スローテンポで愛して

鈴茅ヨウ

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初デート!1

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 日曜日の朝、日和はいつもと同じ時間に目が覚めた。
 結局デートはノープランのままだ。
 ショッピングモールに行くことしか決めていない。
 もしかしたら、副島が何かプランを考えてきてくれるかもしれないけれど、毎回任せてばかりではダメだろうと思う。
 パジャマのままで顔を洗い、歯を磨いて、いつもの様に天気予報を確認しながら朝ご飯を食べる。
 日向に見立ててもらった服を並べる。
 あの後、日向に聞いて、今着ているコートの類はどう合わせてもかまわないと言われたので、ネイビーのロングTシャツにジーンズ、それから黒のパーカーと、黒のモッズコートを選んだ。
 それに袖を通しながら、これから副島とデートするんだと意識したら急に恥ずかしくてたまらなくなってしまった。
 美容室で教わった通りに、ジェルで髪の毛を流しつつ、変じゃないかと鏡で頻りに確認する自分が、更に気恥ずかしさを際立たせた。
 何だかんだで、副島を意識しているのだと思うと、胸の辺りがむずむずする。
 丁度それは、思春期辺りで異性をはじめて意識した時の感覚のようで、三十三にもなって…と、日和は少し、自分に呆れた。
 何度、鏡で確かめてもそれまでオシャレの経験が無い自分には正解が解らないので、美容師にセットしてもらった時のそれに近い所までこられたので良しとして、家を出る事にした。
 今日は、副島を待たせたくなかった。
 待ち合わせの、ショッピングモールの最寄り駅に到着すると、まだ副島は到着していなかった。
「…よかった」
 ホッとしつつ、改札が見やすい所に寄り掛かって立つ。
 結局、デートプランを考えられなかったので、この時間に何か調べよう。
 そう思ってスマホを取り出した。
 映画館も併設されているショッピングモールなので、映画でもどうかと、上演スケジュールを眺める。
 上演中の作品に、興味を惹かれる物が何もない。
 テレビをほとんど見ない日和に、映画は敷居が高すぎた。
 どうしたものかと頭を抱えてしまいそうな日和の目の前の改札が、人でごった返す。
 電車が着いたらしい。
 待ち合わせまで大分時間があるから、副島はまた来ないと思って、スマホに視線を戻した。
「ごめん、待った?」
 聞きなれた、甘いハイテノールの声が、降ってきた。
「あっ、いえ…」
 俺も今来たところです、という言葉は咄嗟に出なかった。
 副島が、いつも通りの茶色い髪をセットして、ダークグレーのチェスターコートにネイビーのシャツ、白のデニムパンツと黒のスニーカーという出で立ちで現れたからだ。
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