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50.転売屋は仕事先を斡旋する
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まさか自分にこんな能力があるとは思わなかった。
相場スキルの話じゃない。
イライザさんの店の話だ。
新装開店から五日。
俺の予想以上に店は繁盛しており、先程追加の食器をエリザが運んで行った。
銅貨3枚ではなく銅貨4枚でも十分に利益が出るらしい。
捨てようかと思っていた品物が予想以上の金をもたらすことだってある。
世の中わからないものだなぁ。
「この分で行くと三カ月ほどで全ての在庫がはけてしまうでしょう。追加の食器を手配しますか?」
「いや、それはイライザさんに任せるさ。わざわざ俺達が中間マージンを得る必要はない。」
「それも商売だと思いますが。」
「どうしても手配できないのなら考えるさ。」
取引板は主に平民や冒険者が使用しており、貴族なんかは手を出さないそうだ。
理由は簡単、お抱えの商人が何でも手配してくれるから。
となると、いくら取引板で探しても街中から無くなってしまえば手に入りようがなくなる。
そうなると残された方法はよそから探してくるしかないわけだが・・・。
陶器の食器なんて面倒な物は平民よりもむしろ貴族や金持ちの方が持っているんだよね。
レイブさんに聞くと昔大流行した時に皆こぞって買い漁ったそうだ。
だが粗悪品が出回り、有名な窯の品しか喜ばれなくなると一気に衰退。
その残りが山ほど眠っているという話らしい。
イライザさんが探せるのが平民まで。
そこから上は俺の出番ってわけですよ。
この、リング氏からもらった指輪で貴族を脅して・・・もといご相談して引き出せばいい。
その時にまた儲けさせてもらうさ。
「この後はどうされますか?」
「冒険者はもう来ないだろうから教会に行ってくる。昨日買い取ったやつの中に呪われた奴があったよな?」
「はい。呪われた知力の指輪がございました。」
「それを解呪してもらえたらいい金になる。ついでに聖水も補充しておくつもりだ。」
「そろそろでしたね。」
「期待しているぞ。」
「もちろんです。」
胸を張り自慢げに堪えるミラ。
今回の読みにはよほどの自信があるんだろう。
倉庫代わりの棚から指輪を取り出しポケットに突っ込む。
『知力の指輪。装備すると通常以上の知力を発揮することが出来る。呪われている。最近の平均取引価格は金貨3枚、最安値が金貨1枚、最高値が金貨5枚、最終取引日は昨日と記録されています。』
おっと、スキルが発動してしまった。
最安値と取引日は昨日俺が買い取ったから更新されたんだろう。
それまでは最安値金貨2枚だったもんな。
呪われているからという理由で安く買い取ったが、本当なら銀貨75枚にする予定だったんだ。
あの尻、尻が悪い。
あんな形も大きさもいい尻を見せられたら値段を上げざるを得ないじゃないか。
あ、決して触らせろとかそういうんじゃないですよ?
見た目は魔術師だったんですけど、机に引っかかってローブが捲れたんです。
そしたら下にあんな派手な下着を履いていてですね。
思わずガン見してしまったわけですよ。
そしたら真っ赤になって恥ずかしがって・・・。
あんなの見たら値段上げるしかないじゃないか!
まぁ、ミラにもばっちりそれを見られて夜はしこたま怒られましたけど・・・。
返り討ちにしてやったのでお相子だ。
昼を過ぎると冒険者が来なくなるので、その隙をついて教会へと向かう。
行く理由は二つ。
一つは解呪を頼む事と聖水を買う事。
もう一つが・・・。
「モニカ、いるか?」
「あ!シロウ様ようこそお越しくださいました。今日はどうされました?」
「解呪を頼みたい。それと、頼んであった聖水は準備できているか?」
「解呪と聖水ですね、こちらへどうぞ。」
誘導されるも勝手知ったる何とやら。
慣れた感じで祭壇まで向かい、モニカの手の上に指輪を落とした。
「軽い呪いのようですね、これなら問題ないと思います。」
「それは助かる。」
「すぐに済みますのでそのままお待ちください。」
この前と同様金属製の盃に指輪を入れて聖水を注ぎ込み、祝詞を唱える。
すると最初とは違い、わずかに盃が淡く光り、そして収まった。
「解呪は成功しました。問題なく使用できるでしょう。」
「助かったよ。これは寄付だ、受け取ってくれ。」
「でも・・・。」
「前は前、今は今。これは商売だ、気にするな。」
銀貨を取り出し指輪の沈んだ盃に落とす。
適当に掴んだが・・・まぁいいか。
盃に沈んだのは7枚。
代わりにモニカが指輪を取り出し、布で綺麗に水気を吸ってから戻してくれた。
お帰り金貨2枚。
これで金貨1枚の儲けか・・・。
なんでみんなしないんだ?
自分でやれば損しなくて済んだだろうに。
「それと、ファンの件ですが本当に有難うございました。」
「こっちも信頼できる人手を探してたんだ、礼を言われるほどじゃない。」
「でも仕事が見つかったと喜んでいました。それはもう心の底から。」
「この孤児院じゃ一番大きいんだろ?責任感もあるようだし、これからも頼むと伝えてくれ。」
「もちろんです。あぁ、神様シロウ様をお連れ下さって本当に有難うございます。」
いや、神様に呼ばれてきたわけじゃないんでそこは間違わないでくれるかな。
俺はただ金儲けがしたいだけの俗人だ。
そもそも何の話かというと、先日のイライザさんの店についてだ。
新装開店当日、エリザの宣伝と皿投げが大当たりして大繁盛だった。
それはもう朝方まで客が引かず、最後の客が帰ったのは外が明るくなってきた頃。
それぐらいの繁盛ぶりだった。
初日は俺達も助っ人に入り、テーブルの片づけや皿洗いなど出来る限りの事をやったつもりだ。
だが、そこで大変な事に気が付いた。
テーブルを拭き、床を磨いていた時、ふと例の場所を思い出したのだ。
この店で今一番重要な場所。
そこが、大変なことになっていた。
当たり前だよな。
食器は投げたら割れる。
むしろそれを売りにしていたんだから。
通路の先は大量の破片で埋もれ、足の踏み場もない状況だった。
これを今から片付ける?
でも俺達にも店があるし、そこまで手伝う余裕はない。
そこで、最初に考えていた選択肢を早くも実行することにしたわけだ。
『掃除用に人を雇いませんか?』
余りの混雑ぶりに手が回っていなかったイライザさんもそれを快く承諾し、俺はファンを紹介した。
と、いうわけだ。
給金を貰えると聞き、彼も喜んで仕事を受けてくれたよ。
まかないも出るし育ちざかりには最高の職場というわけだな。
「祈るのは結構だが俺にも仕事があってな、急がせるようだが聖水を頼む。」
「かしこまりました、すぐに。」
冒険者が少なくなったとはいえ来ないわけではない。
エリザに教えてもらってそれなりには査定できるようになってきたが、いつまでも一人というわけにはいかないだろう。
早く帰るにも理由があるんだ。
「お待たせしました。これが、今回の聖水です。」
「一本多くないか?」
「寄付への感謝の気持ちです。」
「そうか、助かる。」
「こんなにたくさん、どうするんですか?」
「俗な話で申し訳ないが商売だよ。これで金を稼ぐんだ。」
「ですが今までそのような方は一人も・・・。」
一人もいなかった。
知ってるよ。
でも、需要があるのは間違いない。
もちろん聖水単体に需要があるんじゃない。
それを使った別の物に需要が出るんだ。
それこそこの間の肉のように、仕込みをすることで利益が出る。
その準備を俺達は着々と進めていた。
「また、五日後に取りに来る。」
「わかりました、お待ちしております。」
「あぁ、そうだ。」
帰ろうとした所で俺は大切な事を思い出した。
「どうされました?」
「『呪い』なんだがな、そもそもどういう原理なのか聞いていなかった。一体あれは何なんだ?」
素朴な疑問だった。
毒や麻痺なんかの状態異常は原理がわかっている。
でも呪いという不可思議なものは一体どういう風に発生するんだろうか。
あの指輪もそうだが、なぜそれが付与されているのか。
理由が知りたかった。
「『呪い』とは本来願いや祈りといった『祝福』のようなものなのです。それがある時反転し、『呪い』に変わります。」
「反転とはなんだ?」
「裏切られたり、願いが叶わなかったり、祈りが届かなかったりすると、負の力が働き本来とは違う性質を持つようになるんです。」
「つまり元所有者がどれだけ真剣に願っていたかで『呪い』の効果が変わるのか。」
「その通りです。私達は、聖水を用いてその届かなかったモノを清め浄化して解呪しているのですが・・・。」
「強すぎる願いは清められないんだな、この間のように。」
「仰る通りです。」
なるほどな。
使用者が大事に使った物、願いを掛けたものがそれを成せなかった時に属性が反転するのか。
つまり隠し部屋で手に入れたアレにはそれだけの願いが込められていた。
一体なぜそこまで願う必要があったんだろうか。
わからんなぁ。
「ただ・・・。」
「ただ?」
「『呪い』の元になった願い等と全く同じ事を思う方が身に着けた場合は、願いが果たされ呪いは解かれることがあります。よほどのことが無ければありえませんが、無くはない話です。」
「それがどれだけ強くてもか?」
「はい。ですが強いという事は合致しにくいともいえるでしょう。むやみやたらに身に着けることはお勧めしません。特にこの間の指輪は。」
なるほどなぁ。
弱い呪いってのは大雑把な願いって事だ。
だから他人が解呪できるし、曖昧だから冒険者が気付かず装備しても問題ない。
冒険者が落した品なんかだと、願いが一緒の場合が多いのかもしれない。
生きたい!とか酒を飲みたい!とか。
そんなんだと気づかないうちに解呪されてしまって呪われていた事さえわからないんだろう。
そうでないと教会が解呪で流行っていない理由がわからない。
『呪い』の本質を知らないから、過度に恐怖して安くでも手放してしまうんだろう。
まぁ、こっちとしてはありがたい話だけどな。
「良い事を聞いたよ、それじゃあまた。」
「シロウ様に神の祝福が有らんことを。」
モニカに見送られて教会を後にする。
あの指輪にはどんな願いが込められていたんだろうな。
「ま、それがわかれば苦労しないか。」
そんなことを考えながらミラの待つ店へと向かうのだった。
相場スキルの話じゃない。
イライザさんの店の話だ。
新装開店から五日。
俺の予想以上に店は繁盛しており、先程追加の食器をエリザが運んで行った。
銅貨3枚ではなく銅貨4枚でも十分に利益が出るらしい。
捨てようかと思っていた品物が予想以上の金をもたらすことだってある。
世の中わからないものだなぁ。
「この分で行くと三カ月ほどで全ての在庫がはけてしまうでしょう。追加の食器を手配しますか?」
「いや、それはイライザさんに任せるさ。わざわざ俺達が中間マージンを得る必要はない。」
「それも商売だと思いますが。」
「どうしても手配できないのなら考えるさ。」
取引板は主に平民や冒険者が使用しており、貴族なんかは手を出さないそうだ。
理由は簡単、お抱えの商人が何でも手配してくれるから。
となると、いくら取引板で探しても街中から無くなってしまえば手に入りようがなくなる。
そうなると残された方法はよそから探してくるしかないわけだが・・・。
陶器の食器なんて面倒な物は平民よりもむしろ貴族や金持ちの方が持っているんだよね。
レイブさんに聞くと昔大流行した時に皆こぞって買い漁ったそうだ。
だが粗悪品が出回り、有名な窯の品しか喜ばれなくなると一気に衰退。
その残りが山ほど眠っているという話らしい。
イライザさんが探せるのが平民まで。
そこから上は俺の出番ってわけですよ。
この、リング氏からもらった指輪で貴族を脅して・・・もといご相談して引き出せばいい。
その時にまた儲けさせてもらうさ。
「この後はどうされますか?」
「冒険者はもう来ないだろうから教会に行ってくる。昨日買い取ったやつの中に呪われた奴があったよな?」
「はい。呪われた知力の指輪がございました。」
「それを解呪してもらえたらいい金になる。ついでに聖水も補充しておくつもりだ。」
「そろそろでしたね。」
「期待しているぞ。」
「もちろんです。」
胸を張り自慢げに堪えるミラ。
今回の読みにはよほどの自信があるんだろう。
倉庫代わりの棚から指輪を取り出しポケットに突っ込む。
『知力の指輪。装備すると通常以上の知力を発揮することが出来る。呪われている。最近の平均取引価格は金貨3枚、最安値が金貨1枚、最高値が金貨5枚、最終取引日は昨日と記録されています。』
おっと、スキルが発動してしまった。
最安値と取引日は昨日俺が買い取ったから更新されたんだろう。
それまでは最安値金貨2枚だったもんな。
呪われているからという理由で安く買い取ったが、本当なら銀貨75枚にする予定だったんだ。
あの尻、尻が悪い。
あんな形も大きさもいい尻を見せられたら値段を上げざるを得ないじゃないか。
あ、決して触らせろとかそういうんじゃないですよ?
見た目は魔術師だったんですけど、机に引っかかってローブが捲れたんです。
そしたら下にあんな派手な下着を履いていてですね。
思わずガン見してしまったわけですよ。
そしたら真っ赤になって恥ずかしがって・・・。
あんなの見たら値段上げるしかないじゃないか!
まぁ、ミラにもばっちりそれを見られて夜はしこたま怒られましたけど・・・。
返り討ちにしてやったのでお相子だ。
昼を過ぎると冒険者が来なくなるので、その隙をついて教会へと向かう。
行く理由は二つ。
一つは解呪を頼む事と聖水を買う事。
もう一つが・・・。
「モニカ、いるか?」
「あ!シロウ様ようこそお越しくださいました。今日はどうされました?」
「解呪を頼みたい。それと、頼んであった聖水は準備できているか?」
「解呪と聖水ですね、こちらへどうぞ。」
誘導されるも勝手知ったる何とやら。
慣れた感じで祭壇まで向かい、モニカの手の上に指輪を落とした。
「軽い呪いのようですね、これなら問題ないと思います。」
「それは助かる。」
「すぐに済みますのでそのままお待ちください。」
この前と同様金属製の盃に指輪を入れて聖水を注ぎ込み、祝詞を唱える。
すると最初とは違い、わずかに盃が淡く光り、そして収まった。
「解呪は成功しました。問題なく使用できるでしょう。」
「助かったよ。これは寄付だ、受け取ってくれ。」
「でも・・・。」
「前は前、今は今。これは商売だ、気にするな。」
銀貨を取り出し指輪の沈んだ盃に落とす。
適当に掴んだが・・・まぁいいか。
盃に沈んだのは7枚。
代わりにモニカが指輪を取り出し、布で綺麗に水気を吸ってから戻してくれた。
お帰り金貨2枚。
これで金貨1枚の儲けか・・・。
なんでみんなしないんだ?
自分でやれば損しなくて済んだだろうに。
「それと、ファンの件ですが本当に有難うございました。」
「こっちも信頼できる人手を探してたんだ、礼を言われるほどじゃない。」
「でも仕事が見つかったと喜んでいました。それはもう心の底から。」
「この孤児院じゃ一番大きいんだろ?責任感もあるようだし、これからも頼むと伝えてくれ。」
「もちろんです。あぁ、神様シロウ様をお連れ下さって本当に有難うございます。」
いや、神様に呼ばれてきたわけじゃないんでそこは間違わないでくれるかな。
俺はただ金儲けがしたいだけの俗人だ。
そもそも何の話かというと、先日のイライザさんの店についてだ。
新装開店当日、エリザの宣伝と皿投げが大当たりして大繁盛だった。
それはもう朝方まで客が引かず、最後の客が帰ったのは外が明るくなってきた頃。
それぐらいの繁盛ぶりだった。
初日は俺達も助っ人に入り、テーブルの片づけや皿洗いなど出来る限りの事をやったつもりだ。
だが、そこで大変な事に気が付いた。
テーブルを拭き、床を磨いていた時、ふと例の場所を思い出したのだ。
この店で今一番重要な場所。
そこが、大変なことになっていた。
当たり前だよな。
食器は投げたら割れる。
むしろそれを売りにしていたんだから。
通路の先は大量の破片で埋もれ、足の踏み場もない状況だった。
これを今から片付ける?
でも俺達にも店があるし、そこまで手伝う余裕はない。
そこで、最初に考えていた選択肢を早くも実行することにしたわけだ。
『掃除用に人を雇いませんか?』
余りの混雑ぶりに手が回っていなかったイライザさんもそれを快く承諾し、俺はファンを紹介した。
と、いうわけだ。
給金を貰えると聞き、彼も喜んで仕事を受けてくれたよ。
まかないも出るし育ちざかりには最高の職場というわけだな。
「祈るのは結構だが俺にも仕事があってな、急がせるようだが聖水を頼む。」
「かしこまりました、すぐに。」
冒険者が少なくなったとはいえ来ないわけではない。
エリザに教えてもらってそれなりには査定できるようになってきたが、いつまでも一人というわけにはいかないだろう。
早く帰るにも理由があるんだ。
「お待たせしました。これが、今回の聖水です。」
「一本多くないか?」
「寄付への感謝の気持ちです。」
「そうか、助かる。」
「こんなにたくさん、どうするんですか?」
「俗な話で申し訳ないが商売だよ。これで金を稼ぐんだ。」
「ですが今までそのような方は一人も・・・。」
一人もいなかった。
知ってるよ。
でも、需要があるのは間違いない。
もちろん聖水単体に需要があるんじゃない。
それを使った別の物に需要が出るんだ。
それこそこの間の肉のように、仕込みをすることで利益が出る。
その準備を俺達は着々と進めていた。
「また、五日後に取りに来る。」
「わかりました、お待ちしております。」
「あぁ、そうだ。」
帰ろうとした所で俺は大切な事を思い出した。
「どうされました?」
「『呪い』なんだがな、そもそもどういう原理なのか聞いていなかった。一体あれは何なんだ?」
素朴な疑問だった。
毒や麻痺なんかの状態異常は原理がわかっている。
でも呪いという不可思議なものは一体どういう風に発生するんだろうか。
あの指輪もそうだが、なぜそれが付与されているのか。
理由が知りたかった。
「『呪い』とは本来願いや祈りといった『祝福』のようなものなのです。それがある時反転し、『呪い』に変わります。」
「反転とはなんだ?」
「裏切られたり、願いが叶わなかったり、祈りが届かなかったりすると、負の力が働き本来とは違う性質を持つようになるんです。」
「つまり元所有者がどれだけ真剣に願っていたかで『呪い』の効果が変わるのか。」
「その通りです。私達は、聖水を用いてその届かなかったモノを清め浄化して解呪しているのですが・・・。」
「強すぎる願いは清められないんだな、この間のように。」
「仰る通りです。」
なるほどな。
使用者が大事に使った物、願いを掛けたものがそれを成せなかった時に属性が反転するのか。
つまり隠し部屋で手に入れたアレにはそれだけの願いが込められていた。
一体なぜそこまで願う必要があったんだろうか。
わからんなぁ。
「ただ・・・。」
「ただ?」
「『呪い』の元になった願い等と全く同じ事を思う方が身に着けた場合は、願いが果たされ呪いは解かれることがあります。よほどのことが無ければありえませんが、無くはない話です。」
「それがどれだけ強くてもか?」
「はい。ですが強いという事は合致しにくいともいえるでしょう。むやみやたらに身に着けることはお勧めしません。特にこの間の指輪は。」
なるほどなぁ。
弱い呪いってのは大雑把な願いって事だ。
だから他人が解呪できるし、曖昧だから冒険者が気付かず装備しても問題ない。
冒険者が落した品なんかだと、願いが一緒の場合が多いのかもしれない。
生きたい!とか酒を飲みたい!とか。
そんなんだと気づかないうちに解呪されてしまって呪われていた事さえわからないんだろう。
そうでないと教会が解呪で流行っていない理由がわからない。
『呪い』の本質を知らないから、過度に恐怖して安くでも手放してしまうんだろう。
まぁ、こっちとしてはありがたい話だけどな。
「良い事を聞いたよ、それじゃあまた。」
「シロウ様に神の祝福が有らんことを。」
モニカに見送られて教会を後にする。
あの指輪にはどんな願いが込められていたんだろうな。
「ま、それがわかれば苦労しないか。」
そんなことを考えながらミラの待つ店へと向かうのだった。
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