3 / 1,027
3.転売屋は街に行く
しおりを挟む
翌朝。
「そんじゃま、街までは送ってやるよ。でも本当にいいのか?」
「あぁ、冒険者に仕事を頼むのには金が要るんだろ?」
「こういう時はお互い様っていうもんだが、貰えるものは貰うのが冒険者だ。」
「じゃあ、交渉成立だな。」
出発の前に俺はポケットから銀色に輝く硬貨を取り出し2枚ともダンに手渡した。
昨夜は非常に有意義な時間を過ごさせてもらった。
そして俺の疑問は確信に変わった。
どうやらここは異世界で間違いないようだ。
しかも昔遊び倒したオンラインゲームのような剣と魔法が息づく世界。
ダンはその世界で冒険者として生計を立てているそうだ。
年は25。
俺よりも17も若い子に助けてもらうっていうのはむず痒い話だが、どうやら今の俺は昔の俺と違うらしい。
見た目は20台前半、見た目だけじゃなく体力や体つきもその当時に近い状況にある。
ようは若返ったってやつだ。
漫画なんかではよくある話だが、まさか自分がそうなるとは思いもしなかった。
昔に戻りたい、そう考えたことは何度もある。
だがまさか肉体が若返る日が来るとは。
まぁ、異世界だし何でもありだよな。
「街はこの道をまっすぐ半日行けば着く。それで銀貨2枚も貰えたら大儲けだ。もちろん何もなければの話だがな。」
「おいおい、そんな不吉なこと言うなよ。」
「冗談だって、この大草原じゃ魔力溜りも出来やしないさ。」
「そうなることを祈るよ。」
昨日聞いたあの声の主に襲われても困る。
まぁ、今は優秀?な護衛もいるわけだし大丈夫だと思うけどな。
一応ダンには田舎から出てきた時に魔物に襲われて命からがら逃げてきたという設定にして話をしてある。
元の年齢だと違和感がすごいが、この見た目なのと年齢が近いことも有りかなり同情されたものだ。
若干心苦しい感じはあるが、異世界なんてよくわからないところに来ているんだ出来るだけ慎重に行くべきだろう。
もしかしたらダン自身も冒険者と言っておきながら実は犯罪者なんて可能性だってある。
人を見る目はあるつもりだが・・・、世の中に絶対はないからな。
「・・・こんなことも知らないなんて本当に田舎から出てきたんだな。」
「農家の次男坊なんて奴隷みたいなもんだよ。嫁に来てくれる人なんていないし、出て行こうにも金は無い。今回だって街に行く商人に無理言って乗せてもらったんだ。」
「それで魔物に襲われたら世話ないけどな。」
「生きてるだけで十分だよ。」
それから街に着くまでの間この世界の事をいろいろと教えてもらったわけだが・・・。
この地域の事、魔物の事、冒険者の事と奇想天外な事ばかりだ。
ゲームや漫画でよく聞く設定とまんま一緒だ。
何物にも縛られず自分の夢を追いかける自由人、なんて言い方をすればカッコいいがようはフリーターみたいなものだな。
魔物と戦う危険な事もするし、それが嫌なら無難な仕事を選べばいい。
体一つで生きていくという意味では昔の俺もそうだったけどな。
「それで、街に出てどうするんだ?」
「そうだなぁ、とりあえず少し腰を落ち着けてから考えるよ。」
「気ままなもんだな。」
「ダンはどうするんだ?」
「報酬ももらったし二日はゆっくりできるけど・・・、それまでに次の仕事を見つけるさ。」
つまり1日生活するのに銀貨1枚いると。
「金貨の方が良かったか?」
「金貨!?それがあったら100日は食ってけるが・・・そんな金あんのか?」
「田舎から出てきた俺にあるわけないだろ、その金も最後の最後だよ。」
「じゃあどうやって腰を落ち着けるんだよ。」
「稼ぐのさ。」
「稼ぐ?」
「これでも目利きは出来る方なんだ。」
街についてからどうするか、それについても昨日考えていた。
金はある。
と言っても残りは金貨1枚だけど、さっきの話じゃ100日は持つらしい。
それを食いつぶす前に、今まで培ってきた経験を生かして稼いでいくつもりだ。
具体的にどうするかって?
だからそれは食いつぶす前に考えるよ。
それから半日。
ダンの言った通りまだ陽の高いうちに街に到着することが出来た。
「ここがこの辺で一番大きな街だ。」
「思ったより大きいな。」
正直草原のど真ん中にこんなに大きな街があるとは思わなかった。
どれぐらいの広さかは見た目にはわからないが、野球を見に行ったドームぐらいの大きさはあるぞ。
到着する前から前方に建物が見えるなと思っていたのだが、近づくとその正体がわかった。
一体どこから調達したのか草原のど真ん中に巨大な城壁が現れた。
と言っても有名な巨人が出てくるような漫画みたいに大きくは無いが、高さ2m程の立派な岩の城壁がぐるりと街を覆っているらしい。
魔物がいるんだからそれぐらいは当たり前かもしれないが、どこから材料を調達したんだろうか。
「そうだな、貿易の中継地点として大きくなったのもあるが、やはり一番の理由はダンジョンだろう。」
「ダンジョンってあのダンジョンか?」
「むしろどのダンジョンがあるんだよ」
ハクスラ系でよくお世話になったあのダンジョンがここにあるのか?
「それが街の中に?危なくないのか?」
「別に中から魔物が出てくることも無いしな」
「でも何でダンジョンがあると街が大きくなるんだ?」
「そりゃダンジョンがあれば冒険者が来るからだろ。中で見つかる素材や財宝はかなりの価値だからな、俺みたいな冒険者からしてみれば夢と希望の場所ってわけだ」
「なるほどなぁ。一攫千金ってやつか」
「まぁそんな感じだよ」
一発デカいのを夢見る冒険者が集まってきて、それを相手にする商売が栄えるわけか。
物販、飲食、サービス。
それを支えるには人がいる。
そしてその支える人を食わすためにもまた物が集まる。
日用品、食料品、娯楽品。
運搬業も栄えその他も栄え一石何鳥かわからないなぁ。
ダンジョン一つでそれだけの利益が出るんだ、管理者はぼろもうけだろう。
ん?管理者?
「なぁ、ここの一番偉い人は誰なんだ?」
「そりゃ街長だろ。」
「じゃあダンジョンの管理者は?」
「もちろん街長だな。」
「ぼろ儲けじゃないか。」
「入るのに金をとられているわけじゃないから儲かるかどうかは知らないが、儲かるのか?」
いや、儲かるだろどう考えても。
ダンの話じゃ入場料的なものはとっていないみたいだが、そこから生まれる副産物からせしめれば十分に利は出る。
「これだけ大きな街を維持するには金もかかるだろうけど、それを満たす以上に税金を集めれば余裕じゃないか?」
「税金か、働かずに金がもらえるなんて羨ましいねぇ」
「ちゃんと収めてるんだよな?」
「冒険者が?まさか、俺達が税金なんて納めねぇよ」
「嘘だろ?」
「いや、嘘言ってどうするよ。そんな面倒なことしてるのは商人とか貴族だけじゃないのか?」
一番の金づるから金をとらないなんて、まるでどこかの第六天魔王みたいだ。
楽市楽座だっけ?
税を取らない事で商売をやりやすくしたみたいな感じだろうか。
ダンジョンしか資源が無いのであればそれを動かす冒険者から金をとるのは難しいかもなぁ。
「とりあえず俺はギルドまで行くけど、シロウはどうするんだ?」
「んー、俺みたいなやつが行っても意味ないだろうし、宿まで連れて行ってくれれば助かる」
「宿か。確かに先に押さえておく方がいいかもな」
「じゃあそこまで連れて行ってくれたら護衛は終わり、でどうだ?」
「わかった、宿までだな」
幸い言葉は通じるようだがよくわからない文字を見せられても困る。
せめて文字が読めるかわかってから解散したい所だ。
城壁の何か所に門が作られているが、どこもフリーパスのようで自由に人が出入りしている。
ダンジョンとやらがあるだけに物騒な武器やゴテゴテした防具を身に着けた冒険者らしき人が多いな。
「門を抜ければすぐに宿屋だ、一応この街についても説明しておくか?」
「いや、その辺は宿で聞くよ」
「別に遠慮しなくていいんだぞ?」
「人と話すのは嫌いじゃなくてね、話題作りに使わせてもらうさ」
「なるほど、その顔を生かして女を口説くわけか。いいねぇ顔のいい奴は得で」
「ダンもそんなに変わらないだろ?」
「ここの女は冒険者を顔で見ないんだよ。実力があれば顔なんてどうでもいいんだとよ」
へぇ、世の中顔じゃないのか。
でも俺は冒険者じゃないし結局は顔、って事になるのか?
若返ったっていっても元が元だからな、所詮は知れてるさ。
「ちなみにダンの実力はどうなんだ?」
「俺か?聞いて驚け、この間中級に上がった所だ」
「すまん、中級がどれだけすごいかもわからない」
「けっ、自慢しがいがねぇなあ」
そんなこと言われたってわからないもんはわからないままだ。
とりあえず中級がすごいってことはこれでわかったわけだけども。
そうこうしているうちに街で比較的大きな建物の前についた。
入り口の扉の上に大きな三日月の看板がぶら下がっている。
「ここがこの街で一番の宿、『三日月亭』だ」
「まんまだな」
「あぁ、わかりやすいだろ?」
「でも一番って事は高いのか?」
「そうだな、そこそこの値段だが安い所は治安が悪い。お前みたいな田舎者はここぐらいがちょうどいいだろ」
「でも高いんだろ?」
「俺もココを利用してるんだ、いっただろ一日銀貨1枚だよ。」
それならまぁいいか。
出入り口に近いしわかりやすい。
ダンが言うようにそれなりの安全は確保したいしな。
「これで護衛はおしまいだ、有難うダン本当に助かった。」
「なに、困ったときはお互い様だ。もし俺が困っていたらはその時は頼むよ。」
「助けられるぐらいになっていればな。」
固く握手を交わすとダンは通りの向こうへと消えて行った。
その背中を見送りもう一度頭を下げる。
お前が居なかったらあそこで死んでた、本当に有難う。
なんてことを一瞬考えたが、頭を上げたらそこで終わりだ。
まずは宿をとってそれから身の振り方を考えよう。
大きな木の扉をグッと押して中に入る。
「いらっしゃいませ、ようこそ三日月亭へ!」
幸いまだ陽は高い、ダン曰く顔はいいらしいからそれを利用して情報収集としゃれこむとするかな。
「そんじゃま、街までは送ってやるよ。でも本当にいいのか?」
「あぁ、冒険者に仕事を頼むのには金が要るんだろ?」
「こういう時はお互い様っていうもんだが、貰えるものは貰うのが冒険者だ。」
「じゃあ、交渉成立だな。」
出発の前に俺はポケットから銀色に輝く硬貨を取り出し2枚ともダンに手渡した。
昨夜は非常に有意義な時間を過ごさせてもらった。
そして俺の疑問は確信に変わった。
どうやらここは異世界で間違いないようだ。
しかも昔遊び倒したオンラインゲームのような剣と魔法が息づく世界。
ダンはその世界で冒険者として生計を立てているそうだ。
年は25。
俺よりも17も若い子に助けてもらうっていうのはむず痒い話だが、どうやら今の俺は昔の俺と違うらしい。
見た目は20台前半、見た目だけじゃなく体力や体つきもその当時に近い状況にある。
ようは若返ったってやつだ。
漫画なんかではよくある話だが、まさか自分がそうなるとは思いもしなかった。
昔に戻りたい、そう考えたことは何度もある。
だがまさか肉体が若返る日が来るとは。
まぁ、異世界だし何でもありだよな。
「街はこの道をまっすぐ半日行けば着く。それで銀貨2枚も貰えたら大儲けだ。もちろん何もなければの話だがな。」
「おいおい、そんな不吉なこと言うなよ。」
「冗談だって、この大草原じゃ魔力溜りも出来やしないさ。」
「そうなることを祈るよ。」
昨日聞いたあの声の主に襲われても困る。
まぁ、今は優秀?な護衛もいるわけだし大丈夫だと思うけどな。
一応ダンには田舎から出てきた時に魔物に襲われて命からがら逃げてきたという設定にして話をしてある。
元の年齢だと違和感がすごいが、この見た目なのと年齢が近いことも有りかなり同情されたものだ。
若干心苦しい感じはあるが、異世界なんてよくわからないところに来ているんだ出来るだけ慎重に行くべきだろう。
もしかしたらダン自身も冒険者と言っておきながら実は犯罪者なんて可能性だってある。
人を見る目はあるつもりだが・・・、世の中に絶対はないからな。
「・・・こんなことも知らないなんて本当に田舎から出てきたんだな。」
「農家の次男坊なんて奴隷みたいなもんだよ。嫁に来てくれる人なんていないし、出て行こうにも金は無い。今回だって街に行く商人に無理言って乗せてもらったんだ。」
「それで魔物に襲われたら世話ないけどな。」
「生きてるだけで十分だよ。」
それから街に着くまでの間この世界の事をいろいろと教えてもらったわけだが・・・。
この地域の事、魔物の事、冒険者の事と奇想天外な事ばかりだ。
ゲームや漫画でよく聞く設定とまんま一緒だ。
何物にも縛られず自分の夢を追いかける自由人、なんて言い方をすればカッコいいがようはフリーターみたいなものだな。
魔物と戦う危険な事もするし、それが嫌なら無難な仕事を選べばいい。
体一つで生きていくという意味では昔の俺もそうだったけどな。
「それで、街に出てどうするんだ?」
「そうだなぁ、とりあえず少し腰を落ち着けてから考えるよ。」
「気ままなもんだな。」
「ダンはどうするんだ?」
「報酬ももらったし二日はゆっくりできるけど・・・、それまでに次の仕事を見つけるさ。」
つまり1日生活するのに銀貨1枚いると。
「金貨の方が良かったか?」
「金貨!?それがあったら100日は食ってけるが・・・そんな金あんのか?」
「田舎から出てきた俺にあるわけないだろ、その金も最後の最後だよ。」
「じゃあどうやって腰を落ち着けるんだよ。」
「稼ぐのさ。」
「稼ぐ?」
「これでも目利きは出来る方なんだ。」
街についてからどうするか、それについても昨日考えていた。
金はある。
と言っても残りは金貨1枚だけど、さっきの話じゃ100日は持つらしい。
それを食いつぶす前に、今まで培ってきた経験を生かして稼いでいくつもりだ。
具体的にどうするかって?
だからそれは食いつぶす前に考えるよ。
それから半日。
ダンの言った通りまだ陽の高いうちに街に到着することが出来た。
「ここがこの辺で一番大きな街だ。」
「思ったより大きいな。」
正直草原のど真ん中にこんなに大きな街があるとは思わなかった。
どれぐらいの広さかは見た目にはわからないが、野球を見に行ったドームぐらいの大きさはあるぞ。
到着する前から前方に建物が見えるなと思っていたのだが、近づくとその正体がわかった。
一体どこから調達したのか草原のど真ん中に巨大な城壁が現れた。
と言っても有名な巨人が出てくるような漫画みたいに大きくは無いが、高さ2m程の立派な岩の城壁がぐるりと街を覆っているらしい。
魔物がいるんだからそれぐらいは当たり前かもしれないが、どこから材料を調達したんだろうか。
「そうだな、貿易の中継地点として大きくなったのもあるが、やはり一番の理由はダンジョンだろう。」
「ダンジョンってあのダンジョンか?」
「むしろどのダンジョンがあるんだよ」
ハクスラ系でよくお世話になったあのダンジョンがここにあるのか?
「それが街の中に?危なくないのか?」
「別に中から魔物が出てくることも無いしな」
「でも何でダンジョンがあると街が大きくなるんだ?」
「そりゃダンジョンがあれば冒険者が来るからだろ。中で見つかる素材や財宝はかなりの価値だからな、俺みたいな冒険者からしてみれば夢と希望の場所ってわけだ」
「なるほどなぁ。一攫千金ってやつか」
「まぁそんな感じだよ」
一発デカいのを夢見る冒険者が集まってきて、それを相手にする商売が栄えるわけか。
物販、飲食、サービス。
それを支えるには人がいる。
そしてその支える人を食わすためにもまた物が集まる。
日用品、食料品、娯楽品。
運搬業も栄えその他も栄え一石何鳥かわからないなぁ。
ダンジョン一つでそれだけの利益が出るんだ、管理者はぼろもうけだろう。
ん?管理者?
「なぁ、ここの一番偉い人は誰なんだ?」
「そりゃ街長だろ。」
「じゃあダンジョンの管理者は?」
「もちろん街長だな。」
「ぼろ儲けじゃないか。」
「入るのに金をとられているわけじゃないから儲かるかどうかは知らないが、儲かるのか?」
いや、儲かるだろどう考えても。
ダンの話じゃ入場料的なものはとっていないみたいだが、そこから生まれる副産物からせしめれば十分に利は出る。
「これだけ大きな街を維持するには金もかかるだろうけど、それを満たす以上に税金を集めれば余裕じゃないか?」
「税金か、働かずに金がもらえるなんて羨ましいねぇ」
「ちゃんと収めてるんだよな?」
「冒険者が?まさか、俺達が税金なんて納めねぇよ」
「嘘だろ?」
「いや、嘘言ってどうするよ。そんな面倒なことしてるのは商人とか貴族だけじゃないのか?」
一番の金づるから金をとらないなんて、まるでどこかの第六天魔王みたいだ。
楽市楽座だっけ?
税を取らない事で商売をやりやすくしたみたいな感じだろうか。
ダンジョンしか資源が無いのであればそれを動かす冒険者から金をとるのは難しいかもなぁ。
「とりあえず俺はギルドまで行くけど、シロウはどうするんだ?」
「んー、俺みたいなやつが行っても意味ないだろうし、宿まで連れて行ってくれれば助かる」
「宿か。確かに先に押さえておく方がいいかもな」
「じゃあそこまで連れて行ってくれたら護衛は終わり、でどうだ?」
「わかった、宿までだな」
幸い言葉は通じるようだがよくわからない文字を見せられても困る。
せめて文字が読めるかわかってから解散したい所だ。
城壁の何か所に門が作られているが、どこもフリーパスのようで自由に人が出入りしている。
ダンジョンとやらがあるだけに物騒な武器やゴテゴテした防具を身に着けた冒険者らしき人が多いな。
「門を抜ければすぐに宿屋だ、一応この街についても説明しておくか?」
「いや、その辺は宿で聞くよ」
「別に遠慮しなくていいんだぞ?」
「人と話すのは嫌いじゃなくてね、話題作りに使わせてもらうさ」
「なるほど、その顔を生かして女を口説くわけか。いいねぇ顔のいい奴は得で」
「ダンもそんなに変わらないだろ?」
「ここの女は冒険者を顔で見ないんだよ。実力があれば顔なんてどうでもいいんだとよ」
へぇ、世の中顔じゃないのか。
でも俺は冒険者じゃないし結局は顔、って事になるのか?
若返ったっていっても元が元だからな、所詮は知れてるさ。
「ちなみにダンの実力はどうなんだ?」
「俺か?聞いて驚け、この間中級に上がった所だ」
「すまん、中級がどれだけすごいかもわからない」
「けっ、自慢しがいがねぇなあ」
そんなこと言われたってわからないもんはわからないままだ。
とりあえず中級がすごいってことはこれでわかったわけだけども。
そうこうしているうちに街で比較的大きな建物の前についた。
入り口の扉の上に大きな三日月の看板がぶら下がっている。
「ここがこの街で一番の宿、『三日月亭』だ」
「まんまだな」
「あぁ、わかりやすいだろ?」
「でも一番って事は高いのか?」
「そうだな、そこそこの値段だが安い所は治安が悪い。お前みたいな田舎者はここぐらいがちょうどいいだろ」
「でも高いんだろ?」
「俺もココを利用してるんだ、いっただろ一日銀貨1枚だよ。」
それならまぁいいか。
出入り口に近いしわかりやすい。
ダンが言うようにそれなりの安全は確保したいしな。
「これで護衛はおしまいだ、有難うダン本当に助かった。」
「なに、困ったときはお互い様だ。もし俺が困っていたらはその時は頼むよ。」
「助けられるぐらいになっていればな。」
固く握手を交わすとダンは通りの向こうへと消えて行った。
その背中を見送りもう一度頭を下げる。
お前が居なかったらあそこで死んでた、本当に有難う。
なんてことを一瞬考えたが、頭を上げたらそこで終わりだ。
まずは宿をとってそれから身の振り方を考えよう。
大きな木の扉をグッと押して中に入る。
「いらっしゃいませ、ようこそ三日月亭へ!」
幸いまだ陽は高い、ダン曰く顔はいいらしいからそれを利用して情報収集としゃれこむとするかな。
31
お気に入りに追加
328
あなたにおすすめの小説
貴族に生まれたのに誘拐され1歳で死にかけた
佐藤醤油
ファンタジー
貴族に生まれ、のんびりと赤ちゃん生活を満喫していたのに、気がついたら世界が変わっていた。
僕は、盗賊に誘拐され魔力を吸われながら生きる日々を過ごす。
魔力枯渇に陥ると死ぬ確率が高いにも関わらず年に1回は魔力枯渇になり死にかけている。
言葉が通じる様になって気がついたが、僕は他の人が持っていないステータスを見る力を持ち、さらに異世界と思われる世界の知識を覗ける力を持っている。
この力を使って、いつか脱出し母親の元へと戻ることを夢見て過ごす。
小さい体でチートな力は使えない中、どうにか生きる知恵を出し生活する。
------------------------------------------------------------------
お知らせ
「転生者はめぐりあう」 始めました。
------------------------------------------------------------------
注意
作者の暇つぶし、気分転換中の自己満足で公開する作品です。
感想は受け付けていません。
誤字脱字、文面等気になる方はお気に入りを削除で対応してください。
せっかくのクラス転移だけども、俺はポテトチップスでも食べながらクラスメイトの冒険を見守りたいと思います
霖空
ファンタジー
クラス転移に巻き込まれてしまった主人公。
得た能力は悪くない……いや、むしろ、チートじみたものだった。
しかしながら、それ以上のデメリットもあり……。
傍観者にならざるをえない彼が傍観者するお話です。
基本的に、勇者や、影井くんを見守りつつ、ほのぼの?生活していきます。
が、そのうち、彼自身の物語も始まる予定です。
神様との賭けに勝ったので、スキルを沢山貰えた件。
猫丸
ファンタジー
ある日の放課後。突然足元に魔法陣が現れると、気付けば目の前には神を名乗る存在が居た。
そこで神は異世界に送るからスキルを1つ選べと言ってくる。
あれ?これもしかして頑張ったらもっと貰えるパターンでは?
そこで彼は思った――もっと欲しい!
欲をかいた少年は神様に賭けをしないかと提案した。
神様とゲームをすることになった悠斗はその結果――
※過去に投稿していたものを大きく加筆修正したものになります。
僕の家族は母様と母様の子供の弟妹達と使い魔達だけだよ?
闇夜の現し人(ヤミヨノウツシビト)
ファンタジー
ー 母さんは、「絶世の美女」と呼ばれるほど美しく、国の中で最も権力の強い貴族と呼ばれる公爵様の寵姫だった。
しかし、それをよく思わない正妻やその親戚たちに毒を盛られてしまった。
幸い発熱だけですんだがお腹に子が出来てしまった以上ここにいては危険だと判断し、仲の良かった侍女数名に「ここを離れる」と言い残し公爵家を後にした。
お母さん大好きっ子な主人公は、毒を盛られるという失態をおかした父親や毒を盛った親戚たちを嫌悪するがお母さんが日々、「家族で暮らしたい」と話していたため、ある出来事をきっかけに一緒に暮らし始めた。
しかし、自分が家族だと認めた者がいれば初めて見た者は跪くと言われる程の華の顔(カンバセ)を綻ばせ笑うが、家族がいなければ心底どうでもいいというような表情をしていて、人形の方がまだ表情があると言われていた。
『無能で無価値の稚拙な愚父共が僕の家族を名乗る資格なんて無いんだよ?』
さぁ、ここに超絶チートを持つ自分が認めた家族以外の生き物全てを嫌う主人公の物語が始まる。
〈念の為〉
稚拙→ちせつ
愚父→ぐふ
⚠︎注意⚠︎
不定期更新です。作者の妄想をつぎ込んだ作品です。
大和型戦艦、異世界に転移する。
焼飯学生
ファンタジー
第二次世界大戦が起きなかった世界。大日本帝国は仮想敵国を定め、軍事力を中心に強化を行っていた。ある日、大日本帝国海軍は、大和型戦艦四隻による大規模な演習と言う名目で、太平洋沖合にて、演習を行うことに決定。大和、武蔵、信濃、紀伊の四隻は、横須賀海軍基地で補給したのち出港。しかし、移動の途中で濃霧が発生し、レーダーやソナーが使えなくなり、更に信濃と紀伊とは通信が途絶してしまう。孤立した大和と武蔵は濃霧を突き進み、太平洋にはないはずの、未知の島に辿り着いた。
※ この作品は私が書きたいと思い、書き進めている作品です。文章がおかしかったり、不明瞭な点、あるいは不快な思いをさせてしまう可能性がございます。できる限りそのような事態が起こらないよう気をつけていますが、何卒ご了承賜りますよう、お願い申し上げます。
転生受験生の教科書チート生活 ~その知識、学校で習いましたよ?~
hisa
ファンタジー
受験生の少年が、大学受験前にいきなり異世界に転生してしまった。
自称天使に与えられたチートは、社会に出たら役に立たないことで定評のある、学校の教科書。
戦争で下級貴族に成り上がった脳筋親父の英才教育をくぐり抜けて、少年は知識チートで生きていけるのか?
教科書の力で、目指せ異世界成り上がり!!
※なろうとカクヨムにそれぞれ別のスピンオフがあるのでそちらもよろしく!
※第5章に突入しました。
※小説家になろう96万PV突破!
※カクヨム68万PV突破!
※令和4年10月2日タイトルを『転生した受験生の異世界成り上がり 〜生まれは脳筋な下級貴族家ですが、教科書の知識だけで成り上がってやります〜』から変更しました
クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?
青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。
最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。
普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた?
しかも弱いからと森に捨てられた。
いやちょっとまてよ?
皆さん勘違いしてません?
これはあいの不思議な日常を書いた物語である。
本編完結しました!
相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです!
1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…
25歳のオタク女子は、異世界でスローライフを送りたい
こばやん2号
ファンタジー
とある会社に勤める25歳のOL重御寺姫(じゅうおんじひめ)は、漫画やアニメが大好きなオタク女子である。
社員旅行の最中謎の光を発見した姫は、気付けば異世界に来てしまっていた。
頭の中で妄想していたことが現実に起こってしまったことに最初は戸惑う姫だったが、自身の知識と持ち前の性格でなんとか異世界を生きていこうと奮闘する。
オタク女子による異世界生活が今ここに始まる。
※この小説は【アルファポリス】及び【小説家になろう】の同時配信で投稿しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる