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第六話 なんで
しおりを挟む「なんであたしが待ってなくちゃいけないのよ……」
数分後、そんな愚痴をこぼしつつ、ロウは律儀にも肉のそばでルタが戻ってくるのを待っていた。その間、町の入口を通る人々からは奇異な視線を向けられ、ヒソヒソと話をされていたり、恥ずかしい思いをしながら。
そうして、やっとのことでルタが店から出て、彼女の元へと戻ってくる。ロウを見た彼は少しびっくりしたというように。
「あれ? 本当に見張っててくれたのか?」
「あなたがそう言ったからでしょっ」
「いや断るような口調だったから、てっきり無視してどっかに行ってるもんだと」
「本当はイヤだったんですけどっ、人に見られて恥ずかしかったしっ、でも助けてくれたお礼がまだだったからっ」
「マジメだねい。んじゃ、これで貸し借りはなしってことだな」
「えっ」
不意をつかれたようにロウは口をポカンとする。そんな彼女には構わずに、ルタは肉のそばに向かうと、残っていた肉を切り分けて小袋のなかへと入れていった。
「…………」
その様子をロウは黙ったまま見つめている。なにか話しかけたほうがいい気がするのだが、うまく言葉が見つからない。どこかもどかしい感じ。
とにかくなにか言葉をかけようとロウは小さく口を開いて。
「あの……っ」
言おうとしたとき、不意にルタが彼女に顔を向けた。
「なんだ、あんたまだいたのか? 町に着いたんだから、さっさとギルドにクエスト達成の報告でもしに行ったらどうだ?」
「あのっ、でもっ……」
「それとも助けたこと、まだ気にしてんのか? それならもうチャラでいいって。肉見張っててもらったし」
「そ、それくらいじゃ……っ」
「いいっていいって、気にすんな」
そこで彼は片腕を上げて、うーん、と背伸びをする。残っていた肉を切り分けて、小袋のなかに全て入れ終わったようだった。
「さて、と。そんじゃメシでも食いに行くか。じゃーな」
ルタはロウに背中を向けて、後ろ手を振りながら歩いていく。
「あ、ちょ……」
ロウは声を漏らす。徐々に遠ざかっていく少年の背中。なぜだか、いまここで別れたら、もう二度と会えないような気がした。実際にはそんなことはないだろうに。しかし意味も分からず。
躊躇した。けれどそれはわずかな間で。すぐに意を決して、彼女は一歩を踏み出して、足早に彼に追いつくと、その隣に並んで歩き出した。
「あれ?」
気が付いたルタが彼女に言う。
「なんであんたも来んの?」
「……助けてもらったお礼がまだだからです」
「それならもうチャラでいいって言ったじゃん」
「あなたがよくても、あたしはよくないんです」
「はあ?」
「とにかく、あたしが納得できる形でお礼をさせてもらいますから」
「うっわめんどくさ」
「なんとでも」
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