スローテンポで愛して

木崎 ヨウ

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助けて、日向!6

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 日和は、美容室も苦手だった。
 友達が美容室で髪を切って貰うような年頃になっても、親がそれを許さなかった。
 父親に「勉強もろくにできないくせに色気付いて」とか、「身なりを着飾る暇が有ったら、一冊でも参考書を解け」とか、そういうような言葉を言われるのが嫌で、自分で切るようになった。
 就職の為に髪を整えたのは、父が通っている理髪店だった。
 それからはなんとなく、理髪店には通えるようになり、いまやただカットだけをしてくれる店が出来たものだから、そこにばかり通っている。
 日向は父に反抗して、高校生の頃に普通に美容室に行く様になっていたからか、慣れた様子だ。
「会社勤めだから、あんまり明るすぎない感じの茶色にしてもらって~、髪はあんまり短くし過ぎないで~、あと自分で朝セットできるような感じに整えて貰って~」
 抽象的な事を言いながら、日向が指さしているのは雑誌のあるページで、そこには同年代の男性アイドルグループが写っていて、日和は思わず眉を寄せた。
「日向…、なんでアイドルの写真見てるんだ?」
「イメージを掴みやすいようにね、こういう髪型にして~っていう」
「いや、似合わないだろう、俺には…」
「大丈夫大丈夫、プロの手を信じて!」
「…仕事の時に注意されるような事にならなければ…まあそれで良いけど…」
 美容室だからといって、緊張する必要はないと思っているのに、なぜかキラキラした人が回りにいるだけで落ち着かなくて、日和はほとんど会話らしい会話を出来ないままに過ごす羽目になった。
「はい、お疲れさまでした」
 そう言われて、日和はぼんやりと雑誌を読んでいる視線を上げた。
「…おぉ…」
 真っ黒でもさっとしていた髪は、光に当たると茶色く見えるくらいの色みに変わり、スッキリとしたショートカットに整えられていて、ワックスで全体的にふわっと整えられていた。
「…これ…え…」
 自分の様子が変わっている事に戸惑って、日和が日向に視線を向けると、サムズアップされた。
「いーじゃん! 似合うよ!」
 日向が隣に並んでくる。
「やっぱり双子ですね、よく似てますよ」
 美容師にそう言われて、二人は顔を見合わせる。
「…わかんないな」
「そうかなあ。僕達似てるとおもうけどなあ」
 日向は楽しそうだ。
「さっきの服着て、この感じでデート行ったら、バッチリだと思うよ!」
 ぽんぽん、と背中を叩かれる。
「ありがとう…、日向が色々してくれたおかげで…少しだけど、自信出て来た」
「それはよかった!」
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