もう「友達」なんかじゃいられない。

らぉん

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【中2編】第2章「努力」

今日は(陽真目線)

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「松川が部活中に斎藤に告ったらしいよ」
 昨日のあの文章が頭から離れないまま、朝が来てしまった。俺には関係のないことだから気にすることじゃない、と自分に言い聞かせても、余計に気になってきりが無くなってしまった。でも俺は斎藤のことが好きなんだし、誰かに取られるんじゃないかと思うと気にせざるを得ない。
あーあ、俺がはじめから女子だったら良かったのかな。男女だったら、こんなことに悩まされずに済んだかもしれないのに。いや、そうなるものなんだろうか…?

 いつもの通学路を歩いていると、曲がり角から斎藤が出てきたのを見た。あれ、昨日と同じ光景。デジャヴ…?
 俺はそう思いながらも走って斎藤に声をかけた。
「おっはよ、斎藤!」
「!?!?」
 びっくりしたのか、肩が跳ね上がった。猫みたいで、なんか可愛い。
「あのさ、瀬野から聞いたんだけど、松川から告られたって本当なん?」
 さっき考えてたことがふと口に出てしまった。彼だって相当悩んでて、今にも忘れたい思い出かもしれないのに。ほんとにデリカシーないな、俺。
「あー、でも振った」
「もったいないよ、お前が一番信用してる友達だろ?BLになるけどさ、心を許せる相手と付き合った方がいいよ」
「俺もそう思ったんだよね。そうやって考えたら申し訳ないなって」 
 いや、なんで俺人の恋応援してんだ?取られたら嫌だって分かってるはずなのに、言葉の方が早かった。
 可能性、というか迷いはあったんだ。そうやって一つ一つ考えて、慎重に行動してるのって、斎藤らしいな。
「でも俺、もう少しで大会あるから、今恋愛関係のことは考えたくないんだよね」
「そっか。そんなら俺も負けてらんねぇなー」
 思ったよりも真面目な回答だったのが驚いた。小学生のときは嬉しそうに恋バナ聞いてくれてたのに。相変わらずの部活バカ、とまでは言わないでおこう。
「陽真ぁ、今日って部活行くよな~?」
「うっ、そういえばそうだったー!」
「まさか、今日になって「やっぱ行かん」はないよな。俺信じるよ?」
「ないです。行きます。昨日はごめんなさい」
「敬語にならなくてもいいのに。分かれば良いんだって、分かれば」
 あはは、っと俺のことを小馬鹿にしたように笑った。その笑顔が、とても愛おしく見えた。
「まあ、そういうことで今日は部活行くから、よろしく」
「本来それが正しいんですー。てか今「今日は」って言ったよな?明日も絶対来い、大会で恥かきたくないなら」
 斎藤と話してると、心が落ち着く。たまにからかってくれるし、共感もしてくれくれるし。好きになって良かったかも。
「斎藤が行くなら行く!一緒に練習しよー」
「なんでそうなるの…。あ、そっか、陽真は「サボり魔」の汚名返上しないといけないもんなー」
「えーなにそれ、そんなにサボってないし、酷くない~?」
 彼のツッコミが面白すぎて、会話の所々で吹き出してしまう。
 いつかでいいから、斎藤の「恋人」として隣にいてみたい。自分から行動しないといけないのはわかってる。でも、もっと近い距離で、心を通じあわせていたい。いつか、そんな日が来るといいな。


後ろからの気配にはだいたい気づいていた。さっきふと目があった時、俺らを羨ましがっているかのような目で、その奥には、怒りのようなものが込められていた気がした。
でも、どっちに対しての「怒り」なのかは分からなかった。


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