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第百一話 消えた理由
しおりを挟む「なんだありゃ」
その背に文句を言いながら、彼は再びロウへと向き直る。
「あんたは知ってるか? すけこましとかジゴロっての」
「…………」
すけこましについては知っていたが、ジゴロについては知らなかった。だが、すけこましと同時に言ったことや、おやっさんの態度からある程度予想はつく。
「なあ、聞いてんのか?」
「……知りませんよ」
「なんだ、知ら……」
「知りませんからねっ」
「お、おう?」
なぜだかむきになる彼女に、彼は一瞬動揺する。彼女は続けて、まるで照れ隠しでもするように。
「そ、それで、さっきの話の続きを……」
話題を急に戻されたことに少し困惑しながらも、彼は言った。
「いや、続きは特にねえよ。三人目が消えたことにも驚きはしたが、おれには関係ないと思ってそのままにしちまってた。どうせどっか別のところに探しに行ったんだろうなってな。さっきも言ったと思うが、いまのいままで忘れてたくらいだし」
「そう、ですか……」
「つーことで、おれの話は終わりだ。んじゃこのメシを食って、今日は終いにしよう。明日もまた官憲に行かなきゃなんねーし」
「そう、ですね……」
割り箸を割りながら彼が言い、ロウもまたテーブルに置かれていた割り箸を手に取る。彼の前にはラーメン、彼女の前には夜定食が置かれていた。
それから。二人はそれぞれの料理を口に運んでいた。ルタはときどき思い出したように話し掛け、ロウも当たり障りのない受け答えをする。
元パーティーメンバーの失踪について、本心ではどう思っているかは分からないものの、少なくとも表面的には彼は気にしていないように見えた。
また彼女はというと、彼の手前ではもう終わったことだとして話題には出さなかった。しかし心のなかでは、いま直面している通り魔事件と同じように気になってしまっていた。
(どうしてその人達はいなくなったんだろう……?)
夜定食のご飯とおかずを口に運び、彼の話にとりとめもない相槌を打ちながら、心ではそのようなことを考えていた。仮に一人目が本当に資金を持ち逃げたとして、二人目がそれに憤慨したということにしたとしても、三人目が消えることだけが納得いかなかったのだ。
(特に三人目はルタさんのところまで来たのに……)
もし初めから消えるつもりだったのなら、彼のところを訪れる必要はないはずだ。そもそも三人目が消えた理由は明確になっていない。様々な憶測はされたものの、はっきりしたことは不明だった。
(もしかして……これも本当はあの通り魔が関係していたとか……?)
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