44 / 62
blue 5
しおりを挟む⭐︎side-he⭐︎
「あ、あのね…」
退院する日の朝
病室で荷物をまとめていると、彼女が言いにくそうに切り出した
「あの子…退院してからも家に来てくれるって言ってるんだけど」
「あの子?」
「ほらっ、桜井さんが紹介してくれたボディーガードの…」
「ああ、吉澤だっけ?でもなんで」
はっきり言って
桜井には悪いが俺はあの男を信用していない
何度か病室で言葉を交わしたが、本心が全く見えないつかみどころのないタイプだったし
ちょっとした身のこなしから身体能力の高さは見てとれたが、ホストが天職と言っていいくらい女好きだというのも気になった
「えっと、その…あなたがいない時に、わたしがまた襲われないか心配だって」
はあ?
看護師や医師の目がある病院内ならいざ知らず、昼間は彼女と3歳になったばかりの娘しかいない自宅に若い男を入れるなんて冗談じゃねぇ
「俺がいない時はお義父さんに頼むから、あんなヤツに来てもらう必要はねぇよ」
「う、うん…でも」
「なんだよ?」
「ほらっ、うちのお父さんはペンより重い物は持ったことがないって人だから…ちょっと頼りないって言うか」
たしかに
どっちかというと気の強い義母の方が強そうではあるが
「とにかく、俺が留守の間にヤツに近づくのはやめとけ」
そう忠告しておいたにもかかわらず
彼女が退院してから3日目の朝
「おはようございまーす」
「うみくん!?」
彼女が親しげにそう呼ぶ金髪の男が、玄関先で手を振りながら立っていた
「なにしに来たんだ?」
不機嫌さをあえて隠さずに応対した俺のことなど気にも留めていない様子で
「なにって決まってるじゃないですか、お姉さんのボディーガード兼サラちゃんの子守です」
「おいっ、ちょっと待て」
邪気のない笑顔を見せながら、室内に入ろうとした男を慌てて押し戻そうとしたが
「ねぇ、せっかく来てくれたんだから少しだけ居てもらわない?あなたはジムに顔を出さないといけないんでしょう」
彼女にそう言われてしまい頭を抱えた
「それは…」
今朝早く、急な用件でジムから呼び出しの電話があったのはたしかだったからだ
「わかった、じゃあすぐに戻るから…2時間だけ頼めるか?」
「何時間でも大丈夫ですから、安心して行って来てください」
いつの間にか起きて来た娘を抱き上げて男は満足そうに微笑んでいる
「……」
尚も迷っている俺の様子を見かねた彼女が明るい声で提案した
「お父さんにも電話してなるべく早く来てもらうようにするから、ね」
※次回に続きます
応援ありがとうございます!
0
お気に入りに追加
7
1 / 5
この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる