スローテンポで愛して

鈴茅ヨウ

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助けて、日向!2

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 これは、並んで歩きたくないな、と日和は思った。
 落ち込んだ顔が日向に解ったのだろう、首を傾げて、
「あれ、なに? どうしたの?」
 と近づいてくる。
「なんで同じ色味なのにこんなに違うんだ…」
 それを聞いて、日向はくすくすと笑う。ムッとした日和がにらみつける様に顔を上げると、
「ごめん、バカにしたわけじゃないよ。なんか…良いなって思って」
 と言われる。
 なぜそんな事を言われるのか解らない日和は、首を傾げた。
 日向がゆっくりと歩きだすので、それに促されてとりあえずついて行く。
「オシャレしたい、って気持ちが出て来たわけでしょ?」
「…あの人の周りには、綺麗な人もかっこいい人も、たくさんいるから…。俺みたいなのを選んだからには…そういうの、気にしなくて良いのかもしれないって思うんだけど…さ」
 副島は元ホストだ。ホストクラブに通う女性たちはみんな、その店のホスト達の隣に並び立てるように自分を磨いている。そんな女性たちを見ている副島が、取り立てて自分を磨いていない日和を選んだのだ。
 付き合っていた美人の彼女に、別れ話をしてまで。
「相変わらず自己評価低いなあ…」
「習性だから仕方ない」
「悲しくなるよ、そういうの」
 日向は、本当に悲しそうな表情を浮かべる。日和のほうも、苦笑が浮かんできた。
「だって…毎日毎日…フルコースみたいな豪華な飯食って、高い酒飲んで、華やかでキレイなデザート食べてたらさ…、なんかたまには、お茶漬け食いたいな、って。コンビニのおでんとか、安いラーメンとか、ポテトチップスとか、食いたくなる事だってあるだろう? そういうのちょっと食ってさ、あぁいつもの方がいいや…ってなるんだよ」
 日和は言っていて悲しくなってくる。でもそれが事実だと思っているので、淡々とそう話した。
「…それはもしかして、自分の事をお茶漬けの方に位置付けてる?」
「当たり前だろ。俺は…あの人になんで好かれたのか、何もわからない」
「なんでそんなに自己評価低いの!? それ、しかも相手の人にすっごい失礼だよ!」
「…えっ」
 日和は、日向が眉を吊り上げる理由がいまいちわからなかった。
「だってそうでしょ!? 僕だったら、自分が好きになった人にそんな風に思われてたら悲しいし、凄い腹立つよ。僕の気持ちなんだと思ってんだって。僕が好きって言った人に対して『自分なんかやめとけばいいのに』って言われたら、それは『お前見る目ないな』って言われてるのと一緒じゃない?」
 そう言われて、日和はハッとする。
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