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blue 8
しおりを挟む⭐︎side-she☆
平日の午前中
わたしと娘と、わたしを殺そうとした犯人という3人で奇妙な朝食をとっていると
「電話、鳴ってるよ」
電話のベルに気づいたうみくんがリビングの外を指差した
「ちょっとだけ、その子を見てて」
「OK」
やや不安を感じながらも、部屋を出て電話に出ると
『ああ、良かった…無事に退院したのね。心配してたのよ』
『お義母さん!?』
アメリカで暮らしている彼のお母さんからだった
『あの子ったら何も教えてくれないから、最近まであなたが怪我をしてたの知らなくって…驚いたわ』
彼に口止めしていたのは他ならぬわたしなんだし、お義母さんが電話してくることは滅多にないから知らなくて当然だった
「ご心配をおかけしてすみません。庭で転んだだけなんですけど運悪く骨折してしまって。それより、先日は子どもたちにプレゼントをありがとうございました」
先週のサラの誕生日に合わせて贈り物を送ってくださったお礼は、手紙ですませていたのだけれど
『早いものね、この前生まれた気がするのにもう3歳になるなんて』
やっぱり電話してお礼を言うべきだったよね
でも
高齢のうちの両親と違って、まだ50代と若くて元看護師でもあるお義母さんには
『それで、怪我の具合はどうなの?まだ痛むんでしょう?』
詳しい話をしているうちに、ほんとうのことがバレてしまいそうな気がして怖かったから
ああ
彼だけじゃなくて、お義母さんにまで隠し事をしなければならないなんて
それもこれも
「電話、誰からだったの?心配症の旦那さん?」
ぜーんぶ、この子のせい!
「君には関係ないでしょ」
「やれやれ、嫌われたもんだね」
それでも
うみくんのことを全然怖いとは思わないのは、わたしを殺そうとした理由があまりにも幼稚なものだったから
簡単に言ってしまえば、彼に対するただの嫉妬なんだもん
大手製薬会社の跡取りとして生まれたうみくんは、幼い頃から何不自由のない生活をしていたようだけど
忙しいご両親にはあまりかまってもらえず、寂しい子ども時代を送ったらしくて
中学生になったころから不良仲間とやんちゃなことばかりして、関係が悪くなる一方だったお父さんが数年前のある日
ボクシングの試合のテレビ中継でチャンピオンになった彼の姿を見ながら、『同じ息子でも大違いだな』とつぶやいているのを偶然耳にしてしまったうみくんは
当時アルバイトをしていた探偵事務所の力を借りて彼のことを調べあげ、父親が結婚前につきあっていた女性との間にできた子だということを知り
自分が父親に愛されないのは彼のせいだと逆恨みしているうちに、子どもの頃から好きだった桜井さんまで彼に気があることに気がついて
「なんか、めちゃくちゃ悔しくてさ。アイツがいちばん大事にしているお姉さんを奪ってやろうって思ったんだ」
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問題は、このことを知ったら傷つく人がたくさんいるってことだった
その中でも特に
彼は自分のせいでわたしが命を奪われかけたなんてことがわかったら、うみくんに何をするかわからない
最悪の事態だって考えられるもの
「…どうしたの?お姉さん」
「えっ?」
食事を終えたサラのお絵描きを眺めながら考え事をしていると、背後から近づいてきたうみくんに声をかけられドキッとした
次の瞬間
「あんまりボクを舐めない方がいいよ」
首筋に鋭い痛みが走って、目の前が真っ暗になってしまった
※次回に続きます
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