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十章 霧は晴れて
導きのフクロウ
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つばさはふと目を覚ました。
周囲はまだ暗く、満点の空には星が輝いている。
おいしいものをいっぱい食べて、そのまま外で毛布にくるまって寝てしまったのだ。
つばさは隣で寝ているサギの寝顔を見る。
「一緒に旅を続けない?」
彼女がそういおうとしていたことは気づいていた。
聞こえていないふりをしていたのだ。
元の世界に帰ることなく、彼女とずっと一緒にこのヤマのクニを旅して過ごす。
それはそれですばらしい生活ではないか。
テレビもスマホもなく、生きるために子供でも働かなければならない世界。
だけど自由があり、学ぶことは楽しく、よき友人たちに恵まれたこの世界。
ここでずっと暮らしてもいいのではないか?
そんな気持ちがあった。
主をしりぞけたあの日、女王さまはつばさを元の世界に戻すとはいわなかった。
つばさも聞かなかった。
「城に避難してきた障りたちを、元の所に帰してやるために女王さまはしばらく忙しくされます」
「霧を払ったつばさどののお姿を、障りたちに見せてあげてください」
「使節団の方々が戻るまで、つばさ殿も当然ヤマのクニに滞在なされるのでしょ?」
そういって城の障りたちはつばさに滞在を促していた。
実際に女王さまは忙しそうで、あれから女王さまにあっていない。
「もちろんつばさ殿の希望は最優先で女王さまもきいてくださるでしょう」
彼女のけらいはそういったが、つばさもあえて希望を言わなかった。
エドと一緒にキャンプを見回っては手伝い、ハシたち子供から感謝を受けたりしているうちにあっという間に他の使節団が帰ってきた。
帰りたい、という気持ちが自分の中でなくなっているのを感じる。
でもなにかひっかかりがある。
それがサギの言葉にすぐに答えられれなかった理由でもあった。
ずいぶんと目がえて、すぐに眠れそうにない。
「……少し散歩でもしようか」
つばさはそっと起きだし、あてもなく歩き始めた。
みんな寝ているのか、静かだった。
霧のないヤマのクニの空は、まるで宝石が輝いているほどの美しさだ。
つばさは適当に歩いたつもりだった。
でも何かに導かれるように、少し離れた森の中へと足を踏み入れた。
大きな木の枝に、白い姿があることに気づく。
それはこちらを見ていた。
「よく来たな、つばさ」
白いフクロウがつばさの方に声をかける。
しゃがれたおじいさんのような声だ。
フクロウがしゃべったことにつばさは驚かなかった。馬だってしゃべるのだ。
それに、このフクロウが待っている予感がつばさにはあった。
「わしはカイム。おまえさんをずっと見守っておったよ」
つばさは頷いた。そう、いつだって彼はつばさのそばにいた。
「少し長い話なんじゃが聞いてくれるかの」
「うん。ぼくもいろいろ聞きたいことがあるんだ」
つばさが答えると、カイムは白い羽で毛繕いするような仕草をとる。
そして話し始めた。
周囲はまだ暗く、満点の空には星が輝いている。
おいしいものをいっぱい食べて、そのまま外で毛布にくるまって寝てしまったのだ。
つばさは隣で寝ているサギの寝顔を見る。
「一緒に旅を続けない?」
彼女がそういおうとしていたことは気づいていた。
聞こえていないふりをしていたのだ。
元の世界に帰ることなく、彼女とずっと一緒にこのヤマのクニを旅して過ごす。
それはそれですばらしい生活ではないか。
テレビもスマホもなく、生きるために子供でも働かなければならない世界。
だけど自由があり、学ぶことは楽しく、よき友人たちに恵まれたこの世界。
ここでずっと暮らしてもいいのではないか?
そんな気持ちがあった。
主をしりぞけたあの日、女王さまはつばさを元の世界に戻すとはいわなかった。
つばさも聞かなかった。
「城に避難してきた障りたちを、元の所に帰してやるために女王さまはしばらく忙しくされます」
「霧を払ったつばさどののお姿を、障りたちに見せてあげてください」
「使節団の方々が戻るまで、つばさ殿も当然ヤマのクニに滞在なされるのでしょ?」
そういって城の障りたちはつばさに滞在を促していた。
実際に女王さまは忙しそうで、あれから女王さまにあっていない。
「もちろんつばさ殿の希望は最優先で女王さまもきいてくださるでしょう」
彼女のけらいはそういったが、つばさもあえて希望を言わなかった。
エドと一緒にキャンプを見回っては手伝い、ハシたち子供から感謝を受けたりしているうちにあっという間に他の使節団が帰ってきた。
帰りたい、という気持ちが自分の中でなくなっているのを感じる。
でもなにかひっかかりがある。
それがサギの言葉にすぐに答えられれなかった理由でもあった。
ずいぶんと目がえて、すぐに眠れそうにない。
「……少し散歩でもしようか」
つばさはそっと起きだし、あてもなく歩き始めた。
みんな寝ているのか、静かだった。
霧のないヤマのクニの空は、まるで宝石が輝いているほどの美しさだ。
つばさは適当に歩いたつもりだった。
でも何かに導かれるように、少し離れた森の中へと足を踏み入れた。
大きな木の枝に、白い姿があることに気づく。
それはこちらを見ていた。
「よく来たな、つばさ」
白いフクロウがつばさの方に声をかける。
しゃがれたおじいさんのような声だ。
フクロウがしゃべったことにつばさは驚かなかった。馬だってしゃべるのだ。
それに、このフクロウが待っている予感がつばさにはあった。
「わしはカイム。おまえさんをずっと見守っておったよ」
つばさは頷いた。そう、いつだって彼はつばさのそばにいた。
「少し長い話なんじゃが聞いてくれるかの」
「うん。ぼくもいろいろ聞きたいことがあるんだ」
つばさが答えると、カイムは白い羽で毛繕いするような仕草をとる。
そして話し始めた。
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