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【中2編】第6章「新たな関係」
好きなのに(亜紀目線)
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電話、切るんじゃなかったな。あの時の陽真、何か言いたげな感じだったし、自分で勝手に嫌いやらなんやら決めつけてムキになっちゃったし。そんなこんながあって、あの後は再度電話をかけず、ちゃんと話すことが出来なかった。
朝の通学路、昨日のことを引きずりながらぼんやり歩いていると、後ろから肩を叩かれた。振り向いて見てみると、そこには瀬野の姿があった。
「…はよ。なんからしくない顔してるけど、何かあったの」
「……」
一瞬昨日のことを話そうかどうか迷った。でも、元々瀬野って陽真のこと好きだったし。というか、昨日告白したばかりだったっけ。こんな事を聞かされたらどんな気持ちになるのか、俺には分かる気がしてわざと黙った。
すると、それがいけなかったのか、「事情は知ってんだから正直に言えよ」と、隣に並んだ瀬野がため息混じりに言った。
ってことはつまり、陽真は昨日のこと瀬野に話したってこと?俺は、想像もしていなかった返答に思わず「えっ?」という声が漏れた。
俺は隣で並んで歩く瀬野の目をじっと見つめた。
「それって、どういうこと…?」
「…あのねぇ、俺が全部知ってるみたいな解釈になってんだろうけど、違うから」
「…じゃあ、つまり…?」
「んーとね。昨日の帰り道、俺が「斎藤って陽真のこと好きらしいじゃん」みたいなこと言ったら、すぐ食いついて「え、それってまじ?」って、すごい舞い上がってた。俺が知ってるのはここまで。そんで、陽真のことだからすぐ確認しに行ったのかなって」
…もしかして、俺って結構な勘違いしてない?だって、「それってまじ?」って、俺が陽真のこと好きってことに舞い上がってただけで、告白の返事ではない、ってことだよね?大胆な勘違いで段々と恥ずかしくなってきた。
それなら、本当に両思いってこともあり得るんじゃないのか?
でも昨日、勝手に電話切っちゃったし。自己中だって思われて、本当に嫌われたらどうしよう。そう考えるだけで、一気に気が重たくなった。
校門をくぐったところで、駐車場横の東門方面から登校していた陽真にばったり会ってしまった。俺の気まずさを知らず、瀬野は真っ先に陽真の元へ駆け寄った。
「あ、陽真。おはよー」
「…ああ、はよー」
陽真は、瀬野の後ろにいた俺の姿に気づくなり、軽く睨んだような目つきでこちらを見た。その視線の圧があまりにもすごくて、昨日のこともそうだけど、もう何もかもがトラウマになってしまいそうな気がした。
やっぱり、嫌われちゃったんだ。
そう感じてしまい、俺はたちが悪くなって、立ち話を始めようとしている瀬野達を無視して下駄箱の方へと早歩きした。
「…ちょ、斎藤!?」
後ろから瀬野が俺を呼ぶ声がしたが、それをも無視した。
「…追いかけなくていいから。ほっといてあげなよ」
後ろからそんな声が聞こえた気がした。
俺のことなんか、本当にどうでもいいんだ。本当に俺の事「嫌い」なんだ。もう俺は、陽真のことなんか自分とは関係ない、と自分に言い聞かせながら歩いた。
今朝のこともあり、陽真と全く関わらないまま、あっという間に放課後になりかけ、気づけば帰りの会までもが終わっていた。クラスメイトの男子たちは、普段仲の良い俺らが一緒にいないことを心配してくれた。だけど、どうしても理由までは言えなかったのが少し心残りだった。
これから部活あるんだっけ。行く気がしないけど、12月の県大会のスタメンのためなら頑張ってみてもいいかもしれない。
「斎藤ー、これから部活あるけど行く?陽真も来るって」
なんとなく後ろめたい気持ちでのろのろと帰り支度を始めていると、後ろから松川がやってきた。
「陽真も来る」。その言葉に、嬉しいどころか悲しくて少し寂しいような、そんな気持ちが巡った。
多分今ままでの俺だったら、今日はどんな姿が見られるのかなー、とか、部活中でも頭の中は陽真のことでいっぱいだったのに。同じクラスだから一緒に話すこともたくさんあったし、移動教室のときだっていつも楽しそうにしてくれていた。でも、そんな日常は、もう当分戻ってはこないだろう。
「…じゃあ、俺は行かない」
陽真は嘘つかない。だから俺のことは嫌い。そんなんならもう関わりたくない。ネガティブな気持ちがぐるぐると渦巻く。その反面、「好き」って気持ちにけじめをつけたい。そんな思いもあった。
確かに、嫌われてるかもしれないけど、また今後「好き」っていう感情で陽真を惑わせたくなかった。
「えー、大会間近なのに?スタメン入りたかったんじゃないの?」
スタメン。そうだよ、今は人間関係に惑わされてる場合じゃない。県大会っていう大舞台なんだもん。ここで気を抜くわけにはいかない。
「…やっぱ行く」
こんな事一つで悩んでいても仕方がない。今はバスケに集中しないと。
いつか、陽真を超えるような実力を身につけてやる。
「…うまく行くと良いな」
―俺が部活に行こうと決心し始めていた頃、松川がそう呟いた気がしたが、後からこの意味が分かることになるのだった。
朝の通学路、昨日のことを引きずりながらぼんやり歩いていると、後ろから肩を叩かれた。振り向いて見てみると、そこには瀬野の姿があった。
「…はよ。なんからしくない顔してるけど、何かあったの」
「……」
一瞬昨日のことを話そうかどうか迷った。でも、元々瀬野って陽真のこと好きだったし。というか、昨日告白したばかりだったっけ。こんな事を聞かされたらどんな気持ちになるのか、俺には分かる気がしてわざと黙った。
すると、それがいけなかったのか、「事情は知ってんだから正直に言えよ」と、隣に並んだ瀬野がため息混じりに言った。
ってことはつまり、陽真は昨日のこと瀬野に話したってこと?俺は、想像もしていなかった返答に思わず「えっ?」という声が漏れた。
俺は隣で並んで歩く瀬野の目をじっと見つめた。
「それって、どういうこと…?」
「…あのねぇ、俺が全部知ってるみたいな解釈になってんだろうけど、違うから」
「…じゃあ、つまり…?」
「んーとね。昨日の帰り道、俺が「斎藤って陽真のこと好きらしいじゃん」みたいなこと言ったら、すぐ食いついて「え、それってまじ?」って、すごい舞い上がってた。俺が知ってるのはここまで。そんで、陽真のことだからすぐ確認しに行ったのかなって」
…もしかして、俺って結構な勘違いしてない?だって、「それってまじ?」って、俺が陽真のこと好きってことに舞い上がってただけで、告白の返事ではない、ってことだよね?大胆な勘違いで段々と恥ずかしくなってきた。
それなら、本当に両思いってこともあり得るんじゃないのか?
でも昨日、勝手に電話切っちゃったし。自己中だって思われて、本当に嫌われたらどうしよう。そう考えるだけで、一気に気が重たくなった。
校門をくぐったところで、駐車場横の東門方面から登校していた陽真にばったり会ってしまった。俺の気まずさを知らず、瀬野は真っ先に陽真の元へ駆け寄った。
「あ、陽真。おはよー」
「…ああ、はよー」
陽真は、瀬野の後ろにいた俺の姿に気づくなり、軽く睨んだような目つきでこちらを見た。その視線の圧があまりにもすごくて、昨日のこともそうだけど、もう何もかもがトラウマになってしまいそうな気がした。
やっぱり、嫌われちゃったんだ。
そう感じてしまい、俺はたちが悪くなって、立ち話を始めようとしている瀬野達を無視して下駄箱の方へと早歩きした。
「…ちょ、斎藤!?」
後ろから瀬野が俺を呼ぶ声がしたが、それをも無視した。
「…追いかけなくていいから。ほっといてあげなよ」
後ろからそんな声が聞こえた気がした。
俺のことなんか、本当にどうでもいいんだ。本当に俺の事「嫌い」なんだ。もう俺は、陽真のことなんか自分とは関係ない、と自分に言い聞かせながら歩いた。
今朝のこともあり、陽真と全く関わらないまま、あっという間に放課後になりかけ、気づけば帰りの会までもが終わっていた。クラスメイトの男子たちは、普段仲の良い俺らが一緒にいないことを心配してくれた。だけど、どうしても理由までは言えなかったのが少し心残りだった。
これから部活あるんだっけ。行く気がしないけど、12月の県大会のスタメンのためなら頑張ってみてもいいかもしれない。
「斎藤ー、これから部活あるけど行く?陽真も来るって」
なんとなく後ろめたい気持ちでのろのろと帰り支度を始めていると、後ろから松川がやってきた。
「陽真も来る」。その言葉に、嬉しいどころか悲しくて少し寂しいような、そんな気持ちが巡った。
多分今ままでの俺だったら、今日はどんな姿が見られるのかなー、とか、部活中でも頭の中は陽真のことでいっぱいだったのに。同じクラスだから一緒に話すこともたくさんあったし、移動教室のときだっていつも楽しそうにしてくれていた。でも、そんな日常は、もう当分戻ってはこないだろう。
「…じゃあ、俺は行かない」
陽真は嘘つかない。だから俺のことは嫌い。そんなんならもう関わりたくない。ネガティブな気持ちがぐるぐると渦巻く。その反面、「好き」って気持ちにけじめをつけたい。そんな思いもあった。
確かに、嫌われてるかもしれないけど、また今後「好き」っていう感情で陽真を惑わせたくなかった。
「えー、大会間近なのに?スタメン入りたかったんじゃないの?」
スタメン。そうだよ、今は人間関係に惑わされてる場合じゃない。県大会っていう大舞台なんだもん。ここで気を抜くわけにはいかない。
「…やっぱ行く」
こんな事一つで悩んでいても仕方がない。今はバスケに集中しないと。
いつか、陽真を超えるような実力を身につけてやる。
「…うまく行くと良いな」
―俺が部活に行こうと決心し始めていた頃、松川がそう呟いた気がしたが、後からこの意味が分かることになるのだった。
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