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86.転売屋は偉い人に挨拶をする
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まっすぐに伸ばされた手をそのまま握り返していいものか。
大勢が見ている中一瞬で判断しなければならなかった。
無礼があったとしても殺されることはないだろう。
だが、今後を考えると失敗はできない。
なんせこの街のトップだ。
いくら俺でも緊張はするさ。
で、どうしたかっていうともちろん握り返した。
「光栄ですローランド様。」
「だから言っただろ、かしこまるな。いつも通りでいい、それこそアナスタシアやリングに言うようにな。」
「リング様をご存じでしたか。」
「この街を出るときに少し話した程度だが、君のことをしきりに褒めていたのを覚えているよ。」
褒められるようなことをした覚えはないんだが・・・。
ま、悪く思われていないのならそれでいい。
「まったく、私への言葉遣いでさえ許されてはいけないというのに。」
「そう固い事を言うな。言葉遣いがなっていないだけで敬意が無いというわけではない。君は彼に気分を害されたのかい?」
「示しがつかないという話です。後ろに控える者達も困惑しているではありませんか。」
「ならば気さくに話しかければよい。」
これまた自由な人が街長になっているんだなぁ。
これだけの特殊な環境だ、普通の人ではやっていけないのかもしれない。
「その後ろが支えているみたいだ、挨拶が済んだなら俺は退散したいんだが?」
「急に呼び出して済まなかったな。君とはまた話をしたい、会ってくれるか?」
「街長に呼び出されて断る人がこれまでいたのか?」
「まさに君がそうだ。もっとも、昨夜は私が招待し忘れた事にも原因がある。」
「昨夜?」
「前夜祭を断ったでしょ?その時にお目通しする予定だったのよ。」
よかった、行かなくて。
こうやって後ろが詰まっているのならともかく、酒の席でとなったらいつ解放されるかわかったもんじゃない。
忘れてくれて助かったよ。
「それは大変失礼を。次回からは話を聞いてから考えるとしよう。」
「そうしてくれ。それじゃあな、シロウ。」
「失礼いたしますローランド様。」
はやくも名前を憶えられてしまった。
副長の奥様に次いで今度は街長ですか。
仕事内容云々ではなく、名前だけが独り歩きしているようだ。
それはあまり好ましくない。
出来るなら仕事内容もまとめて買取屋のシロウと覚えてもらう方が宣伝効果として最高なんだがなぁ。
「まったく、自由過ぎるわ。許可されたとはいえ普通は話し方を変えないのがマナーよ。」
「当の本人はそういう感じじゃなかったからな。変えない方が逆に失礼だと思ったんだが。」
「確かにローランド様は固いのがお嫌いだけど・・・。どうしてそこまでゲイルに似ているのかしら。」
「さっきから言っているゲイルってのは誰なんだ?」
「誰って、三日月亭の主人に決まってるでしょ。この街の最古参の一人にして重鎮よ。」
「マスターってそんな名前だったのか。」
「知らなかったの?」
「初めて会った時からマスターはマスターだったからな。名前を知らなくても困ったことはない。」
むしろそれが名前だと言い切ってもいいぐらいだ。
そうかゲイルっていうのか。
何だよ見た目だけじゃなく名前もカッコいいのかよ。
うらやましいなぁ。
「街の上役ならもっと威厳ってモノを持ってほしいものだわ。いつまでも庶民や冒険者と一緒に生活して・・・。」
「なんだ、上役は偉そうにしていないといけない決まりでもあるのか?」
「そうじゃないわ。だけど舐められても困るの。ここは普通の街とは違う、力のあるその他大勢をコントロールしないといけないんだから。」
「そういうものかねぇ。」
「特に冒険者は力を持っているもの。結託されたら困るのよ。」
まぁ気持ちはわからなくはない。
冒険者ってのは一般人と違って力も強ければ技術もあるし魔法も使う。
ぶっちゃけて言えば警備の連中よりも強いだろう。
彼らが我が物顔で振舞わないのは、この街にいられなくなると困るからだ。
今よりも待遇が悪くなったりするとうまみがなくなる。
だから静かにしているわけだな。
じゃあ冒険者に対して飴を配っているのかと言えばそうでもない。
絶妙なバランスで保たれていると言ってもいいだろう。
「よっぽどのことが無い限りそれはないだろう。それこそ、彼らから税金を取るとか言い出さなければな。」
「過去にやろうとして失敗したわ。」
「そりゃご愁傷様。」
「ゲイルはそんな彼らの情報を一番近くで集めているんだけど・・・。今更ね。」
「そうだな。で、挨拶も終わったし俺はお役御免だよな?」
「何馬鹿なこと言っているの?終りのはずないじゃない。」
なんだって?
一番偉い人に挨拶したんだしそれで試合終了だろう。
まだ何かやらせるつもりなのか?
「嘘だろ?」
「次は夫に会ってもらって、それから有力な貴族にも挨拶してもらうわ。前夜祭で貴方を射止められなかった奥様方が手ぐすね引いて待っているんだから、覚悟する事ね。」
「くそ、だからレイブさんが居なくなったのか。」
「そういう事よ。」
涙貝の新作をデビューさせ、ルティエの商売を半ば牛耳っている俺を取り込んで色々と悪だくみをしようと画策している奥様方の情報はミラから聞いていた。
加えて急に金を持った商人とお近づきになろうっていう女も多い。
前夜祭に行かなかった一番の理由は、そう言った女達からから逃げるためだ。
酒に何か入れられても困るからな。
だがここに来てそれも叶わなくなったらしい。
そりゃ副長の奥様だ、貴族の奥様方とのつながりも太いだろうよ。
俺を売りやがって後で覚えてろ。
怒涛の挨拶が終わったのはオークション準備を告げる声が聞こえて来てからだ。
逃げるようにして準備会場へと移動して一息つく。
そこではいつも以上の笑顔を浮かべるレイブさんが俺を待っていた。
「大変な目に遭いましたよ。」
「お疲れ様です。」
「次は朝から参加しませんからね。」
「それは困ります。まだまだシロウ様とお会いしたいという女性は多いのですから。」
「あった所で何も変わりませんよ。二人もいれば十分です。」
「おや、三人目は不要ですか?」
「見てから決めますよ。不要と判断すれば入札しません。」
と、いう事にしておこう。
ミラには三人目を欲しているという話にしてもらっていたが、女に飢えている男と思われても困る。
さっきだって家の住所だ、夜は鍵を開けているだ物騒な事を言う奴が多かったんだ。
アンタら全員人妻だろ?
残念ながら他人の持ち物には興味ないんだよ。
未亡人になるか離婚してから出直して来い。
「そうですか。ですが間違いなく気に入って頂けますよ。」
「順番は一番最後でしたっけ。」
「光栄にも最後の品を任せて頂きます。シロウ様はその一つ前になるようですね。」
「この順番には何か意味が?」
「名目上は抽選という事になっていますが、やはりいい品を後ろにもっていきたいのが開催側の心情でしょう。一番最後と最後から二番目は抽選に関係なくその日の最上品となるように組まれているようです。事実他の品に関してはバラバラでしょう?」
「確かにそうですね。」
準備会場に行くと出品順が大きく張り出されていた。
スムーズに運営できるように順番に品を置いていくよう指示もされている。
俺のように複数出品している人間にとっては面倒だが、そういう人はあまりいない様だ。
ちなみに俺が今回出品するのは例のブツを入れて五点。
それに加えてレイブさんに依頼された三点の計八点を出品している。
壇上に出る必要が無いのだけが救いだな。
「本日出品されますのはどれも良い品ばかり、今回のオークションはさぞ盛り上がる事でしょう。」
「ジェイド・アイについては事前に情報が出されていましたね。」
「あれだけの品ですから、資金を用意する時間も必要だと運営が判断したんだと思います。」
凄い品が出るぞ!ってだけでは弱いが、コレが出るぞ!ってなれば話は別だ。
皆欲しがるだろうと推測できるからこそ余分に金を持ってくる。
そして必然的に落札価格は上昇するというわけだ。
「手数料は3%でしたっけ?」
「金貨50枚までが5%、金貨100枚までが3%、金貨100以上が1%となっております。」
一応均等な金額になるよう設定しているわけだ。
決して運営側が儲けたいわけではないみたいだな。
「はてさていくらになるのやら。」
「シロウ様も中々な品をご用意されていますから、結構な金額になるのではないですか?」
「どうでしょう。価値のあるものではありますが、気に入って頂けるかは定かではありません。」
「ご謙遜を。どれも一級品ばかり、よくあれだけの品を集めることが出来ましたね。」
「どれもこの街で見つかった品ですよ。」
「なんと!そうでしたか。」
「ある所にはあるものですねぇ。」
鑑定スキルだけでは判別できないが、俺の相場スキルがあれば無名でも価値のあるものを探し出せる。
それを使って露店でかき集めた逸品だ。
二週間前に出品物のリストを出した後、運営がどういう品物かを調べたんだろう。
かなり相場に近しい開始値段が設定されていた。
二点ほどむしろ高い値段をつけられていたが、まぁ損はしないし別にいいだろう。
他の出品者は少しでも高く見せるために出品物を磨いたり整えたりと余念がないようだが、俺はそこまでしない。
元々きれいに磨いてあるし、今更磨いた所で変わらないからだ。
なにより見た目よりも実用重視なので傷などは問題ないだろう。
一番大切な奴はもう十分きれいだしね。
「皆さま準備が整いましたら一度退出願います。その後は防犯上再度の入場が出来ませんのでご了承ください。」
「おっと、もうそんな時間ですか。」
最後まで粘ってアネットって子がどんな子か待ってみたが、レイブさんが出品するのは奴隷なのでこの部屋にはいないようだ。
もちろん俺のやつも金庫に預けてあるのでここにはまだない。
やっぱりいきなり出てくる方が興奮度が違うもんな。
最終確認をしてレイブさんと共に一番最後に部屋を出た。
後ろでガチャリと鍵をかける音が聞こえ、警備と共に運ばれていく。
ここでもし窃盗があれば密室殺人ならぬ密室窃盗になるんだろうか。
あっても困るけど。
「この後はどうするんですか?」
「会場でオークションが始まります。興味のある品はございましたか?」
「正直に言って何も。」
「でしたらご自身の番が来るまでどうぞごゆっくりとお待ちください。私は奴隷の様子を見て参ります。」
「ご一緒しても?」
「それは見てのお楽しみですよ。」
「そりゃ残念だ。」
やはりだめだったか。
まぁいい、その時が来たらわかる事だ。
会場の方からは司会者が開催を告げるアナウンスをしていた。
大盛り上がり・・・というわけではないが大きな拍手が聞こえてくる。
さぁオークションの始まりだ。
最後の最後で何が出てくるのか、楽しみだな。
大勢が見ている中一瞬で判断しなければならなかった。
無礼があったとしても殺されることはないだろう。
だが、今後を考えると失敗はできない。
なんせこの街のトップだ。
いくら俺でも緊張はするさ。
で、どうしたかっていうともちろん握り返した。
「光栄ですローランド様。」
「だから言っただろ、かしこまるな。いつも通りでいい、それこそアナスタシアやリングに言うようにな。」
「リング様をご存じでしたか。」
「この街を出るときに少し話した程度だが、君のことをしきりに褒めていたのを覚えているよ。」
褒められるようなことをした覚えはないんだが・・・。
ま、悪く思われていないのならそれでいい。
「まったく、私への言葉遣いでさえ許されてはいけないというのに。」
「そう固い事を言うな。言葉遣いがなっていないだけで敬意が無いというわけではない。君は彼に気分を害されたのかい?」
「示しがつかないという話です。後ろに控える者達も困惑しているではありませんか。」
「ならば気さくに話しかければよい。」
これまた自由な人が街長になっているんだなぁ。
これだけの特殊な環境だ、普通の人ではやっていけないのかもしれない。
「その後ろが支えているみたいだ、挨拶が済んだなら俺は退散したいんだが?」
「急に呼び出して済まなかったな。君とはまた話をしたい、会ってくれるか?」
「街長に呼び出されて断る人がこれまでいたのか?」
「まさに君がそうだ。もっとも、昨夜は私が招待し忘れた事にも原因がある。」
「昨夜?」
「前夜祭を断ったでしょ?その時にお目通しする予定だったのよ。」
よかった、行かなくて。
こうやって後ろが詰まっているのならともかく、酒の席でとなったらいつ解放されるかわかったもんじゃない。
忘れてくれて助かったよ。
「それは大変失礼を。次回からは話を聞いてから考えるとしよう。」
「そうしてくれ。それじゃあな、シロウ。」
「失礼いたしますローランド様。」
はやくも名前を憶えられてしまった。
副長の奥様に次いで今度は街長ですか。
仕事内容云々ではなく、名前だけが独り歩きしているようだ。
それはあまり好ましくない。
出来るなら仕事内容もまとめて買取屋のシロウと覚えてもらう方が宣伝効果として最高なんだがなぁ。
「まったく、自由過ぎるわ。許可されたとはいえ普通は話し方を変えないのがマナーよ。」
「当の本人はそういう感じじゃなかったからな。変えない方が逆に失礼だと思ったんだが。」
「確かにローランド様は固いのがお嫌いだけど・・・。どうしてそこまでゲイルに似ているのかしら。」
「さっきから言っているゲイルってのは誰なんだ?」
「誰って、三日月亭の主人に決まってるでしょ。この街の最古参の一人にして重鎮よ。」
「マスターってそんな名前だったのか。」
「知らなかったの?」
「初めて会った時からマスターはマスターだったからな。名前を知らなくても困ったことはない。」
むしろそれが名前だと言い切ってもいいぐらいだ。
そうかゲイルっていうのか。
何だよ見た目だけじゃなく名前もカッコいいのかよ。
うらやましいなぁ。
「街の上役ならもっと威厳ってモノを持ってほしいものだわ。いつまでも庶民や冒険者と一緒に生活して・・・。」
「なんだ、上役は偉そうにしていないといけない決まりでもあるのか?」
「そうじゃないわ。だけど舐められても困るの。ここは普通の街とは違う、力のあるその他大勢をコントロールしないといけないんだから。」
「そういうものかねぇ。」
「特に冒険者は力を持っているもの。結託されたら困るのよ。」
まぁ気持ちはわからなくはない。
冒険者ってのは一般人と違って力も強ければ技術もあるし魔法も使う。
ぶっちゃけて言えば警備の連中よりも強いだろう。
彼らが我が物顔で振舞わないのは、この街にいられなくなると困るからだ。
今よりも待遇が悪くなったりするとうまみがなくなる。
だから静かにしているわけだな。
じゃあ冒険者に対して飴を配っているのかと言えばそうでもない。
絶妙なバランスで保たれていると言ってもいいだろう。
「よっぽどのことが無い限りそれはないだろう。それこそ、彼らから税金を取るとか言い出さなければな。」
「過去にやろうとして失敗したわ。」
「そりゃご愁傷様。」
「ゲイルはそんな彼らの情報を一番近くで集めているんだけど・・・。今更ね。」
「そうだな。で、挨拶も終わったし俺はお役御免だよな?」
「何馬鹿なこと言っているの?終りのはずないじゃない。」
なんだって?
一番偉い人に挨拶したんだしそれで試合終了だろう。
まだ何かやらせるつもりなのか?
「嘘だろ?」
「次は夫に会ってもらって、それから有力な貴族にも挨拶してもらうわ。前夜祭で貴方を射止められなかった奥様方が手ぐすね引いて待っているんだから、覚悟する事ね。」
「くそ、だからレイブさんが居なくなったのか。」
「そういう事よ。」
涙貝の新作をデビューさせ、ルティエの商売を半ば牛耳っている俺を取り込んで色々と悪だくみをしようと画策している奥様方の情報はミラから聞いていた。
加えて急に金を持った商人とお近づきになろうっていう女も多い。
前夜祭に行かなかった一番の理由は、そう言った女達からから逃げるためだ。
酒に何か入れられても困るからな。
だがここに来てそれも叶わなくなったらしい。
そりゃ副長の奥様だ、貴族の奥様方とのつながりも太いだろうよ。
俺を売りやがって後で覚えてろ。
怒涛の挨拶が終わったのはオークション準備を告げる声が聞こえて来てからだ。
逃げるようにして準備会場へと移動して一息つく。
そこではいつも以上の笑顔を浮かべるレイブさんが俺を待っていた。
「大変な目に遭いましたよ。」
「お疲れ様です。」
「次は朝から参加しませんからね。」
「それは困ります。まだまだシロウ様とお会いしたいという女性は多いのですから。」
「あった所で何も変わりませんよ。二人もいれば十分です。」
「おや、三人目は不要ですか?」
「見てから決めますよ。不要と判断すれば入札しません。」
と、いう事にしておこう。
ミラには三人目を欲しているという話にしてもらっていたが、女に飢えている男と思われても困る。
さっきだって家の住所だ、夜は鍵を開けているだ物騒な事を言う奴が多かったんだ。
アンタら全員人妻だろ?
残念ながら他人の持ち物には興味ないんだよ。
未亡人になるか離婚してから出直して来い。
「そうですか。ですが間違いなく気に入って頂けますよ。」
「順番は一番最後でしたっけ。」
「光栄にも最後の品を任せて頂きます。シロウ様はその一つ前になるようですね。」
「この順番には何か意味が?」
「名目上は抽選という事になっていますが、やはりいい品を後ろにもっていきたいのが開催側の心情でしょう。一番最後と最後から二番目は抽選に関係なくその日の最上品となるように組まれているようです。事実他の品に関してはバラバラでしょう?」
「確かにそうですね。」
準備会場に行くと出品順が大きく張り出されていた。
スムーズに運営できるように順番に品を置いていくよう指示もされている。
俺のように複数出品している人間にとっては面倒だが、そういう人はあまりいない様だ。
ちなみに俺が今回出品するのは例のブツを入れて五点。
それに加えてレイブさんに依頼された三点の計八点を出品している。
壇上に出る必要が無いのだけが救いだな。
「本日出品されますのはどれも良い品ばかり、今回のオークションはさぞ盛り上がる事でしょう。」
「ジェイド・アイについては事前に情報が出されていましたね。」
「あれだけの品ですから、資金を用意する時間も必要だと運営が判断したんだと思います。」
凄い品が出るぞ!ってだけでは弱いが、コレが出るぞ!ってなれば話は別だ。
皆欲しがるだろうと推測できるからこそ余分に金を持ってくる。
そして必然的に落札価格は上昇するというわけだ。
「手数料は3%でしたっけ?」
「金貨50枚までが5%、金貨100枚までが3%、金貨100以上が1%となっております。」
一応均等な金額になるよう設定しているわけだ。
決して運営側が儲けたいわけではないみたいだな。
「はてさていくらになるのやら。」
「シロウ様も中々な品をご用意されていますから、結構な金額になるのではないですか?」
「どうでしょう。価値のあるものではありますが、気に入って頂けるかは定かではありません。」
「ご謙遜を。どれも一級品ばかり、よくあれだけの品を集めることが出来ましたね。」
「どれもこの街で見つかった品ですよ。」
「なんと!そうでしたか。」
「ある所にはあるものですねぇ。」
鑑定スキルだけでは判別できないが、俺の相場スキルがあれば無名でも価値のあるものを探し出せる。
それを使って露店でかき集めた逸品だ。
二週間前に出品物のリストを出した後、運営がどういう品物かを調べたんだろう。
かなり相場に近しい開始値段が設定されていた。
二点ほどむしろ高い値段をつけられていたが、まぁ損はしないし別にいいだろう。
他の出品者は少しでも高く見せるために出品物を磨いたり整えたりと余念がないようだが、俺はそこまでしない。
元々きれいに磨いてあるし、今更磨いた所で変わらないからだ。
なにより見た目よりも実用重視なので傷などは問題ないだろう。
一番大切な奴はもう十分きれいだしね。
「皆さま準備が整いましたら一度退出願います。その後は防犯上再度の入場が出来ませんのでご了承ください。」
「おっと、もうそんな時間ですか。」
最後まで粘ってアネットって子がどんな子か待ってみたが、レイブさんが出品するのは奴隷なのでこの部屋にはいないようだ。
もちろん俺のやつも金庫に預けてあるのでここにはまだない。
やっぱりいきなり出てくる方が興奮度が違うもんな。
最終確認をしてレイブさんと共に一番最後に部屋を出た。
後ろでガチャリと鍵をかける音が聞こえ、警備と共に運ばれていく。
ここでもし窃盗があれば密室殺人ならぬ密室窃盗になるんだろうか。
あっても困るけど。
「この後はどうするんですか?」
「会場でオークションが始まります。興味のある品はございましたか?」
「正直に言って何も。」
「でしたらご自身の番が来るまでどうぞごゆっくりとお待ちください。私は奴隷の様子を見て参ります。」
「ご一緒しても?」
「それは見てのお楽しみですよ。」
「そりゃ残念だ。」
やはりだめだったか。
まぁいい、その時が来たらわかる事だ。
会場の方からは司会者が開催を告げるアナウンスをしていた。
大盛り上がり・・・というわけではないが大きな拍手が聞こえてくる。
さぁオークションの始まりだ。
最後の最後で何が出てくるのか、楽しみだな。
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