天使がねたあとで

にあ

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marble 8

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 ⭐︎side -he⭐︎





「わーい、海だぁ」


長いトンネルを抜けると、目の前に現れた真っ青な景色にはしゃいだ声をあげた助手席のハルに


「残念、あれは海じゃなくって湖よ」


後部座席でチャイルドシートのサラをあやしていた彼女が笑った


「えー、じゃあ泳げないの?」


「やぁね、まだ4月なんだから外で泳げるわけないでしょう」


「つまんないの」


去年からスイミングスクールに通い始めたハルは泳ぎたくて仕方ないらしい



そもそも



今回の旅行は建前こそ「家族サービス」だが、彼女を家事から解放してゆっくり休ませてやりたいっていうのが目的のひとつなのだから


「美味しい物食べておっきいお風呂に入るのもきっと楽しいわよ」


そういうことだ


とはいえ、もうひとつの重要かつ邪な目的を遂行する為には子どもたちには逆に疲れてもらう必要があり


自宅から2時間ちょっとのドライブで到着した温泉旅館の客室に荷物を降ろすと


「じゃあ、出かけるぞ」


子どもたちを外に連れ出す準備にかかる


「えっ、今日はゆっくりするんじゃなかったの?」


「少しは遊ばせてやらないと退屈するだろ、おまえはついて来るだけでいいから」


少し疲れている様子の彼女には申し訳なかったが、日が暮れるまで近くの湖でボートに乗ったり散歩をしたりして過ごした


おかげで宿に戻って部屋の露天風呂で汗を流し、運ばれてきた夕食を食べ終わった頃には


「寝ちゃった、ね」


「だな」


ふたりともぐっすりと眠ってしまい、ほっと胸を撫で下ろしたのに


「わたしも疲れちゃたし、そろそろ寝ようか?」


肝心な時に限って空気を読まない彼女の言葉に心の中でため息をつく


こういう天然なところが可愛いと言えば可愛いのだが


「寝る前に、一緒に風呂に入らないか…いや入ろう」


「えっ?」


まわりくどい言い方はやめて、直球で行かなければ伝わらないことは長いつきあいで学習済みだ


「ほら、行くぞ」


「あ、あの…ほんとに?」


たかが風呂に入るくらいで真っ赤になって戸惑っている姿は、本当に二児の母親なんだろうかと疑うレベルで


「ったく」


苦笑いしながら、浴衣姿の彼女の手を取り立ち上がって風呂場に向かった







※次回に続きます






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