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第六十話 ボンッ
しおりを挟むさっきの勢いはどこへやら、反省してシュンとしてしまった彼女のことを、ルタは目を丸くして見つめていた。怒ってしまった手前、なんて言おうか困ったようにモジモジしている彼女を見て、ルタは丸くしていた目付きを穏やかで優しいそれに変じていく。
「本当に心配してくれたんだな」
「……ええ、まあ……」
「そっか……ありがとな。いままで誰かにそういうふうにされたことなかったからさ、つい茶化しちまったんだ」
「え……」
ロウはモジモジとうつむけていた顔を上げて彼を見る。
いままで誰にも心配されなかった……それって……?
そんな一抹の疑問を覚える彼女に、ルタはニコリと優しい笑みを見せた。
「ありがとな。本気で心配してくれて」
「…………っ」
その笑顔を見たとき、ロウはまたも顔を赤くしてしまった。今度はボンッという小さな爆発音がしたような気もしたが、おそらく気のせいだろう。
だが彼女のその反応に、びっくりしたのはルタだった。
「え、なに、また怒っちまったのか⁉」
「え、あ、いや、これは違いますっ、そんなんじゃなくてっ」
「いやでもまた顔が真っ赤だぜっ、またメチャクチャ怒ってんだろっ。なんだ⁉ 今度はなにに怒ったんだ⁉ おれ変なこと言ったか⁉」
「言ってませんっ、大丈夫ですっ。これは本当にそんなんじゃなくてっ、ってあたし顔真っ赤なんですかっ⁉」
「おう、真っ赤も真っ赤、真っ赤っかだっ。やっぱり激怒してんだろっ⁉」
「だから違いますっ。これは……っ」
「これは……?」
「…………っ」
なにか言おうとして、しかしロウはなにも言えずにいる。理由は分からない。自分ですら分からないなにかのせいで、それ以上そのことに対して言葉を発せなかった。
「とにかく違いますからっ、ルタさんは悪くありませんからっ、安心してくださいっ」
「お、おう⁉」
とにかく、ロウはこの話題を終わらせたかった。
「それより、ルタさんが狙われているかもってこと、あたしはやっぱりサージさん達に言ったほうがいいと思います。たとえ憶測だとしても、護衛を付けてもらったほうがいいかと」
彼女が話題を変えたので、さっきまでの様子が気にはなったものの、ルタもその話に答える。
「うんにゃ、さっきも言ったが、おっさん達に言う必要はねえよ。理由はさっきの通りで。ま、気持ちはありがたいけどさ」
「でも……」
なおも言おうとする彼女に、ルタは言う。
「いままでのおれの戦い見てただろ、護衛なら必要ねーよ。それでもどうしても心配だってんなら、あんたが護衛するってのはどーよ」
「え……?」
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