40 / 67
blue 1
しおりを挟む⭐︎side-he⭐︎
彼女に約束した通り、無事に防衛戦に勝利することが出来た日の深夜
「転勤?」
宿泊していた試合会場近くのホテルの部屋をノックする音がして、傷だらけの身体を引きずるようにしてドアを開けると
「夜分遅くに申し訳ありません、人目につきたくなかったものですから…」
帽子を目深に被った女が周囲を気にしながら立っていた
「桜井?」
「おめでとうございます。あんなことがあったのに、さすがですね」
試合の取材に来ていたことは知っていたが、個人的な話をする時間などはなかったため
「そんなことを言いに、わざわざ来たのか?」
あらためて祝いを言いに来たのかと思いきや、予想だにしなかった話をし始めた
「実は、急に系列紙のニューヨーク支社に移動させられることになったんです。しかも来週から…」
は?
「もしかして、今回の事件となんか関係があるのか?」
「はっきりとはわかりませんが、私が社会部や政治部にアレコレ探りを入れているのがバレたらしくて、上司にやんわり釘を刺されたのはたしかです」
桜井は勝手にベッドの上に腰を下ろしたかと思うと
「まぁ栄転には違いないですし、入社時に海外勤務の希望を出していたのは私ですから」
おもむろにスーツのジャケットを脱ぎ始めたのでギョッとした
「でも、やっぱり心残りなんで、抱いてもらえません?餞別代わりに」
「馬鹿なこと言ってないでさっさと帰れ。だいたい、こんな体でそんなことが出来るわけねぇだろう」
「冗談ですってば、もう」
「冗談に聞こえねぇんだよ、馬鹿」
慌ててベッドから立たせて入り口まで引っ張って行くと、面白そうに笑っている
「厄介払いが出来て良かったですね。でも…奥様を狙った犯人がわからないままなんですから、くれぐれも気をつけてくださいね。病院関係者は相変わらず何も教えてくれないんでしょう?もしかしたら彼らも脅されてる可能性がありますし、退院されたらすぐに警察に行かれた方がいいですよ」
「ああ、わかってる」
この時はまだ
今よりももっとつらい未来が待ち構えているなんて、想像すらしていなかった
※次回に続きます
応援ありがとうございます!
0
お気に入りに追加
7
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる