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121.転売屋は倒れる
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素材のリストは翌日には届けられ、即日運用されることになった。
いつもの値段じゃない事に戸惑っていた冒険者もいたが、丁寧に説明すると特に問題なく受け入れてくれた。
おかげでギルドとの関係は良好だ。
薬草の仕入れ値も銅貨30枚が20枚まで下げられ、大幅なコストダウンになった。
薬の売価は変えないので、まるまる利益に反映されることになる。
笑いが止まりませんなぁ。
「とはいえ、足が遠のく冒険者もいるだろうからその辺もしっかり対応するべきだな。」
「具体的にどうするの?」
「買取先を増やすのさ。」
「こことギルドだけじゃなくて?」
「あぁ、決まった素材を固定の場所で買い取ってもらうようにするんだ。誰でも一目でわかるような奴で素材の状態に左右されないのが望ましい。」
「そんなものあるかなぁ。」
「案外あるものだぞ、これなんかわかりやすい。」
そう言いながらカウンターの上に黒い塊をのせる。
『鉄鉱石。鉄成分をふんだんに含み、これを溶かして精錬すると鉄製品を作成できる。最近の平均取引価格は銅貨10枚。最安値銅貨8枚最高値銅貨11枚最終取引日は二日前と記録されています。』
「鉄鉱石ですか。」
「普通の石と違って判別がしやすい。」
「でも含有量は物によって違うよね?少ない奴もあるけど同じ値段で買うの?」
「あぁ。こういうのは数がものを言うからな。」
「臭いもありませんし衛生面でも問題ありません。少々場所を取るのがアレですが、ダンジョンに入れば簡単に手に入る品です。」
不思議だがダンジョンの至る所にこれが落ちている。
で、街の職人や工房ではこれを使って日々武器や防具日用品を作成している。
エリザの言うように含有量にムラはあるが一個単位で値段をつけているわけじゃないのでそこまで気にしない。
特にこういうのは重いので出来れば手早く売りたいと思っている冒険者も多いだろう。
「加えて露店でも素材の買取を始める。あくまでも販売がメインだが、どうしてもという冒険者を追い返すのはあれだからな。市場にはもう了承を取り付けてある。」
「さすがご主人様仕事が早いですね。」
「ここは特に変わらない、今まで通りに買い取りを続けてくれ。」
「そうなるとシロウが出ていく日が多くなっちゃうのね。」
「致し方あるまい。人はこれ以上増やせないし客も減らせない。」
「アネットが稼いでるんだからシロウは別に働かなくてもいいんじゃないの?」
「別に無理して働いてるわけじゃない、休むのが苦手なだけだ。」
もちろん休む時は休むが、何もせずボーっとするぐらいなら何かしていたいタイプの人間だ。
「シロウ様は勤勉なのです。」
「知ってる、働くなっていうのが無理なんだよね。」
「でも最近働き過ぎではないですか?」
「アネットに言われたくはないな。」
俺以上に朝から晩まで、何だったら夜中まで働いているからなぁ。
勤勉を通り越してもうワーカーホリックだろう。
「私はご主人様より頂きましたこの指輪がありますから。」
「体力の指輪って本当に便利よねぇ。私も一つ欲しいなぁ。」
「お前が付けだしたら五本全部に着ける必要があるんじゃないか?」
「出来るならそうしたいけど、そしたら武器を握れなくなっちゃうわよ。」
「違いない。」
ギラギラした宝石がついているわけではないが、流石に五本全部に着けるのは邪魔だろう。
流石に俺もそれはひくわ。
「まぁ俺は俺でのんびりやるさ。それじゃあ行ってくる。」
「今日は暑くなりますから水分摂取をお忘れなく。」
「わかってるって。」
そう言いながら立ち上がりカウンターをくぐったその時だった。
突然目の前の視界がぐにゃりと歪み、バランスが取れなくなる。
慌てて壁を掴もうとするもくうを掴むような感じでそのまま膝をついてしまった。
「シロウ!?」
「シロウ様!」
「ご主人様!」
三人が慌てて俺に駆け寄ってくる。
変だな、微妙に暗いぞ。
カーテンはあけてあるはずなんだが・・・。
「ちょっと、真っ青じゃない!」
「シロウ様大丈夫ですか。」
「とりあえず横になってください。えぇっと、まずは脈を確認してそれから・・・。」
なんだか耳元で女達が何か言っている気がするが、よく聞こえない。
次第に目の前が暗くなってきた。
おいおい嘘だろ。
死ぬのか?
そんなことを一瞬思ったが、次第に明るさが戻ってきて心配そうに俺を除きこむ三人の顔が見えてきた。
「なんだよ、ひどい顔だぞ。」
「もぅ!心配してるのに!」
「どうなったんだ?」
「急に体勢を崩されました。顔面蒼白で今にも意識を失いそうな感じです。」
「脈は早いですが少し弱いですね、お疲れが出たんだと思うんですけど・・・。」
「とりあえず今日は外に出ちゃダメ、絶対にダメだからね。無理やり出ようとしたら縛り付けるから!」
「エリザがやると加減してくれなさそうだからな・・・。」
ベッドにぐるぐる巻きにされる未来しか見えない。
トイレにも行かせてもらえず、尿瓶を当てられるんだ。
いくら尻の穴まで見ている間柄とはいえそれはなぁ。
「とりあえず上に行きましょう、アネットさん店は閉めてください。」
「はい。」
「ほら、捕まって。」
「大丈夫だ歩ける。」
「ダメ、階段から落ちたらどうするのよ!」
お前がクッションになるんだよ。
だがそんな軽口も言えないぐらいの状態のようで、足元がフラフラしておぼつかない。
本当にエリザにしがみつくようにして二階へ上がり、ベッドへ横になった。
「今お水持ってくるから、それと風の魔道具も。」
「あれはアネットのやつだろ。」
「熱中症だったらどうするのよ。ギルドに行って今日の分の氷も貰ってくるから、動かないでよ。」
「大丈夫です、私が見張っておりますので。」
「お願いね、ミラ。」
飛ぶようにしてエリザが部屋を出て行った。
ミラがベッド横に椅子を持ってきて深刻な顔で俺を見下ろしている。
「そんな顔をするなよ。」
「シロウ様を勤勉などと言った罰です。こんなにもお疲れで弱っておられたのに気が付かないなんて・・・。」
「ただ疲れただけだ、すぐに良くなる。」
「母も同じことを言っていました。すぐに良くなる、そう言っていたのにあんなに大きな病気になって。」
「おいおい、俺はそんな病気じゃないぞ。」
「わかりません。一度しっかりとみて頂くまではお店には立たせませんので、覚悟なさってください。」
疲れでふらついただけだと思うんだが、ミラは頑固だからなぁ。
モイラさんが大病をしたのを目の前で見ているだけに、同じような事になるのが怖いんだろう。
気持ちはわかる。
大丈夫だと伝えるべくベッドから手を出すと、慌ててミラがその手を掴んだ。
頬を触りついでに胸を触る。
うん、いい感触だ。
「そういう事はお元気になられてからです。」
「俺は元気だぞ、確認するか?」
「ダメです。」
「そうか、それは残念だ。」
当たり前だがそんなことで勃起することは無い。
流石にそんな元気が出ないっていうのが本音だ。
そうか、俺は疲れていたのか。
「お待たせ!」
「ご主人様こちらの薬もどうぞ、少し気分が良くなります。」
「助かる。」
アネットの薬を口に含み水で流し込む。
ぐえぇ、苦い。
良薬口に苦しとは言うが、これはきついな。
原材料は・・・うん、聞かない方がいいだろう。
「私はギルドに行くから後お願いね。」
「熱は・・・なさそうですね。」
アネットが首元に手を当ててくる。
冷たくて気持ちのいい手だ。
「疲れただけだ、一日寝れば治るさ。済まないが店を頼む。」
「いえ、今日はもう休みます。」
「いやいや、流石にそれはダメだ。ただでさえ客が減っている状況でこれ以上減らすのはまずい。」
「それは治ってからどうとでもなります。病気の店主を起こす客などいなくなればいいのです。」
「だがなぁ・・・。」
「ご主人様、ミラ様は梃子でも動きませんよ。今日は大人しく横になってください。」
偶には休めという事だろうか。
ミラの怒っているような不安なような顔を見ていると可哀想になってくる。
もう一度腕を伸ばして今度は尻を揉んでみた。
うん、良い尻だ。
「怒りますよ。」
「触ると元気が出るんだ、揉ませろ。」
「ご主人様私のも揉みますか?」
「当たり前だ。」
「ふふ、どうぞ。」
「まったく病人だというのに、シロウ様は。」
「男とは元来そういうものだ。」
間違ってはいないだろう。
それからしばらく二人の尻を堪能し、流石に手が疲れたのでベッドに手を戻した。
自由になったアネットは部屋に戻り、ミラは店の様子を見に下に戻る。
誰もいなくなった部屋。
もう少ししたらエリザが帰ってきてまた賑やかになるだろう。
今日ぐらいは休んでもいいのかもしれない。
この世界に来てなんだかんだ働きづめだったからな。
願わくば起きた時に元の世界に戻っていませんように。
それだけを願いながら俺は眠りについた。
いつもの値段じゃない事に戸惑っていた冒険者もいたが、丁寧に説明すると特に問題なく受け入れてくれた。
おかげでギルドとの関係は良好だ。
薬草の仕入れ値も銅貨30枚が20枚まで下げられ、大幅なコストダウンになった。
薬の売価は変えないので、まるまる利益に反映されることになる。
笑いが止まりませんなぁ。
「とはいえ、足が遠のく冒険者もいるだろうからその辺もしっかり対応するべきだな。」
「具体的にどうするの?」
「買取先を増やすのさ。」
「こことギルドだけじゃなくて?」
「あぁ、決まった素材を固定の場所で買い取ってもらうようにするんだ。誰でも一目でわかるような奴で素材の状態に左右されないのが望ましい。」
「そんなものあるかなぁ。」
「案外あるものだぞ、これなんかわかりやすい。」
そう言いながらカウンターの上に黒い塊をのせる。
『鉄鉱石。鉄成分をふんだんに含み、これを溶かして精錬すると鉄製品を作成できる。最近の平均取引価格は銅貨10枚。最安値銅貨8枚最高値銅貨11枚最終取引日は二日前と記録されています。』
「鉄鉱石ですか。」
「普通の石と違って判別がしやすい。」
「でも含有量は物によって違うよね?少ない奴もあるけど同じ値段で買うの?」
「あぁ。こういうのは数がものを言うからな。」
「臭いもありませんし衛生面でも問題ありません。少々場所を取るのがアレですが、ダンジョンに入れば簡単に手に入る品です。」
不思議だがダンジョンの至る所にこれが落ちている。
で、街の職人や工房ではこれを使って日々武器や防具日用品を作成している。
エリザの言うように含有量にムラはあるが一個単位で値段をつけているわけじゃないのでそこまで気にしない。
特にこういうのは重いので出来れば手早く売りたいと思っている冒険者も多いだろう。
「加えて露店でも素材の買取を始める。あくまでも販売がメインだが、どうしてもという冒険者を追い返すのはあれだからな。市場にはもう了承を取り付けてある。」
「さすがご主人様仕事が早いですね。」
「ここは特に変わらない、今まで通りに買い取りを続けてくれ。」
「そうなるとシロウが出ていく日が多くなっちゃうのね。」
「致し方あるまい。人はこれ以上増やせないし客も減らせない。」
「アネットが稼いでるんだからシロウは別に働かなくてもいいんじゃないの?」
「別に無理して働いてるわけじゃない、休むのが苦手なだけだ。」
もちろん休む時は休むが、何もせずボーっとするぐらいなら何かしていたいタイプの人間だ。
「シロウ様は勤勉なのです。」
「知ってる、働くなっていうのが無理なんだよね。」
「でも最近働き過ぎではないですか?」
「アネットに言われたくはないな。」
俺以上に朝から晩まで、何だったら夜中まで働いているからなぁ。
勤勉を通り越してもうワーカーホリックだろう。
「私はご主人様より頂きましたこの指輪がありますから。」
「体力の指輪って本当に便利よねぇ。私も一つ欲しいなぁ。」
「お前が付けだしたら五本全部に着ける必要があるんじゃないか?」
「出来るならそうしたいけど、そしたら武器を握れなくなっちゃうわよ。」
「違いない。」
ギラギラした宝石がついているわけではないが、流石に五本全部に着けるのは邪魔だろう。
流石に俺もそれはひくわ。
「まぁ俺は俺でのんびりやるさ。それじゃあ行ってくる。」
「今日は暑くなりますから水分摂取をお忘れなく。」
「わかってるって。」
そう言いながら立ち上がりカウンターをくぐったその時だった。
突然目の前の視界がぐにゃりと歪み、バランスが取れなくなる。
慌てて壁を掴もうとするもくうを掴むような感じでそのまま膝をついてしまった。
「シロウ!?」
「シロウ様!」
「ご主人様!」
三人が慌てて俺に駆け寄ってくる。
変だな、微妙に暗いぞ。
カーテンはあけてあるはずなんだが・・・。
「ちょっと、真っ青じゃない!」
「シロウ様大丈夫ですか。」
「とりあえず横になってください。えぇっと、まずは脈を確認してそれから・・・。」
なんだか耳元で女達が何か言っている気がするが、よく聞こえない。
次第に目の前が暗くなってきた。
おいおい嘘だろ。
死ぬのか?
そんなことを一瞬思ったが、次第に明るさが戻ってきて心配そうに俺を除きこむ三人の顔が見えてきた。
「なんだよ、ひどい顔だぞ。」
「もぅ!心配してるのに!」
「どうなったんだ?」
「急に体勢を崩されました。顔面蒼白で今にも意識を失いそうな感じです。」
「脈は早いですが少し弱いですね、お疲れが出たんだと思うんですけど・・・。」
「とりあえず今日は外に出ちゃダメ、絶対にダメだからね。無理やり出ようとしたら縛り付けるから!」
「エリザがやると加減してくれなさそうだからな・・・。」
ベッドにぐるぐる巻きにされる未来しか見えない。
トイレにも行かせてもらえず、尿瓶を当てられるんだ。
いくら尻の穴まで見ている間柄とはいえそれはなぁ。
「とりあえず上に行きましょう、アネットさん店は閉めてください。」
「はい。」
「ほら、捕まって。」
「大丈夫だ歩ける。」
「ダメ、階段から落ちたらどうするのよ!」
お前がクッションになるんだよ。
だがそんな軽口も言えないぐらいの状態のようで、足元がフラフラしておぼつかない。
本当にエリザにしがみつくようにして二階へ上がり、ベッドへ横になった。
「今お水持ってくるから、それと風の魔道具も。」
「あれはアネットのやつだろ。」
「熱中症だったらどうするのよ。ギルドに行って今日の分の氷も貰ってくるから、動かないでよ。」
「大丈夫です、私が見張っておりますので。」
「お願いね、ミラ。」
飛ぶようにしてエリザが部屋を出て行った。
ミラがベッド横に椅子を持ってきて深刻な顔で俺を見下ろしている。
「そんな顔をするなよ。」
「シロウ様を勤勉などと言った罰です。こんなにもお疲れで弱っておられたのに気が付かないなんて・・・。」
「ただ疲れただけだ、すぐに良くなる。」
「母も同じことを言っていました。すぐに良くなる、そう言っていたのにあんなに大きな病気になって。」
「おいおい、俺はそんな病気じゃないぞ。」
「わかりません。一度しっかりとみて頂くまではお店には立たせませんので、覚悟なさってください。」
疲れでふらついただけだと思うんだが、ミラは頑固だからなぁ。
モイラさんが大病をしたのを目の前で見ているだけに、同じような事になるのが怖いんだろう。
気持ちはわかる。
大丈夫だと伝えるべくベッドから手を出すと、慌ててミラがその手を掴んだ。
頬を触りついでに胸を触る。
うん、いい感触だ。
「そういう事はお元気になられてからです。」
「俺は元気だぞ、確認するか?」
「ダメです。」
「そうか、それは残念だ。」
当たり前だがそんなことで勃起することは無い。
流石にそんな元気が出ないっていうのが本音だ。
そうか、俺は疲れていたのか。
「お待たせ!」
「ご主人様こちらの薬もどうぞ、少し気分が良くなります。」
「助かる。」
アネットの薬を口に含み水で流し込む。
ぐえぇ、苦い。
良薬口に苦しとは言うが、これはきついな。
原材料は・・・うん、聞かない方がいいだろう。
「私はギルドに行くから後お願いね。」
「熱は・・・なさそうですね。」
アネットが首元に手を当ててくる。
冷たくて気持ちのいい手だ。
「疲れただけだ、一日寝れば治るさ。済まないが店を頼む。」
「いえ、今日はもう休みます。」
「いやいや、流石にそれはダメだ。ただでさえ客が減っている状況でこれ以上減らすのはまずい。」
「それは治ってからどうとでもなります。病気の店主を起こす客などいなくなればいいのです。」
「だがなぁ・・・。」
「ご主人様、ミラ様は梃子でも動きませんよ。今日は大人しく横になってください。」
偶には休めという事だろうか。
ミラの怒っているような不安なような顔を見ていると可哀想になってくる。
もう一度腕を伸ばして今度は尻を揉んでみた。
うん、良い尻だ。
「怒りますよ。」
「触ると元気が出るんだ、揉ませろ。」
「ご主人様私のも揉みますか?」
「当たり前だ。」
「ふふ、どうぞ。」
「まったく病人だというのに、シロウ様は。」
「男とは元来そういうものだ。」
間違ってはいないだろう。
それからしばらく二人の尻を堪能し、流石に手が疲れたのでベッドに手を戻した。
自由になったアネットは部屋に戻り、ミラは店の様子を見に下に戻る。
誰もいなくなった部屋。
もう少ししたらエリザが帰ってきてまた賑やかになるだろう。
今日ぐらいは休んでもいいのかもしれない。
この世界に来てなんだかんだ働きづめだったからな。
願わくば起きた時に元の世界に戻っていませんように。
それだけを願いながら俺は眠りについた。
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