スローテンポで愛して

木崎 ヨウ

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変わった事は一瞬で2

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 日和はもう一つ、変化した事が有った。
 タバコだ。
 今まで吸っていたタバコが、とうとう500円を超えた為、銘柄を変えたのだ。
 そこまで吸っている本数が多いわけではないので止めても良かったのだが、何となく口寂しい気持ちになるので、別の銘柄で近しい味の物に変えた。
 今までと少し違う味のタバコを吸いながら、喫煙室の天井を見上げる。
 同僚に喫煙者が少ないため、追われて来ることはないと思っていたが、二人ほど喫煙者が居たようで、喫煙室へやって来た。
 また何か聞かれるかと思ったが、一人が、
「去年の夏、三上さん、夏休み明けに日焼けしてきたじゃないですか。あの時以来の衝撃ですよ」
 と笑いながら言った。
 それにつられるように、もう一人が、
「ほんとに、びっくりしました。なんか心境の変化があったんじゃないかって、みんな興味出ちゃったんですよ」
 出ちゃったんですよ、何てまるで日和が悪いみたいなと言い方だなと思った。
「それで弟さんがホストだなんて聞いたら、歯止め聞かなくなっちゃって」
「根掘り葉掘り聞いちゃってすみません、課長」
「いや…まあ、……まあ、うん、いいよ」
 謝られてしまっては逆に居心地が悪い。曖昧な感じでやり過ごして、タバコを吸い終わり、部署へ戻る事にした。
 やめておけばよかったか、と日和は思った。
 この年になって、急に髪を染めてみたりして、はしゃいでいる事が急に恥ずかしくなった。
 副島と付き合えるのだって、三カ月だけかもしれないのに、これでまた、髪型や髪の色をもとに戻したりしたら、その時もこうやって根掘り葉掘り色々聞かれることになるのかもしれない。
 しかし、やってしまったものは、どうにもできない。けれど、こんなに詮索されるならしなければ良かったとじわじわと後悔してしまった。
 これでは、午後の仕事に身が入らないかもしれないと不安に思った日和だったが、そんなことはなかった。
 仕事の時にはきちんと頭が切り替わる自分の仕事脳に、呆れ半分の日和だったが、とりあえずミスにつながるような、気の散り方をしなくてよかったと思った。
 日曜日に染めた髪は、木曜日辺りにはすでに違和感もなくなり、鏡の自分に驚かされることも無くなったし、他の部署の人に驚かれる回数も格段に減っていった。
 変化というのは、割りとすぐに受け入れられるものなのだな、と日和は思った。
 毎週、金曜日に訪れていた副島の店に行くのを悩んでいた日和だったのだが、せっかくだから行ってみようと考え直した。
 副島の反応が悪かったら、出来るものなら日曜までに髪を染め直そうと思った。
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