スローテンポで愛して

鈴茅ヨウ

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心細いときには、5

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 マンションへ戻ると副島の寝室にそっと入り、メモを回収する。
 寝苦しそうな様子もなく、汗もそれほどかいている様子はないので、寝室をそっと出た。
 買ってきたものを少し食べてから、何となく遠慮がちに、カウチソファに横になった。
 副島の部屋のリビングには、大きなカウチソファが置いてある。
 日和一人が横になったところでびくともしないが、やはり人の家であるという意識が、日和を遠慮がちにした。
 真っ暗にすることが少し不安で、常夜灯だけにして目をつぶってみる。
 副島の様子が気がかりなのと、人の家にいるという緊張感で、いざ眠ろうとするとなかなか寝付けない。
 時刻が深夜一時を回っていることも考えて、余計に眠れなかった。
 そして怒らない眠気と格闘している間に、日和はいつの間にか眠りに落ちていた。

「…!!」
 耳元で目覚ましが鳴り、驚いて目を覚ます。
 勢いよく身体を起こして、周りの景色が違う事に一瞬パニックになると、副島の家だということを思い出して一気に落ち着きを取り戻した。
「そうだ。看病のために泊まったんだ……」
 変な恰好で眠っていたようで身体が痛くなっている気がした。
 身体を伸ばすように動かしてから、副島の寝室へと向かう。
 そっと開けると、まだ副島は眠っているようだった。
 苦しそうな様子もないのでほっとして、日和は副島が着替えたパジャマを洗濯するために、洗面所へ向かう。
 洋服のタグを確認して、洗濯機を回した。
 昨日買ってきたものを食べてから、おかゆを少し温める。
 朝7時を回った頃、日和はまたマスクを着けてから副島を起こしに行くと、副島はベッドの中でスマホを持っていた。
「えっ日和…!?」
 驚いた顔で、日和の方を見ているので、首をかしげながら朝の挨拶をする。
「おはようございます、隆弘さん。調子はどうですか?」
「昨日よりはだいぶいいよ…ていうか、あれ、今日仕事じゃ…」
「あぁ…」
 平日の朝から、日和がくつろいだ格好で現れたことに驚いているようだった。
「えっと…パートナーが体調不良なので有休くださいって、今日と明日、休んじゃいました」
 ははっと照れ笑いする日和を見て、副島はぎゅっと眉を寄せる。
「泣いちゃうじゃん、こんなの」
 まるで子供が泣き出す瞬間のようだと思ったその表情で、副島は顔を覆った。
「えっえっ、なんで泣くんですか…」
「泣くでしょ!? だって…、こんな、ただの風邪でも弱ってる時に、こんなに優しくされてさ…? 愛されてるなって、喜んじゃうじゃん、泣くよ?」
 日和はそっとベッドに乗り上げると、副島をぎゅっと抱きしめる。
「愛してますよ。恋人のために有休使わないで、いつ使うんです? それにうちの会社、社員を大事にしてくれるんで、部長クラスでも簡単に有休貰えちゃうんです。だから、課長の俺だって簡単に有休貰っちゃいますからね」
「泣いちゃうってぇ…」
「うれし泣きなら、良いです。隆弘さんいつも完璧にしててカッコイイから、たまにはこういう瞬間も必要です」
 日和はぎゅうぎゅうに副島を抱きしめて、副島はされるがままになりながら、涙をぬぐった。
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