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【中2編】第4章「好き、ということ」
気づいた本音(亜紀目線)
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俺は、陽真の事が「好き」なんだ。
この気持ちに気づいたのはついさっき。顔や声は大人びいているのに、どこからか幼気な少年のような無邪気でやんちゃさを感じさせる、あの陽真の笑顔が忘れられない。バスケしてる時も勉強してる時も、一生懸命で負けず嫌いな姿は、人一倍どころか人三倍くらいはするんじゃないかというほど。俺は多分、彼のそういうところに惹かれたのかもしれない。でもまだ「多分」とか「かも」がつくのは何なんだろう。それなら俺は、あとどういうところを好きになったんだろうか。
「…藤、斎藤。ねえ聞いてる?」
頭の中が陽真でいっぱいになり、瀬野の言葉でふと我に返った。彼は心配そうに俺を見た。
周りを見ると、俺らは体育館を出てすぐの信号のところにいた。
「えっと、今何話してたっけ」
「は?陽真のことだけど」
確か、「さっき何であんなこと言ったの」って聞かれて、黙りこくったままだった気がする。何でって言われても、陽真のことが好きなんだから仕方がないことなのに。
でも、さっき瀬野がカミングアウトしてくれたっていうのに、何てこと言ったんだ俺は。これじゃ、自己中にライバル発言してるのと同じだ。
「それで。俺の事応援してくれるんじゃなかったの」
「あれは、その…。陽真のバスケしてるところが「好き」って意味で、恋愛の方とは全く関係ないっていうか…」
「…お前さ、隠しきれてるって思ってんの?正直に言えよ、本当は陽真の事「好き」なんだろ」
えっ、と素っ頓狂な声を上げてしまった。なんだか、心の中をそのものを読まれているような気がして。それに、こんな話をしているのにも関わらず、意外にも彼は優しく言い聞かせるような声音だったから。
「何、図星じゃん。でも俺、誰が相手でも手加減しないから」
瀬野は、はぁ、とため息をついて続けた。
「実は斎藤もゲイだとか、それに同じ人が好きだとか、なかなかないよな。ある意味同じ境遇の人がいて嬉しい」
「そ、そうだね。俺もある意味嬉しい、かな」
俺はしどろもどろになりながらも、言葉を紡いだ。
本当は嬉しくない。だって陽真には俺の事だけを思って欲しいし、なにより他の男なんていらない。この世界が、俺と陽真だけのものだったら良かったのに。そうしたら、こんなに悩まなくて済んだはずなのに。
「あ、瀬野と斎藤じゃん。もしかして俺の事待ってた?」
後ろから陽真の声が聞こえた。振り返るとユニフォームとバッシュが入ったナップザックを背負った陽真がいた。
「待ってたといえば待ってないけど、待ってないといえば待ってた」
「何それ、どっちだよ(笑)」
何か言おうとしたが、瀬野が先陣を切ってしまった。手加減しない、というのはこういう事なのだろうか。
「そういえば、瀬野も来てたんだね」
「そうそう。来ていいよって言ってたから様子見で来た、みたいな感じ?」
「あーね。俺のシュート見た?スリーポイント4回入ったんよねー、凄くない?」
陽真は嬉しさを噛み締めた満面の笑みを浮かべた。同時に一つ疑問が浮かんだ。
え、陽真って瀬野にも誘ってたの…?
俺はそう言い返したかったが、二人の会話になかなか入れず、ただ二人の会話を聞くことしか出来なかった。二人共が楽しそうに話してるのが、こんなにも自分の心を虚しくさせるとは思わなかった。二人の仲が良い事ということは今に始まったことではないのに、どうしても嫉妬してしまう。
「暗くなってきたし、そろそろ帰ろー。斎藤の家遠いし送ろっか?」
かれこれ10分位経った頃、陽真が声をかけてくれた。流石に送ってくれるとはいっても、彼の家と俺の家は同じ小学校区だとはいえ、歩いて1時間程ある。送ってくれたとして今は5時過ぎでここから家までが30分、帰るのはだいたい7時位になってしまうのではないか。
「いいよ、俺の家遠いし。陽真を暗い中帰らせたくないし。あ、瀬野と同じ方面だし、一緒に帰ったら?」
せっかくふたりきりになれるチャンスなのに、何言ってんだろ。瀬野の恋なんて応援したくもないのに。でも遠いから遠慮したいのは事実だ。
「そっか、そうだよな。気をつけて帰れよ」
「うん、ありがとう。じゃあ二人ともまた明日」
俺は楽しそうだった雰囲気の彼らを残して、帰路についた。
早くあの場から立ち去りたかった。好きな人とライバルと俺、なんて最悪な組み合わせだ。明日は多分、嫉妬で限界になって瀬野に体当りしちゃうかもな。これを見た陽真はなんて思うんだろう。
ふとあの言葉を思い出す。
「俺、陽真の事好きなんだ」
この気持ちに気づいたのはついさっき。顔や声は大人びいているのに、どこからか幼気な少年のような無邪気でやんちゃさを感じさせる、あの陽真の笑顔が忘れられない。バスケしてる時も勉強してる時も、一生懸命で負けず嫌いな姿は、人一倍どころか人三倍くらいはするんじゃないかというほど。俺は多分、彼のそういうところに惹かれたのかもしれない。でもまだ「多分」とか「かも」がつくのは何なんだろう。それなら俺は、あとどういうところを好きになったんだろうか。
「…藤、斎藤。ねえ聞いてる?」
頭の中が陽真でいっぱいになり、瀬野の言葉でふと我に返った。彼は心配そうに俺を見た。
周りを見ると、俺らは体育館を出てすぐの信号のところにいた。
「えっと、今何話してたっけ」
「は?陽真のことだけど」
確か、「さっき何であんなこと言ったの」って聞かれて、黙りこくったままだった気がする。何でって言われても、陽真のことが好きなんだから仕方がないことなのに。
でも、さっき瀬野がカミングアウトしてくれたっていうのに、何てこと言ったんだ俺は。これじゃ、自己中にライバル発言してるのと同じだ。
「それで。俺の事応援してくれるんじゃなかったの」
「あれは、その…。陽真のバスケしてるところが「好き」って意味で、恋愛の方とは全く関係ないっていうか…」
「…お前さ、隠しきれてるって思ってんの?正直に言えよ、本当は陽真の事「好き」なんだろ」
えっ、と素っ頓狂な声を上げてしまった。なんだか、心の中をそのものを読まれているような気がして。それに、こんな話をしているのにも関わらず、意外にも彼は優しく言い聞かせるような声音だったから。
「何、図星じゃん。でも俺、誰が相手でも手加減しないから」
瀬野は、はぁ、とため息をついて続けた。
「実は斎藤もゲイだとか、それに同じ人が好きだとか、なかなかないよな。ある意味同じ境遇の人がいて嬉しい」
「そ、そうだね。俺もある意味嬉しい、かな」
俺はしどろもどろになりながらも、言葉を紡いだ。
本当は嬉しくない。だって陽真には俺の事だけを思って欲しいし、なにより他の男なんていらない。この世界が、俺と陽真だけのものだったら良かったのに。そうしたら、こんなに悩まなくて済んだはずなのに。
「あ、瀬野と斎藤じゃん。もしかして俺の事待ってた?」
後ろから陽真の声が聞こえた。振り返るとユニフォームとバッシュが入ったナップザックを背負った陽真がいた。
「待ってたといえば待ってないけど、待ってないといえば待ってた」
「何それ、どっちだよ(笑)」
何か言おうとしたが、瀬野が先陣を切ってしまった。手加減しない、というのはこういう事なのだろうか。
「そういえば、瀬野も来てたんだね」
「そうそう。来ていいよって言ってたから様子見で来た、みたいな感じ?」
「あーね。俺のシュート見た?スリーポイント4回入ったんよねー、凄くない?」
陽真は嬉しさを噛み締めた満面の笑みを浮かべた。同時に一つ疑問が浮かんだ。
え、陽真って瀬野にも誘ってたの…?
俺はそう言い返したかったが、二人の会話になかなか入れず、ただ二人の会話を聞くことしか出来なかった。二人共が楽しそうに話してるのが、こんなにも自分の心を虚しくさせるとは思わなかった。二人の仲が良い事ということは今に始まったことではないのに、どうしても嫉妬してしまう。
「暗くなってきたし、そろそろ帰ろー。斎藤の家遠いし送ろっか?」
かれこれ10分位経った頃、陽真が声をかけてくれた。流石に送ってくれるとはいっても、彼の家と俺の家は同じ小学校区だとはいえ、歩いて1時間程ある。送ってくれたとして今は5時過ぎでここから家までが30分、帰るのはだいたい7時位になってしまうのではないか。
「いいよ、俺の家遠いし。陽真を暗い中帰らせたくないし。あ、瀬野と同じ方面だし、一緒に帰ったら?」
せっかくふたりきりになれるチャンスなのに、何言ってんだろ。瀬野の恋なんて応援したくもないのに。でも遠いから遠慮したいのは事実だ。
「そっか、そうだよな。気をつけて帰れよ」
「うん、ありがとう。じゃあ二人ともまた明日」
俺は楽しそうだった雰囲気の彼らを残して、帰路についた。
早くあの場から立ち去りたかった。好きな人とライバルと俺、なんて最悪な組み合わせだ。明日は多分、嫉妬で限界になって瀬野に体当りしちゃうかもな。これを見た陽真はなんて思うんだろう。
ふとあの言葉を思い出す。
「俺、陽真の事好きなんだ」
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