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第二部 炎魔の座
第九十四話 生み落とされた
しおりを挟む「ふん。やっとか」
「ここで、炎魔源が……」
その地点に到着して、フリートとサラがつぶやいた。周囲は早朝の静けさに包まれていて、魔物の気配は感じられない。やはりもうすでに遠くに離れているのか、魔物よりも厄介な師匠がやってくる気配もなかった。
「それで何か分かったか」
フリートがアカと俺に言ってくる。わざわざここまで足を運んだのだ、さっさと何かを見つけろ……と、そう文句を滲ませているんだ。
「そんなすぐに手掛かりが見つかるわけ……」
俺が答えるなか、アカは炎魔源が生まれた場所を一心に見つめていた。
もう何日も前に師匠が巨大な火柱を再現した場所。何百年か何千年も前に炎魔源が天を衝くようにして誕生した場所。
長すぎる年月が経っているためか、そこに火柱があった痕跡はまったく残っていなく、あるのは何本もの木立と地面に生える草だけ。師匠が再現したのは過去の事象だから、その影響が現在に及んでいるわけでもない。
「……なのに、自分が使いたい分だけは、使えるんだからな」
師匠の『時の力』は。反則級に便利な力だなと思う。俺のつぶやきにサラが疑問符を浮かべる。
「何の話ですか?」
「いや、こっちの話だ」
「はあ……?」
彼女に師匠のことを話しても、信じられないかもしれない。サラはダークエルフで人間よりも長命だが、まさかそれを超える不老不死の人間がいるなんて、思いもしないだろう。
草木が生い茂る地面を見つめていたあと、アカは葉群れに覆われた空を見上げる。フリートとサラは周囲を警戒していて、俺はなにか自分でも分からない手掛かりを見つけるために周りに目を配る。
朝日が葉群れからこぼれてくるなか、アカが誰にともなく言葉を紡いだ。
「炎魔源……私の最初の記憶はここから始まりました……私はここへと生み落とされた……」
「え……?」
そばで発せられたその声に、思わず俺は振り返る。フリートとサラも訝しげに彼女へと顔を向けていた。
「生み落とされた? そう言ったのか?」
俺の問いに、アカがこちらに向いた。肯定を示す真面目な顔で。
「はい。私は、炎魔源はここに生み落とされました。空を縦断する大きな軌跡を描きながら」
そこで俺はハッとした。師匠が再現した火柱は過去の状態、つまり現在から過去への回帰だ。火柱は空へと燃え上がっていたのではなく、空から地上へと降り注いでいたことに。
サラがアカへと問う。
「まるで、炎魔源は自然発生したのではなく、人工的に誰かに作られたみたいな言い方だな」
「……みな、忘れられてしまいましたから。あまりにも時が経ち過ぎてしまいました」
「…………、どういう……」
サラがさらに追及しようとしたとき、森の木立の間からしわがれた声が響いてきた。
「しっしっしっ。大当たりじゃな」
「っ⁉」
俺達は身構える。聞き覚えのあるその声は、まさしくエフィルのじいさんのものだ。即座に俺は指輪に魔力を込めて、アカへと手をかざした。
「アカ、戻れ!」
「……待っ……⁉」
わずかに目を見開くアカの足元に瞬時に魔法陣が出現し、その一瞬後には彼女の姿は光の泡へと消えていた。直後、俺達の頭上に光の塊が浮かび上がる。エフィルのシキガミ、以前使っていた転移無効の結界だ。
「しっしっしっ、これはやられたわい。ヨナ以外にも転移魔法が使える者がいるとはの。いや、それは魔法具か」
炎魔源を奪われる危険は回避した。……が、俺達が逃走することまでは難しそうだ。
「サラ! 前みたいにあれを撃ち抜けないか⁉」
俺と同じことを考えていたらしく、言うのと同時にサラは魔力を込めた矢をシキガミへと放っていた。しかしそれはシキガミに命中する直前で、見えない壁に阻まれてしまう。
「しっしっしっ。同じ過ちをワシが繰り返すと思うか? 既に対策は済ませてある」
なにかしらの防壁魔法ということか。奴から逃げようとするなら、それを突破するか結界の範囲から出るか、あるいは奴を倒すか。
「ふむ、しかし厄介じゃの、この近くには他の魔物がいないらしいようじゃ。三対一は厳しいのう」
そう言ってはいるが、全然焦っているようには見えない。奴にとっては脅威ではなく、すぐにでも逆転できる状況ということだ。
そして威風堂々とした態度はフリートも同じだった。フリートは平生と変わらない、悪く言えばどこまでも偉そうな様子でエフィルに言う。
「ふん。グレンは一緒ではないのか。槍使いと脳筋馬鹿がいない以上、貴様一人で我輩に勝てると思うな」
「しっしっしっ。前にも似たような台詞を聞いたのう。魔力だけではワシに勝てなかったくせによく言ったものじゃ」
「様子見という言葉を知らないらしいな」
しめた。数が合わず、グレンもいないのなら、なんとかなるかもしれない。俺は二人に言った。
「フリート! サラ! 力を合わせるぞ! 三人なら……」
「断る。誰が貴様らと協力などするか。我輩の邪魔をするな」
「「っ⁉」」
そう言って、フリートは単身で奴へと突進していく。あのバカ……っ⁉
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