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瑠色と寝た男1
ハヤト・20歳*10
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ぐったりと力なくボクにしな垂れかかって来るハヤトの身体を支えながら、
「あー、すごい可愛かった…」
ボクは心の底からそんな感想を零した。
「…ルイさん…、…このままだと、絶対のぼせてしまうと思うんですけど…」
放心状態のハヤトがぼそぼそとそう言う。
「それもそうだね。じゃあ、シャワーで流して、出ようか」
ハヤトはよろよろと風呂から立ち上がり、ボクはそれを支えるようにして続く。
お風呂の栓を抜き、シャワーで綺麗に身体を流してから、備え付けのガウンを羽織ってベッドへ向かう。
「……」
相当疲れたらしく、無言のままでベッドに倒れこむハヤト。ボクは冷蔵庫に寄ってから隣に座った。
「大丈夫? ごめんね?」
「ルイさんが謝る事じゃないです。…気持ちよかったですから…」
「よかったからって全部許してたら身体持たないよ?」
ボクが言うな、って感じなんだけど。でも、ハヤトの『次の人』の事を考えると、忠告せずにいられない。
「…そう、ですね」
ボクからお茶を受け取りながら、ハヤトは力なく笑った。
妙な沈黙が二人の間に流れる。
「…あー、あの、ルイさん…」
沈黙を破ったのはハヤトだった。
「何?」
「…次って…有りますか?」
「それは、また今度ボクと寝たいってこと?」
ハヤトは一瞬おびえたような顔をした。そして、恐々とうなづく。
「良いよ?」
「ほんとですか!」
純粋に喜ぶハヤト。
ボクは少し胸が痛い。
「あのね、ハヤト…。ボク、特定の一人は作らない事にしてるの。例えどんなに相性が良くても、絶対一人の人には決めないって、決めてるんだ。それでもいい?」
「…それって…、セフレってことですか」
「平たく言えばね」
「恋人…作らないんですか?」
「うん。作らない事にしてる」
「どうして…?」
そりゃあ、自分が好きだと思った相手にこんな態度を取られたら、そうやって聞きたくなるのもわかる。
でも。
ここから先は踏み込んできてほしくない領域だ。
「ごめんね。これ以上は…、…言いたくない」
ハヤトはハッとした顔をする。
「僕こそ、ごめんなさい…プライベートな事に口を出してしまって…!」
ボクは、首を振った。
「ううん。ボクがいけないんだよ。…こんなボクに、特別な気持ちを持ってくれているのに、応えてあげられなくてごめんね」
「いえ…、一方的な、僕の片思いですから…」
ハヤトが悲しそうな顔をするので、ボクは思わず、ハヤトを抱きしめた。
「ごめんね」
「謝らないでください。惨めになっちゃいます」
「ハヤトはボクみたいに、誰とでも寝ちゃだめだよ?」
「え?」
「ボクもね、片思いが行き過ぎて、こうなっちゃったから」
自嘲気味に笑うと、今度はハヤトがボクを抱きしめてくれた。
「いろいろ、ありますよね。…ルイさんの片思いが成就したらいいな…」
無理な事だった。でも、そういってくれる人がいるだけで、いい。
「ハヤトの気持ちを利用してるみたいで、なんか…悪い事してるよね、ボク」
「利用しても、いいです。ルイさんなら。ルイさんが…僕とシテも良いなって思った時に、呼び出してください。そしたら、飛んでいくんで…」
抱きしめられたままそんな事を言われる。
「そんなのダメだ。割り切った関係でいられなくなっちゃう」
「…僕はルイさんが好きだから…、良いんですけど…」
背中を抱き返して、
「ボクが言うと説得力ゼロだけど、もっと自分を大事にしなよ。…ボクみたいになっちゃだめだ」
「誰とでも寝たりしません。抱かれるなら、ルイさんがいいから…。…だから、僕の為にも、連絡取らせてください」
食い下がるハヤトにボクが根負けした。でも、こちらから突き付ける条件は厳しいものだと思う。
「恋人にはなれないよ? それに、ボクはハヤト以外とも寝るからね。特別な関係にはならない。それでもいいの?」
「はい。それでも、うれしいです」
ほんのりと頬を染めて頷くハヤト。
ボクは、悪の道に引きずり込んでしまったような気がして、申し訳なくてハヤトの背中をぎゅっと抱きしめた。
「…ハヤト、寝る?」
「あ、はい…。ちょっと疲れたんで…」
「あははっ、そうだよね! ボクが無理させちゃったから!」
「そ……っ、れも、そうですけど…」
ハヤトの表情が固まる。ボクが、ン? と首をかしげると、
「っていうか、さっきお風呂場でシたとき…、ルイさんイッてないですよね!?」
ガバッと起き上がってそう言った。
「うん? ちゃんとイッたよ?」
嘘だ。
「…本当ですか?」
「うん。あれ? 気づかなかった?」
一度まじめな話を挟んでしまったがために気分が落ち着いてしまって、これからもう1ラウンドというのはちょっと、気持ちを乗せるのにはしんどい。
そんなボクのごまかしに誤魔化されてくれたので、その先、それ以上の事は何もなかった。
備え付けのガウンのまま、だだっ広いベッドで二人、くっついて眠った。
翌朝。チェックアウトの前に、結局、ハヤトとは連絡先を交換した。
「他愛のないやり取りで構わないので、メールくださいね。もちろん、お誘いもお待ちしてます」
ボクの連絡先が入ったスマホを大事そうにポケットにしまって、ハヤトはそう言った。
「うん。じゃあ、…気を付けてね」
ボクは、『またね』という言葉は使わない。それを使わない事で、自分の中で次の機会を作らないと決めるような意味もある。
きっと、ボクはハヤトをもう一度誘う事はないだろう。
【斜陽】でもう一度出会って、その時にボクの気持ちがハヤトに傾いていたりしたら、別だけど。
もしかしたら、ハヤトもボクを誘わないかもしれない。
でも、それでいいと思っている。
願わくば、彼の『初めての恋人』がボクの様な人間では有りませんように。
そう願わずにはいられなかった。
―ーーー終わり。
「あー、すごい可愛かった…」
ボクは心の底からそんな感想を零した。
「…ルイさん…、…このままだと、絶対のぼせてしまうと思うんですけど…」
放心状態のハヤトがぼそぼそとそう言う。
「それもそうだね。じゃあ、シャワーで流して、出ようか」
ハヤトはよろよろと風呂から立ち上がり、ボクはそれを支えるようにして続く。
お風呂の栓を抜き、シャワーで綺麗に身体を流してから、備え付けのガウンを羽織ってベッドへ向かう。
「……」
相当疲れたらしく、無言のままでベッドに倒れこむハヤト。ボクは冷蔵庫に寄ってから隣に座った。
「大丈夫? ごめんね?」
「ルイさんが謝る事じゃないです。…気持ちよかったですから…」
「よかったからって全部許してたら身体持たないよ?」
ボクが言うな、って感じなんだけど。でも、ハヤトの『次の人』の事を考えると、忠告せずにいられない。
「…そう、ですね」
ボクからお茶を受け取りながら、ハヤトは力なく笑った。
妙な沈黙が二人の間に流れる。
「…あー、あの、ルイさん…」
沈黙を破ったのはハヤトだった。
「何?」
「…次って…有りますか?」
「それは、また今度ボクと寝たいってこと?」
ハヤトは一瞬おびえたような顔をした。そして、恐々とうなづく。
「良いよ?」
「ほんとですか!」
純粋に喜ぶハヤト。
ボクは少し胸が痛い。
「あのね、ハヤト…。ボク、特定の一人は作らない事にしてるの。例えどんなに相性が良くても、絶対一人の人には決めないって、決めてるんだ。それでもいい?」
「…それって…、セフレってことですか」
「平たく言えばね」
「恋人…作らないんですか?」
「うん。作らない事にしてる」
「どうして…?」
そりゃあ、自分が好きだと思った相手にこんな態度を取られたら、そうやって聞きたくなるのもわかる。
でも。
ここから先は踏み込んできてほしくない領域だ。
「ごめんね。これ以上は…、…言いたくない」
ハヤトはハッとした顔をする。
「僕こそ、ごめんなさい…プライベートな事に口を出してしまって…!」
ボクは、首を振った。
「ううん。ボクがいけないんだよ。…こんなボクに、特別な気持ちを持ってくれているのに、応えてあげられなくてごめんね」
「いえ…、一方的な、僕の片思いですから…」
ハヤトが悲しそうな顔をするので、ボクは思わず、ハヤトを抱きしめた。
「ごめんね」
「謝らないでください。惨めになっちゃいます」
「ハヤトはボクみたいに、誰とでも寝ちゃだめだよ?」
「え?」
「ボクもね、片思いが行き過ぎて、こうなっちゃったから」
自嘲気味に笑うと、今度はハヤトがボクを抱きしめてくれた。
「いろいろ、ありますよね。…ルイさんの片思いが成就したらいいな…」
無理な事だった。でも、そういってくれる人がいるだけで、いい。
「ハヤトの気持ちを利用してるみたいで、なんか…悪い事してるよね、ボク」
「利用しても、いいです。ルイさんなら。ルイさんが…僕とシテも良いなって思った時に、呼び出してください。そしたら、飛んでいくんで…」
抱きしめられたままそんな事を言われる。
「そんなのダメだ。割り切った関係でいられなくなっちゃう」
「…僕はルイさんが好きだから…、良いんですけど…」
背中を抱き返して、
「ボクが言うと説得力ゼロだけど、もっと自分を大事にしなよ。…ボクみたいになっちゃだめだ」
「誰とでも寝たりしません。抱かれるなら、ルイさんがいいから…。…だから、僕の為にも、連絡取らせてください」
食い下がるハヤトにボクが根負けした。でも、こちらから突き付ける条件は厳しいものだと思う。
「恋人にはなれないよ? それに、ボクはハヤト以外とも寝るからね。特別な関係にはならない。それでもいいの?」
「はい。それでも、うれしいです」
ほんのりと頬を染めて頷くハヤト。
ボクは、悪の道に引きずり込んでしまったような気がして、申し訳なくてハヤトの背中をぎゅっと抱きしめた。
「…ハヤト、寝る?」
「あ、はい…。ちょっと疲れたんで…」
「あははっ、そうだよね! ボクが無理させちゃったから!」
「そ……っ、れも、そうですけど…」
ハヤトの表情が固まる。ボクが、ン? と首をかしげると、
「っていうか、さっきお風呂場でシたとき…、ルイさんイッてないですよね!?」
ガバッと起き上がってそう言った。
「うん? ちゃんとイッたよ?」
嘘だ。
「…本当ですか?」
「うん。あれ? 気づかなかった?」
一度まじめな話を挟んでしまったがために気分が落ち着いてしまって、これからもう1ラウンドというのはちょっと、気持ちを乗せるのにはしんどい。
そんなボクのごまかしに誤魔化されてくれたので、その先、それ以上の事は何もなかった。
備え付けのガウンのまま、だだっ広いベッドで二人、くっついて眠った。
翌朝。チェックアウトの前に、結局、ハヤトとは連絡先を交換した。
「他愛のないやり取りで構わないので、メールくださいね。もちろん、お誘いもお待ちしてます」
ボクの連絡先が入ったスマホを大事そうにポケットにしまって、ハヤトはそう言った。
「うん。じゃあ、…気を付けてね」
ボクは、『またね』という言葉は使わない。それを使わない事で、自分の中で次の機会を作らないと決めるような意味もある。
きっと、ボクはハヤトをもう一度誘う事はないだろう。
【斜陽】でもう一度出会って、その時にボクの気持ちがハヤトに傾いていたりしたら、別だけど。
もしかしたら、ハヤトもボクを誘わないかもしれない。
でも、それでいいと思っている。
願わくば、彼の『初めての恋人』がボクの様な人間では有りませんように。
そう願わずにはいられなかった。
―ーーー終わり。
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