛けのテーブルに案内される。
おそらく自分で作っただろうなぁ。
「スカーさんの言うように俺は余所者だ、だから聞きたいんだがギルドはどうして買い占めを?」
「スカーでいい。去年の二回目の夏ぐらいか、商業ギルドのえらいさんが何人か変わってから急に買い占めが始まったんだ。うちに卸していた業者もギルドに圧力を受けてな、結局向こうに卸すしかなくなったんだ。」
「依頼を出して買ったりはできないのか?」
「何度も出したさ。だが奴らが圧力をかけて依頼を握り潰しちまうんだよ。」
「そりゃ随分アコギだな。」
「だろ?おかげでうちは商売あがったりで、何とか受注しても今までの二倍で売り付けられる。アラクネの糸はなんにでも使えるからな、多少高くても買う気ではいるが倍はさすがにむりだ。」
なんとなく話が読めてきた。
その急に変わった偉いさんが土木部署と癒着していて、そこに仕事を流すために買い占めを始めたと。
おそらく向こうには今まで通りの価格で卸して、他には高い値段を吹っかけてるんだろう。
ってことはだ。
多少高くてもギルドより安ければ買ってくれるってわけだ。
最高じゃないか。
「まずは物を見てもらってからになるが、それでよければここに卸したいと思っているんだが、かまわないか?」
「そりゃ大歓迎だ。だが、ギルドに目を付けられるぞ?」
「申し訳ないが今回はたまたま持ってきただけなんだ。定期的に来るわけでもないし、目をつけられても問題ないよ。」
「そうか、定期では卸せないか。」
「実は今回様子見でここに来たんだ。うまみがあるなら定期的にも来るが、そうでなければ難しいな。」
「それでも手にはいるならありがたい。」
定期購入なら多少値段交渉もできるが、単発ならこっちの言いなりになるしかない。
それでも買いたいというのだからよっぽどひっ迫しているんだろう。
しばらくその辺の話をしていると、予想していたよりも早くエリザが戻ってきた。
「お待たせ!」
「エリザか早かったな。」
「シロウ様お待たせしました。」
「ミラまで。そっちも随分早いな。」
「取引所で情報を集めていたのですが、予想していたよりもかなり危険な感じがしましたので早めに帰ってきました。」
「とりあえず無事で何よりだ。エリザ、糸と骨を全部運んでくれ。外で出すのはまずい。」
「それがいいわね。わかったわ。」
「俺も手伝おう。」
ミラと俺で辺りを警戒し、エリザと棟梁が馬車から荷物を運び出す。
特に怪しい人物は見当たらないが、ミラの話次第ではここのギルドには気を付けたほうがいいかもしれない。
搬入はすぐに終わり、棟梁が中身を検分する。
まるで密輸をしている気分だな。
「これはかなりの上物だな、傷もないし長さも申し分ない。骨も太いし十分に使えるだろう。いくらだ?」
「ミラ、ギルドの買取価格は?」
「これ全部で金貨2枚と銀貨40枚です。」
「ちなみにギルドからこれだけ買うといくらするんだ?」
「金貨4枚は要求されるな。」
「骨は?」
「骨は買い占めてないが、これなら銀貨80枚でなら買ってもいい。」
なるほどなるほど。
ギルドはかなりぼったくってるなぁ。
そこまでする理由は何かあるんだろうか。
わからん。
「なら全部で金貨4枚でどうだ?」
「本当か!」
「あぁ、こっちはギルドに売るよりも高いしそっちは安く買うことができる。代わりにグリーンスライムの核とレッドタートルの甲羅を買い取ってくれそうな店を紹介してくれないか?」
交渉成立だ。
予想通りの金額で売れたんだ、十分と言えるだろう。
核と甲羅の売り主さえ決まったら今回の行商は終了だ。
何やらギルドがきな臭い感じなのでさっさと戻って羊男から情報を仕入れるとしよう。
受領書にサインをもらって商品を引き渡し代金を貰う。
棟梁の話では核も甲羅も買占めは起きていないが市場には出回りにくくなっているらしい。
おそらくギルドが関係しているという話だが確証はないそうだ。
両方いっぺんに買い取ってくれる業者を紹介してもらって早々に引き上げる。
「なんだか面倒な感じね。」
「そうだな。ミラ、取引所ではどんな感じだったんだ?」
「マッシュルームの取引先が決まりましたので契約ついでに糸の事について聞いてみたのですが、途端に対応がおかしくなりました。話を濁され、別の場所ではヒソヒソと話をする様子も見られたので契約書にサインだけして戻ってきたんです。後で荷物だけ引き渡せば代金は別の場所で引き取れますのでさっさと帰るのがよろしいかと。」
「わかった。急ぎ取引先をはしごして帰るとするか。」
ギルドがかなりめんどくさい感じだ。
いやだねぇ、気軽に楽しく商売がしたいのにさぁ。
ミラの助言に従い取引所でさっさと荷物を引きわたし、棟梁に紹介してもらった業者に核と甲羅をひきとってもらう。
その足で昨日の職人の所に行き、ダマスカス鋼を引き取った。
「バタバタしてすまない。」
「その様子じゃさっさと帰りたいって感じだな。わかるぜ、ギルドだろ?」
「そんな所だ。」
「気をつけろ、あの女豹に目をつけられたら面倒な事になるぞ。」
「そうするよ。だが本当にいいのか、任せてしまって。」
「あぁ、布も糸も売れるのは間違いないからな。後はこっちで何とかする。」
「助かる。」
本当であれば聖布と糸を引き渡す業者を紹介してもらう予定だったのだが、事情を説明すると代わりに俺が買い取ってやると申し出てくれた。
しかも金貨2枚でだ。
どうやらその値段で売れるらしい。
ま、時間もないしそれ以上の利益を出されてもこっちとしては予想取りの値段で売れたので文句はない。
それに、昨日話しただけだがそういう事をしなさそうな人だ。
大丈夫だろう。
「シロウ、終わったわよ。」
「達者でな。」
「腰には気をつけろよ。」
「もうやっちまったっての。」
大笑いを聞きながら急ぎ馬車を走らせる。
すると、街の出口付近でこちらに向かって手を振る人影が見えた。
「シロウ様ギルド職員です。」
「なに?」
「どうしますか?」
「とりあえず話はしてみるが・・・。」
めんどくさい事になりそうだな。
ここは逃げるのが一番だが、仕方ないだろう。
エリザに合図して馬車を停車させた。
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