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初デート!9
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「隆弘さんは、それで良いんですか?」
やっとそれだけ聞くと、副島はふふっと楽しそうに笑う。
「まぁね」
今度は、悪戯っぽく笑った。
「日和が僕を好きになってくれるようにしなくちゃならないんだから、頑張るよね」
「…百戦錬磨の隆弘さんなら、余裕だと思ってました」
「残念ながら百戦錬磨ではないけど…、うーん、日和は僕に落とされてくれるかい?」
「ここで返事出来たら、三ヶ月のお試し期間の意味無いですよね…?」
「あはは! それもそうだね!」
副島は楽しそうに笑い、それにつられて日和も笑うと、日和はほんのりと胸が温かくなるように感じた。
日和と裏腹に、副島は、
「…さて、もうすぐ家についてしまうね…」
と、少し悲しそうに呟いた。
気が付けば、車は日和の家の近くまで来てしまっていた。
「名残惜しいなぁ、日和と過ごす時間が終わってしまうなんて…」
さらりとそういう言葉を口に出せるというのは副島のしていた仕事の所為なのだろうか、と日和は思った。
マンションの前で、車が止まる。
「あの、今日は本当にありがとうございました。…楽しかったです」
「うん。僕も楽しかった。こちらこそありがとう」
少し古びたマンションの前に停められた高級外車は、なんだかこの場に似つかわしくないような気がして、日和はそれが自分と副島に見えてしまう。
「じゃあ…、また。店でも待ってるし、またデートしてよ」
「はい。また…週末にお店行きますね。…おやすみなさい」
日和は車を出ると運転席側へ回り、副島に頭を下げた。
副島はひらっと片手を振って、帰っていった。
「…すごい人だな…」
車を見送りながら、日和は見えもしないのに、何となく右手をふらふらと車に振ってみた。
先の角を曲がった車のライトが見えなくなってから、日和は部屋に帰った。
部屋に帰っても上着を脱いで鞄を置くくらいしか行動を起こせず、座ったままで少しぼんやりする。
お試し期間に全力で落とす、なんて言われたけれど、毎回毎回こうなら、どうだ。
元ホストの本気は恐ろしい。日和はそんなことを思った。
親しくなり始めて、好意はあった。でもそれは恋愛とは違うものだったはずだ。
けれど、どうだろう。
「…なんか…」
顔が近づいてキスされるかもとドギマギしたりした時点で、もう白旗が上がっているような気がしてならない。
「…慣れない扱いされて…、動揺しているだけだよ、うん」
ド定番の湾岸線ドライブデートなんて、夜景ながめるなんて、帰るのが名残惜しいだなんて、一昔前のドラマみたいな事を、経験したから戸惑っているだけだ。
日和は必死に、自分にそういい聞かせる。
でも、それだけなら、どうしてこんなに胸がドキドキするのか。
本当は、自分の気持ちがどうなっているかなんて、もう解っている。
それでも日和は『3ヶ月だけの期間限定の恋人なんだから』と、何度も何度も繰り返した。
それを繰り返す度に胸が痛くて、日和は左胸のシャツを握りしめてうずくまった。
やっとそれだけ聞くと、副島はふふっと楽しそうに笑う。
「まぁね」
今度は、悪戯っぽく笑った。
「日和が僕を好きになってくれるようにしなくちゃならないんだから、頑張るよね」
「…百戦錬磨の隆弘さんなら、余裕だと思ってました」
「残念ながら百戦錬磨ではないけど…、うーん、日和は僕に落とされてくれるかい?」
「ここで返事出来たら、三ヶ月のお試し期間の意味無いですよね…?」
「あはは! それもそうだね!」
副島は楽しそうに笑い、それにつられて日和も笑うと、日和はほんのりと胸が温かくなるように感じた。
日和と裏腹に、副島は、
「…さて、もうすぐ家についてしまうね…」
と、少し悲しそうに呟いた。
気が付けば、車は日和の家の近くまで来てしまっていた。
「名残惜しいなぁ、日和と過ごす時間が終わってしまうなんて…」
さらりとそういう言葉を口に出せるというのは副島のしていた仕事の所為なのだろうか、と日和は思った。
マンションの前で、車が止まる。
「あの、今日は本当にありがとうございました。…楽しかったです」
「うん。僕も楽しかった。こちらこそありがとう」
少し古びたマンションの前に停められた高級外車は、なんだかこの場に似つかわしくないような気がして、日和はそれが自分と副島に見えてしまう。
「じゃあ…、また。店でも待ってるし、またデートしてよ」
「はい。また…週末にお店行きますね。…おやすみなさい」
日和は車を出ると運転席側へ回り、副島に頭を下げた。
副島はひらっと片手を振って、帰っていった。
「…すごい人だな…」
車を見送りながら、日和は見えもしないのに、何となく右手をふらふらと車に振ってみた。
先の角を曲がった車のライトが見えなくなってから、日和は部屋に帰った。
部屋に帰っても上着を脱いで鞄を置くくらいしか行動を起こせず、座ったままで少しぼんやりする。
お試し期間に全力で落とす、なんて言われたけれど、毎回毎回こうなら、どうだ。
元ホストの本気は恐ろしい。日和はそんなことを思った。
親しくなり始めて、好意はあった。でもそれは恋愛とは違うものだったはずだ。
けれど、どうだろう。
「…なんか…」
顔が近づいてキスされるかもとドギマギしたりした時点で、もう白旗が上がっているような気がしてならない。
「…慣れない扱いされて…、動揺しているだけだよ、うん」
ド定番の湾岸線ドライブデートなんて、夜景ながめるなんて、帰るのが名残惜しいだなんて、一昔前のドラマみたいな事を、経験したから戸惑っているだけだ。
日和は必死に、自分にそういい聞かせる。
でも、それだけなら、どうしてこんなに胸がドキドキするのか。
本当は、自分の気持ちがどうなっているかなんて、もう解っている。
それでも日和は『3ヶ月だけの期間限定の恋人なんだから』と、何度も何度も繰り返した。
それを繰り返す度に胸が痛くて、日和は左胸のシャツを握りしめてうずくまった。
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