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初めて家に行った日1
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副島との『お試しお付き合い』を始めて、2ヶ月が経った。
ぎこちなかった日和の態度も、恋人らしいやり取りができるようになってきた。
ドライブデートから始まった二人のデートは、映画、食事、観光地散策と続いて、とうとう副島から家に誘われた。
1度だけ、副島のマンションのエントランスまでは入ったが、部屋に入れてもらえると思っていなかった日和は嬉しくなった。
緊張しながら副島のマンションにお邪魔すると、住んでいる世界の違いを見せつけられた様な気分にもなった。
1LDK五万の日和の部屋が二部屋も入りそうな3LDKのマンションは、人が住んでいないように清潔に整えられていて、まるでモデルルームのようだった。
高級家具店にあるような大きなソファと、ふかふかのラグマット、ローテーブルもガラスの天板を使っていて、モノトーンで統一されたオシャレなリビング。
大きなテレビとスピーカーが壁一面というほどの大きさでおかれていて、日和は住む世界の違いに打ちひしがれた。
「飲み物持ってくるから、ソファに座って待っててね」
お茶をグラスに注いだだけのそれが、オシャレな飲み物に見える。
そうやって思えば思うほど、副島は日和とは違う世界に生きている人なんだと痛感する。
「はい、お茶どうぞ」
「あ、…頂きます」
日和が高級そうなソファに居場所を見つけられなくて小さくなっていると、
「そういえば、ハウスキーパーさん以外で家に入ったの、日和が初めてだなぁ」
と言われた。
「えっ…?」
「恥ずかしい話なんだけど僕、家事が1つも出来ないんだ。だからハウスキーパーさんお願いしてるんだけど、その人以外でここに入った人初めてだなぁって。お店に来る女の子は連れて来た事無いし、…彼女も連れてきた事無いんだよ」
意外だ。こんな綺麗な家なら、連れてきて貰った人はすごく喜ぶだろう。日和はそう思って、自分が喜ぶかもしれないから部屋に入れてくれたのかもしれない、と少し照れ臭くなった。
「そうなんですか…? どうして…」
副島はふふっと笑って日和の頬をそっと撫でた。その仕草にドキドキしてしまう。
「だって、…日和は特別だから」
流れるような動作で耳許に近付いてきて、そんな風に囁かれると、恥ずかしい。
「あっ、あの…」
慌てる日和の耳元で、副島が楽しげに笑った。
「大丈夫、いきなり取って食べたりしないから」
「っ…の、耳許で喋るの…止めて貰って良いですか…、くすぐったいので…」
不馴れな反応が恥ずかしくて、日和は目を逸らした。
副島は、口許を綻ばせている。
「…日和…、好きだよ…」
唇が耳に触れるくらいに近づいてきて、更に甘い声で囁かれる。
「あっ…えっ…」
「…キスしたい」
懇願するような、ねだるような声で聞かれて、流されるままに頷きそうになったが、慌てて首を振る。
「ま、まってください…」
「嫌…?」
「そうじゃ…なくて…」
元々色気のある副島の声が、どんどんいやらしさを増していく気がして、こういうことに不馴れな日和はただどう反応して良いのかわからなくておろおろするばかりだ。
ぎこちなかった日和の態度も、恋人らしいやり取りができるようになってきた。
ドライブデートから始まった二人のデートは、映画、食事、観光地散策と続いて、とうとう副島から家に誘われた。
1度だけ、副島のマンションのエントランスまでは入ったが、部屋に入れてもらえると思っていなかった日和は嬉しくなった。
緊張しながら副島のマンションにお邪魔すると、住んでいる世界の違いを見せつけられた様な気分にもなった。
1LDK五万の日和の部屋が二部屋も入りそうな3LDKのマンションは、人が住んでいないように清潔に整えられていて、まるでモデルルームのようだった。
高級家具店にあるような大きなソファと、ふかふかのラグマット、ローテーブルもガラスの天板を使っていて、モノトーンで統一されたオシャレなリビング。
大きなテレビとスピーカーが壁一面というほどの大きさでおかれていて、日和は住む世界の違いに打ちひしがれた。
「飲み物持ってくるから、ソファに座って待っててね」
お茶をグラスに注いだだけのそれが、オシャレな飲み物に見える。
そうやって思えば思うほど、副島は日和とは違う世界に生きている人なんだと痛感する。
「はい、お茶どうぞ」
「あ、…頂きます」
日和が高級そうなソファに居場所を見つけられなくて小さくなっていると、
「そういえば、ハウスキーパーさん以外で家に入ったの、日和が初めてだなぁ」
と言われた。
「えっ…?」
「恥ずかしい話なんだけど僕、家事が1つも出来ないんだ。だからハウスキーパーさんお願いしてるんだけど、その人以外でここに入った人初めてだなぁって。お店に来る女の子は連れて来た事無いし、…彼女も連れてきた事無いんだよ」
意外だ。こんな綺麗な家なら、連れてきて貰った人はすごく喜ぶだろう。日和はそう思って、自分が喜ぶかもしれないから部屋に入れてくれたのかもしれない、と少し照れ臭くなった。
「そうなんですか…? どうして…」
副島はふふっと笑って日和の頬をそっと撫でた。その仕草にドキドキしてしまう。
「だって、…日和は特別だから」
流れるような動作で耳許に近付いてきて、そんな風に囁かれると、恥ずかしい。
「あっ、あの…」
慌てる日和の耳元で、副島が楽しげに笑った。
「大丈夫、いきなり取って食べたりしないから」
「っ…の、耳許で喋るの…止めて貰って良いですか…、くすぐったいので…」
不馴れな反応が恥ずかしくて、日和は目を逸らした。
副島は、口許を綻ばせている。
「…日和…、好きだよ…」
唇が耳に触れるくらいに近づいてきて、更に甘い声で囁かれる。
「あっ…えっ…」
「…キスしたい」
懇願するような、ねだるような声で聞かれて、流されるままに頷きそうになったが、慌てて首を振る。
「ま、まってください…」
「嫌…?」
「そうじゃ…なくて…」
元々色気のある副島の声が、どんどんいやらしさを増していく気がして、こういうことに不馴れな日和はただどう反応して良いのかわからなくておろおろするばかりだ。
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