スローテンポで愛して

木崎 ヨウ

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初デート!8

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「…っ、隆弘さん…」
「ごめんね。ちょっとだけ」
 日和はどうして良いのか解らず、誰かに見られたらとか、そんなような事が頭をよぎり、副島の胸に顔を隠すように俯いた。
「…驚いたよね」
「はい…」
「嫌?」
「いやでは…、ないです」
「良かった」
 ぎゅっと、抱きしめられた腕に力が入る。日和は身の置き場が無くてただ俯いたままだ。
「…好きだよ、日和。大好きだよ」
 ハイテノールの優しい声が耳元で響く。その声が特別なように聞こえて、日和は身を縮めた。
 とても近くで、副島が深呼吸をしたのを感じる。
「さて」
 ゆっくりと、日和の身体を抱きすくめていた腕が解かれて、少し距離を取られた。
「…そろそろ…帰ろっか」
 微笑んだ副島の顏は、何か少し寂しそうに見えた。
「…そうですね…?」
 その様子に首を傾げた日和に、副島は顔を覆って、
「日和、その顔ダメだよ。そんな可愛い表情されたら、キスしたくなっちゃう」
 そう言った。
「…っ!」
 日和はついさっき、キスされるんじゃないかと思っていた恥ずかしさを思い出して、カッと熱くなる。
「さて、帰ろう。送っていくから」
 促されて、日和は助手席に乗り込む。副島は車のエンジンを掛けて、まるで気持ちを落ち着ける様に深呼吸してからぎゅっとハンドルを握った。
 ゆっくりと滑り出した車は、あっという間に山を下りていく。
「さっきみたいなのって…がつがつしてるって思う?」
「思わないですよ、大丈夫です」
「日和のコトになると、全然余裕なくて、かっこ悪いなあって思うんだけどね」
「そんな事ないですよ」
 自分に対して、余裕を失くしてしまうと言ってくれる副島の言葉を、日和は嬉しいと思っている。
「そう?」
「はい。…逆に俺…、対応とかそういうのを失敗して…隆弘さんの気持ちを…こう、弄ぶような事になってないかな…って不安になります」
 車が心地よく振動するのに任せて、日和は言葉を考えながら発した。
「日和に弄ばれるならそれはそれで…」
「何でちょっと嬉しそうなんですか」
 日和が思わず笑うと、副島は日和を促すように、柔らかく相槌を打つだけだ。
「…隆弘さんが俺を好きって言ってくれて色々してくれているのに、俺の方は何もできてないなって思って…、それが申し訳ないなって思ってるんです」
 赤信号で車が停まる。
「そんな風に感じてくれているだけで嬉しいよ。僕の気持ちがちゃんと伝わっているって事でしょ?」
 副島が日和の方をちらりと見る。
「それだけで、幸せだよ」
 本当に嬉しそうに微笑まれて、日和は言葉が出ないほど、ドキッとした。
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