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100.転売屋は蚤の市の準備をする
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鑑定スキルを持っていて一番助かるのは真贋を見極められること。
どんな品か一発で分かるので安心して買い物ができる。
加えて今のところ俺にしか使えないと思われる相場スキル。
これのおかげで鑑定したものがどれぐらいの価値があるのか、それを知ることができる。
さすがに世にあふれる品すべての値段を知るのは不可能だ。
日々需要と供給のバランスにより値段は変動し、過去の値段と大きく食い違うなんてのはよくある話。
安くなるのはよくある話だが、かつて二束三文だったものが突然高額になっている場合もある。
そういうのはねらい目だ。
特に別の地域では高騰しているもののここでは値上がりしていないものなんてのが最高だな。
俺の相場スキルがあればそういった品も見極めることができる。
チートと呼ばれるにふさわしいスキルといえるだろう。
これがなかったらとっくの昔に破産してのたれ死んでいたに違いない。
「蚤の市?」
「えぇ、初夏に開催されるこの街の風物詩です。」
「で、それに俺も出店しろと?」
「シロウさんは店を持ってまだ日が浅いからご存じないと思いますが、蚤の市にはすべての商店が参加する習わしなんです。」
「それは別に構わないんだが・・・、買い取り屋に何を出させるんだ?」
「決まりはありません、皆さんお店に関係ある品を出されますが菓子を作って売っている方もおられますよ。」
蚤の市といえばフリーマーケット的なことをいうものだが、この町では町民ではなく店側が出店するらしい。
まぁ別に参加したくないわけじゃないし、出せと言われれば出すけども。
店に関係のある品なんてないんだよなぁ。
「この辺りは商店の皆さんが使用されますが、大通りは多数の住民が個人のお店を出されます。そちらも是非ご利用ください。」
「むしろ俺にはそっちがメインになるだろう。」
「できれば店主様には店にいてほしいんですけど・・・。住民との顔合わせの意味もありますから。」
「なら余計に俺がいる必要はないな。男よりも女が店番するほうが喜ばれる。それに普段店番をしているのもミラだしな。」
「それはそうなんですけど・・・。ともかく出店には応じてくれるわけですね。」
「あぁ、断る理由がない。適当に商品を並べて参加させてもらおう。」
「では、詳しい内容については後日書面にてご連絡します。今日はお忙しい中ありがとうございました。」
羊男に見送られてギルド協会をでると、珍しくエリザが迎えに来ていた。
「何かあったのか?」
「そうじゃないけど、ここに呼び出されたって聞いたから来ただけ。」
「なんだ心配してくれたのか。」
「だからそうじゃないって!」
「わかったわかった、そんな大きな声を出すな。帰るぞ。」
ほほを膨らませてふてくされるエリザの頭をポンポンと叩いて店へと戻る。
「ねぇ何の話だったの?」
「今度蚤の市をやるから店を出せっていうだけだ。」
「あ~、もうそんな時期かぁ。」
「夏にやるらしいな。」
「うん、6月と18月の半ばにやるんだ。これが終わったらいよいよ夏本番って感じになるの。」
「冒険者は何かするのか?」
「するわけないじゃない。お祭り騒ぎに乗じて飲んで食べて遊ぶだけよ。」
つまり大切な消費者というわけか。
「買い物はしないのか?」
「御用達の店には顔を出すけど、そうじゃない店は見ないかなぁ。飲む方でお金使っちゃうから。」
「なるほどなぁ。」
「シロウは何するの?」
「特に何も考えていない。別に何でもいいらしいから適当に品を並べて、ミラに店番を頼むつもりだ。」
「そっか、シロウは買い付けで忙しいもんね。」
「そういうこと。」
住民が出店するってことは、普段表に出ないものが出てくるということだ。
露店を利用する住民も多いだろうが、使っていない住民も同じく多いだろう。
なんせめんどくさいからな。
金になるとわかっていても家を片付けて、出店料を出してってするのは億劫だ。
でも蚤の市なら出店料はかからないらしいので安心して店を出せる。
売れなくても最悪捨てるか底値で売ってしまえばいいだけだ。
家に眠るガラクタ達。
彼らからしたらそうかもしれないが、俺からしたらお宝という可能性もある。
こりゃ軍資金しっかり準備して買いまくらないとな。
「じゃあさ、私も手伝わせてよ。」
「飲み明かすんじゃないのか?」
「いつも買う側だから、たまには売る側もやってみたいじゃない?」
「それなら露店で店番させてやるじゃないか。」
「違うの、そういうんじゃなくて蚤の市に店を出したいの。」
「つまりお祭り騒ぎがしたいわけだな?」
「えへへ。」
気持ちはわかる。
参加者として楽しむのもいいが、関係者として参加するのもまた楽しい。
出店を出したらどんな感じなんだろうとか、一度は考えたことあるだろう。
あんな感じだ。
出店なんて文化祭の時以来じゃないだろうか。
何十年前の話だよ。
「アネットさんも店を出すの?」
「いや、アネットは俺の奴隷だから薬師として出店する必要はないだとさ。」
「じゃあ一緒に店に出られるわけね。」
「そんなにやりたいのかよ。」
「当り前じゃない、こういう機会じゃないとできないんだもの。」
定住しない冒険者に荷物はない。
というか不要なものを置いておくスペースがない。
使わなくなればさっさと売って終わり。
自分の荷物といえば普段装備する武器防具と日用品ぐらいなものだ。
そりゃ蚤の市に出すようなもんはないわなぁ。
「とりあえず帰って二人の意見を聞いてからだ。」
「は~い。」
はてさて何をするのやら。
「不用品を売ればよろしいのでは?」
「それじゃいつもと一緒で面白くないじゃない。」
「では何がしたいのですか?」
「お菓子作ったり、料理出したりするのはどうかな。」
「料理ですか。来る人数が読めない以上、作りすぎるか足りなさすぎるかのどちらかになりますよ。」
「じゃあミラは何がいいの?」
「ですから不用品を売ればいいのです。本来蚤の市とはそういうものですから。」
ド正論である。
そもそもの目的が違う二人の意見が交わるはずがない。
このまま続けても平行線のままだろう。
ここは第三の選択肢を付け加えるべきだろう。
「アネットはなにをしたい?」
「私ですか?」
「別の街では何をしていたんだ?」
「日常で使う薬を販売していました。頭痛薬や胃腸薬整腸薬なんかはよく売れましたね。」
「まさに薬師の店って感じだな。」
「普段と変わりませんけど、楽しかったです。」
いつもと同じ仕事でも雰囲気が違うだけで楽しめる。
わかる気がするよ。
「お菓子!」
「いえ、不用品の販売です。」
「お菓子がいい!」
エリザとミラはまだ喧嘩しているようだ。
にぎやかだなぁ。
「それなら両方やればいいじゃないか。」
「「え?」」
「お菓子を作って不用品も売ればいい、なんならアネットも薬を売るか?」
「いいのですか?」
「もちろん別のことをしたいなら構わないが・・・。」
「いえ、やります!」
そんなに仕事がしたいのか。
働きすぎも考えものだが、やりたいのなら止める理由はない。
「もちろんシロウも手伝ってくれるのよね?」
「言っただろ、俺は買い付けで忙しいんだ。」
「違うわよ、準備のことを言ってるの。」
「だから俺は・・・。」
当日は参加できないが準備はできる。
不用品の販売なら準備はいらないが、大量のお菓子となったら話は別だ。
しかたない、俺が言い出したんだからやるしかないか。
「美味いんだろうな。」
「え?」
「自分で言うぐらいだ、売り物になるぐらい美味いんだよな?」
「も、もちろんよ。久しく作ってないけど。」
「大丈夫ですよ、私もお菓子作りは得意ですから。」
「アネット!助かる~。」
「シロウ様が食べるのであれば私も手伝わないわけにはいきません。僭越ながら腕を振るわせていただきます。」
「そうと決まったら準備しなきゃ!食材はある?」
「まずは何を作るかです。」
「そっか、そこからよね。でもバターがいるわ。」
「バターだな、それならおっちゃんの店にあるだろう。行ってくる。」
女三人寄れば姦しいとはよく言ったものだ。
さっきまで喧嘩してたのにもう仲良く話し合っている。
ほんと、女っていう生き物はわからないな。
「まぁ喧嘩して空気が悪いよりかはましか。」
そういえばあの三人が険悪なムードになっているところを見たことがない。
俺が言うのもなんだが、一人の男に三人の女、ふつうは問題が起きるもんじゃないだろうか。
それともあれか、奴隷という身分が関係しているのか?
奴隷だから取られない、とか。
そもそも俺は誰の所有物でもない。
俺は俺だけのものだ。
とかなんとか考えながら市場へ行くと、早くもおっちゃんが店じまいの準備をしていた。
まだ昼過ぎ、いつもよりもだいぶ早い気がする。
「よぉおっちゃん、もう店じまいか?」
「シロウか。わるいな、今日は完売で残ってないんだ。」
「マジかよ。バターもないのか?」
「蚤の市が近いだろ?それようにみんな買い込んで行ってなぁ、残りの在庫も完売だ。」
「嘘だろ・・・。」
「うちも調理用の器具が今日はよく売れたねぇ。そういえばもうそんな季節なんだね。」
「おばちゃんの店もか。まいったな。」
「どうしたんだ?」
「いやな、三人が蚤の市でお菓子を作るっていうから材料を買いに来たんだが・・・。この感じだとどこも同じだろうな。」
まるで買占めだ。
そういえば元の世界でも一時ホットケーキミックスやバターが品切れになる事件があったなぁ。
俺みたいなやつが買い占めたっていう話もあるが、今回のように急な需要で無くなったって感じだろう。
「お菓子用の器具ならまだ残ってるよ、明日持って行ってあげる。」
「助かるよ。代金はミラに請求しておいてくれ。」
「俺が用意できるのは生乳ぐらいだ。」
「それでも十分だよ、お願いできるか?」
「あぁ、任せておけ。」
「でもお菓子ならバターがいるよ、それに砂糖も。いったいどうするんだい?」
さぁどうしようか。
こんな時ふつうはどうする?
代用品を探すか?
それともググるのか?
ってそうか、そうすればいいのか。
「出来るかわからないが探すだけ探してみるよ、ありがとうおっちゃんおばちゃん。」
「気をつけてな。」
「ミラによろしくね。」
用意できないのなら用意すればいい。
俺の勘が正しければできるはずだ。
この世界にはそういう生き物がいる。
だって異世界だからな!
どんな品か一発で分かるので安心して買い物ができる。
加えて今のところ俺にしか使えないと思われる相場スキル。
これのおかげで鑑定したものがどれぐらいの価値があるのか、それを知ることができる。
さすがに世にあふれる品すべての値段を知るのは不可能だ。
日々需要と供給のバランスにより値段は変動し、過去の値段と大きく食い違うなんてのはよくある話。
安くなるのはよくある話だが、かつて二束三文だったものが突然高額になっている場合もある。
そういうのはねらい目だ。
特に別の地域では高騰しているもののここでは値上がりしていないものなんてのが最高だな。
俺の相場スキルがあればそういった品も見極めることができる。
チートと呼ばれるにふさわしいスキルといえるだろう。
これがなかったらとっくの昔に破産してのたれ死んでいたに違いない。
「蚤の市?」
「えぇ、初夏に開催されるこの街の風物詩です。」
「で、それに俺も出店しろと?」
「シロウさんは店を持ってまだ日が浅いからご存じないと思いますが、蚤の市にはすべての商店が参加する習わしなんです。」
「それは別に構わないんだが・・・、買い取り屋に何を出させるんだ?」
「決まりはありません、皆さんお店に関係ある品を出されますが菓子を作って売っている方もおられますよ。」
蚤の市といえばフリーマーケット的なことをいうものだが、この町では町民ではなく店側が出店するらしい。
まぁ別に参加したくないわけじゃないし、出せと言われれば出すけども。
店に関係のある品なんてないんだよなぁ。
「この辺りは商店の皆さんが使用されますが、大通りは多数の住民が個人のお店を出されます。そちらも是非ご利用ください。」
「むしろ俺にはそっちがメインになるだろう。」
「できれば店主様には店にいてほしいんですけど・・・。住民との顔合わせの意味もありますから。」
「なら余計に俺がいる必要はないな。男よりも女が店番するほうが喜ばれる。それに普段店番をしているのもミラだしな。」
「それはそうなんですけど・・・。ともかく出店には応じてくれるわけですね。」
「あぁ、断る理由がない。適当に商品を並べて参加させてもらおう。」
「では、詳しい内容については後日書面にてご連絡します。今日はお忙しい中ありがとうございました。」
羊男に見送られてギルド協会をでると、珍しくエリザが迎えに来ていた。
「何かあったのか?」
「そうじゃないけど、ここに呼び出されたって聞いたから来ただけ。」
「なんだ心配してくれたのか。」
「だからそうじゃないって!」
「わかったわかった、そんな大きな声を出すな。帰るぞ。」
ほほを膨らませてふてくされるエリザの頭をポンポンと叩いて店へと戻る。
「ねぇ何の話だったの?」
「今度蚤の市をやるから店を出せっていうだけだ。」
「あ~、もうそんな時期かぁ。」
「夏にやるらしいな。」
「うん、6月と18月の半ばにやるんだ。これが終わったらいよいよ夏本番って感じになるの。」
「冒険者は何かするのか?」
「するわけないじゃない。お祭り騒ぎに乗じて飲んで食べて遊ぶだけよ。」
つまり大切な消費者というわけか。
「買い物はしないのか?」
「御用達の店には顔を出すけど、そうじゃない店は見ないかなぁ。飲む方でお金使っちゃうから。」
「なるほどなぁ。」
「シロウは何するの?」
「特に何も考えていない。別に何でもいいらしいから適当に品を並べて、ミラに店番を頼むつもりだ。」
「そっか、シロウは買い付けで忙しいもんね。」
「そういうこと。」
住民が出店するってことは、普段表に出ないものが出てくるということだ。
露店を利用する住民も多いだろうが、使っていない住民も同じく多いだろう。
なんせめんどくさいからな。
金になるとわかっていても家を片付けて、出店料を出してってするのは億劫だ。
でも蚤の市なら出店料はかからないらしいので安心して店を出せる。
売れなくても最悪捨てるか底値で売ってしまえばいいだけだ。
家に眠るガラクタ達。
彼らからしたらそうかもしれないが、俺からしたらお宝という可能性もある。
こりゃ軍資金しっかり準備して買いまくらないとな。
「じゃあさ、私も手伝わせてよ。」
「飲み明かすんじゃないのか?」
「いつも買う側だから、たまには売る側もやってみたいじゃない?」
「それなら露店で店番させてやるじゃないか。」
「違うの、そういうんじゃなくて蚤の市に店を出したいの。」
「つまりお祭り騒ぎがしたいわけだな?」
「えへへ。」
気持ちはわかる。
参加者として楽しむのもいいが、関係者として参加するのもまた楽しい。
出店を出したらどんな感じなんだろうとか、一度は考えたことあるだろう。
あんな感じだ。
出店なんて文化祭の時以来じゃないだろうか。
何十年前の話だよ。
「アネットさんも店を出すの?」
「いや、アネットは俺の奴隷だから薬師として出店する必要はないだとさ。」
「じゃあ一緒に店に出られるわけね。」
「そんなにやりたいのかよ。」
「当り前じゃない、こういう機会じゃないとできないんだもの。」
定住しない冒険者に荷物はない。
というか不要なものを置いておくスペースがない。
使わなくなればさっさと売って終わり。
自分の荷物といえば普段装備する武器防具と日用品ぐらいなものだ。
そりゃ蚤の市に出すようなもんはないわなぁ。
「とりあえず帰って二人の意見を聞いてからだ。」
「は~い。」
はてさて何をするのやら。
「不用品を売ればよろしいのでは?」
「それじゃいつもと一緒で面白くないじゃない。」
「では何がしたいのですか?」
「お菓子作ったり、料理出したりするのはどうかな。」
「料理ですか。来る人数が読めない以上、作りすぎるか足りなさすぎるかのどちらかになりますよ。」
「じゃあミラは何がいいの?」
「ですから不用品を売ればいいのです。本来蚤の市とはそういうものですから。」
ド正論である。
そもそもの目的が違う二人の意見が交わるはずがない。
このまま続けても平行線のままだろう。
ここは第三の選択肢を付け加えるべきだろう。
「アネットはなにをしたい?」
「私ですか?」
「別の街では何をしていたんだ?」
「日常で使う薬を販売していました。頭痛薬や胃腸薬整腸薬なんかはよく売れましたね。」
「まさに薬師の店って感じだな。」
「普段と変わりませんけど、楽しかったです。」
いつもと同じ仕事でも雰囲気が違うだけで楽しめる。
わかる気がするよ。
「お菓子!」
「いえ、不用品の販売です。」
「お菓子がいい!」
エリザとミラはまだ喧嘩しているようだ。
にぎやかだなぁ。
「それなら両方やればいいじゃないか。」
「「え?」」
「お菓子を作って不用品も売ればいい、なんならアネットも薬を売るか?」
「いいのですか?」
「もちろん別のことをしたいなら構わないが・・・。」
「いえ、やります!」
そんなに仕事がしたいのか。
働きすぎも考えものだが、やりたいのなら止める理由はない。
「もちろんシロウも手伝ってくれるのよね?」
「言っただろ、俺は買い付けで忙しいんだ。」
「違うわよ、準備のことを言ってるの。」
「だから俺は・・・。」
当日は参加できないが準備はできる。
不用品の販売なら準備はいらないが、大量のお菓子となったら話は別だ。
しかたない、俺が言い出したんだからやるしかないか。
「美味いんだろうな。」
「え?」
「自分で言うぐらいだ、売り物になるぐらい美味いんだよな?」
「も、もちろんよ。久しく作ってないけど。」
「大丈夫ですよ、私もお菓子作りは得意ですから。」
「アネット!助かる~。」
「シロウ様が食べるのであれば私も手伝わないわけにはいきません。僭越ながら腕を振るわせていただきます。」
「そうと決まったら準備しなきゃ!食材はある?」
「まずは何を作るかです。」
「そっか、そこからよね。でもバターがいるわ。」
「バターだな、それならおっちゃんの店にあるだろう。行ってくる。」
女三人寄れば姦しいとはよく言ったものだ。
さっきまで喧嘩してたのにもう仲良く話し合っている。
ほんと、女っていう生き物はわからないな。
「まぁ喧嘩して空気が悪いよりかはましか。」
そういえばあの三人が険悪なムードになっているところを見たことがない。
俺が言うのもなんだが、一人の男に三人の女、ふつうは問題が起きるもんじゃないだろうか。
それともあれか、奴隷という身分が関係しているのか?
奴隷だから取られない、とか。
そもそも俺は誰の所有物でもない。
俺は俺だけのものだ。
とかなんとか考えながら市場へ行くと、早くもおっちゃんが店じまいの準備をしていた。
まだ昼過ぎ、いつもよりもだいぶ早い気がする。
「よぉおっちゃん、もう店じまいか?」
「シロウか。わるいな、今日は完売で残ってないんだ。」
「マジかよ。バターもないのか?」
「蚤の市が近いだろ?それようにみんな買い込んで行ってなぁ、残りの在庫も完売だ。」
「嘘だろ・・・。」
「うちも調理用の器具が今日はよく売れたねぇ。そういえばもうそんな季節なんだね。」
「おばちゃんの店もか。まいったな。」
「どうしたんだ?」
「いやな、三人が蚤の市でお菓子を作るっていうから材料を買いに来たんだが・・・。この感じだとどこも同じだろうな。」
まるで買占めだ。
そういえば元の世界でも一時ホットケーキミックスやバターが品切れになる事件があったなぁ。
俺みたいなやつが買い占めたっていう話もあるが、今回のように急な需要で無くなったって感じだろう。
「お菓子用の器具ならまだ残ってるよ、明日持って行ってあげる。」
「助かるよ。代金はミラに請求しておいてくれ。」
「俺が用意できるのは生乳ぐらいだ。」
「それでも十分だよ、お願いできるか?」
「あぁ、任せておけ。」
「でもお菓子ならバターがいるよ、それに砂糖も。いったいどうするんだい?」
さぁどうしようか。
こんな時ふつうはどうする?
代用品を探すか?
それともググるのか?
ってそうか、そうすればいいのか。
「出来るかわからないが探すだけ探してみるよ、ありがとうおっちゃんおばちゃん。」
「気をつけてな。」
「ミラによろしくね。」
用意できないのなら用意すればいい。
俺の勘が正しければできるはずだ。
この世界にはそういう生き物がいる。
だって異世界だからな!
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