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第二十七話 スケルトン

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 敵の姿はいまだ見えず、その能力も判明していない。いや、地面にあった骨を飛ばしたということは、あるいは物体操作系の能力を有している可能性はある。
 もしかしたら本当に、それに触れたものすら操作してしまう能力かもしれない。

(あの一瞬でこの人はそこまで考えて……)

 もしくはいままでの冒険や戦闘などの経験から、直感的にその答えを導いて、行動に移したのかもしれない。いずれにしろ、敵の能力が分からない現段階では、確かに万全を期したほうが良いかもしれないだろう。

「とにかく、これではっきりしたな。この近くに敵がいやがる」
「ですね。問題は、いまだに姿が見えないことですけど……」
「姿が見えないくせに骨を投げるから、『透けるとん』ってか、はっ」

 渇いた笑みをする彼に、彼女も渇いた態度で。

「…………、バカなダジャレはやめてください」
「……バカってこた、ないだろ……」

 そういう状況ではないのに、ルタはわりと本気で落ち込んだ声をつぶやく。彼としてはうまいことを言ったつもりだったのかもしれない。
 しかしロウはそんな様子を無視するように。

「いいから、警戒してください。なにかあったらすぐに動けるように……」

 と、そのときルタは先ほどの骨を視界の端に捉えると、なにかに気付いたように目を驚かせた。すかさずロウへと声をかける。

「おい、あれ見ろよ……」
「敵がいたんですか……⁉」

 彼の視線の先を彼女もたどり、同じように瞳を驚愕させる。そこにはカタカタと小刻みに震える骨と、その少し向こうの暗い空間に浮かぶ頭蓋骨があったからだ。

「あれは……っ⁉」

 少女が声を漏らす。二人と頭蓋骨の距離は二、三メートルほど離れていて、高さとしては二人の胸元から首の辺りくらいの高さだった。
 最初は人間の骨かと思ったが、よく見ると人間の頭蓋骨の形状とは異なる形をしている。

「……ヘルタイガー、のスケルトンバージョンだな」

 ようやく出現した魔物へと少年が身構える。骨だけとなったその魔物は暗闇から全身を現し、また地面に落ちていた骨がそちらへと飛んで、骨の身体の肋骨部分へと接合されていく。
 それと同時に骨だけとなったヘルタイガーが二人に飛びかかっていき。

「「っ⁉」」

 瞬時に二人は後ろへと跳んで、振り下ろされた鋭い爪の一撃を避けた。骨だけとなっているはずなのにその一撃は強力で、石造りの地面に鋭利な爪跡を残し、破片も空中を舞っていく。
 着地した二人は再び身構えながら。

「危ねえ危ねえ」

 ルタはそう声を出しつつも、骨の虎の姿を見据えた。

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