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約束の三ヶ月 2
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予約を取ってあるというホテルのレストランは、土曜ということもあり、カップルで賑わっていた。
日和はただただ緊張していたのだが、副島がコースメニューで予約を入れてくれていたおかげで、何を食べたらいいのか迷う事もなかった。
飲み物も日和の好みが把握されているからか違和感を覚えるもなく、食事はおいしかったし、デザートもすっかり平らげてしまえた。
日和はタイミングを逃して、プレゼントのネクタイを渡せずにいた。
「…よかったらさ…、ちょっと飲まない?」
「え?」
「ここのホテル、展望ラウンジがあるんだ。夜景がきれいなんだよ」
最初にこのホテルに足を踏み入れた時にも思ったけれど、副島はこのホテルに何度も来たことがあるのかもしれない。
ホストをしていた時に、お客さんを連れてきたのか、もしくは、これまでの彼女たちか。
日和はそれを考えて、胸がチリッと痛む。
「夜景ですか…、良いですね」
「じゃあ、行こうか」
エレベーターで上層階へと上がっていく。ガラス張りのエレベーターは、既にベイエリアの夜景を写し出していた。
「…隆弘さんは…」
良く来るんですか? と言いかけたところで、扉が開いた。
「あ、着いたよ」
「はい」
飲み込んだ言葉はそのまま、飲んでしまった方が良いかもしれないと日和は思った。
展望ラウンジは、副島の店とはまた違った落ち着きのある空間で店内を向いたカウンターの他に、ボックス席と、窓際に夜景を一望できるカウンター席があった。
週末の夜ともなると、さすがに窓際のカウンターはいっぱいだった。
「予約がね、出来ないんだ、ここ」
「へぇ…、だとすると、なかなか大変ですね」
2人はバーテンダーのいる方のカウンター席に座った。
「僕はジントニックで。日和はどうする?」
「あ…、俺は…シャンディガフを…」
バーテンダーはにこりと微笑みながら、かしこまりました、とカクテルを作り始めた。
「あ、あの、隆弘さん…これ、渡すタイミング逃しちゃって…」
日和はやっと、副島にネクタイを渡した。
「ずっと持ってるから、なんだろうと思ってたんだよ~。やっぱり、僕にだったんだね」
「はい…、お誕生日おめでとうございます」
日和がそう言うと、副島の顔がぱぁっと輝いた。
「…! わあ、嬉しい! 僕の誕生日覚えててくれたんだね! 開けていい?」
「はい、もちろんです」
副島の為に選んだネクタイは、紺から青を経て水色へグラデーションして、ネクタイの先に波打ち際がデザインされたものだ。
「素敵だね、とても。ありがとう…」
「喜んで頂けて…俺も嬉しいです」
子供のようにはしゃぐ副島の様子に、目を細める日和。
「大事にするね」
そう言って、副島が丁寧にネクタイをしまい直したところで、2人の前にカクテルが届いた。
日和はただただ緊張していたのだが、副島がコースメニューで予約を入れてくれていたおかげで、何を食べたらいいのか迷う事もなかった。
飲み物も日和の好みが把握されているからか違和感を覚えるもなく、食事はおいしかったし、デザートもすっかり平らげてしまえた。
日和はタイミングを逃して、プレゼントのネクタイを渡せずにいた。
「…よかったらさ…、ちょっと飲まない?」
「え?」
「ここのホテル、展望ラウンジがあるんだ。夜景がきれいなんだよ」
最初にこのホテルに足を踏み入れた時にも思ったけれど、副島はこのホテルに何度も来たことがあるのかもしれない。
ホストをしていた時に、お客さんを連れてきたのか、もしくは、これまでの彼女たちか。
日和はそれを考えて、胸がチリッと痛む。
「夜景ですか…、良いですね」
「じゃあ、行こうか」
エレベーターで上層階へと上がっていく。ガラス張りのエレベーターは、既にベイエリアの夜景を写し出していた。
「…隆弘さんは…」
良く来るんですか? と言いかけたところで、扉が開いた。
「あ、着いたよ」
「はい」
飲み込んだ言葉はそのまま、飲んでしまった方が良いかもしれないと日和は思った。
展望ラウンジは、副島の店とはまた違った落ち着きのある空間で店内を向いたカウンターの他に、ボックス席と、窓際に夜景を一望できるカウンター席があった。
週末の夜ともなると、さすがに窓際のカウンターはいっぱいだった。
「予約がね、出来ないんだ、ここ」
「へぇ…、だとすると、なかなか大変ですね」
2人はバーテンダーのいる方のカウンター席に座った。
「僕はジントニックで。日和はどうする?」
「あ…、俺は…シャンディガフを…」
バーテンダーはにこりと微笑みながら、かしこまりました、とカクテルを作り始めた。
「あ、あの、隆弘さん…これ、渡すタイミング逃しちゃって…」
日和はやっと、副島にネクタイを渡した。
「ずっと持ってるから、なんだろうと思ってたんだよ~。やっぱり、僕にだったんだね」
「はい…、お誕生日おめでとうございます」
日和がそう言うと、副島の顔がぱぁっと輝いた。
「…! わあ、嬉しい! 僕の誕生日覚えててくれたんだね! 開けていい?」
「はい、もちろんです」
副島の為に選んだネクタイは、紺から青を経て水色へグラデーションして、ネクタイの先に波打ち際がデザインされたものだ。
「素敵だね、とても。ありがとう…」
「喜んで頂けて…俺も嬉しいです」
子供のようにはしゃぐ副島の様子に、目を細める日和。
「大事にするね」
そう言って、副島が丁寧にネクタイをしまい直したところで、2人の前にカクテルが届いた。
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