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第二部 炎魔の座
第八十三話 炎魔源を守る召し使い
しおりを挟む「炎魔源はフラフラとさまよっているわけじゃなかった、ってことか」
「それに関してはすみません。私の情報収集不足でした。炎魔が死ぬと同時にその召し使い達も消滅すると思っていたのですが……実際は違っていたようです。おそらく、元となったのが炎魔源だったからでしょう」
あの黒い召し使いは周囲にあった炎魔源の魔力の残滓によって回復し、何度も復活してきた。召し使い達の寿命は炎魔源の魔力とリンクしてるってことになるのか。
「炎魔源を守る召し使いは、あなたが戦った者も含めて三体いました。しかし彼らにも意見の相違があり、それ故にあなたが戦った者は他の二体と途中で離別したようです」
あの漆黒に染まった大地はその際にできたってことか。
「あの真っ黒な奴が炎魔源の魔力を使えていたのは……」
俺の言葉にサラがうなずく。
「離別した際に炎魔源の魔力をいくらか奪ったのでしょう。その後にグレンが使っていた魔力から察するに、おそらく一、二割ほどでしょうが」
あれで一、二割かよ。炎魔源の魔力はあれの五倍以上の強さがあるとか、気が滅入ってくるな。
それに……。
「やっぱりグレンと戦ったんだな」
「ええ。いまこうして五体満足で生きていることが信じられないくらいです。もし彼女がいなければ、どうなっていたか……」
「彼女……?」
誰のことだ?
イラついた様子でフリートが口を挟んでくる。
「さっさと本題を話せ。なんなら奴の元に連れていって、直接奴に話をさせるぞ」
「…………」
サラがフリートを見つめ返すが、俺にはそれ以上の疑問ができていた。
「おい、奴って誰のことだ? サラが言った彼女なのか? そいつはいまここにいるのか?」
サラが俺に目を戻して話の続きを言う。
「順番に説明します。炎魔源を守る残り二体の召し使いのうち、一体はグレンに取り込まれてしまいました。いまのグレンは炎魔源の半分の力を使えることになります」
「半分……⁉ あの真っ黒な奴みたいに、その召し使いもグレンを認めたってことか」
「いえ、認めたわけではなく、グレンがその者を倒して取り込みました。詳細は不明ですが、グレンが使っていた炎魔源の魔力がその者を引きずり込んだように見えました」
つまりその取り込まれた奴の意志は無視したってことか。
「まさか、その最後の一人が、いま言っていた彼女ってことか?」
「はい。彼女はグレンに炎魔源が渡ることに否定的であり、それ故に私達を助けてくれました。いまは気絶していて、他の部屋で安静にしています」
「つまり、そいつが炎魔源の残る半分の力を持っているってわけか……」
無言でサラはうなずいた。それからヨナのほうへと視線を投げる。この先はヨナが説明してくれと言うように。
それを受け取って、今度はヨナが口を開いた。
「……その最後の召し使いは真に炎魔源を持つに相応しい者を見定めているようです……」
「まだフリートもサラも継承してないってことか」
「……そして炎魔源の魔力を探知できるグレンによって、この場所も危険に曝されています。いまはなんとか私の影とトリンの糸で魔力が漏れないように努力していますが、時間の問題でしょう。影と糸の隙間から魔力がわずかに漏れ出ていますから……」
補足するようにフリートが口を挟んでくる。
「ここを移動しようと思っていた矢先に、貴様からの通信が入ったわけだ。タイミングが悪いことこの上ない」
「…………なんか、悪い……」
謝る俺にヨナが言う。
「……シャイナさまが謝る必要はありません……隣の部屋に彼女がいるので、行きましょう……それからここも離れなければ……」
「どうして一緒の部屋にいないんだ?」
「……それは……フリート様がそう仰られたので……」
俺がフリートを見ると、奴は鋭い視線で見返してきた。
「万が一のためだ。貴様がエフィルの操る死体だった場合、来た瞬間に奪われてはたまらないからな」
信じてなかったってことか。まあ仕方ないが。
「だがその軟弱な顔つきはまさに貴様にしかできんからな」
「…………」
なんだそれ。
そうして俺達は隣の部屋へと移動していく。ヨナが先頭に立ってドアを開けると、その部屋のなかは一面真っ赤に染まっていた。
「これは……?」
「なんですか、これ……?」
俺とエイラが疑問の声を出す。続けて俺が、
「部屋の模様にしてはやけに派手だな」
と言うのをフリートが、
「馬鹿なことを言ってないで構えろ。これは……!」
どうやらそういう部屋ではなく普通に異常事態らしい。すぐさま臨戦態勢に入ろうとした俺達だったが、それを前にいたヨナが腕を横に伸ばして制した。
「……いえ、どうやら彼女が起きていたようです……見てください……」
言われて室内をよく確認する。部屋の隅に置かれているベッドに一人の女が上半身を起こしていて、その彼女の前に煌々と燃える赤い火球が浮かんでいた。
部屋のこの異様な赤色は、その火球に照らされたものだったらしい。女は俺達に気付いたようで、こちらに顔を向けてくる。
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