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世界は何も変わっていないのに2
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ミスは続くものだから、と日和は気を引き締めて午後の仕事に挑んだ。
そのおかげか午後は特に大きなミスをすることもなく何とか終えられたが、就業間際に斎藤から午前中のミスについて改めてフォローを入れられて、日和は申し訳ない気持ちになった。
その夜、副島からメールが届いた。
『こんばんわ。来週の日曜日にまたデートしませんか? 予定が入っていたら、全然構わないので断ってね』
という副島のメールに日和は、
『先約は何もないので、デートしましょう。宜しくお願いします』
と返した。
すると、しばらくしてから、
『良かった! 早く会いたいよ~』
と短いメールが返ってくる。きっと副島はいま仕事中だ。
胸の中が温かくなるのを感じながら、日和は、
『金曜に、お店に行きます。お仕事、頑張ってくださいね。おやすみなさい』
とメールを返して、ベッドに入った。
その夜、日和は『これは夢だ』とすぐわかる夢を見た。
その夢には、副島と副島の元彼女、自分の元彼女が出てきたからだ。
副島は、日和の呼び掛けに穏やかだけれど困ったような表情を浮かべた。
どうして副島は何も言ってくれないのだろうかと思った。
日和はまた、副島を呼んだ。
副島は視線を逸らして、気まずそうにしながら、元彼女の肩を抱いてどこかへ行ってしまった。
『思った通りじゃない?』
これは、日和の元彼女の声だ。
日和は振り返る。
『あなた、あの時と何か変わった? きっと私の時と同じ事になるわ』
夢の中でくらい、夢を見させてくれてもいいだろう、と日和は思った。
ぱちっと目が開く。
「…どうして…、夢の中でまで…自分がつまらない男だということを忘れさせてもらえないんだろうな…」
日和は布団をかぶったけれど、今眠ったら夢の続きを見てしまいそうで、眠りたくなかった。
スマホを手に取り、時計を見る。時間は、0時をすこし回ったところだった。
メールを開いて、寝る前に届いた副島からのメールを開く。
文字をなぞるように読んで、ふっとため息をついた。
「早く会いたい、って言ってくれるの…本心なのかな…」
リップサービスしているだけなんじゃないか、と思い、けれど日和にリップサービスをして副島の得になりそうなことが見当たらない。
「…あんな夢見て、こんな風に思って…三ヶ月後の事考えるとちょっと怖いな…」
日和はメールを閉じた。
考えても仕方がない、と切り替えて、日和は副島とのこの先の事を考えることを止めた。
幸い、睡魔は日和をあっという間に眠りの世界へと連れ戻してくれた。
そのおかげか午後は特に大きなミスをすることもなく何とか終えられたが、就業間際に斎藤から午前中のミスについて改めてフォローを入れられて、日和は申し訳ない気持ちになった。
その夜、副島からメールが届いた。
『こんばんわ。来週の日曜日にまたデートしませんか? 予定が入っていたら、全然構わないので断ってね』
という副島のメールに日和は、
『先約は何もないので、デートしましょう。宜しくお願いします』
と返した。
すると、しばらくしてから、
『良かった! 早く会いたいよ~』
と短いメールが返ってくる。きっと副島はいま仕事中だ。
胸の中が温かくなるのを感じながら、日和は、
『金曜に、お店に行きます。お仕事、頑張ってくださいね。おやすみなさい』
とメールを返して、ベッドに入った。
その夜、日和は『これは夢だ』とすぐわかる夢を見た。
その夢には、副島と副島の元彼女、自分の元彼女が出てきたからだ。
副島は、日和の呼び掛けに穏やかだけれど困ったような表情を浮かべた。
どうして副島は何も言ってくれないのだろうかと思った。
日和はまた、副島を呼んだ。
副島は視線を逸らして、気まずそうにしながら、元彼女の肩を抱いてどこかへ行ってしまった。
『思った通りじゃない?』
これは、日和の元彼女の声だ。
日和は振り返る。
『あなた、あの時と何か変わった? きっと私の時と同じ事になるわ』
夢の中でくらい、夢を見させてくれてもいいだろう、と日和は思った。
ぱちっと目が開く。
「…どうして…、夢の中でまで…自分がつまらない男だということを忘れさせてもらえないんだろうな…」
日和は布団をかぶったけれど、今眠ったら夢の続きを見てしまいそうで、眠りたくなかった。
スマホを手に取り、時計を見る。時間は、0時をすこし回ったところだった。
メールを開いて、寝る前に届いた副島からのメールを開く。
文字をなぞるように読んで、ふっとため息をついた。
「早く会いたい、って言ってくれるの…本心なのかな…」
リップサービスしているだけなんじゃないか、と思い、けれど日和にリップサービスをして副島の得になりそうなことが見当たらない。
「…あんな夢見て、こんな風に思って…三ヶ月後の事考えるとちょっと怖いな…」
日和はメールを閉じた。
考えても仕方がない、と切り替えて、日和は副島とのこの先の事を考えることを止めた。
幸い、睡魔は日和をあっという間に眠りの世界へと連れ戻してくれた。
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