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【中2編】第5章「交差する心」
嫉妬(亜紀目線)
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今日は全部活がない水曜日。ついに、「あの日」が来てしまった。俺が告るわけでもないのに、ソワソワしてしまっていた。
この事があったからか、前よりも陽真のことしか考えられなくなった。瀬野達以外の、陽真に絡んでくる男子が余計に鬱陶しくてイライラしてしまうようになった。どうして俺ってアプローチもろくに出来ないんだろう、なんて考えて自分で自分を傷つける事が多くなった。
「斎藤、おはよー」
「…あ、陽真…おはよー」
俺は机に突っ伏していたが、何度も耳にした声が、俺の名前を呼んだ。反射的に顔をあげると、そこには目の前に俺の大好きな人の笑顔があった。どうしてこんな幸せな不意打ちを、朝から受けないといけないんだろうか。
陽真はいつも8時20分、朝読書が始まるチャイムと同時に登校してくる。今日は、本日締切の委員会の仕事をしようと早めに登校していたので、彼の会う事はなかった。
そういえば、後ろの席の瀬野は嫉妬していないだろうか。そう思って後ろを振り向いたが、彼はいなかった。
(あれ、今日告る日じゃなかったっけ?風邪でもひいたのかな)
そうとなれば、今日は俺が陽真と絡もう。もしかしたら、明日から2人が付き合うかもしれない。後悔しないうちにたくさん話そう。
しかし、俺の欲望はあまり満たされなかった。
瀬野の事なんかは忘れて話していたが、彼は給食後にある昼休憩の時に来た。彼曰く、軽い頭痛があったらしく病院に行ってから学校に来たらしい。そしてついに、来てほしくもない現実がやってくる。
不意に、彼が来たことによって思い出されたことがあった。まだ、陽真に「あれ」を伝えていなかったのだ。
流石にまずいと思い、俺は教室の端の窓側にある陽真の席へ行った。
「陽真ー、放課後空いてる?」
「ん?今日部活ないんじゃなかったっけ?」
彼はさっきまで窓の方を向いてうとうとしていたからか、何を言われているのか分からないような態度だった。
「時間あったら放課後残ってて欲しいんだけど、いい?」
「図書室行くの?別に10分程度なら大丈夫だよー」
うなずいた彼の笑顔は、太陽の光に照らされた満開の向日葵ようで眩しく、しばらく見とれてしまっていた。
迎えた放課後、俺は帰りの会が終わると、彼らの顔を見ることなく真っ先にカバンを持って、図書室へ駆け込んだ。行き慣れているこの場所は、まるで俺を宥めるように包み込み、歓迎してくれた。
(告白、上手くいくといいな)
俺なんかが陽真の事を好きとか100年くらい早い話だし、もし上手くいけばさすがの俺だって諦めがつくだろう。
むしゃくしゃしながら俺が何気なく手に取った本は、女子なら1度は読んでそうな王道とも言える学園ラブ。三角関係になりライバルが告白して振られ、自分が告って付き合う。そんな恋愛のまっただ中に俺はいる。恋愛小説なんて、うまく行くものばかりで正直夢でしかない。恋愛一年生の俺にとって、それは生と死をさまよう際にいるのと同じようなものだった。
一つ疑問だったのが、なぜ図書室にはBL小説が置いていないのか、ということ。この学校には多かれ少なかれ、腐女子や腐男子はいるだろうし、彼らだって読みたいに決まってる。まあ、そりゃあ同棲愛なんて理解してもらえないことだって多々ありそうだし、当然かもしれない。
あれこれ悩みながらも、先程の恋愛小説とシリーズで読み進めている短編集を手に取り、カウンターへ行った。
図書室を出た後、怖いものみたさで教室へ行ってみようと思った。
しかし、2年生の使用する廊下は今までにないくらい静まり返っていて、物音の1つも聞こえなかった。どこのドアも鍵がかかって、閉じ込められたかのような孤独感が湧き始めた。
「もしかして二人とも、忘れて帰っちゃった…?」
図書室には15分くらいしかいなかったはずだし、係の仕事があって残っていた人だっていたはず。
ふと一階の下駄箱の方から、楽しそうな声が校舎内に響いて聞こえてきた。その声の主たちは、姿を見なくても分かった。
「え、さっき瀬野が言ってた事ってまじ?」
「俺が嘘言うと思う?あれ本当のことだよ」
ついに、付き合ってしまったんだ。
そう感じ取った瞬間、俺の片目から涙がこぼれた。もう何があっても諦めないといけない。こんな恋なんて、叶うはずもなかったんだ。自分で自分を苦しめながら、閉ざされた教室の前で泣き崩れた。
涙を袖で拭いながら、校門を出た。
瀬野が言ってたことって?「本当のこと」って何?さっきの何気なさそうな会話の一部始終を思い出すと、また涙で視界がぼやけた。
「やっぱり俺って、最初から松川にしとけばよかったのかな…?」
何であの時、誰よりも信用してきた友達を振ってしまったんだろう。こんな事、分かっていたら振ってしまうことなんてなかったはずなのに。
でも、こんなので弱気になっちゃだめなんだ。また次の恋があるだろう。
俺は自分自身にそう言い聞かせつつもう一度涙を拭い、前を向いた。
この事があったからか、前よりも陽真のことしか考えられなくなった。瀬野達以外の、陽真に絡んでくる男子が余計に鬱陶しくてイライラしてしまうようになった。どうして俺ってアプローチもろくに出来ないんだろう、なんて考えて自分で自分を傷つける事が多くなった。
「斎藤、おはよー」
「…あ、陽真…おはよー」
俺は机に突っ伏していたが、何度も耳にした声が、俺の名前を呼んだ。反射的に顔をあげると、そこには目の前に俺の大好きな人の笑顔があった。どうしてこんな幸せな不意打ちを、朝から受けないといけないんだろうか。
陽真はいつも8時20分、朝読書が始まるチャイムと同時に登校してくる。今日は、本日締切の委員会の仕事をしようと早めに登校していたので、彼の会う事はなかった。
そういえば、後ろの席の瀬野は嫉妬していないだろうか。そう思って後ろを振り向いたが、彼はいなかった。
(あれ、今日告る日じゃなかったっけ?風邪でもひいたのかな)
そうとなれば、今日は俺が陽真と絡もう。もしかしたら、明日から2人が付き合うかもしれない。後悔しないうちにたくさん話そう。
しかし、俺の欲望はあまり満たされなかった。
瀬野の事なんかは忘れて話していたが、彼は給食後にある昼休憩の時に来た。彼曰く、軽い頭痛があったらしく病院に行ってから学校に来たらしい。そしてついに、来てほしくもない現実がやってくる。
不意に、彼が来たことによって思い出されたことがあった。まだ、陽真に「あれ」を伝えていなかったのだ。
流石にまずいと思い、俺は教室の端の窓側にある陽真の席へ行った。
「陽真ー、放課後空いてる?」
「ん?今日部活ないんじゃなかったっけ?」
彼はさっきまで窓の方を向いてうとうとしていたからか、何を言われているのか分からないような態度だった。
「時間あったら放課後残ってて欲しいんだけど、いい?」
「図書室行くの?別に10分程度なら大丈夫だよー」
うなずいた彼の笑顔は、太陽の光に照らされた満開の向日葵ようで眩しく、しばらく見とれてしまっていた。
迎えた放課後、俺は帰りの会が終わると、彼らの顔を見ることなく真っ先にカバンを持って、図書室へ駆け込んだ。行き慣れているこの場所は、まるで俺を宥めるように包み込み、歓迎してくれた。
(告白、上手くいくといいな)
俺なんかが陽真の事を好きとか100年くらい早い話だし、もし上手くいけばさすがの俺だって諦めがつくだろう。
むしゃくしゃしながら俺が何気なく手に取った本は、女子なら1度は読んでそうな王道とも言える学園ラブ。三角関係になりライバルが告白して振られ、自分が告って付き合う。そんな恋愛のまっただ中に俺はいる。恋愛小説なんて、うまく行くものばかりで正直夢でしかない。恋愛一年生の俺にとって、それは生と死をさまよう際にいるのと同じようなものだった。
一つ疑問だったのが、なぜ図書室にはBL小説が置いていないのか、ということ。この学校には多かれ少なかれ、腐女子や腐男子はいるだろうし、彼らだって読みたいに決まってる。まあ、そりゃあ同棲愛なんて理解してもらえないことだって多々ありそうだし、当然かもしれない。
あれこれ悩みながらも、先程の恋愛小説とシリーズで読み進めている短編集を手に取り、カウンターへ行った。
図書室を出た後、怖いものみたさで教室へ行ってみようと思った。
しかし、2年生の使用する廊下は今までにないくらい静まり返っていて、物音の1つも聞こえなかった。どこのドアも鍵がかかって、閉じ込められたかのような孤独感が湧き始めた。
「もしかして二人とも、忘れて帰っちゃった…?」
図書室には15分くらいしかいなかったはずだし、係の仕事があって残っていた人だっていたはず。
ふと一階の下駄箱の方から、楽しそうな声が校舎内に響いて聞こえてきた。その声の主たちは、姿を見なくても分かった。
「え、さっき瀬野が言ってた事ってまじ?」
「俺が嘘言うと思う?あれ本当のことだよ」
ついに、付き合ってしまったんだ。
そう感じ取った瞬間、俺の片目から涙がこぼれた。もう何があっても諦めないといけない。こんな恋なんて、叶うはずもなかったんだ。自分で自分を苦しめながら、閉ざされた教室の前で泣き崩れた。
涙を袖で拭いながら、校門を出た。
瀬野が言ってたことって?「本当のこと」って何?さっきの何気なさそうな会話の一部始終を思い出すと、また涙で視界がぼやけた。
「やっぱり俺って、最初から松川にしとけばよかったのかな…?」
何であの時、誰よりも信用してきた友達を振ってしまったんだろう。こんな事、分かっていたら振ってしまうことなんてなかったはずなのに。
でも、こんなので弱気になっちゃだめなんだ。また次の恋があるだろう。
俺は自分自身にそう言い聞かせつつもう一度涙を拭い、前を向いた。
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