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87.転売屋は落札を見守る
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「遠見眼鏡、金貨11枚と銀貨35枚で20番様落札です、おめでとうございます!」
拍手が会場に響き、20番の札を持ったジェントルメンがそれに応える。
これでやっと半分だ。
まだまだ先は長いなぁ。
ちなみに今の品はレイブさん名義で出品した俺の品。
これで三つ目の落札になる。
単価は無茶苦茶高いわけじゃないが、それでもコツコツ稼いでいる感じだ。
『遠見眼鏡。これを身に付けると指定した場所を覗くことが出来る。最近の平均取引価格は金貨10枚、最安値金貨7枚、最高値金貨14枚、最終取引日は641日前と記録されています。』
今のは使い物にならない眼鏡としてガラクタ扱いされていた。
設定が壁になっていたのでいくら見てもよくわからない何かしか見えなかったようだ。
調べてみると、戦争中に定点観測するのに使ったりしていたらしい。
出所がダンジョンしかないので量産できず、最終的に使われなくなったそうだ。
今は覗きの定番道具として重宝されているとか。
覗きに金貨12枚も払うなら女買ったほうが早いんじゃないか?ってツッコミはしちゃいけないらしい。
あのジェントルメンもそう使うんだろうか・・・。
「ここでいったん休憩をはさみます。次は30分後に開始となりますので皆様それまでに元のお席にお戻りください。」
っと、休憩か。
参加者がぞろぞろと会場を出て外の広間で軽食をつまんでいる。
時間的におやつ時。
まだまだ先は長いし俺も軽くつまんでおくかな。
「見ているだけで参加はしないのね。」
「欲しいと思うものがないんですよ。」
「贅沢な悩みだこと。」
外に出てさぁサンドイッチでもと思った矢先奥様につかまってしまった。
そういう本人も入札してないのを俺は知っているぞ。
まぁ、この人の場合お目当ては別のものだもんな。
「仕事柄どうしても利益を優先してしまいますから。」
「それでも受けるのが貴方の仕事だもの、仕方ないわね。」
「その分儲けさせてもらってますよ。次は入札されますよね?」
「やっぱり貴方の品だったのね。」
「えぇ、気に入って下さると思いまして。」
「他の奥様方も狙っているそうだから、貴方好みの展開になるでしょうね。」
競えば競うほど高くなるのがオークションだ。
逆を言えば競わなければ高値にならない。
それが分かっているからこそ、そうなるような品を選んだんだよね。
さっきのメガネも、むっつりスケベな男性を狙ったもの。
その前は射幸心をくすぐる少し危険な玩具。
そのさらに前は若い女性へのプレゼント用にルティエお手製のイヤリングを用意した。
単価は高くないが確実に売れる。
そう狙って出品したら案外いい値段になったので正直意外だった。
これなら毎回出品してもいいかもしれない。
それだけの品がこの街には眠っている。
「それはありがたいことです。」
「でも負けるつもりはないわ、これと同じく今を逃すと手に入りそうにないもの。」
そういいながら奥様が涙貝のネックレスに手を伸ばす。
一点物、限定品、そういった単語はこの世界の女性にも有効のようだ。
次の品は・・・。
それは始まってからでいいか。
「期待してますよ。では私は腹ごしらえに行ってきます。」
「先は長いものね。」
ご理解いただけて何よりだ。
奥様から離れて再び軽食を取りに行ってみたものの時すでに遅く、いい感じのものは食べ尽くされていた。
残っているのはサラダやパンの端っこぐらい。
お貴族様もお腹はすくようだ。
「よろしければこちらをどうぞ、シロウ様。」
「レイブさん、いいんですか?」
「アナスタシア様に捕まるのが見えましたので、避けておいたんです。」
いやぁさすがレイブさん、気が利くなぁ。
「助かります。でも奴隷を買うかは別ですよ?」
「あはは、もちろんですとも。」
「それはよかった。安心して食べられます。」
「次もいい値段が付きそうですね。」
「おかげ様で。」
「最後の品、期待していますよ。」
それだけ言うとたくさんの料理が乗ったお皿を手渡し、レイブさんは会場へと戻っていった。
うん、美味い。
行儀が悪いかもしれないが時間もないし、さっさと食べて会場に戻ろう。
短時間で皿の料理を胃に収め、水を一飲みして戻る頃には半分ぐらいの席が埋まっていた。
後半も入札の予定はなし。
それまでは壁際でのんびりしておこう。
「さぁ淑女の皆様お待たせしました、後半の始まりを告げる商品はこちら!『クリアジュエルの秘石』です。ダンジョンの中で極偶に現れる不思議な魔物クリアジュエル、そのクリアジュエルがさらに極稀に落とすのがこの宝石です。向こう側が透けて見える程の透明感、そして輝き。秘石の名の通り知る人ぞ知る商品となっております。加工はまだしておりませんのでお好みの形に仕上げてください。さぁまずは金貨20枚からのスタートです!」
前半戦と司会が変わったなと思ったらかなりのハイテンション野郎だった。
そのテンションに乗っかる様に会場の奥様方が勢いよく札を上げる。
「はい、紺色のドレスの奥様金貨30枚、はい、横の奥様金貨35枚、奥の緑のドレスの奥様お似合いですよ、金貨37枚、おっと、一番手前のマダムから金貨40枚頂きました!」
どんどんと値段が吊り上がっていく。
確かに珍しい品だ。
一年で一つか二つ出ればいい方と素材図鑑に書いてある通り、取引相場は金貨20枚とかなりの高額品だった。
なので俺も思い切って金貨10枚で買い取ってみたんだが・・・。
「はい、白いドレスの奥様!金貨50枚、金貨50枚です!他におられませんか?・・・アナスタシア様ここで入札でございますか金貨55枚です。金貨55枚他におられませんか?おられませんね?では金貨55枚で番号札2番アナスタシア様落札でございます!」
この日一番の拍手が会場に響き渡る。
やはり奥様が落札したか。
それにしても金貨55枚って、上がり過ぎじゃないですかね。
開始金額からおかしいなとおもっていたが・・・。
素材を持ち込んだ連中は顔なじみだし、今度高めに買取をしてやるとしよう。
それがいい。
「では続けてまいりましょう、続けての品はこちら・・・!」
テンポよく次の品が運ばれ、司会者がアナウンスを始める。
この分だと思ったよりも早く順番が回ってきそうだな。
はてさて例のブツはいったいいくらになるのやら。
そして、レイブさんの奴隷はどんな子なんだろうか。
楽しみのような楽しみじゃ無い様な・・・。
ま、その時が来たらわかるか。
会場はますますヒートアップしていき、前半戦よりもかなり高値での落札が続いていった。
そしていよいよ最後の二品。
そう、俺の出番だ。
「オークションもいよいよ大詰め、残すところあと二品となってまいりました。ですがここからが本番と言っていいでしょう。事前に公表されるやいなや、追加の参加者が例年の二倍以上になったのは記憶に新しいですね。これからのシーズン、いえ長き人生にわたってこれさえあれば安心だと言っても過言ではありません。約二年、姿を見る事はありませんでした。国中何処を探しても見つからなかったこの宝石が、なんとこの街のダンジョンで見つかったのです。もう紹介は不要ですね、ジェイド・アイご覧いただきましょう!」
過剰なまでの説明に参加者が前のめりになっているのが面白い。
スタッフが仰々しくカートを押してやって来て、彼が上にかけられた布を外すとどよめきが会場中から聞こえて来た。
眩しい緑色の輝きが人々の目をくぎ付けにする。
彼がそれを慎重に持ち上げ、くるりと一回転させると鮮やかな緑色の輝きが周りの壁にきらきらと反射して写った。
「毒を無効化する魔加工はもちろん完了しております。傷つけることなく丁寧に土台へとはめ込まれ、金のチェーンによってつられたこの至高の逸品。私もこの目で見るのは初めてです。金貨100枚、金貨100枚から参りましょう。さぁ、どうぞ!」
参加者全員が手を上げた。
見間違いじゃない。
全員が欲しいと手を上げたんだ。
「はい、13番様110枚、27番様120枚ですね、おっと4番様130枚ですか、9番様145枚・・・。」
加速度的に値段が吊り上がっていくも手を下げる人がほとんどいない。
あれよあれよという間に値段は金貨150枚を超え、気付けば190枚のアナウンスが発せられた。
「1番様金貨190枚です。さぁおられませんか?これを逃せばいつ手にはいるかわかりませんよ、金貨190枚金貨190枚、はい37番様金貨195枚です。おられませんか?おられませんか?では金貨195枚で・・・。」
落札、そう言いかけた時、中央の男性が静かに手を上げた。
「金貨220枚出しましょう。」
どよめきが再び会場に響き渡った。
その中には俺の声も含まれている。
今迄声を上げる事無く静かにオークションを見守っていたあの人がまさか入札するなんて。
「番号札番50様金貨220枚です。おられませんか?おられませんか?では改めて金貨220枚でレイブ様落札です!おめでとうございます!」
歓声にこたえるように静かに手を上げ着席する。
その時にちらっとだけ俺の方を見てニヤリと笑った。
この人がここまで感情を出すのは珍しい。
っていうかレイブさんが買うなら先に言ってくれたら譲ったのに・・・。
お互いオークションだから言うわけにはいかなかったってことだろうか。
しかし金貨220枚か、想像以上の金額になったな。
「さぁ、長きにわたってお付き合いいただきましたオークションも次の品が最後になりました。この商品の為に来た!そんな方も多いと思います。まさかまさか出品者ご本人が落札されるとは思いませんでしたが、それもまたオークションの醍醐味といえるでしょう。さぁ、いよいよ商品のご紹介です!」
司会者が腕を伸ばした方向からスタッフに付き添われて布を被った人が歩いてくる。
性別は分かっているが、このままではそれすらもわからない。
そのひとがすっぽりと布に包まれたまま中央までやって来て、そして止まった。
「それではご覧いただきましょう!本日最後のお品、銀狐の薬師になります!」
バサッという音と共に布が外され、その姿があらわになる。
布の下に隠れていたのは、白髪、いや銀髪の美女。
そのてっぺんには普通の人には無いはずの獣の耳がピンと上を向いて立っていた。
拍手が会場に響き、20番の札を持ったジェントルメンがそれに応える。
これでやっと半分だ。
まだまだ先は長いなぁ。
ちなみに今の品はレイブさん名義で出品した俺の品。
これで三つ目の落札になる。
単価は無茶苦茶高いわけじゃないが、それでもコツコツ稼いでいる感じだ。
『遠見眼鏡。これを身に付けると指定した場所を覗くことが出来る。最近の平均取引価格は金貨10枚、最安値金貨7枚、最高値金貨14枚、最終取引日は641日前と記録されています。』
今のは使い物にならない眼鏡としてガラクタ扱いされていた。
設定が壁になっていたのでいくら見てもよくわからない何かしか見えなかったようだ。
調べてみると、戦争中に定点観測するのに使ったりしていたらしい。
出所がダンジョンしかないので量産できず、最終的に使われなくなったそうだ。
今は覗きの定番道具として重宝されているとか。
覗きに金貨12枚も払うなら女買ったほうが早いんじゃないか?ってツッコミはしちゃいけないらしい。
あのジェントルメンもそう使うんだろうか・・・。
「ここでいったん休憩をはさみます。次は30分後に開始となりますので皆様それまでに元のお席にお戻りください。」
っと、休憩か。
参加者がぞろぞろと会場を出て外の広間で軽食をつまんでいる。
時間的におやつ時。
まだまだ先は長いし俺も軽くつまんでおくかな。
「見ているだけで参加はしないのね。」
「欲しいと思うものがないんですよ。」
「贅沢な悩みだこと。」
外に出てさぁサンドイッチでもと思った矢先奥様につかまってしまった。
そういう本人も入札してないのを俺は知っているぞ。
まぁ、この人の場合お目当ては別のものだもんな。
「仕事柄どうしても利益を優先してしまいますから。」
「それでも受けるのが貴方の仕事だもの、仕方ないわね。」
「その分儲けさせてもらってますよ。次は入札されますよね?」
「やっぱり貴方の品だったのね。」
「えぇ、気に入って下さると思いまして。」
「他の奥様方も狙っているそうだから、貴方好みの展開になるでしょうね。」
競えば競うほど高くなるのがオークションだ。
逆を言えば競わなければ高値にならない。
それが分かっているからこそ、そうなるような品を選んだんだよね。
さっきのメガネも、むっつりスケベな男性を狙ったもの。
その前は射幸心をくすぐる少し危険な玩具。
そのさらに前は若い女性へのプレゼント用にルティエお手製のイヤリングを用意した。
単価は高くないが確実に売れる。
そう狙って出品したら案外いい値段になったので正直意外だった。
これなら毎回出品してもいいかもしれない。
それだけの品がこの街には眠っている。
「それはありがたいことです。」
「でも負けるつもりはないわ、これと同じく今を逃すと手に入りそうにないもの。」
そういいながら奥様が涙貝のネックレスに手を伸ばす。
一点物、限定品、そういった単語はこの世界の女性にも有効のようだ。
次の品は・・・。
それは始まってからでいいか。
「期待してますよ。では私は腹ごしらえに行ってきます。」
「先は長いものね。」
ご理解いただけて何よりだ。
奥様から離れて再び軽食を取りに行ってみたものの時すでに遅く、いい感じのものは食べ尽くされていた。
残っているのはサラダやパンの端っこぐらい。
お貴族様もお腹はすくようだ。
「よろしければこちらをどうぞ、シロウ様。」
「レイブさん、いいんですか?」
「アナスタシア様に捕まるのが見えましたので、避けておいたんです。」
いやぁさすがレイブさん、気が利くなぁ。
「助かります。でも奴隷を買うかは別ですよ?」
「あはは、もちろんですとも。」
「それはよかった。安心して食べられます。」
「次もいい値段が付きそうですね。」
「おかげ様で。」
「最後の品、期待していますよ。」
それだけ言うとたくさんの料理が乗ったお皿を手渡し、レイブさんは会場へと戻っていった。
うん、美味い。
行儀が悪いかもしれないが時間もないし、さっさと食べて会場に戻ろう。
短時間で皿の料理を胃に収め、水を一飲みして戻る頃には半分ぐらいの席が埋まっていた。
後半も入札の予定はなし。
それまでは壁際でのんびりしておこう。
「さぁ淑女の皆様お待たせしました、後半の始まりを告げる商品はこちら!『クリアジュエルの秘石』です。ダンジョンの中で極偶に現れる不思議な魔物クリアジュエル、そのクリアジュエルがさらに極稀に落とすのがこの宝石です。向こう側が透けて見える程の透明感、そして輝き。秘石の名の通り知る人ぞ知る商品となっております。加工はまだしておりませんのでお好みの形に仕上げてください。さぁまずは金貨20枚からのスタートです!」
前半戦と司会が変わったなと思ったらかなりのハイテンション野郎だった。
そのテンションに乗っかる様に会場の奥様方が勢いよく札を上げる。
「はい、紺色のドレスの奥様金貨30枚、はい、横の奥様金貨35枚、奥の緑のドレスの奥様お似合いですよ、金貨37枚、おっと、一番手前のマダムから金貨40枚頂きました!」
どんどんと値段が吊り上がっていく。
確かに珍しい品だ。
一年で一つか二つ出ればいい方と素材図鑑に書いてある通り、取引相場は金貨20枚とかなりの高額品だった。
なので俺も思い切って金貨10枚で買い取ってみたんだが・・・。
「はい、白いドレスの奥様!金貨50枚、金貨50枚です!他におられませんか?・・・アナスタシア様ここで入札でございますか金貨55枚です。金貨55枚他におられませんか?おられませんね?では金貨55枚で番号札2番アナスタシア様落札でございます!」
この日一番の拍手が会場に響き渡る。
やはり奥様が落札したか。
それにしても金貨55枚って、上がり過ぎじゃないですかね。
開始金額からおかしいなとおもっていたが・・・。
素材を持ち込んだ連中は顔なじみだし、今度高めに買取をしてやるとしよう。
それがいい。
「では続けてまいりましょう、続けての品はこちら・・・!」
テンポよく次の品が運ばれ、司会者がアナウンスを始める。
この分だと思ったよりも早く順番が回ってきそうだな。
はてさて例のブツはいったいいくらになるのやら。
そして、レイブさんの奴隷はどんな子なんだろうか。
楽しみのような楽しみじゃ無い様な・・・。
ま、その時が来たらわかるか。
会場はますますヒートアップしていき、前半戦よりもかなり高値での落札が続いていった。
そしていよいよ最後の二品。
そう、俺の出番だ。
「オークションもいよいよ大詰め、残すところあと二品となってまいりました。ですがここからが本番と言っていいでしょう。事前に公表されるやいなや、追加の参加者が例年の二倍以上になったのは記憶に新しいですね。これからのシーズン、いえ長き人生にわたってこれさえあれば安心だと言っても過言ではありません。約二年、姿を見る事はありませんでした。国中何処を探しても見つからなかったこの宝石が、なんとこの街のダンジョンで見つかったのです。もう紹介は不要ですね、ジェイド・アイご覧いただきましょう!」
過剰なまでの説明に参加者が前のめりになっているのが面白い。
スタッフが仰々しくカートを押してやって来て、彼が上にかけられた布を外すとどよめきが会場中から聞こえて来た。
眩しい緑色の輝きが人々の目をくぎ付けにする。
彼がそれを慎重に持ち上げ、くるりと一回転させると鮮やかな緑色の輝きが周りの壁にきらきらと反射して写った。
「毒を無効化する魔加工はもちろん完了しております。傷つけることなく丁寧に土台へとはめ込まれ、金のチェーンによってつられたこの至高の逸品。私もこの目で見るのは初めてです。金貨100枚、金貨100枚から参りましょう。さぁ、どうぞ!」
参加者全員が手を上げた。
見間違いじゃない。
全員が欲しいと手を上げたんだ。
「はい、13番様110枚、27番様120枚ですね、おっと4番様130枚ですか、9番様145枚・・・。」
加速度的に値段が吊り上がっていくも手を下げる人がほとんどいない。
あれよあれよという間に値段は金貨150枚を超え、気付けば190枚のアナウンスが発せられた。
「1番様金貨190枚です。さぁおられませんか?これを逃せばいつ手にはいるかわかりませんよ、金貨190枚金貨190枚、はい37番様金貨195枚です。おられませんか?おられませんか?では金貨195枚で・・・。」
落札、そう言いかけた時、中央の男性が静かに手を上げた。
「金貨220枚出しましょう。」
どよめきが再び会場に響き渡った。
その中には俺の声も含まれている。
今迄声を上げる事無く静かにオークションを見守っていたあの人がまさか入札するなんて。
「番号札番50様金貨220枚です。おられませんか?おられませんか?では改めて金貨220枚でレイブ様落札です!おめでとうございます!」
歓声にこたえるように静かに手を上げ着席する。
その時にちらっとだけ俺の方を見てニヤリと笑った。
この人がここまで感情を出すのは珍しい。
っていうかレイブさんが買うなら先に言ってくれたら譲ったのに・・・。
お互いオークションだから言うわけにはいかなかったってことだろうか。
しかし金貨220枚か、想像以上の金額になったな。
「さぁ、長きにわたってお付き合いいただきましたオークションも次の品が最後になりました。この商品の為に来た!そんな方も多いと思います。まさかまさか出品者ご本人が落札されるとは思いませんでしたが、それもまたオークションの醍醐味といえるでしょう。さぁ、いよいよ商品のご紹介です!」
司会者が腕を伸ばした方向からスタッフに付き添われて布を被った人が歩いてくる。
性別は分かっているが、このままではそれすらもわからない。
そのひとがすっぽりと布に包まれたまま中央までやって来て、そして止まった。
「それではご覧いただきましょう!本日最後のお品、銀狐の薬師になります!」
バサッという音と共に布が外され、その姿があらわになる。
布の下に隠れていたのは、白髪、いや銀髪の美女。
そのてっぺんには普通の人には無いはずの獣の耳がピンと上を向いて立っていた。
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