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第六十六話 洗いざらい

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 自然と、ルタとロウは壁に掛けられている時計を見上げる。時刻はもうすぐ昼の十二時に差し掛かるころで、廊下や他の部屋からは、

「お腹すいたなー」

 とか、

「さあメシメシー」

 といった声が聞こえてきていた。廊下の向こうには食器類を乗せた配膳車を押している看護師の姿も何人か見えている。
 と、そのとき三人組の室内から聞き取りをしていた官憲達が出てきた。聞き取りは終わったらしく、私服姿の若い男の官憲はルタ達を見つけると軽く会釈して、他の制服姿の官憲とともに廊下を歩いていく。

「どうでした?」

 尋ねた官憲に若い男は首を横に振っている。どうやら情報はほとんど聞き出せなかったらしい。
 彼らと入れ違いに、廊下の向こうから配膳車を押した女性看護師が歩いてくる。昼食の準備をするためだろう。
 看護師の邪魔をしないように、彼女が三人組の部屋に入ってから、ルタとロウもその部屋へと入っていく。

「チッ、どうせならもっと肉を食わせろよな」

 その病室は複数人の患者を収容できる、わりと広めの部屋であったが、なかにいたのは三人組以外には一人だけだった。看護師が配膳していく食事にケチをつけながらも箸を手に持った彼らだったが、ふいにその一人がルタ達に気付いて、

「あっ」

 と声を出す。

「どうした?」

 ルタとケンカした男が仲間を見て、その視線を追ってルタを発見する。と同時に。

「テ、テメエは……ッ⁉」

 会いたくなかったものに不意に出くわしたともいうべき、驚きの顔を浮かべた。持っていた箸を食器の乗る盆の上に放り出して、身構えつつも心持ちルタから距離を取るような格好になる。

「な、何しに来やがった⁉ 何でオレ達の居場所が分かった⁉」

 数日前にケンカでぶちのめされた記憶を思い出したのだろう、ルタはまだなにも言っていないのに、かなり警戒した素振りを見せている。ルタがまたぶちのめしにやってきたと思っているのかもしれない。
 当のルタ本人はというと、三人組の驚きなど気にしていないというように、いつも通りのひょうひょうとした態度で。

「話を聞きに来ただけさ。用件を済ませたらさっさと帰るよ。腹も減ってるし」

 そう言いながら、手近にあった丸椅子を引っ張ってきて、彼らのベッドの前に座る。三つのベッドの前、部屋の中央近くに陣取ったのは、三人の顔と話を均等に見聞きできるようにするためだろう。

「話だと⁉」
「そ。通り魔に刺されたときのこと。官憲に話したことも、話さなかったことも、洗いざらいしゃべってもらうぜ」
「ク……ッ⁉」

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