112 / 1,027
112.転売屋はべた褒めされる
しおりを挟む
あの夜の出来事はミラには聞こえていなかったらしい。
結構まともな声で会話していたはずなんだが、それもあのバカ神の遣いの力なんだろうか。
何はともあれアネットは元気になり、俺は絞られた。
下品だがそれこそもう出ないぐらいにだ。
翌朝何があったのかという顔でミラに見られ、アネットは何も言わずつやつやの顔で食事をモリモリ食べていた。
その後再び上に戻り蒸留水を作りながらバリバリと残りの製薬をこなしていたようだ。
その後無事に冷感パットは完成し、販売の運びとなる。
「すっごいの、どこ行っても皆あれを付けてるのよ。」
「そりゃあな、これだけ暑ければ使いたくもなるだろ。」
「でも結構な値段するのよ?それをみんなだなんて・・・。」
「それはあれだ、再利用できるからだ。」
てっきり一回だけと思いきや、魔力を使って冷やすので魔力が戻る限りもしくは素材が消耗しない限り使用できるらしい。
俺の中では使い捨てするものだったので、翌日以降も使えるのは驚きだった。
だがこっちの世界ではそれが当たり前らしい。
だからあの値段でもみんな買うんだな、納得だ。
「普通ならすぐに使えなくなるのに、アネットのやつは長持ちするから不思議よね。」
「腕がいいんだろ。そこが素人との違いだな。」
「そうよね、じゃないとみんな買わないわよね。」
「あまりにも長持ちするものだから色んな方面から引く手数多らしい。一万個じゃ足らないぐらいだ。」
「じゃあまた作る?」
「いや、様子を見る。あまりにもばらまき過ぎると飽きるからな。夏はまだ長いし、次のタイミングで売り出しても問題ないだろう。」
「そこで値上げするのね。」
「あれだけ長持ちするとわかったんだ、それでも買うさ。」
素人の作ったやつが銅貨5枚、熟練者で銅貨10枚程で取引されている。
そんな中アネットの作ったやつは銅貨20枚でも飛ぶように売れた。
理由は二つ。
一つ目は薬師が作ったので効果がしっかりしており、安心だという事。
二つ目は効果が他の物よりも三倍以上長いという事だ。
銅貨5枚で買えるやつよりも三倍長持ちするという事は、実質三枚分の価値がある。
プラス薬師の効果で銅貨5枚。
それじゃあ安いので次回以降は銅貨25枚で販売するつもりだ。
供給し続けないのも価格を維持する為。
それと、他の薬を作るためだ。
いつまでも蒸留水ばかり作っているわけにもいかないからな。
他にも個人的な依頼とか緊急性の高い物がちょくちょく入ってきているから、そっちにも時間を割かないといけない。
それに、次回は8人じゃなくて倍の16人で作業を行うつもりだ。
これだけで納期が15日から一気に五日前後へと短縮できる。
それでいて支払う金額は同じなんだからやらない理由は無いよな。
その為にも素材を準備する必要がある。
継続販売しないのはその為の時間だと思ってくれてもいい。
商売はただ売ればいいってもんじゃない、タイミングを見計らってガッツリ稼ぐ、やっぱりこれだろう。
需要と供給が安定してしまうと値段が落ち着いてしまうからな、多少波があってくれた方が俺みたいな元転売屋には合うんだよ。
「まぁ私達の分があるならそれでいいわ、もうあれ無しでは寝れないのよね。」
「それはわかるな、寝苦しい夜もあれのおかげでスッキリだ。まぁ若干だるくなるのは仕方ないだろう。」
「シロウは魔力ないもんね。」
「そもそも魔力ってのがわからないんだがな。『気』とか何かなのか?」
「うーん、それを言われると説明しづらいなぁ。」
これだから脳筋は。
俺の質問にキョロキョロと天井を見上げるエリザ。
その様子を見ていたミラが珍しく横で笑っている。
「あー、笑ったぁ!」
「申し訳ありませんエリザ様、ついその反応が可愛らしくで。」
「可愛いが似合うのはミラの方だよ。私なんてほら、筋肉凄いし。」
「そうでもありませんよ。エリザ様にも可愛らしい所はたくさんあります。」
「え!どこどこ!」
「そうですねぇ・・・。」
顎に手を当て少し考えるミラ。
いや、考えないといけないのは無いのと同じじゃないだろうか。
「まずは仕草、それに反応でしょうか。時々少女のような可愛らしい発想をされますし、甘いものが好きなところも可愛らしいですよね。」
「うぅ、いきなりそんなにだされると恥ずかしいな。」
「自分で聞いておいて何を言うか、甘んじて受け入れろ。」
「わかってるんだけどさぁ。」
「その点私はこの性格ですから、可愛らしいとはほど遠いかと。」
いやいや何を言っているのかな。
ミラに可愛らしい所が無い?
そんなバカな話があるか。
ふぅとため息をつくミラを見て俺とエリザは顔を見合わせた。
「ミラって時々おかしなこと言うわよね。」
「そうでしょうか。」
「ミラが可愛く無かったらシロウが可愛いって事になっちゃうわ。」
「いやいやどういう理屈だよ。」
「それぐらいあり得ないって話よ。」
「例え方が悪すぎるだろ。」
まぁ言いたいことはわかるけどさぁ。
「参考までにどういう所でしょうか。」
「例えば考え事をしている横顔とか、好きなものを食べた後の顔とか、買取が成功して裏でこっそりガッツポーズしているとことか。」
「なに、そんなことしてるのか。」
「え、シロウ知らないの?すっごい可愛いんだから。」
「そんなに見られると恥ずかしいのですが・・・。」
「他にもいっぱいあるけど、言う?」
「これぐらいでどうかご勘弁下さい。」
早くもミラがギブアップ宣言だ。
エリザは結構人を見る目があるよな。
バカ兄貴の時も良い所悪い所をしっかりアドバイスしたおかげで成功しているわけだし。
そういう部分はさすがだと思う。
そうか、ガッツポーズしてるのか。ちょっと見てみたいな。
「アネットは何もかもが可愛いわよね。」
「それはわかります。」
「あの顔で微笑むのは反則よ。女の私でもクラクラ来ちゃう。」
「獣人だからというのもあるかもしれませんが整った顔立ちをされてますね。」
「凛とすました仕事の時はカッコいいし、遊ぶ時はとことん楽しんでるし。あー、私もあんな風になりたかったなぁ。」
女は女で望む事があるようだ。
男の俺にはわからない部分だな。
「まぁ、そんな三人にも共通することがあるぞ。」
「え、そんなのあるの?」
「俺に抱かれてる時は三人ともいい顔してる。」
「シロウ最低。」
「そういうのはちょっと違うのではないでしょうか。」
「えぇ、今の流れだったらアリじゃないのか?」
「お酒の席ならともかくこんなお昼からなんて・・・。」
急にセクハラされたみたいな顔をするんだが、どこで何を間違えた?
だって本当に幸せそうないい顔するんだぞ。
俺にしか見せない最高の顔だ、何も間違ったことは言ってないと思うんだが。
「うるさい脳筋、昼間っから酒飲んで襲ってきたのはどこの誰だ。」
「そ、それはそれよ!」
「ミラも仕事終わりの夕刻、誰もいない事を良い事にくっついて来たよな?」
「そ、それはシロウ様との関係を再確認したくて。」
「アネットは・・・。昼間は無いが朝方が多いんだよな、まぁいいんだけど。」
「夜型だもんねぇアネットは。」
そろそろ外が明るくなってきた頃にベッドへやって来てモゾモゾし始めるんだから困ったものだ。
ってかなんだよ、なんだかんだ言ってそういう話題に乗ってくるじゃないか。
「あ、あのぉ・・・。」
と、申し訳ないような声に全員で後ろを見ると壁から真っ赤な顔を出したアネットがこちらを覗き込んでいた。
「仕事は終わったのか?」
「は、はい。お陰様で急ぎの分は終わりました。納品に行こうと思いましたらお話が聞こえて来まして・・・。」
「あー、どこから聞いてた?」
「皆さんのどこが可愛いかという部分から。」
結構前だな!
ってことは自分の話になった時も恥ずかしさで一人悶えていたのか。
そういう所だぞ、アネット。
「アネットは可愛いわよね。」
「えぇ可愛いです。」
「そんな!エリザ様もミラ様も私以上に可愛いです!」
「つまり三人とも可愛いという事だ、それでいいじゃないか。」
なんだか話がめんどくさくなってきたのでさっさと打ち切る方向に動こうとした。
しかし、世の中そうは上手くいかないようだ。
「シロウ様も可愛いですよ。」
突然ミラが理解できない発言をする。
「あ、わかる!」
「わかります!」
それに同調するエリザとアネット。
こいつらは一体何を言っているんだ?
俺が可愛い?
40過ぎ(見た目は20)のオッサン捕まえて何を言い出すんだ?
「シロウ様は良い買取をした時ものすごい嬉しそうな顔しますね。」
「そうそう、高値で売れた時もよね。お客さんが見えなくなってから子供みたいにニコって。」
「お食事がおいしかった時もそうです。特にお魚の日は食べる前から嬉しそうに笑われます。」
「お、おぉ・・・。」
「仕事中のキリっとした顔もいいけど、その辺がやっぱり子供っぽくて。」
「流石エリザ様。ですが私は仕事が忙しくて若干疲れた時に見せる顔が好きです。」
「ミラ様深いなぁ・・・。私はまだそこまでご一緒してませんけど、心配して下から覗き込んでくる顔が好きです。」
止めてくれ。
本人を前にしてそういう会話は止めてくれ。
背中がかゆくてたまらない。
「そ、それじゃあ俺は依頼主に薬を届けてくる。」
「ダメよ、この後ニアが来るんだから。」
「そうです。買い溜めておいたウォータースライムの核を売りつける絶好の機会ですから頑張ってください。」
「ではお薬は私が持っていきますね。でも、約束の時間までもう少しありますので・・・。」
あるからなんだよ。
ニヤニヤと笑う女達。
追い詰められる俺。
「それじゃあシロウの好きなところ告白ターイム!」
「たくさんありすぎて長くなりそうですので香茶を準備しましょう。」
「あ、ミラ様私もやります!」
「ではお茶菓子の準備をお願いしますね、頂き物のお菓子をそろそろ食べてしまわないといけません。」
「わかりました。」
それはもう楽しそうに裏へと消えていくミラとアネット。
普段は見えないはずのアネットの尻尾が左右に揺れているのが見えた気がする。
よっぽどのことが無いと見せないって言ってなかったっけ。
銀狐ってことはイヌ科だもんな。
尻尾ぐらい振るか。
「って事だから時間いっぱい付き合ってね。」
「俺が悪かった、勘弁してくれ。」
「だ~め。」
可愛らしく言ってもダメだぞこの脳筋!
いや、そういう部分も可愛いんだけどさぁ。
結局ニアが来るまで延々とべた褒めタイムは続けられ、あろうことかニアまで参戦する運びとなるのだった。
まぁ後半は羊男との惚気だったけども。
結構まともな声で会話していたはずなんだが、それもあのバカ神の遣いの力なんだろうか。
何はともあれアネットは元気になり、俺は絞られた。
下品だがそれこそもう出ないぐらいにだ。
翌朝何があったのかという顔でミラに見られ、アネットは何も言わずつやつやの顔で食事をモリモリ食べていた。
その後再び上に戻り蒸留水を作りながらバリバリと残りの製薬をこなしていたようだ。
その後無事に冷感パットは完成し、販売の運びとなる。
「すっごいの、どこ行っても皆あれを付けてるのよ。」
「そりゃあな、これだけ暑ければ使いたくもなるだろ。」
「でも結構な値段するのよ?それをみんなだなんて・・・。」
「それはあれだ、再利用できるからだ。」
てっきり一回だけと思いきや、魔力を使って冷やすので魔力が戻る限りもしくは素材が消耗しない限り使用できるらしい。
俺の中では使い捨てするものだったので、翌日以降も使えるのは驚きだった。
だがこっちの世界ではそれが当たり前らしい。
だからあの値段でもみんな買うんだな、納得だ。
「普通ならすぐに使えなくなるのに、アネットのやつは長持ちするから不思議よね。」
「腕がいいんだろ。そこが素人との違いだな。」
「そうよね、じゃないとみんな買わないわよね。」
「あまりにも長持ちするものだから色んな方面から引く手数多らしい。一万個じゃ足らないぐらいだ。」
「じゃあまた作る?」
「いや、様子を見る。あまりにもばらまき過ぎると飽きるからな。夏はまだ長いし、次のタイミングで売り出しても問題ないだろう。」
「そこで値上げするのね。」
「あれだけ長持ちするとわかったんだ、それでも買うさ。」
素人の作ったやつが銅貨5枚、熟練者で銅貨10枚程で取引されている。
そんな中アネットの作ったやつは銅貨20枚でも飛ぶように売れた。
理由は二つ。
一つ目は薬師が作ったので効果がしっかりしており、安心だという事。
二つ目は効果が他の物よりも三倍以上長いという事だ。
銅貨5枚で買えるやつよりも三倍長持ちするという事は、実質三枚分の価値がある。
プラス薬師の効果で銅貨5枚。
それじゃあ安いので次回以降は銅貨25枚で販売するつもりだ。
供給し続けないのも価格を維持する為。
それと、他の薬を作るためだ。
いつまでも蒸留水ばかり作っているわけにもいかないからな。
他にも個人的な依頼とか緊急性の高い物がちょくちょく入ってきているから、そっちにも時間を割かないといけない。
それに、次回は8人じゃなくて倍の16人で作業を行うつもりだ。
これだけで納期が15日から一気に五日前後へと短縮できる。
それでいて支払う金額は同じなんだからやらない理由は無いよな。
その為にも素材を準備する必要がある。
継続販売しないのはその為の時間だと思ってくれてもいい。
商売はただ売ればいいってもんじゃない、タイミングを見計らってガッツリ稼ぐ、やっぱりこれだろう。
需要と供給が安定してしまうと値段が落ち着いてしまうからな、多少波があってくれた方が俺みたいな元転売屋には合うんだよ。
「まぁ私達の分があるならそれでいいわ、もうあれ無しでは寝れないのよね。」
「それはわかるな、寝苦しい夜もあれのおかげでスッキリだ。まぁ若干だるくなるのは仕方ないだろう。」
「シロウは魔力ないもんね。」
「そもそも魔力ってのがわからないんだがな。『気』とか何かなのか?」
「うーん、それを言われると説明しづらいなぁ。」
これだから脳筋は。
俺の質問にキョロキョロと天井を見上げるエリザ。
その様子を見ていたミラが珍しく横で笑っている。
「あー、笑ったぁ!」
「申し訳ありませんエリザ様、ついその反応が可愛らしくで。」
「可愛いが似合うのはミラの方だよ。私なんてほら、筋肉凄いし。」
「そうでもありませんよ。エリザ様にも可愛らしい所はたくさんあります。」
「え!どこどこ!」
「そうですねぇ・・・。」
顎に手を当て少し考えるミラ。
いや、考えないといけないのは無いのと同じじゃないだろうか。
「まずは仕草、それに反応でしょうか。時々少女のような可愛らしい発想をされますし、甘いものが好きなところも可愛らしいですよね。」
「うぅ、いきなりそんなにだされると恥ずかしいな。」
「自分で聞いておいて何を言うか、甘んじて受け入れろ。」
「わかってるんだけどさぁ。」
「その点私はこの性格ですから、可愛らしいとはほど遠いかと。」
いやいや何を言っているのかな。
ミラに可愛らしい所が無い?
そんなバカな話があるか。
ふぅとため息をつくミラを見て俺とエリザは顔を見合わせた。
「ミラって時々おかしなこと言うわよね。」
「そうでしょうか。」
「ミラが可愛く無かったらシロウが可愛いって事になっちゃうわ。」
「いやいやどういう理屈だよ。」
「それぐらいあり得ないって話よ。」
「例え方が悪すぎるだろ。」
まぁ言いたいことはわかるけどさぁ。
「参考までにどういう所でしょうか。」
「例えば考え事をしている横顔とか、好きなものを食べた後の顔とか、買取が成功して裏でこっそりガッツポーズしているとことか。」
「なに、そんなことしてるのか。」
「え、シロウ知らないの?すっごい可愛いんだから。」
「そんなに見られると恥ずかしいのですが・・・。」
「他にもいっぱいあるけど、言う?」
「これぐらいでどうかご勘弁下さい。」
早くもミラがギブアップ宣言だ。
エリザは結構人を見る目があるよな。
バカ兄貴の時も良い所悪い所をしっかりアドバイスしたおかげで成功しているわけだし。
そういう部分はさすがだと思う。
そうか、ガッツポーズしてるのか。ちょっと見てみたいな。
「アネットは何もかもが可愛いわよね。」
「それはわかります。」
「あの顔で微笑むのは反則よ。女の私でもクラクラ来ちゃう。」
「獣人だからというのもあるかもしれませんが整った顔立ちをされてますね。」
「凛とすました仕事の時はカッコいいし、遊ぶ時はとことん楽しんでるし。あー、私もあんな風になりたかったなぁ。」
女は女で望む事があるようだ。
男の俺にはわからない部分だな。
「まぁ、そんな三人にも共通することがあるぞ。」
「え、そんなのあるの?」
「俺に抱かれてる時は三人ともいい顔してる。」
「シロウ最低。」
「そういうのはちょっと違うのではないでしょうか。」
「えぇ、今の流れだったらアリじゃないのか?」
「お酒の席ならともかくこんなお昼からなんて・・・。」
急にセクハラされたみたいな顔をするんだが、どこで何を間違えた?
だって本当に幸せそうないい顔するんだぞ。
俺にしか見せない最高の顔だ、何も間違ったことは言ってないと思うんだが。
「うるさい脳筋、昼間っから酒飲んで襲ってきたのはどこの誰だ。」
「そ、それはそれよ!」
「ミラも仕事終わりの夕刻、誰もいない事を良い事にくっついて来たよな?」
「そ、それはシロウ様との関係を再確認したくて。」
「アネットは・・・。昼間は無いが朝方が多いんだよな、まぁいいんだけど。」
「夜型だもんねぇアネットは。」
そろそろ外が明るくなってきた頃にベッドへやって来てモゾモゾし始めるんだから困ったものだ。
ってかなんだよ、なんだかんだ言ってそういう話題に乗ってくるじゃないか。
「あ、あのぉ・・・。」
と、申し訳ないような声に全員で後ろを見ると壁から真っ赤な顔を出したアネットがこちらを覗き込んでいた。
「仕事は終わったのか?」
「は、はい。お陰様で急ぎの分は終わりました。納品に行こうと思いましたらお話が聞こえて来まして・・・。」
「あー、どこから聞いてた?」
「皆さんのどこが可愛いかという部分から。」
結構前だな!
ってことは自分の話になった時も恥ずかしさで一人悶えていたのか。
そういう所だぞ、アネット。
「アネットは可愛いわよね。」
「えぇ可愛いです。」
「そんな!エリザ様もミラ様も私以上に可愛いです!」
「つまり三人とも可愛いという事だ、それでいいじゃないか。」
なんだか話がめんどくさくなってきたのでさっさと打ち切る方向に動こうとした。
しかし、世の中そうは上手くいかないようだ。
「シロウ様も可愛いですよ。」
突然ミラが理解できない発言をする。
「あ、わかる!」
「わかります!」
それに同調するエリザとアネット。
こいつらは一体何を言っているんだ?
俺が可愛い?
40過ぎ(見た目は20)のオッサン捕まえて何を言い出すんだ?
「シロウ様は良い買取をした時ものすごい嬉しそうな顔しますね。」
「そうそう、高値で売れた時もよね。お客さんが見えなくなってから子供みたいにニコって。」
「お食事がおいしかった時もそうです。特にお魚の日は食べる前から嬉しそうに笑われます。」
「お、おぉ・・・。」
「仕事中のキリっとした顔もいいけど、その辺がやっぱり子供っぽくて。」
「流石エリザ様。ですが私は仕事が忙しくて若干疲れた時に見せる顔が好きです。」
「ミラ様深いなぁ・・・。私はまだそこまでご一緒してませんけど、心配して下から覗き込んでくる顔が好きです。」
止めてくれ。
本人を前にしてそういう会話は止めてくれ。
背中がかゆくてたまらない。
「そ、それじゃあ俺は依頼主に薬を届けてくる。」
「ダメよ、この後ニアが来るんだから。」
「そうです。買い溜めておいたウォータースライムの核を売りつける絶好の機会ですから頑張ってください。」
「ではお薬は私が持っていきますね。でも、約束の時間までもう少しありますので・・・。」
あるからなんだよ。
ニヤニヤと笑う女達。
追い詰められる俺。
「それじゃあシロウの好きなところ告白ターイム!」
「たくさんありすぎて長くなりそうですので香茶を準備しましょう。」
「あ、ミラ様私もやります!」
「ではお茶菓子の準備をお願いしますね、頂き物のお菓子をそろそろ食べてしまわないといけません。」
「わかりました。」
それはもう楽しそうに裏へと消えていくミラとアネット。
普段は見えないはずのアネットの尻尾が左右に揺れているのが見えた気がする。
よっぽどのことが無いと見せないって言ってなかったっけ。
銀狐ってことはイヌ科だもんな。
尻尾ぐらい振るか。
「って事だから時間いっぱい付き合ってね。」
「俺が悪かった、勘弁してくれ。」
「だ~め。」
可愛らしく言ってもダメだぞこの脳筋!
いや、そういう部分も可愛いんだけどさぁ。
結局ニアが来るまで延々とべた褒めタイムは続けられ、あろうことかニアまで参戦する運びとなるのだった。
まぁ後半は羊男との惚気だったけども。
8
お気に入りに追加
328
あなたにおすすめの小説
貴族に生まれたのに誘拐され1歳で死にかけた
佐藤醤油
ファンタジー
貴族に生まれ、のんびりと赤ちゃん生活を満喫していたのに、気がついたら世界が変わっていた。
僕は、盗賊に誘拐され魔力を吸われながら生きる日々を過ごす。
魔力枯渇に陥ると死ぬ確率が高いにも関わらず年に1回は魔力枯渇になり死にかけている。
言葉が通じる様になって気がついたが、僕は他の人が持っていないステータスを見る力を持ち、さらに異世界と思われる世界の知識を覗ける力を持っている。
この力を使って、いつか脱出し母親の元へと戻ることを夢見て過ごす。
小さい体でチートな力は使えない中、どうにか生きる知恵を出し生活する。
------------------------------------------------------------------
お知らせ
「転生者はめぐりあう」 始めました。
------------------------------------------------------------------
注意
作者の暇つぶし、気分転換中の自己満足で公開する作品です。
感想は受け付けていません。
誤字脱字、文面等気になる方はお気に入りを削除で対応してください。
せっかくのクラス転移だけども、俺はポテトチップスでも食べながらクラスメイトの冒険を見守りたいと思います
霖空
ファンタジー
クラス転移に巻き込まれてしまった主人公。
得た能力は悪くない……いや、むしろ、チートじみたものだった。
しかしながら、それ以上のデメリットもあり……。
傍観者にならざるをえない彼が傍観者するお話です。
基本的に、勇者や、影井くんを見守りつつ、ほのぼの?生活していきます。
が、そのうち、彼自身の物語も始まる予定です。
神様との賭けに勝ったので、スキルを沢山貰えた件。
猫丸
ファンタジー
ある日の放課後。突然足元に魔法陣が現れると、気付けば目の前には神を名乗る存在が居た。
そこで神は異世界に送るからスキルを1つ選べと言ってくる。
あれ?これもしかして頑張ったらもっと貰えるパターンでは?
そこで彼は思った――もっと欲しい!
欲をかいた少年は神様に賭けをしないかと提案した。
神様とゲームをすることになった悠斗はその結果――
※過去に投稿していたものを大きく加筆修正したものになります。
僕の家族は母様と母様の子供の弟妹達と使い魔達だけだよ?
闇夜の現し人(ヤミヨノウツシビト)
ファンタジー
ー 母さんは、「絶世の美女」と呼ばれるほど美しく、国の中で最も権力の強い貴族と呼ばれる公爵様の寵姫だった。
しかし、それをよく思わない正妻やその親戚たちに毒を盛られてしまった。
幸い発熱だけですんだがお腹に子が出来てしまった以上ここにいては危険だと判断し、仲の良かった侍女数名に「ここを離れる」と言い残し公爵家を後にした。
お母さん大好きっ子な主人公は、毒を盛られるという失態をおかした父親や毒を盛った親戚たちを嫌悪するがお母さんが日々、「家族で暮らしたい」と話していたため、ある出来事をきっかけに一緒に暮らし始めた。
しかし、自分が家族だと認めた者がいれば初めて見た者は跪くと言われる程の華の顔(カンバセ)を綻ばせ笑うが、家族がいなければ心底どうでもいいというような表情をしていて、人形の方がまだ表情があると言われていた。
『無能で無価値の稚拙な愚父共が僕の家族を名乗る資格なんて無いんだよ?』
さぁ、ここに超絶チートを持つ自分が認めた家族以外の生き物全てを嫌う主人公の物語が始まる。
〈念の為〉
稚拙→ちせつ
愚父→ぐふ
⚠︎注意⚠︎
不定期更新です。作者の妄想をつぎ込んだ作品です。
大和型戦艦、異世界に転移する。
焼飯学生
ファンタジー
第二次世界大戦が起きなかった世界。大日本帝国は仮想敵国を定め、軍事力を中心に強化を行っていた。ある日、大日本帝国海軍は、大和型戦艦四隻による大規模な演習と言う名目で、太平洋沖合にて、演習を行うことに決定。大和、武蔵、信濃、紀伊の四隻は、横須賀海軍基地で補給したのち出港。しかし、移動の途中で濃霧が発生し、レーダーやソナーが使えなくなり、更に信濃と紀伊とは通信が途絶してしまう。孤立した大和と武蔵は濃霧を突き進み、太平洋にはないはずの、未知の島に辿り着いた。
※ この作品は私が書きたいと思い、書き進めている作品です。文章がおかしかったり、不明瞭な点、あるいは不快な思いをさせてしまう可能性がございます。できる限りそのような事態が起こらないよう気をつけていますが、何卒ご了承賜りますよう、お願い申し上げます。
転生受験生の教科書チート生活 ~その知識、学校で習いましたよ?~
hisa
ファンタジー
受験生の少年が、大学受験前にいきなり異世界に転生してしまった。
自称天使に与えられたチートは、社会に出たら役に立たないことで定評のある、学校の教科書。
戦争で下級貴族に成り上がった脳筋親父の英才教育をくぐり抜けて、少年は知識チートで生きていけるのか?
教科書の力で、目指せ異世界成り上がり!!
※なろうとカクヨムにそれぞれ別のスピンオフがあるのでそちらもよろしく!
※第5章に突入しました。
※小説家になろう96万PV突破!
※カクヨム68万PV突破!
※令和4年10月2日タイトルを『転生した受験生の異世界成り上がり 〜生まれは脳筋な下級貴族家ですが、教科書の知識だけで成り上がってやります〜』から変更しました
クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?
青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。
最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。
普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた?
しかも弱いからと森に捨てられた。
いやちょっとまてよ?
皆さん勘違いしてません?
これはあいの不思議な日常を書いた物語である。
本編完結しました!
相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです!
1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…
25歳のオタク女子は、異世界でスローライフを送りたい
こばやん2号
ファンタジー
とある会社に勤める25歳のOL重御寺姫(じゅうおんじひめ)は、漫画やアニメが大好きなオタク女子である。
社員旅行の最中謎の光を発見した姫は、気付けば異世界に来てしまっていた。
頭の中で妄想していたことが現実に起こってしまったことに最初は戸惑う姫だったが、自身の知識と持ち前の性格でなんとか異世界を生きていこうと奮闘する。
オタク女子による異世界生活が今ここに始まる。
※この小説は【アルファポリス】及び【小説家になろう】の同時配信で投稿しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる