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初めてのキスは
中学3年の秋だった
「アメリカ、って…えっ?」
ずっと女手ひとつで彼を育てていたお義母さんが再婚して、お相手の仕事の都合で海外で暮らすことになって
当然
まだ15歳の彼も一緒に行ってしまうと思ったわたしは、涙が止まらなくなってしまった
「おいっ、なんで泣くんだよ」
「なんでって…」
2年連続で同じクラスになったわたしたちの関係は告白したわけでもされたわけでもなかったけど、ただのクラスメイトとだとは思いたくなかった
「おまえは今、どこにいるんだよ?」
大きなため息をついて額に手を当てながら彼が聞いた
「えっ…と、保健室のベッドの上」
「理由は?」
「体育の授業でバスケットボールが頭に当たって脳しんとうを起こしたから」
放課後の保健室でひとり寂しく休んでいたわたしの様子を、わざわざ見に来てくれたのは嬉しいんだけど
それが、なにか関係あるの?
「だから…おまえみたいに鈍くさいやつを残してアメリカなんかに行けないっつってんだよ、馬鹿」
「!」
「おふくろがさ、高校行ってちゃんと勉強するならひとり暮らししてもいいって言ってくれたんだ」
「それじゃあ?」
「今から受験勉強したって、行ける高校があるかはわからねぇけどな」
今度は嬉しくて泣き出してしまったわたしの頬に、そっと大きな手が添えられて
思わず瞳を閉じた瞬間
まるで壊れやすいガラス細工にでも触れるように、優しく乾いた唇が重ねられた
まぶたの裏が夕焼けよりも紅く染まって心臓が壊れそうなくらいドキドキして
このまま時間が止まって欲しいって、そう願わずにはいられなかった
あの時
わたしを置いて遠くに行けないと言ってくれた彼のことを、ひとり残して旅立つなんてやっぱり絶対にしたくない
ううん
絶対にしちゃいけない…よね
※次回に続きます
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